113曲目 対話
薄暗く広い、上を見上げると天井まで10メートル以上あるのではないかと思うぐらいに高く、まさに絵に書いたような古城だ。
隙間風も入り、冷え切ったこの空間には誰もいない。
「おーーーーーい」
おーーーーーい、おーーーーーい、おーーーーーい
こだました。
「キノ、そんなに声出して大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
「沢山集まって来ちゃうかもよ」
「平気だよ」
「キノちゃ〜〜〜ん」
「もうみんなぁ、そんなにオドオドしてもしょうがないよ。ワカっち見てみぃ」
気がつくとワカバがあちこち走り回って楽しんでいた。
城に入って5分、まだ入口からほとんど進んでいない。
動き回るワカバ、キノの後ろを固まってゆっくりと歩く3人、すると前から1人の人影が見えてきた。
「ぎゃあああああ、オバケぇぇぇぇぇ」
以外にもホラーが苦手な3人、大きな声を上げたアカネに、腰を抜かして床に座り込むアオイ、目を瞑り耳を塞ぐモモカ、それに対して無反応のキノとはしゃいで飛び跳ねるワカバ、それを見てクスリと笑みを浮かべながら近づく1番隊隊長ラルフ=シュトロームの姿があった。
「新撰組だ!」
「何言ってんのキノ。ここ世界にいるはずないじゃない」
「じゃあ見てみなよぉ」
よく見るとアカネ、アオイ、モモカは目を瞑っていて声しか聞いていない。
ゆっくりと目を開けて見てみると、ワカバが大はしゃぎしている姿はすぐにわかったが、ボヤけてよく見えない。
「そこの貴女、新撰組と言いましたか」
「言ったけど」
「新撰組を知っているのですか」
「少しは知ってるよ」
この世界で新撰組を知っているのは極一部しかいない。
だが、知っている人もいておかしくはないのでラルフは再度確認してみた。
「宜しければ何処で聞いたか教えて頂いても宜しいですか」
「いいけど…ボクの知っているのは歴史上の人物を数人知っている位だよ」
「歴史上の人物…ですか?」
「うん、近藤勇と土方歳三でしょ。あとは沖田総司と…斎藤一?とか」
「!!!」
まだよく見えていないアカネは薄目でキノに小声で伝える。
「ねぇねぇキノ、日本の歴史上の人物言ってもわかるはずないじゃん」
「そぉ〜よぉ〜、キノちゃん」
「でもよく見たら確かに新撰組の衣装ですね」
「沖田総司!日本!!もしかして貴女方は異世界…日本から来ましたか」
「ちょっとぉ、何で日本を知ってるのぉ?」
「これは興味深い。宜しければ少しお話を聞かせて頂いても宜しいですか?」
「いいけどぉ、私達もここの魔王様にお願いと友達を助けに来たんですけどぉ」
「友達とは?」
「エルザって人ぉ来ませんでしたか?」
「ああぁ、来ましたよ。安心して下さい。あの冒険者達は全員無事ですので」
ラルフは5人を部屋に案内すると部下と思われる女性にお茶と菓子を用意させる。
「どうぞ」
恐る恐る5人は席に座るとお茶と菓子が運ばれてくる。
ラルフは5人の話をゆっくりと聞きたいのか、アカネ達が求めている答えを先に話し始めた。
「宜しければお茶でもどうぞ」
「い、いただきます」
もちろん怪しい変なものが入っていないのはわかったので、ゆっくりと口へ運んだ。
「先ずはエルザさんですね。彼女は牢へと入っていただきました」
「えっ?」
「もちろん手荒な事はしていません」
「そ、そうですか。何故牢へ入れたんですか?」
「簡単に申しますと、彼女達の要望にはお応え出来なかったので、少し一悶着ありまして、このような結果になりました」
「大丈夫なのぉ〜」
「見てみないと安心は出来ませんね」
「そうでしょうね。ですが、こちらにも報告と準備がありますので、お願いに添えないのはご了承下さい」
「まあまあ、とりあえず話を聞きましょ」
「私が貴女方の話を聞くことが一番の近道かもしれませんね」
「どゆこと?」
「お話を聞いても宜しいですか?」
「は、はい…」
「日本から来た…で、間違いはないですね」
「はい」
「それでは沖田総司について聞いても宜しいですか?」
「いいですけど…私もよくわからないですよ」
「わかることだけで大丈夫ですよ」
話した内容は誰もが知っているような話で、沖田総司は病死した事を話した。
「そうですか。およそ200年前に…ふむふむ、なるほどなるほど」
「あのぉ〜」
「すいません。そうですねぇ〜、貴女方の…いや、日本の過去…歴史ですか?少し間違ってますよ」
「えっ?」
「沖田総司は日本で死んだのではなく、こちらの世界で亡くなられました」
「えっ?」
全員が顔を見合わせて思わず叫んでしまった。
「「「「「えぇ〜〜〜〜〜!!!」」」」」
ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。
次話も月曜日更新予定です。
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