第18話 次から次へと疑問が・・・
「まず、お風呂と洗濯についてなんですけど」
「はい。何かお困りですか?」
「お風呂は、いつ入っても大丈夫なんでしょうか。ほかの方が使う時間もありますよね」
「客室の近くに浴室があります。お使いになりたいときに、近くの使用人へ声をかけてください。空いていればご案内できます」
「ありがとうございます。自分でお湯を用意した方がいいですか?」
「準備もこちらでいたしますよ」
「助かります。できることがあれば自分でもやりますので、教えてください」
「わかりました」
風呂の場所と使い方がわかれば、髪もゆっくり洗える。
そう思って、もう一つ気になった。
「髪を洗うものも、借りられますか?」
「はい。浴室に用意してあります」
「それなら安心です」
どんなものを使っているのか、後で確かめてみよう。
洗った後の髪の手触りも気になる。仕事柄、どうしても考えてしまう。
「洗濯は、どうされています?」
「洗う服をまとめていただければ、お預かりします」
「自分で洗える場所はありますか?」
「少量でしたら、洗面の水をお使いいただいても構いません。必要なものは用意しますよ」
「それなら、下着や靴下は自分で洗えますね」
店を経営していた頃も、仕事着やタオルの洗濯は日常だった。
量が多いときは頼むとして、少しくらいなら自分でやりたい。
「乾かす場所は、後ほどご案内します」
「ありがとうございます。着替えも用意してもらって、助かっています」
「合わないものがあれば、遠慮なくお知らせください」
俺は自分の袖を見た。
「今のところ大丈夫です。ただ、仕事をするときは、もう少し袖が動かしやすいとありがたいかもしれません」
「では、作業しやすい服も相談してみますね」
「すみません。何から何まで」
「ユウ様には、こちらの都合で来ていただいたのですから。暮らしに必要なことは、お手伝いさせてください」
セレスはそう言って、穏やかに笑った。
*
「あとは、城の中をどこまで歩いていいのかも、知っておきたいです」
「そうですね。お部屋の周りや、工房までの道は大丈夫です。ただ、お仕事中の部屋や立ち入りを控えていただきたい場所もありますので、ご案内します」
「勝手に扉を開けて、会議中の魔王様と目が合ったりしないように」
「それは、私も困ります」
「俺も困ります」
想像しただけで、そっと扉を閉めたくなった。
「工房へ行くときは、毎回セレスさんに付き添ってもらわないと駄目ですか?」
「道がわかっていれば、お一人でも大丈夫ですよ。ただ、ガルドさんがお仕事中のこともありますから、予定は先に確認しましょう」
「はい。作業の邪魔はしたくないですし」
昨日も、鋏を見ている間のガルドは真剣だった。こちらの都合だけで話しかけるわけにはいかない。
「それと、時間はどうやって確認していますか? 部屋に時計が見当たらなくて」
「城では、時間を知らせる鐘が鳴ります。予定があるときは、使用人がお声がけすることもできますよ」
「工房に行く時間も、教えてもらえると助かります。鐘の鳴る時刻は、少しずつ覚えますね」
「わかりました。鐘が聞こえたら、一緒に確認しましょう」
「お願いします」
*
風呂に入る。服を洗う。時間を確かめて、約束の場所へ行く。
元の世界では、いちいち聞かずにできていたことだ。
言葉が通じるおかげで質問はできるが、この城でのやり方は教わらないとわからない。
「今日は質問ばかりですね」
「気になることは、ほかにもありますか?」
「たぶん、暮らしているうちに、また出てくると思います」
「そのときは聞いてください」
「ありがとうございます。俺も、髪のことで何かあれば答えますので」
「はい。結び方も、また相談させてくださいね」
セレスが後ろにまとめた髪へ触れた。
「今朝は、昨日より楽にできました」
「それはよかったです」
自分でやってみて、楽になったと言ってもらえるのはうれしい。
セレスは俺をこの城へ招き、言葉が通じるようにして、暮らしのことまで教えてくれている。
そこまでして、俺の技術が必要だったのだろうか。
魔王の髪は整えた。だが、昨日会ったガルドにも、工房の人たちにも、それぞれ髪の悩みがありそうだった。
俺はセレスに向き直った。
「あの、もう一つだけ聞いてもいいですか?」
「はい。何でしょう」
「どうして、俺を呼んだんですか?」




