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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第8章 覚醒するエースの風格
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第94話 競う心二つ、燃ゆる魂二つ

 カトルーアの最終作戦に乗り出したレイジとルベールは、ダンジョンタワーの屋上で気合を入れ続ける。

 ユグドラシルとディメテルを焼き尽くすような、最大の一撃。その用意のためにレッドセラフィムもジャンク・ダルク号も気を吐いている。

 ルベールの足元が、赤く光り始めた。温度は十分だが、その炎の勢いは不十分。特に、レイジの炎は、大きくなったり小さくなったりを繰り返している。


「なぁ、レイジ……やっぱり落ち着かねぇんじゃねぇのか?」

「別に大丈夫、どうってことない!」

 レイジの返答には、どこかトゲがあった。


「分かってるのか、レイジ。お前の精神状態に全てかかっているって事……」

 フォードは、たまらずVフォンでレイジに声をかけた。

「アニキ、それは分かっているんだ」


「さっき言ってた、色んな感情ってのが邪魔してんじゃねぇのか? よかったら、俺に話してくれよ……きっと楽になるぜ?」

「それはいいけど、どこから話せば……」

「どこからでもいい。何だったら、お前が何者かってところからでも聴くぜ」


「じゃあ、全部話す。俺……本当は、カルミナ人じゃないんだ。日本から来たんだ……そう言ったら、アンタは信じるか?」

「ああ、信じるぜ。日本って国の事も、たまに話に聞く。……日本人ってか地球人は、すっげぇ力を持ってカルミナに来るんだってな!」

「俺は、日本じゃてんでダメなヤツだった。カルミナに来てからも、大したことはなかった」


 レイジは、ルベールに心を開いた。日本にいた頃の事から、レイジは話した。

 日本にいた頃は、イジメられていた事。親の期待を裏切り続け、家では針のむしろだった事。それゆえに、誰も味方がいなかった事。

 居場所もなく、理不尽な世界から逃げるように自殺を図った事。その結果、カルミナに来てアニキと出会ったこと。

 アニキと出会ってから、様々な人に出会い、様々な経験をした。幾多の苦難だって超えてきた。

 レイジの活躍は、世間的には雑誌や新聞の1コーナーくらいの記事程度でしかない。それでも、ルベールは知っていた。


「何もねぇところから始まって、アニキと出会って二ヶ月ちょっと。俺に勝って、新人ながらブロール・リーグ準優勝。そして、今……デズモンド社の最高幹部を追いつめてる。何が大したことねぇだ……とんでもねぇ事だろ」


 レイジは、謙遜したつもりだった。それでも、横で一緒に戦ってくれた友からの評価は高かった。

 ルベールは、レイジに何を言われようとその評価を覆す気はなかった。というより、してはいけないと思った。


「とんでもない事をやろうとしているプレッシャーに耐えられないんだ。本当に達成できるんだろうか、って。でも、相手はデズモンド社の最高幹部……勝てたらきっとスゴイとも思う」

「そのプレッシャー、俺だって感じてるぜ? この状況が怖くねぇ奴なんているわけねぇ」

「それだけじゃない。俺たちの勝負に、ルベールたちを巻き込んでしまったことも……」


「今さら水くせぇこと言うな。お前は一人じゃねぇんだ!!」

 ルベールは、喉から血が出るほどに叫んだ。そのソウルが、レイジの胸を強く打つ。

 魂の叫びは、なおも続いた。


「エルトシャンに勇者に俺……負けたくねぇって思える奴が、いっぱいいる。アニキやバハラたちに俺……マブダチって言える奴が、いっぱいいる!」

「……ルベール」

 ドクン、という強い音と同時に、全身の神経という神経に電流が走った。

 レイジの目が潤んだ。日本にいた頃には、出会えなかった者がいる。カルミナに来たからこそ結べた絆がある。

 彼が本当に望んでいたのは、こうした人間関係だったのかもしれない。カルミナに飛ばされる前に出会った神様は、きっとそれを見越していたのかもしれない。



「お前は、もう弱虫なんかじゃねぇ! こっち来てから、辛いことから逃げなかった……ド根性のレイジだ!! 俺も、お前に出会えて最高だぜ」

 ルベールは、レイジのいる方に左手を伸ばして親指を立てた。満面の笑みだった。自分と同じ能力を持つ漢、これ以上なくシンパシーを感じる相手に出会えたのだから。


「……お前を信じてるやつがいる。お前の一撃のために、命を賭けてサポートしてくれるやつがいる。そいつらに恩返しするためにも、頑張ろうぜ!」

「レイジ……お前、本当にいい奴に出会ったな。俺たちの事は気にするな、本気の本気を出してくれりゃいい!」


「アニキ、ありがとう。ルベールも、俺を叱咤してくれて助かった。俺たち……やってやろうぜ!」

 レイジは、親指で目元を拭った。それから、赤いノースリーブを破り捨てるように脱ぎ捨てた。全てをルベールに打ち明け、迷いを振り払ったレイジ。まっすぐな目をしていた。

 気合をもう一段階入れると、炎が安定した。レイジの足元も、その熱気で赤く光り始めた。

 全身の血管という血管が浮き上がる。心臓が強く脈打つ。トランス状態に入ったレイジの炎は、ルベールさえも超えていった。


「俺の熱気の方が上だ、ライバル!! こんなんじゃ、ディメテルは倒せないぞ!」

「負けねぇぞ、マブダチ!! お前の方こそ、ヌルい一撃を出そうなんて思うなよ!」


 アツさで負けたくない思いが、シンクロした。

 ディメテルを倒したい思いが、シンクロした。


「はあああああッ!!」

「うおおおおおッ!!」


 二人の燃える魂は、百億ルドの夜景にも負けない輝きを放っている。

 燦然と赤く輝く炎を遠くから見つめる市民は、恐れおののいていた。ただでさえユグドラシルやマザーゴーレムといった災害級のモンスターがいる所に、畳みかけるように火の玉が輝いている。

 ダンジョンタワーを中心に、風が吹き荒れた。その勢いは、炎を取材しようとしたヘリさえも押しのけてしまうほどであった。

 もう、誰にも止められるようなものではない。上空から消火剤を撒かれようとも、二人はなんのその。むしろ、その勢いを強めていくばかり。

 今のままでも、ユグドラシルを倒すには十分。だが、ディメテルがどんな奥の手を使ってくるか読めない。それさえも吹き飛ばせる一発が必要だったのだ。


「ルベール、レイジ。魔力油の減りが想定よりも早い。稼げて、あと2分程度だ」

 グリーンから二人へ、不吉な連絡が入る。


「2分もあれば充分だけどよ……こっちもちょっとまずい事が起き始めた」

 レイジたちの放つ熱気が、ダンジョンタワーの屋上を融かして、足場を崩してしまっているのだ。

 二千度にも耐えられる設計だったこの塔だが、二人の熱気がそれをも上回っているということである。


「足場が持たないんだ……!」

「ならば、ダンジョンタワーが崩れるより先に、向かう必要があるな。二人とも、準備を急げるか?」

「大丈夫! 今まで超えてきた困難に比べれば、これくらいのこと……!」

 逆境さえも糧に変えて、さらに炎が輝く。


「BIG……BIGGER……」

「JET! JET!! JET……!」


 ダンジョンタワーの屋上が少しずつ崩れ落ちていく。レイジとルベールは、巨大な炎の玉を持ち上げたまま、塔から飛び降りる。

 レッドセラフィムが、レイジたちの真下を飛び去った。その後ろを追うユグドラシルは、すぐ目の前だった。


「な……そんな炎!」

 ディメテルが見上げた時には、煉獄はすぐ目の前だった。

 ここは、地上400メートル。とても、植物が根付いて育つような状況ではない。プーチンムーで防ぐことは、決して出来ない。


「“ザ・ビゲスト・バーミリオン・クライシス”!!」

「“JET・炎神・ブライト・ストライク”!!」


 二人の最大の熱気は、100億ルドの夜景さえかすむほどの光を放っていた。ダンジョンタワーの45階から上全部が完全に崩れる。

 熱気をまとった二人の特攻は、ユグドラシルをも簡単に包み込んだ。後は、ユグドラシルの再生が追いつくかどうかの勝負。

 ユグドラシルは、燃えながら落ちていく。身体が燃え尽きぬように、身体を再生させようと必死だ。ディメテルの残されたわずかな魔力も、その再生にほとんどを費やしている。


「確かに、威力は十二分。だが、肝心の技を撃つレイジたちの体力が持たない……!」


 リュイは、レッドセラフィムを振り向かせて、コクピット越しに二人の様子を見ていた。

 この一撃の用意に、精神力も体力もかなり消費してきた。それこそ、撃ちだす力さえ計算できないほどに。


「二人の燃ゆる魂に道しるべを! “ロン・フェオン”!」

「サンキュー、カトルーア!」


 崩れていくダンジョンタワーの近くにある超高層ビルの屋上から、緑色の風の龍が飛んできた。そして、一直線にルベールたちの炎へと突っ込んでいった。

 風が、二人の炎の軌道を導く。風が、炎の威力を底上げする。再生が追い付かないほどの火力でユグドラシルを焼き尽くす。

 ユグドラシルは、灰の一粒さえも残らなかった。コンクリートも金属も融かしてしまう炎の中、ディメテルはまだ生きている。


「ディメテル……本当に強かった。冷静で多彩な技を使うだけじゃなく、その力も人智を超えていた。ルベールとカトルーアと……みんながいて、アンタが自滅しなきゃ張り合えないなんてな」

「ああ、まさに総力戦だったな。一緒に戦ってくれてありがとう。お前らがいなきゃ、サクラを取り返す事も出来なかったろうぜ」


「でも……喜ぶには、まだ少し早いわよ?」

「ああ、そうだな。ダメ押しだぜ! “ファイナルブレイザーV”!」

 ルベールがVフォンにコードを入力すると、5つの武器が合体して一つの巨大なバズーカへと変形した。

 その銃口から放たれる5色のエネルギー弾が、ディメテルの胸を貫く。


「“ツインッ! プラズマァァァァァ”!」


「“ドラグーーンッ”!」


 わずかに残った体力も精神力もすべて使いきる。レイジのその意志は、硬かった。

 レイジの両腕から稲妻のドラゴンが放たれると、ドラゴンたちがディメテルに喰らいつく。


「そ、そんな……! デズモンド様……申し訳…………」


 最高幹部、散る。


 ディメテルが後少しでも冷静だったなら、勝ち目は万に一つもなかっただろう。

 明確な力の差を見せつけようとした、その隙を突いての辛勝。ルベールが言ったように、まさに総力戦だった。

 燃え盛る炎の中から、傷だらけのエース二人が戻ってきた。ふらつきながらの二人は、早速メディアに囲まれる。


「やったな……レイジ!」

「うん、なんとか……って感じだな」

 前を向く気力さえ残ってない。メディアの目を気にする余裕もない。それでも、二人は勝利のハイタッチを交わした。

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