108曲目 交渉決裂!
魔王ディアナ=ゲフリーレンが住む城ではディアナの部下と思われる3人の魔人、その内1人は男性の魔人でエルザ率いる冒険者達が城の入口で対峙していた。
「私は1番隊隊長ラルフ=シュトロームです。失礼ですが名を聞いても宜しいでしょうか」
ラルフの両脇に立つ女性の魔人も凛とした佇まいで、人族が今まで対峙してきた魔人とはどこか違う雰囲気を持っていた。
「失礼した。私の名はエルザ、エルザ=ベロイヒテン。魔王ディアナ=ゲフリーレンと話をしたい」
「無礼者め!」
ラルフの左にいた女性魔人が声を上げるとエルザ率いる冒険者達が一斉に武器を構えた。
「まあ落ち着きなさい」
「ご要件をお聞きしてもよろしいですか?」
「単刀直入に言おう。この氷の結界を解いて頂きたい」
「申し訳ございません。その願いを叶えることは出来ません」
「なぜだ!」
「なぜ?では何故に我が王はこのような事をしたと思いますか?先ずは自分達で考えてから行動をしたほうがいいのではないでしょうか」
所詮は雇われ冒険者、何も知らずにただ頼まれた事をそのままやっているだけ、話にもならない。
「デリア、デボラ、皆さんにはお帰り頂いて下さい」
「「了解!」」
ラルフは背を向け、ゆっくり歩き出すと2人の女性魔人が前に進み、エルザ達の前を立ち塞がる。
「死にたくなければさっさと帰るんだなぁ、人族よ」
「私は隊長ほど優しくはないわよ」
右手に魔力が集まると腰に差した刀に手をかける。
「待ちなさいデボラ」
「何よ」
「あなた達に5秒あげる。5秒以内に城を出れば無傷で還してあげるわ」
「もう5秒たってるってぇ〜!」
「もうっ、うるさいっ!ごぉ〜〜〜、よん〜〜〜、さん〜〜〜」
隙かさず剣を構えた状態でデリアに向かい走り出したエルザに、同行していた冒険者の1人であるホルガーがデボラに攻撃をした。
「にぃ〜」
エルザの剣を受け止めるデリアがニヤリと笑う。
「剣を抜いたからには後戻りは出来ないぞ」
「そんなことはこっちもわかっているわ」
隣ではホルガーの攻撃はデボラの喉元に短剣を突き刺しにいったが、簡単に躱されると更に早い動きでデボラの後ろを取る。
「これで終わりだ」
しかし後ろからの攻撃をも躱す。
「無理無理、当たらないよ〜」
「魔術に長けている魔族が接近戦で俺に勝てると思わない事だ」
人族は特に何かに特化しているわけでもなく身体能力や魔力も平均以下の種族、どの種族も人族を格下に見てバカにする。
しかしデリアとデボラは違った。
一見喋り方は馬鹿にしている様に思えるが一切の油断も隙も与えずにいる。
何も知らずにホルガーの連続攻撃が始まると、短剣が色々な角度からデボラを襲う。
ホルガーのスピードの乗ったフットワークは捉える事は難しいが、デボラは決して攻撃に移らずにただ見ていた。
そう、観察をしていた。
「どうした魔人、これだけ接近されれば得意の魔術も使えまい」
どんどんスピードは増していく。
「素晴らしいね。でも大体わかってきちゃったよ」
バックステップを踏むデボラに対して、それ以上の速さで後ろへ回り込む。
後ろから短剣が来ると同時に、今度はデボラが前に走り振り向く。
この動作を左右など含めた色々な動きを繰り返す。
流石はS級冒険者のホルガー、これだけの動きに全く疲れた様子は見当たらない。
スピードは俺の方が上、しかし勝てる気がしない。
長年の感だが…しかし…今は出来る事を…
えっ?
ホルガーが吹き飛ばされた。
「まあまあ面白かったよキミィ〜」
ホルガーが吹き飛ばされた先には一緒に来ていたもう一人のS級冒険者とAランク冒険者4人パーティーのバイコーン、バイコーンのメンバーは男女2人だがどちらかと言うと攻撃に特化したパーティーになっている。
何とか立ち上がり、意識が朦朧としているホルガーが出した指示は退却だった。
「イレーネ、バイコーンのメンバーを連れて逃げろ。そして早急にギルドに報告だ!わかったか」
イレーネもバイコーンのメンバーにもプライドがある。
この状況で仲間を置いて逃げるなんて事は出来ない。
その頃エルザはデリアと対峙していた。
デリア相手にホルガーのフォローには行くなんて事は出来ない。
剣と刀が一度交わると、また距離を開けて相手の出を伺う。
「1つ聞いてもいいか」
「何でしょう」
「なぜ?そうですね。何も聞かされていないようなのでお話しましょう」
実は氷の結界を張る前にアイスベルクの王には伝えていた事があった。
「我が王の大事になされていた刀が盗まれました。盗んだ者は誰かはわかりませんし、アイスベルクの王に全ての責任を押し付けませんが、その者を逃がすわけにはいきません」
「だからこのような結界を」
「約定によりアイスベルクにはこちらの領土を自由に使わせています。ですので、このような事はあってはならない。だから捕える為にアイスベルクにも協力する義務があるのに何もせず、この城に冒険者をよこすとは礼に欠いていると思いませんか?もし、これが200年前なら我が王は既にアイスベルクを滅ぼしていますよ」
「…そういうことか」
「まだ殺り合いますか?」
「確かに…だが…それでも話を聞いて頂きたい」
「そうですか。仕方ありませんね」
刀を構えた。
「魔術は使わないのか」
「魔族みんなが魔力に頼っていると思わないほうがいいですよ」
「それは失礼した。では参る。乱舞・蝶の舞」
エルザの動きが変わる。
「素晴らしい」
デリアから初めて魔力が溢れ出すと、その魔力は炎を帯びて刀に集まり出した。
「それは魔法か?」
「魔法とは少し違いますが、魔力を使っているので似たようなものです」
二人が一気に相手に集中した。
そしてエルザとデリアの体を交差すると数秒時が止まったかのように両者の動きが止まり、エルザが燃えると同時にそしてデリアが膝をつく。
デリアの刀は躱したが、炎までは躱しきれなかったエルザが瞬時に炎に包まれるも氣力で炎を消し去った。
「エルザさん、素晴らしい一撃です。もし私の着ている羽織りが無ければ、この攻撃で終わっていたかもしれません」
「それはこっちもだ。完全に躱したと思っていたのだがな」
また距離を取り、互いが向き合い武器を構えた。
その時もう一人のS級冒険者はイレーネはホルガーの言葉に逆らい、自分の1番の魔術を出す。
「ファイアストライク」
5つのファイアボールが宙を舞う。
そのファイアボールは魔術大会の時とはひと味違った。
5つのファイアボールは倍に分裂して、計10個のファイアボールが2つずつ五方向からデボラを襲う。
2つのファイアボールが回転しながら威力を増し、躱すことが困難な五方向からの攻撃にデボラも魔力を刀と全身に魔力を帯びる。
「いっけぇーーーーー!」
改良されたイレーネの魔術は自分の持つ魔力全体の半分近くを使いデボラに向かい放たれた。
ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。
次話も月曜日更新予定です。
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