第36話 マシと思えてしまう地獄
「マイ」
「近寄らないでください。」
「…今日はいつにも増して機嫌が悪くないかい?」
アダムラフテリアのその言葉に「そうか?」と心の中で呟く。
よりにもよってなんで隣を歩くのか。…まぁ、問題はこの男じゃなくて。
私は私に向いた視線の主を横目でチラっと見る。オリバーが私を殺意の目で見ていた。
あはは…。漫画のじーーって吹き出しがついているみたい。
ゲームでは、攻略対象がヒロインとオリバーの仲を結局は取り持ってくれたけど…あの4人目の攻略対象者が仲を取りもった記憶は私にはない。
…っということはだ。私はオリバーが今日、何をしでかすかわからないのである。
「…オリバーに喧嘩でも売ったのか?」
「私と話す際はもう少し、距離を置いてもらっても?」
「魔法でバリアを張っているというのに、これ以上離れる必要はないだろう?」
…できれば私の視線から離れてほしい限りだ。
「あいつとなにがあったんだ?」
こればっかりは、こいつに助けを求めるのも、悪くない話かもしれない。今後とも、オリバーには魔王討伐戦のときに、色々やってもらいたいことがあるし。
「実は…。」
私はできるだけ、省略しながら、説明をした。
「なるほどな。で?君はこれからあいつとどんな仲でいたい?」
「遠距離の他人がいいです。」
「他人という願いは、もう叶わないだろうな。」
「では、遠距離の知ってる人で。」
「遠距離恋愛みたいな言い方でいうのをやめたらどうだ?」
遠距離恋愛みたいな言い方で言ってたか?私。
「このままずっとストーカー行為をされるのは嫌なんだな?」
「はい!!!!」
「そこまで肯定しなくてもいいと思うのだが…。」
「殿下もご存知の通り、私は男嫌いですので。あぁいう行為をされるのは困るんです。」
「そうだな。」
私はめっちゃよき作戦を思いつき、殿下に言う。
「殿下とデューク様が私から離れるのはどうでしょう!!」
「そんなにキラキラした目でいうな。国王の命令上、俺が君に関わるのは必然的に必要だ。却下だ却下。」
私はちぇっと舌打ちを打つ。
結構いい作戦だと思ったんだけどな〜。…ならば。
「私が死ぬ…?」
「君がいないとこの国は終わる。絶対に却下だ。」
あまね。確かに私という聖女がいないとね。この国終わっちゃうからね。
「じゃあどうしたらいいんです!!!!」
私は王子に問いただす。
「マイナとオリバーが仲良くすればいいじゃないか?」
「…急にマイナって呼ぶのやめてもらえます?」
「君の両親から許可をもらったが?」
なんて許可出してるんだよ!!!!私の両親!!!!!!!
「私とオリバー様が仲良くなる?ムリムリムリムリです!!!!」
「じゃあ、マイナが必死にオリバーから逃げ、俺と共に常に行動するしかないな。」
「…デューク様と共に行動じゃ、駄目なんですか?」
「俺の方がマシだろ?」
彼は口角を上げて私に向かってそういうのだった。
マシ…?そんなわけ…。…いや、意外とマシなのかも知れない。
「意外な反応だな。」
「うるさいですね。もう一歩離れてください。」
「…王太子の俺にそんな態度を取れるのはマイナぐらいだぞ?」
王子はやれやれと呟いていた。
「ふっふっふ。オリバー様、かかってきなさいよ。全力で逃げてやるわ。」
「聖女とは思えない発言だな。」
アダムラフテリアはそう言うのだった。




