↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『魔王様、今日はどのくらい切りますか?』  作者: 酔どれワンコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/20

第13話 シザー試作品完成

 俺は髪を切る動きを、ガルドにゆっくり見せた。毛束を取るつもりで左手を上げ、鋏を開閉する。次に刃を閉じ、櫛を使うときの持ち方へ変えた。


「そこで、親指を抜くんだな」


「はい。このとき、持ち手の出っ張りが指に当たります」


 ガルドは鋏を受け取り、俺が示したところを確かめた。


「ここは直そう。ただ、全部を一から作るには時間がかかる。まずは今ある鋏で刃の調整を試して、持ち手は別に形を決めるぞ」


「はい。お願いします」


 ガルドは候補を二本残し、ほかの鋏を片づけた。


 俺も、刃と持ち手で直したいところを紙に書く。そこで、皿に残った数本の髪が目に入った。


「昨日カットした魔王様の髪の毛って、まだあれば試し切りに使えたりしませんかね?」


「ユウ様。カットした毛とはいえ、魔王様の髪の毛を試し切りに使うのは、さすがに……」


 セレスの声が、少し低くなった。


 顔を上げると、笑っていなかった。


「……ぁっ、はい。そうですよね。すみません」


 切った髪がたくさんあったので、つい口にしてしまった。


「試し切りに使う髪は、こちらで用意できるか相談してまいります」


「ありがとうございます。普段のお手入れで抜けた髪などで大丈夫です。無理に抜いたり、切ったりする必要はありません」


「承知しました」


 ガルドが皿を見て、息をついた。


「助かる。これだけでは、何度も試せんからな」


 試すための髪の毛の調達から始める美容道具開発。


 元の世界では、考えたこともなかった。


     *


 ガルドは鋏を分解し、刃の状態を確かめ始めた。


 刃を光にかざしては角度を変え、黙って手を動かす。俺も話しかけずに、少し離れて作業を見守った。


 やがて、組み直した鋏が差し出された。


「試してくれ」


 まず、残してあった髪を切ってみる。さっきは滑って逃げた刃先でも、今度は切れた。


「切れますね。ただ……」


 何度か開閉して、動きを確かめる。


「開閉が硬いです。これを繰り返すと、親指が疲れそうです」


「少し緩めてみるか」


 ガルドがねじを調整した。


 今度は動かしやすい。けれど、刃先で切ろうとすると、また髪が滑った。


「締めると髪は切れるが、開閉が硬くなる。緩めると動かしやすいが、髪が逃げるか」


「切れ味と動かしやすさ、両方欲しいですね」


「簡単に言ってくれるな」


 そう言いながら、ガルドは鋏を光にかざした。


「だが、使うたびに親指が疲れるようじゃ、仕事道具にはならん。刃の合わせ方から、もう一度見直す」


「お願いします」


 俺は、開閉したときに力が必要だった位置を、もう一度ゆっくり示した。


     *


 その日のうちに、鋏は完成しなかった。


 刃の調整を試し、持ち手の形を相談する。俺が使って気になったところを伝えると、ガルドは手元を見て、直す場所を確かめた。


「使っていた鋏を一本でも見られれば、話が早いんだがな」


「俺も、持って来たかったです。少なくとも、この絵よりは役に立ちます」


 ガルドが紙へ目を落とした。


「それは、そうだな」


 そこは少しくらい、否定してくれてもよかった。


 その後も工房へ通い、調整した鋏を試した。


 セレスが手配してくれた髪を使い、刃の根元から先まで切れるか確かめる。持ち手は、指の収まり方と、何度も動かしたときの疲れ方を見た。


 セニングは、まだ図面の段階だ。先に普通の鋏を仕上げることになっている。


 工房を初めて訪ねてから、三日後。


 ガルドが、布の上に鋏を置いた。


「まずは一本、形になったぞ。持ってみろ」


 俺はさっそく手を伸ばした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。