120曲目 帰還
目を覚ました鬼人はソウジの前でひざまずく。
「我ら5人、今日よりソウジ様の配下に入らせて頂きます」
「そんなぁ、急に言われても…」
「よいではないかソウよ、ハッハッハッ」
「もう!ディアったら他人事と思ってぇ〜」
呆気なく鬼人族との揉め事は終わり、鬼人達は報告しに村へと一時帰っていった。
そして手伝いにきた村人も帰る時がやってきた。
だが、この世界と日本の融合された村、そして穏やかな毎日に見たことのない新しい食物など、1年間自給自足をした日々が楽しく、帰りたくない者や帰るのに戸惑っている者、そして帰ったあとに家族を連れて移住したい者で溢れ返っていた。
もちろんソウジは反対しないし、反対しないソウジの意見に魔族も反対しない。
ただ、一緒にきた騎士団は複雑な気分だった。
王国に仕える者がそのような気持ちを抱いてはいけないし、周りの人々の反応に同意するわけにもいかず、一旦国に戻るように何とか説得する。
現在の村にはソウジの家と露天風呂、道場や鍛冶場、それに多数の窯があり、周りは畑や川から引いた水田に溜め池、そして井戸しかない。
少し離れた海岸には海産物や塩が取れる様になってはいるが他の人が住む家はない。
今まではだだっ広いディアナの城に全員が交代で住んだり、道場を寝床にしたり、ソウジの家もとても広く、ただ寝るだけなら50人は寝れる。
しかし移住となると全員の家を建てる為に、土地を切り開き、建物を建てなくてはならない。
みんなで協力しても半年はかかるだろう。
そのように上手く説得して騎士団達は全員を一度の王国へと帰還するように話を進めた。
そして全員が王国に帰り、少し寂しかったがしばらく穏やかな日々が続いた。
★ ★ ★
皆が無事に王国へと帰還して、フーベルト率いる騎士団やメイド達が報告も含めて王宮へ戻った。
「コンスタンティン国王様!フーベルト率いる騎士団や派遣した者すべてが戻ってきました!!」
「はあ〜〜〜〜〜?本当か!」
コンスタンティン国王がぶつぶつと呪文のように呟きながら親指の爪を噛み出した。
まさか生きて帰って来るとは…
どうするんだ?
約束の金貨なんて用意出来んぞ!
それに新しい騎士団長含めた騎士団やメイド達もいる。
そんなに戻って来られても…
普通、戻って来れんと思うだろう!
何で全員生きて戻れるんだ!!
ぶつぶつ、ぶつぶつ、ぶつぶつ、
「コンスタンティン国王様、フーベルト達が間もなくこちらへ来ます」
そして一緒に戻ってきた人達を宮殿の広場で待たせて代表でフーベルトがコンスタンティン国王に挨拶しにいった。
「おう、よくぞ役目を終え戻っていた」
「有り難きお言葉」
「そう畏まるな」
「はっ!」
「で、他の者達はどうした」
「はっ!派遣させた者達は全員無事に只今戻りました。今も全員が広場で待機させています。是非、一言お願い致します」
「う、うむ。ではフーベルトよ。広場で待つがよい」
「はっ!」
フーベルトを下がらせた後、アーブラハム宰相に問う。
「アーブラハムよ」
「はい」
「確か金貨300枚よな」
「はい、その通りでございます」
「何人だ。何人に渡すんだ」
「全て含めますと203人、金貨60900枚でございます」
「6、6、6万!こ、国庫には今いくらある」
「今年の残りと貯えで15万枚程ございますが、渡してしまうと今年の政治資金や人件費などで足りなくなると思われます。もし災害が起きたり不作で税の回収が少なくなった時、立て直すのが困難かと思われます」
土地が広いからと言って大国というわけでもなく、人口は多くはない。
結果的には税収が多いわけでもないのに、北の国特有の災害が多く、他国よりも失う税収が多い。
コンスタンティン国王は自分の欲ではないが、自分が何不自由なく生きていく為に未来を見る事が出来ず、現状の事しか考えられない結果、この後に伝えるのが労いの言葉ではなく、金の話になり、派遣した今まで仕えてきた騎士や国民を裏切ることとなった。
それは約束の金貨からも税を取ると言い、約束した枚数の半分以上も取るという暴挙に加えて口を挟んだ騎士達に対して、左遷を言い渡して来たのだった。
他にも戻ってきた元王宮努めだった者への遠回しな左遷なども言い渡し、上手く辞職へと追い詰めたのだった。
これがきっかけで戻ってきた203名とその家族や話を聞いた友人達総勢300人以上がソウジの所へと戻ったのだった。
辿り着いた人々は魔王ディアナに寝床を借り、更に1年かけてソウジの村を発展させて、海岸にも行きやすく、仮眠なども取れるように家もいくつか建て、自給自足だけで十分裕福な生活が出来る村へと発展させた。
代わりにベルク王国はこの事がきっかけで国の信頼は徐々に失い、数年後内乱が起こる。
そしてコンスタンティン国王は自身の子に国王の座を奪われるだけでなく、国外追放となってしまうのであった。
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