121曲目 魔王ヴォーゲvs鬼人レッカ
あれから数年が経ち、ソウジを村長として皆が慕い、魔人や鬼人が人族と対等に接している珍しい村が出来た。
ソウジから名を貰った鬼人達が村と付近の森の警備する為、村の近くに鬼人族の里を作り移住してきた。
ベルク領から移住してきた者達の殆どが農民として働き、一部は漁村の管理や漁業、今まで騎士団にいた者達はソウジに剣術を習い、護衛などの任務をこなして、執事達は小さな学校を作り、教師へと転職、メイド達の殆どが本人達の希望でソウジの身の回りの世話役へとなった。
もちろん他にも鍛治師や大工、料理人などの専門職人の弟子入りする者もいたので継がれていけば村も安泰だろう。
何かあっても一部の魔族が知識を受け継いでいるので問題はない。
人が持つ技術に魔族や鬼人が受け継いでいるのも、一般からしてありえない光景でもある。
人族に魔族、そして鬼人族全員が家族の様に過ごしていて、金も税もない互いの助け合いで生きている村になった。
だが、そんな平和な村でも事件は起きた。
★ ★ ★
フーベルトを含めたベルク領民が移住して早2年、とても静かな夜、月が陰り出すと同時に村周辺の警備をしていた鬼人達が動き出した。
「レッカ【烈火】!来るぞ」
レッカは元若長で現在は鬼人族の長となっているソウジの直属の部下であり、ソウジと戦った他5人の鬼人も名をもらい、直属の部下となっていた。
「ああ、わかっている」
警備していた鬼人レッカとリク【璃空】、そして女性の鬼人シオ【紫桜】が空を見上げ構えていた。
「ほう、鬼化して鬼人。しかも3人もいるなんて」
「珍しいわね」
「俺の部下に欲しい。いいよな」
そこには3人の魔王の姿があった。
鬼人を部下に欲しがる魔王ヴォーゲ=ビネンメーア、女性の魔王ネーベル=ヴィント、そして3人の中でも圧倒的な魔力を放つ魔王ブリッツ=シュトゥルムが現れた。
「鬼人共!このヴォーゲ様が相手してやる」
ヴォーゲは知っていた。
弱肉強食である魔族の中で、特に強者を好む鬼人は戦い勝って自分の力を誇示して配下に出来る事を分かっていて前に出た。
「3人の同時に来い!核の違いを教えてやる」
「俺が行く」
前に出たのはレッカ、現状で鬼化しているレッカでも魔王ヴォーゲを1人で相手するのは無謀とわかっていた。
鬼化では…
「おいおい鬼人、俺様をバカにしてるのか?」
「バカにしてる?まさか魔王をバカにしてると思っているのか?」
ニヤリと笑うとレッカの雰囲気が変わった。
「バカにしてねぇ〜よ!魔王に勝てるって言ってんだよ!!」
レッカの魔力が膨れ上がる。
「はあーーーーーーーぁ」
「な、なんだ!この魔力はーーーーーぁ!」
確実に魔王ヴォーゲよりも魔力が上がったと思われたが、今度は急激に魔力が小さくなっていく。
すると身体中が赤かったレッカの体はひと回り小さくなり、見た目はまるで人族、違いはひと回り小さくなった角が生えていて、小さな牙が八重歯の様に見える程度で、角さえ無ければ人族と言われても分からないぐらいだった。
体も魔力も小さくなったレッカを見て大笑いするヴォーゲに対して、少し不安気な魔王ネーベルと真剣な顔をしてヴォーゲとレッカを見る魔王ブリッツ、そしてヴォーゲは声を上げる。
「なんだぁ〜〜〜、単なるこけおどしかぁ〜〜〜」
両の拳を叩き、魔力を高めるとヴォーゲはレッカに突っ込んでいき、顔面に一撃を入れようと殴りかかった。
しかしその油断が後悔することとなる。
「ぐわぁーーーーーーーー!」
ヴォーゲの右腕が宙に舞う。
ヴォーゲは8人の魔王の中では最弱、観察していたブリッツから見ても若干レッカに軍配が上がる程度、戦況次第でどっちに転んでもおかしくはない。
だが、ヴォーゲはナメてかかった。
ただでさえ実力はわずかにレッカが上と見ていたブリッツが、ヴォーゲは負けるとみて、離れた場所で待機していた自分の部下に合図を出した。
強さは別として魔王達は対等に接している。
だからブリッツもネーベルに命令しないし、ネーベルも負けるとわかっているヴォーゲに手を貸さない。
「クソーーーーー!なんだその剣はーーーーー!」
「ソウジ様から頂いた我が愛刀、貴様に使うのはもったいなかったかな?」
斬られた腕から流れる血を筋肉で止めると、地面の土が斬られた腕に貼りつき固まる。
人口の腕が完成すると魔法で肉体強化させて、背負っていた戦斧を左手に持った。
距離を取ったヴォーゲは戦斧を振り回すと刃から水が吹き出て、円を描いた水の盾が出来る。
「もう部下にいらねぇ〜、てめえは死にやがれ!」
水は津波の様に範囲を広げ、周りの木を倒しながらレッカに襲いかかった。
魔王ネーベルと魔王ブリッツ、そして鬼人のリクとシオも巻き込まれないようにいち早くその場から離れた。
しかしレッカは逃げない。
「ハッハー!死に晒せ」
水は津波と化してレッカを飲み込もうとした時、波が斜めに斬られる。
魔力を帯びたレッカの刀が赤く燃えるような色へと変化している。
「魔力ヴォーゲ、どうやら俺との相性も悪い様だな。貴様の水では俺の火は消せない」
「舐めるなよ鬼人ごときがぁ〜〜〜!」
水を纏った戦斧と赤く魔力を帯びた刀が交差する。
しかし武器の扱いはレッカの方が遥かに上であった。
いくら魔法と同時に斬りかかったヴォーゲの戦斧も刃も魔法も当たらない。
「クソックソックソッ!なぜ当たらない」
「ただ振り回しているだけの戦斧が折れにくい当たると思うなよ」
ザクッ
「ギャーーーーー!熱い、熱いぃーーーーー!!」
硬化された魔王ヴォーゲの体は、さすが魔王と言うべきか、致命傷の傷は与えられなかったが、見た目には分からないがレッカの魔力で熱く燃え盛っている。
魔力の弱い魔族なら燃えて消し炭になっていただろう。
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