124曲目 終結
辺りに霧が発生する。
「ふふっ、面白い魔法ね。剣に魔法を乗せるなんてあまり見ない魔法よ」
徐々に魔王ネーベルの姿が見えなくなる。
あまり使い手がいない霧の魔法、ネーベルは霧を得意とする一人であり、姿だけでなく、気配や魔力など全てを感じ取れなくなり、声も四方八方から聞こえてきてどこにいるのか分からなくなった。
「いくら魔王の魔法でも相性があるよねぇ〜」
デボラは刀を上に掲げると周りの霧が凍てつきダイヤモンドダストの様に変わる。
しかしデボラの魔法がネーベルに上書きされる。
「えっ?まだ見えないんですけど…」
「教えてあげるわ。確かに霧の魔法では氷の魔法に勝てないわ。ただし同等ならではの話、あなたの魔法は私にただ吸収されただけで、現状あなた達の立場が悪化しただけなのよ」
今度はダイヤモンドダストがデボラを襲う。
「いてててて」
「どお?自分の魔法にやられる気分は」
デボラの体中に細かな傷がつく。
そしてダイヤモンドダストがデリアにも襲いかかるが、当たる前に熱で元の霧へと戻った。
「私には効かないわよ」
言葉では強がっているデリアも内心では魔王相手にするだけでも厳しいのに姿が全く見えないし感知も出来ない。
霧がどんどん濃くなっていく。
ネーベルの不気味な笑い声だけが響き渡っていて、3分程だろうか、たったの3分がとてつもなく長く感じられ、精神的にも厳しくなってきたその時、デリアの腕に切り傷が出来る。
「デボラ!気をつけて!!」
「わかってるよ」
今度はデボラに切り傷が!
大した傷では無いが、いつ斬られたのか全くわからない。
少し痛みがあると思っていたら切れていた。
今度はデリアの頬に傷が、次はデボラの足に、あっという間に傷だらけでかなりヤバい状況になっていた。
その時、大きな爆発音とともに物凄い風が一瞬で霧を全て消し去るが、すぐに元に戻った。
だが、その時に姿が微かに見えたネーベルを2人は見逃さなかった。
「デボラ!」
「おまかせ」
振りかざした刀から魔法が飛び出る。
デリアの刀からは炎の鳥、デボラの刀からは氷の鳥が飛び、ネーベルに向かい一直線に飛んでいった。
「グッキャーッ!」
ネーベルの悲鳴が聞こえる。
確実にダメージを与えたが、魔王の中で一番防御力が弱いネーベルだが、倒すまでには至らなかった。
「許さん!」
デリアとデボラの体に切り傷がどんどん増える。
「デボラ…、大丈夫?」
「もう…、ヤバいかも…」
限界が近づいたその時、霧が裂け、ネーベルの叫び声が聞こえた。
「「ソウジさまぁ〜〜〜!!」」
駆けつけたソウジの姿を見て、一気に気が抜ける二人、どうやらシオはリクの手当てにいっているようだ。
「誰だ!くっ!…人族だと!!人如きが私に傷をぉ〜〜〜」
「あなた達はやり過ぎた。もう見逃す訳にはいかない」
「何を偉そうに!さぁ喰らいな」
これが魔王ネーベルの最後の言葉だった。
ソウジの刀は霧と一緒に魔王ネーベルを斬り刻んでいた。
「後は…」
一瞬で今度は魔王ブリッツとラルフの間を割って入るとブリッツはすぐに悟ってしまった。
「ありえん!こんな人族がいるなんて聞いてないぞ」
「ソウジ様、後は頼みました」
空中で戦っていたラルフは安心したせいか、力尽きて地に落ちる。
しかしデリアとデボラが落ちてきたラルフをしっかりと受け止めて助けると、ソウジに合図を送った。
「ソウジさまーーーーーー!こっちは大丈夫でーーーーーーす」
その言葉を聞き、刀を握り直す。
「まっ、待ってくれ」
「今更何を待つ」
「くっ!」
ソウジの頭上に落雷!
しかし躱す!!
「あっ、ありえん!雷を躱すなどありえない!!」
「待つ必要は無かったようだな」
さすがにネーベルの様にはいかなかったが、躱しきれずに片腕を失ったブリッツはありったけの魔力を放ち、即座に逃げた。
しかし、ソウジの刀は魔力ごとブリッツを真っ二つに斬った。
逃げようとしなければこんなに呆気なく殺られはしなかったが、ソウジを見たときに自分の死を悟ってしまったのだろう。
結果、死が早まっただけだった。
巨大な魔力を持つ魔王ネーベルと魔王ブリッツの魔力が途切れた瞬間、他で戦っていた魔族たちが一斉に逃げ出した。
しかし、急ぎ戻ってきた魔王ディアナに殲滅されてしまう。
死んだ魔王ブリッツも出掛けからすぐに魔王ディアナが戻ってくるとは思わなかったのだろうが、ディアナが戻る前にソウジに殺られ、野望はすぐに潰えた。
これは後から知った事であったが、最強と名高いディアナを倒した後は、どうやら戦争を起こして、魔王の中の王を決めよう、いや魔王の中の王になろうとブリッツは企んでいて、上手く話してネーベルとヴォーゲをディアナを倒すための駒にしようとしたらしい。
このことをはじめ、ソウジと魔王ディアナの絆はどんどん深まったのであった。
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