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「神速の指先」を聞き間違いで授かった僕が実は最強だった件  作者: ギア丸


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第47話:【湯けむり】天空の秘湯・スカイ温泉。指先で源泉の詰まりを直せ!

 「ああ……。戦いの後の温泉ほど、聖騎士の魂を浄化するものはありませんわ……」

 アイリスが珍しくうっとりとした表情で、霧に包まれた「天空スカイ温泉」の暖簾を見上げた。バキューム戦で限界を超えたヴォルガッシュの指先も、心なしかカサカサに乾いている。

「温泉か。いいな……。指の関節の節々に溜まった魔力のカスを、ゆっくり洗い流したいぜ」

「ヴォルガッシュ、見て! ここ、脱衣所がなくて最初から全裸で入るシステムなんだって! 私のためにあるような温泉だね!」

 ミレーヌは入湯前から既に「完全解放状態」で、湯けむりの中へと消えていった。

 しかし、一行を待ち受けていたのは、湯船に浸かる幸せそうな人々……ではなく、空の桶を持って立ち尽くす宿泊客たちの絶望した姿だった。

「……お、おのれ……。源泉が、源泉が死んでおる……!」

 管理人の老人が、枯れ果てた湯口を見て震えている。

「どうしたんだ、じいさん。お湯が出てねえのか?」

「そうなのじゃ……。昨夜の激しい気圧変動のせいか、地下(空中の根)にある源泉のパイプに、千年に一度の『黄金の巨大湯の花』がガッチリと詰まってしもうたんじゃ。これを除去せん限り、天空の湯は二度と湧き出ぬ……」

 アイリスがヴォルガッシュの右指をジッと見つめる。

「……ヴォルガッシュ様。これは休んでいる場合ではありません。温泉の『詰まり』を直さない限り、私たちが湯に浸かることも、ミレーヌ様の露出を止めることも(手遅れですが)できません」

「……結局、仕事かよ。よし、じいさん。その源泉の『鼻の穴』、俺が通してやる」

 地下の源泉室。そこには、直径3メートルはあろうかという巨大なクリスタル状の「湯の花」が、魔法の配管にミッチリと、一分の隙もなく挟まっていた。

「なるほど……。これは鼻糞でいえば、乾燥して粘膜に癒着した最強のタイプだな。無理に引き抜けば配管が壊れる」

 ヴォルガッシュは右指を、煮えたぎる魔力水の蒸気にかざした。

「まずは蒸気でふやかす。スキル発動――『超高速・毛穴開通スチーム・ピッキング』!!」

 ズババババババババババババッ!!!!!

 指先の振動が湯の花の結晶構造を細かく砕き、内部に熱水を浸透させていく。

 続けて、ヴォルガッシュは配管の接合部に指を添えた。

「トドメだ! 地下の澱みよ、噴水となって土下座しろ! 『全自動・土下座』――源泉大噴火(間欠泉・シュート)!!」

 ヴォルガッシュが床の岩盤に向けて魂の土下座を叩き込むと、その衝撃波が配管の奥へと伝わり、湯の花を「スポォォォォォォン!!」と天空の果てまで射出した。

 ゴバァァァァァァァッ!!!!!

 次の瞬間、黄金色に輝く最高級の源泉が、ヴォルガッシュの全身を飲み込む勢いで噴き出した。

「わぁぁっ! ヴォルガッシュ様、流されます!!」

「……ふっ。……いい湯、じゃねえか……」

 一時間後。

 黄金の湯に浸かり、極楽浄土の表情を浮かべる一行。

「ふぅ……。指が……指の細胞が生き返るようだ……」

 ヴォルガッシュが湯船の縁に頭を預ける。

「ヌシよ、この湯、銀竜の鱗にも良い。……というか、ミレーヌ。お主、混浴なのは分かるが、なぜ我の背中で体を洗っておるのだ?」

「だってポチの鱗、タワシみたいで気持ちいいんだもん! ほらヴォルガッシュ、私の背中もその『黄金の指』で流してよ!」

「断る。……と言いたいが、今日は特別だ。……スキル発動、『超高速・三ツ星背中流し』」

 ズバババババババババ!!

「あはぁぁぁんっ!? 汚れと一緒に、煩悩まで掻き出されるぅぅ!!」

「……ヴォルガッシュ様。公共の場での過度なピッキング(背中流し)は慎んでください。……あと、私の番はその後ですので、時間はたっぷり取っておいてくださいね」

 アイリスが眼鏡を曇らせながら、静かに順番待ちの列を作った。

「(……俺、休みの日まで結局ピッキングしてるな……)」

 天空の秘湯に響く、ミレーヌの嬌声と、ポチの満足げな鼻息。

 ヴォルガッシュの不名誉な指先は、戦いの傷を癒やしながらも、また新たな伝説(と始末書)を刻んでいくのであった。

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