第15話 ふとした疑問
初めて工房を訪ねた翌朝、俺はセレスと客室で朝食を食べていた。
今日はガルドが鋏を調整してくれる。試せる状態になったら知らせてもらうことになっていた。
パンをちぎり、肉と野菜の入った温かい汁物を飲む。
うまい。
黄色い角切りの野菜を食べると、芋のようにほくほくしていて、少し甘かった。
「セレスさん。この野菜は何ですか?」
「ポタトですね。根を食べる野菜です」
「ポタト……ポテトに似た名前ですね」
「ポテト?」
「俺のいた世界にある、芋の名前です。味も少し似ています」
もう一つ食べてみる。
甘みがあるので、焼いて肉に添えてもおいしそうだ。
「焼いて食べることもありますか?」
「はい。汁物に入れるほか、焼いたり、つぶしたりもします」
「そっちも食べてみたいですね」
どんな形の野菜なのか、生のものも見てみたい。
元の世界にあった芋と、見た目も似ているのだろうか。
「ユウ様、お料理を考えていますね?」
「わかります?」
「食べる手が止まっていました」
気がつくと、食器を持ったまま考え込んでいた。
「焼くとどんな味になるのかな、と」
「料理長に伝えておきましょうか?」
「いえ、まずはこれをいただきます」
せっかく作ってもらった朝食だ。冷めないうちに食べよう。
*
汁物には、細かく刻んだ緑の葉も入っている。口に運ぶと、爽やかな香りがした。
「この葉は、初日に食べた肉にかかっていた香草とは違いますよね?」
「ええ。汁物には、こちらの香草を使うことが多いそうです」
「あの肉の香草は、乾燥させたものも使うんでしたよね」
「はい。以前、燻製にも合いそうだとおっしゃっていましたね」
「覚えていたんですか?」
「お肉を食べながら、とても楽しそうに話されていましたから」
初日の夕食で、料理の話をしたことを思い出す。
元の世界では、釣った魚を料理したり、肉を燻製にしたりしていた。こっちの食材でも、いろいろ作ってみたい。
「料理人の方に、食材を見せてもらえないでしょうか。お仕事の邪魔にならないときに、使い方も聞いてみたいです」
「では、都合のよい時間があるか、確認しておきますね」
「ありがとうございます」
「街の市場にも、食材は並んでいますよ」
「市場があるんですね。魚も売っていますか?」
「はい。お魚もありますよ」
どんな魚がいるのだろう。知っている魚に似たものもあるかもしれない。
「いつか市場にも行ってみたいです」
「鋏の相談が落ち着いたら、ご案内しましょうか」
「ぜひお願いします」
工房で鋏を作ってもらい、市場で食材を見る。
この世界で楽しみなことが、一つ増えた。
俺は残りの汁物を飲み干した。
ポタトは知らない野菜だったが、セレスの説明は普通にわかった。
そういえば、初めて会ったときから、魔王様ともセレスとも会話ができている。
俺は日本語を話しているつもりだ。どうして二人に通じているのだろう。




