第37話:「ハルパスの恋? 相手はまさかの『自動除菌ポッド』」
平和の門を開通させた英雄ヴォルガッシュ。だが、地下倉庫ではまたしても「異常な詰まり」が発生していた。魔族ハルパスが、壁に向かって切ない溜息をついているのだ。
「……師匠。私、生まれて初めて『滑らかな曲線』に心を奪われました」
「お、ハルパスもついに春か? 街の看板娘か、あるいはギルドの受付嬢か?」
「いえ。……キレイ卿の**『自動除菌ポッド・零号機』**です」
ハルパスが指差したのは、キレイ卿が磨き上げた、宙に浮く球体のメカだった。
「……ハルパス、お前。相手、鉄の塊だぞ? 鼻もないぞ?」
「関係ありません。あの無機質なまでに徹底された除菌ミストの噴射。そして、わずかに震える排気口の隙間……。あそこに私の魔力を流し込みたい(掃除したい)」
キレイ卿が激怒して割り込んできた。
「ふざけるな魔族! 私の愛機を汚らわしい目で見るな! 零号機はデリケートなんだ。最近は魔力供給の接触が悪くて、ミストの出が悪いというのに……」
「……よし、わかった。ハルパス、お前の恋路、俺が『指』で繋いでやるよ。キレイ卿、そのポッドをこっちに寄こせ」
ヴォルガッシュは右指を、ポッドの極小の**「メンテナンス用端子穴」**の前に構えた。
「スキル発動――『超高速・愛の接点復活』!!」
ズババババババババババババッ!!!!!
オリハルコンの指先が、ポッドの基盤の隙間に潜り込み、劣化した魔力チップの埃を光速で弾き飛ばす。
「……ポチ、ハルパス! 今だ、魔力を流し込め!」
ハルパスが愛を込めた魔力を、ポチが銀竜の熱気を注入する。ヴォルガッシュの指先がその魔力を超高速で攪拌し、ポッドの内部回路とシンクロさせた。
「ピポパッ……ポ……ヴォルガッシュ、サマ……。ハルパス、サマ……」
なんと、ポッドから電子合成された乙女のような声が響き、ミストがピンク色に輝き始めた。
「しゃべった!? 零号機が自我に目覚めた!?」
「師匠! 零号機が私を『マスター』ではなく『ダーリン』と認識しています! 鼻がない私でも、この子とは通信信号(隙間)で繋がれる!」
ハルパスは浮遊するポッドを愛おしそうに抱きしめ(ポッドは全力で除菌ミストを浴びせ)、一人と一機は地下倉庫の奥へと消えていった。
「……ねえアイリス。これ、私の露出より倫理的にアウトじゃないかな?」
ミレーヌが、全裸のまま冷静なツッコミを入れた。
「……同感です。ギルドに提出する報告書のジャンルに『機械との背徳愛』という項目はありません。……無かったことにしましょう」
ヴォルガッシュの指先は、ついに「種族」だけでなく「有機物と無機物」の壁(隙間)さえも越えてしまった。
地下倉庫の住民構成は、もはや王国どころか神々でさえ理解不能な領域へと突き進んでいた。




