122曲目 乱戦
「馬鹿が!」
「あれじゃあ使い物にならないわ」
「ヴォーゲ、遊びは終わりだ!ネーベル、先に行くぞ」
「わかったわ」
魔王ネーベルも自分の部下に合図を出した。
所詮は魔王達の共闘、使い物にならなくなれば用済みだ。
ヴォーゲも十分にわかっていた。
まだブリッツに声をかけられただけマシな方だ。
「リク!お前はラルフ殿の所へ急げ、シオ!お前はソウジ様にこのことを伝えろ」
「「わかった」」
目が冷めたヴォーゲはレッカに対して真剣に向き合う。
が、今更だ!
ヴォーゲもわかっていた。
もし、始めはから手を抜かずに戦っていれば、このような結果にもならず、いい戦いが出来たであろう。
「俺の負けだ。だが、お前達はもう終わりだ。魔王ディアナがいない今、お前達に俺達を相手にする戦力はない」
ヴォーゲも自身の部下に合図を出す。
「喰らいやがれ!メイルシュトローム」
さすが魔王を名乗るだけある。
何も無い所に水を出すだけでも困難なのに、これだけで水を出して渦を発生される事など普通は出来る事ではない。
いくらレッカでもこれだけの広範囲魔法、躱す事など到底出来ず、渦に飲まれて村まで流される。
「あばよ!生きてりゃあ、また相手してやるぜ」
捨て台詞を吐き、ヴォーゲは魔王城へと向かった。
★ ★ ★
気配を感じ、屋敷の中で動きを伺っていたソウジの所へやってきたシオ、事の全てを報告した。
「わかった。いまからディアの城へ向かう」
「私もお供させて頂きます」
シオの報告が終わった頃、大きな音が聞こえた。
障子を開けて見ると、渦を巻いた水が破裂するように弾けていた。
様子を見にソウジとシオが現場に向かう途中、ボロボロになったレッカが現れた。
「レッカ!」
「シオか、ソウジ様まで…。申し訳ございません。魔王ヴォーゲを逃してしまいました」
「大丈夫ですか」
「ご心配なく、掠り傷です」
見た目よりもダメージは少ない様子だが、安静にしたほうが良さそうだ。
「レッカは休んでいて下さい。後はボクが行きます」
「しかしソウジ様………、わかりました。シオ、ソウジ様の共を頼む」
「わかっています。レッカはソウジ様の言う通りに休んでなさい」
いつものレッカなら這いつくばってでもソウジについていくのだが、初めて発するソウジに氣に素直に従うしかなかった。
顔は穏やかないつものソウジ様でもにじみ出る氣は怒りに満ちている。
そしてソウジとシオは魔王城へと向かった。
★ ★ ★
ディアナのいない魔王城では混戦になっていた。
何処で息を潜めていたのか、魔人達が虫のように湧いて出てきたのである。
現在、魔王城上空では魔王ブリッツとラルフが睨みあっていて、魔王ネーベルとレッカと同じ鬼化の進化した姿のリクとデリアとデボラの3人が立ちはだかる。
外では既に、ブリッツ、ネーベル、ヴォーゲの部下総勢およそ8000人と、ディアナの部下と鬼人族総勢200人の戦いが始まっていた。
魔人族は人口は少ないが他種族よりも優れた魔力量と高度な魔術を使いこなす。
その戦いは100人いれば1時間もしないうちに町を廃墟に出来る程だ。
その魔術の撃ち合いで乱戦になれば、合わさった魔術は暴走して敵味方関係なく襲いかかる。
下級、中級魔人に位置する魔人なら、巻き込まれたらほぼ死は免れない。
既に魔王城の北側、山頂から火は広がり焼け野原と化している所では魔人の死体の山が出来上がっていた。
ブリッツ、ネーベル、ヴォーゲ率いる相手軍およそ800人、ディアナ配下と鬼人族の自軍24人が死亡、相手軍およそ2000人、自軍およそ100人が重軽傷、対峙してたった5分での被害人数である。
そしてブリッツとラルフの戦い、そして合流したヴォーゲとネーベル相手にリクとデリアとデボラが戦闘態勢に入った。
「久しいなラルフよ。やはりまだここにいたか」
「お久しぶりです」
「俺の前に立つとは、ふふっ、勝てる気でいるのかな?」
「まさか、ブリッツ様に勝てるとは思っていませんが、時間稼ぎくらいは出来ますよ」
「ほう、お前が俺の時間稼ぎを…して、時間を稼いで何になる」
「貴方を倒すお方が来ます」
「ディアナ=ゲフリーレン、か。もし気付いてこちらへ向かったとしても1時間はかかるぞ。その間にお前達は全滅だ。そもそも今の俺ならディアナに勝てる」
「ふっ、それは面白い冗談ですね。ブリッツ様、確かに貴方はお強い。ですがディアナ様に勝てるとは思えません」
「俺を挑発しても無駄だぞ。それにお前が俺を1時間も足止め出来ると思っているのか?」
「1時間?まさか…5分です。私が足止めするのは」
「5分?ディアナが戻ってこれると?まあいい、さて5分も持つのかな?」
互いに得意魔術は雷、しかしラルフにとって魔王ブリッツは師にあたる存在、ラルフの使える魔術のほとんどは魔王ブリッツから学んだものである。
「それではこちらからいかせて頂きますよ」
ブリッツは少し驚いた。
自分の知っているラルフとは明らかに強さが違いすぎる。
魔力も魔術の熟練度もそう簡単には上がらないのに、そのレベルは魔王に達していた。
だが…
「驚いたぞ!ラルフ、今からでも俺の元へ戻ってこい!!ディアナに能力が無駄に使われているのが分からんお前ではないだろ」
「私は自ら臨んでディアナ様についたのですよ。能力ご無駄とかではないんですよ」
おそらくヴォーゲやネーベルを相手なら同等、いやラルフの方が強いだろう。
だがブリッツには届かない。
況してや同じ魔術を者同士なら力の差が大きく出てしまう。
「そうか。残念だよラルフ。この手でお前を殺さなくてはいけないとはな」
ラルフとブリッツ、同じ魔法がぶつかり合う。
しかし、ブリッツにはダメージはなく、ラルフの体が少し焼けている。
そしてまた同じ魔法がぶつかり合う。
結果、ただラルフのダメージがどんどん大きくなるだけである。
「諦めろラルフよ」
「ふっ、まだです」
笑みを浮かべたラルフは腰の刀を拔き構えた。
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