第53話 王妃様と対面という地獄
「お、王妃様がいなくなった!?」
王宮内の使用人はあわてる。
「一体どこに!?」
「…またか。」
慌てている使用人を前にアダムラフテリアは、呆れながらも、そう呟いていた。
◇◇◇
私は王妃である。といっても、この国出身ではない。隣国のルぺえルナ国で生まれた。
ルぺエルナ国で、私は男爵であったが、平民と近いような立場だった。別に私はそこを不満に思ったことはないし、貴族としてより平民として過ごすほうが気楽であった。
私が18歳になったころにある日、なぜか王宮のものが家に来るのだった。そして、なにやら私を観察してきた。
「アメジスト色の瞳…!?」
王宮のものはそう言っていた。その当時の私では理解もできなかった。王宮はアメジスト色の瞳を持った女をどうも探していたらしい。理由は、隣国である王が探していた女だったそうだ。
私はその男と会ったこともないし、知らなかった。そこからなぜか私は王に気に入られ、隣国の王妃として隣国に向かい入れられることになったのだ。
魔法が使える世界に魔法を使えない部外者が入ってきたので、私は少し批判も受けた。
だからこそ、私は考えた。
ーー王はこの制度を変えようと私を連れてきた。
「まぁ、今となってはどうでもいいんだけど。」
私は静かにそう呟きながら、地下水路を歩く。
私は王宮で令嬢として過ごすより、こういう下町で平民として過ごす方が向いているのよ。…ったく、たまには外に出ないと身体がなまってしまうわ。
私は身体を伸ばし、ストレッチをする。
最近ずっと、公務、茶会、公務、夜会の繰り返しだったから疲れたのよね〜。
おもしろみもなにもないし。なんかおもしろいこと起きるといいなぁ。
私はそう思いながら、近くの町に出た。
「ここ、来たことないわね。」
私は静かにそう呟く。
町を見渡すと普通の平民の町より、あきらかに綺麗で匂いもよく、人々の様子も生き生きとしていた。
…こんなに生き生きしいなんて…。なにか秘密が隠れているのかしら。
私はそう思いながら、ローブを被り、町を歩く。
平和。平民の町とは思えないぐらい。
「嬢ちゃん。串焼きいるかい?」
屋台のおじさんが私にそう言ってきた。
「ひとつちょうだ〜い。」
私は声質を変え、そう答える。
「へい!うまいぞ?」
男は軽い口調でそう言いながら、串焼きを私に渡すのだった。まるで、王妃に対する口調とは思えない。でも、私はこっちの方があっている。親しみやすいし、素を出しやすい。
おいしい。この店、王宮で雇いたいくらい。
私が串焼きに夢中になっていると、私に子供がぶつかってくるのだった。
「…いた。」
子供は私にぶつかり、地面に手をつく。
「ごめんなさい。」
私は誤りながら、子供に手を差し伸べた。子供は「大丈夫です。」と、少し暗い表情で言うのだった。
…痛かったのかしら。
私がそう思っていると、後ろで手をガシっと握るような音がするのであった。
「こら。」
私が振り返ると、金髪でサファイヤ色の瞳をした少女が子供の手を握っていた。子供の手には、私がポケットに入れていた、金貨が入った革袋を取っていた。
…気づかなかった。いつのまに、盗まれていたのかしら?片方が私を引き付け、もう片方が盗む…、ってことね。
「人から物を盗むなんて、駄目じゃない。」
彼女はそう言いながら、少年を握っている手を離し、視線を合わせるのであった。
「悪に手を染める者には、神は祝福しないのよ?」
彼女は真っすぐな目を向けて、少年にそう言った。
「…ごめんなさい。」
「じゃあ、返してこれるよね?」
彼女の言葉に少年はコクリと頷き、私の元へ革袋を返してくる。
「…盗んじゃってごめんなさい。」
「…戻ってきたからいいわよ。」
私は少年にそう返し、彼女の方に視線を向ける。
「…金髪で、サファイヤ色の瞳…。」
あぁ、そうか。この子が…。王がいっていた聖女なのね。
私は不思議と笑みを浮かべる。
「聖女ってきいておしとやかな子を想像していたけれど…。案外おもしろいのね。」
「…なぜ、私のことを?」
彼女は首をかしげながら私に聞いてきた。
「自己紹介が遅れたね。」
私はローブを取って、顔を彼女に見せつける。
「あ、あなたは…!?」
彼女は私を見て、大いに驚くのであった。
「私の名はクリス・ミーディアよ。」




