第44話 ゴールまでが遠いという地獄
「もうすぐゴールなのです。」
ユメリアは最初とあまり変わらない速度で走り続けていた。
「あのおじさんはなんだったのですかね。すばしっこかったのです。」
ユメリアはおじさんのことを考えていた。
そのときだった。
目の前におばあちゃんが現れたのだ。
「はて…。」
おばあちゃんは足をどうやら怪我しているようだった。
「大丈夫なのです?」
ユメリアはおばあちゃんに尋ねる。
「この年で、ここらを散歩してたら枝に引っかかってしまってね。それでこの傷だよ。」
傷はそれほど深くはなかった。
「困ったね…。これから亡くなった夫の葬儀に行く途中っていうのに、この足じゃ、ねぇ。」
ユメリアは悩んでいた。
このおばあさんの夫の別れを見送らせてあげるか、自分が騎士団試験の第一試験を突破するか。
おばあさんを見捨てれば、葬儀に間に合わない。かといって、試験を放棄した場合、ユメリアは二度と試験を受けられなくなる。
この騎士団試験は、試験を放棄した場合、2度と受けられなくなるという決まりがあるのだ。
つまりユメリアは、自分の夢を捨てるか、おばあさんとその夫の最後の別れを捨てるかのどちらかとなったのだ。
「…。」
ユメリアは悩んだ。
「私はどうすればいいのです…。」
◇◇◇
ったくなんなのあのルークって騎士団長!?ペースが遅い人に風魔法使って「遅いよ遅いよ!ほら、走って走って!」とかいうし!!!
落ちる気満々の私はもう疲れ果ててる。限界だよ限界!
私が疲れ果てながらも走っていると、なにやらユメリアを発見した。
ユメリア!?なんでこんなところに…。最前線にいたんじゃ、なかったの?
私が様子をうかがうと、おばあさんがなにやら怪我をしていた。
「大丈夫!?今すぐ、魔法で」
って、使えないんじゃ〜ん!!!!なんでこんなときに。
「困ったねぇ。夫に最後の別れをしたかったんだけど、もう遅いかね…。」
何この人、このあと葬儀なの!?足怪我してるから動けないってわけか!理解!
私はいそいでおばあさんをおんぶする。
「ユメリア!おばあさんは私が夫さんのもとに届けるから、あなたはゴールめがけて走りなさい!」
私はまっすぐにそう言う。
「でもそれじゃあ…マイナが…。」
「いいから!」
「…頼んだのです。」
ユメリアは静かにそう言って、ゴールへ走っていった。
「嬢ちゃん。試験中だろう?よかったのかい?」
「試験なんか私、どうでもいいし。」
もともと落ちる予定だったんだから、ユメリアと違って悩む必要もないからね。
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