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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第8章 覚醒するエースの風格
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第91話 紅の天使、翔ける


「スッゲー! なんてカッコいい超ロボット! 某、製作者様のご尊顔を拝みたいですぞ!」

 バハラは、たまらずジャンク・ダルク号の窓からレッドセラフィムの雄姿を見ていた。その目は、子供がヒーローに向けるまなざしと同じだった。


 整備してもらったばかりのレッドセラフィムは、絶好調だった。しかし、それ以上にユグドラシルとマザーゴーレムのタッグは脅威である。

 一撃でも貰おうものなら、まずスクラップは間違いない。自慢の超音速の機動力で背後を取っては、銃や斬撃をぶっ放すを繰り返す。

 真正面から何でもかんでも受け止めて必殺の一撃を出す事だけが、このロボットの強みではない。昼間、リュイから教えてもらったばかりである。

 だが、マザーゴーレムの強固な装甲は、そう簡単に破ることは出来ない。


「もっと出力を上げるんだ……“グレン・ガンズ・グレネード”!」

 レッドセラフィムの胸のVが開くと、5門の砲台からいくつものミサイルが発射された。

 しかし、マザーゴーレムに全弾命中しても、頑強な巨体には傷一つつかない。


「ユグドラシル!」

 ディメテルが煽ると、ユグドラシルは深緑のブレスを吐き出した。

 レッドセラフィムは、出力を最大にしてかわそうと飛ばす。だが、機体の右腕がカス当たりしてしまった。その当たった部分から、新たな緑が芽生える。

 今のブレスで、ヤドリギを植えられたのだ。その拘束力は強く、ギチギチとレッドセラフィムの腕を締め上げる。

 世界樹のドラゴン、その口から発せられるブレスは、命のエネルギーそのもの。鋼鉄からさえも養分を吸収せんと息巻く植物の種をばらまいているのだ。

 腕から肩、肩から胸や翼へと。レッドセラフィムは、雁字搦めにされ、その機動力を奪われつつあった。


「バハラ、何も言わずに超合金の一体を貸してほしい……とびっきりスピードに自信あるやつを」

「何をするつもりですかな?」

「簡単な話だろ。俺が追いかけて、あのツタを焼き切るんだ」


 ただ指をくわえて見ていることは、レイジにとってガマンならなかった。いくら相手が巨大であろうと

 レイジとレッドセラフィムとの距離は、目測でおよそ400メートル。メカのスピードならすぐに行ける、とレイジは判断した。


「行きますぞ! “ジェノスピードG”!」

 バハラの号令で、悪魔の翼を持った4メートル級のロボットがレイジの目の前で止まった。

 ジェノスピードGに乗ると、翼と背中のブースターが火を噴き、あっという間に空の彼方へ。

 レイジは、右手に火の玉を持ち、レッドセラフィムへの接近を試みる。今にも、レッドセラフィムは落ちそうだ。ただの火の玉では燃やし尽くすには不十分。レイジは、火力を強める。


「マザーゴーレム!」

 そうはさせまいと、ディメテルがマザーゴーレムを駆り立てた。剛腕が振り下ろされる。

 ジェノスピードGは、レイジをレッドセラフィムめがけて投げ飛ばした。そして、剛腕の犠牲となり、地面に強く叩きつけられた。

 超合金がつなげてくれたバトンを無駄にはしたくなかった。その一心で、レイジは渾身の炎をぶつける。

 ヤドリギは、少しずつ燃えて灰になっていく。だが、それと同じくらいの速さで、ヤドリギが育ち続ける。


「仲間割れかしら? ここまで私と張り合ったとはいえ、所詮はルーキー同士の即席同盟。結束力も何もあったもんじゃないわ」

 ディメテルは追い打ちをかけようと、ユグドラシルの背中を叩き、再び新緑のブレスを吐かせる。

 もう一度これを食らおうものなら、レッドセラフィムは締め付けられて大破することだろう。

 そうなる前に、レッドセラフィムは出力を最大に上げて、なんとかレイジに近づこうとした。


「“フレア・トルネード”!」

 レイジは、身体を捻りながらさらに炎を飛ばす。レイジの周りで炎の竜巻が巻き起こる。


「そこに突っ込めばいいんだな。 レイジ、お前の熱さ、受け取るぜ!」

 レッドセラフィムは、自らレイジの作った竜巻に突っ込んだ。レイジも、さらに気合を入れて竜巻の火力を上げる。

 ヤドリギが栄養を吸収して育つよりも早く、焼き尽くす。シンプルに考えたことではあるが、それで窮地を脱したレッドと愛機は勢いを取り戻した。

 復活したロボットを見届けたレイジは、力なく地上へと落ちていくのであった。


「っしゃあ! レッドセラフィム、復活だぜ!」

 炎の中でもその輝きはルビーのごとく。真紅の天使が、再びディメテルたちに刃を向ける。

 狙うべきは、ユグドラシル。そのスピードから繰り出される新緑のブレスは、このうえなく厄介。


「“フレア・ファルコン”!」

 猛禽類のような甲高い雄たけびを上げながら、炎の斬撃は飛んでいく。

 “フレアウィング”の比ではない炎の大きさ、そしてスピード。その一振りが、ユグドラシルの左翼の付け根を焼く。

 ユグドラシルたちは、バランスを崩して工業地帯の外れにある空地へと激突した。


「“グレン・ガンズ・グレネード”!」

 追い打ちをかけんと胸のミサイルが炸裂する。だが、ユグドラシルは無くなった翼の付け根に向けて新緑のブレスを吐いた。すると、再び左翼が芽吹いて、瞬く間に立派な大樹へと育つ。

 逆に左翼の方が大きく育ったほどではあるが、飛行能力に問題はなかった。ユグドラシルは、マザーゴーレムを載せて、再び天を舞う。


「そ、その先は……! お前、この先にどれだけの市民がいると思ってんだ!」

 レッドは、ユグドラシルが市街地方面へと飛んでいくのを見て、怒りを覚えた。

 市民を守りたいと思いが、操縦桿を握る力を強める。レッドセラフィムを駆り立て、ユグドラシルの目の前に立ちはだかろうとした。

 しかし、市民の盾となった瞬間、マザーゴーレムの右ストレートがレッドセラフィムの腹部に直撃。火花が散り、煙が立ち上る。


「リュイは、コイツを大切にしろと言ったが……市民を巻き込むよりはマシだ! これくらい、すぐ治せるだろ」

 コクピット内にも火花。激しく揺れる機体を制御しようと、レッドは必死だった。

 マザーゴーレムの拳が、なおもレッドセラフィムを攻め立てる。

 もともと、ヒットアンドアウェイの戦術を想定して造られた紅の天使。そう何度も激しい攻撃を受けられるものでもなく、危険信号が明滅する。


「ムリをするな! そういう戦いなら合体だ」

 ブルーは、Vフォンでレッドと連絡を試みた。だが、レッドは、聞く耳を貸してはくれない。


「俺一人でもなんとかなる……!」

 レッドセラフィムは、何とか持ち直した。そして、マザーゴーレムとガップリ四つ組み合った。

 市街地を戦場にさせまいと、押し返すことに必死のレッド。その様子は、夜のシバレーを歩いていた市民の目に焼き付く。


「セラフィム、俺たちの気合を受け取れ! ブースト150%だッ!」

 VFマスク戦隊の“F”をかたどった翼が火を噴いた。翼のブースターが赤く光る。

 さらに、脚を折りたたみ、ロケットブースターを出す。その出力も手伝って、マザーゴーレムたちを少しずつ押し返す。 

 ようやく調子が出てきたレッドセラフィム。そこに水を差すかのように、Vフォンにリュイからの着信が入る。


「ルベール、コクピットから降りてくれ!」

「急にどうしたってんだよ、リュイ。理由があるなら、さっさと話せ!」

 絶対に特等席を譲りたくなかったレッドは、ケンカ腰に返した。


「ルベールとレイジの二人が持つすべての炎で一網打尽にする作戦だ。あの黒装束の提案だ。二人の持つ競争心と熱さに全てを賭ける」

「それなら、ノッたぜ! お前らの考えた作戦なら、何だって成功しそうな気がする!」


 仲間たちはもとより、そこまで親睦を深めていないカトルーアさえも、その手腕を認めるほどの炎。

 最後は気合と根性。これが、レイジとルベールの切り札である。



「さて……こちらも、戦力を出さねばならないな。バハラ、あなたも来ていただこうか」

 リュイは、専用メカのパスコードを入力しながら言った。


「そ、某もですか……!」

「巨大戦力は一つでも多い方がいいわ。足止めするにはVファイターオーなる物だけじゃ不十分よ。力を貸してくれる?」

「俺からも頼むぜ。今は、お前たちとレイジしか頼れる奴がいねぇ状況だ」


 アニキに頼まれれば、断ることは出来ないバハラ。答えはYES以外にない。

 バハラのジャンク・ダルク号では、地対空で出来ることは限られる。レッドセラフィムのように器用にいかない。それでも、漢ならやらねばならない。

 バハラは、腹をくくった。少し溜めてから「やってやりましょうぞ」と力強く返答した。


「俺たちもいくぞ! ブルーポセイドン!」

 ブルーたちの愛機が、VFマスク戦隊の基地から続々と登場する。

 サブマリンタイプのサファイア色の機体・ブルーポセイドン。黄色と黒を基調としたデザインのスポーツカー型の機体・イエローメーチェ。

 緑の猛牛のような見た目の質実剛健な機体・グリーンヴネゾン。桃色の戦車型の機体・ピンクシェリダン。


「ルベール、合体をしたい。それまでに、向こうからダウンを取れるか?」

「何とかやってみせる!」


 レッドは、レッドセラフィムの出力をさらに上げた。200%、それはリュイの想定していた限界を超えるものだった。

 コクピット内に警報機という警報機がひっきりなしに鳴り響く。鳴る事自体はこれまでにも何度かあったが、限界を超えた出力で戦い続けたことで警報機を鳴らしたのは、ディメテル戦が初めてである。

 組み合って押しているときに、ユグドラシルが大きく口を開けた。ブレスの準備が始まったのだ。


「くっ……」

 レッドセラフィムは、ローリングでユグドラシルのブレスを回避した。だが、そのブレスの射程距離は長く、数キロ先の超高層ビルにツタのカーテンをかけた。

 さらに恐ろしいのは、ユグドラシルの肺活量。普通のブレスなら長くても十数秒。だが、そのブレスは一分を過ぎてもなお勢いが衰えない。

 何度かわしてもなお、狙われる。かわせばかわすほど、コンクリートジャングルがホンモノの緑に染まっていく。かわしていくうちに、ユグドラシルたちとの距離を開けられてしまった。


「“エンゼルアサルト”!」

 レッドセラフィムの6枚の羽根が、ユグドラシルの方を向いた。その羽根の先から、エネルギー弾が一斉に射出される。

 翼からの一撃が、マザーゴーレムの腕や肩の関節を穿つ。これで、マザーゴーレムの自慢の剛腕は、鳴りを潜めることになる。

 少なくとも、マザーゴーレムの動きを止めることに成功したレッドセラフィム。あとは、ユグドラシルを押し切るのみ。


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