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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第8章 覚醒するエースの風格
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第90話 母なるゴーレムと世界樹と

 気迫と気迫がぶつかり合うディメテルとフォードの一戦。接近されたことで後がなくなったディメテルは、蓬莱樹の槍でフォードを攻める。

 突きが乱れ飛ぶ中、フォードはその軽い身のこなしで攻撃をあしらっていく。


「割とデタラメだな。他の連中の方が身体能力は上か」

「厄介だったのは、何種類もの植物を使ってくることだった。それさえなければ……!」


 ディメテルは、植物を使役する女であり、遠距離からの攻撃が得意である。

 逆に彼女自身の戦う力は決して高くない。特に体術は、苦手分野。鍛えに鍛えたフォードのマーシャルアーツの前には、ディメテルは手も足も出ない。

 フォードがディメテルを足止めしてくれている。これ以上の増援はないものと見なしていいだろう。カトルーアは、自軍を鼓舞する。


「あと少しで、私たちはこの軍を完全に押し返せる! 総員、気勢を上げなさい!」


 カトルーア軍にも疲れが見え始めている。それでも、彼女の一声で踏ん張りを見せてくれた。

 ディメテルの植物群を殲滅させれば、おそらく彼女も切り札を出してくるだろう。カトルーアは、その切り札を押し返す策を考えていた。


「おい、レイジ! お前も攻めるんだ! 元々は、お前にとっての敵なんだろ!」


 フォードは、レイジにもう一度檄を飛ばした。あの日、あの村でデズモンドと戦う事を誓ったのだ。

 ディメテルに土をつけるのは、アニキではない。最後は、レイジの手で。

 レイジの目の色が変わった。勝てないと思われた敵に、勝機が見えつつある。


「“クリムゾン……」

「甘いわ! “プーチンムー”!」


 何度も阻んできた壁。しかし、レイジは炎での攻撃をやめた。代わりに、高速の拳を一発だけ。全力を込めた拳の衝撃が、燃えない木を穿つ。

 カトルーアの指摘通り、風を操るならば、決してアツくなってはいけない。だが、それと同時に、これまでにない集中力が必要だ。


「今度は、本気で成功させる。集中する……でも、アツくならないこと……」

「この私に不完全な技を出そうなんて、生意気な……!」

「ガハハハッ! こんな場面で実験だなんて、とんだクソ度胸じゃねぇか!」


 あと一撃でも貰えば命の保証はないという状況で、最高幹部を実験台に使うという発想。レイジを面白い奴だと思ったレッドは、豪快に笑った。

 今は、攻撃の勢いに任せただけの不完全な風。成功させたければ、精神エネルギーを空気の運動エネルギーに変えるだけ。成功しないわけがないのだ。

 限界まで心を落ち着かせ、アツさを捨てる。背負ったフォードの旗印が揺れるのを感じた瞬間、レイジは目をカッと開いた。


「“ウィンド”!」


 烈風……怒涛!

 レイジが手刀を振り下ろせば、真空の刃が乱れ飛ぶ。そこに、力みはなかった。

 真空の刃がディメテルの皮膚を切り裂く。本当の意味で、成功したレイジ。思わず、喜びが顔に出てしまう。

 一度成功すれば、波に乗れる。レイジは、続けざまに“ウィンド”の刃でディメテルを追い詰めにかかる。


「“スパーク”!」


 レイジが腕を振り下ろせば、ディメテルに電撃の衝撃が走る。だが、たった一発の風や雷程度で屈する最高幹部ではない。その事実は、レイジが一番知っている。

 攻撃の手を緩めることなく、ディメテルを攻めるレイジ。ディメテルが植物を生成するよりも速く。

 右フック、左掌底、右回し蹴り、右アッパー、左逆水平チョップ、右飛び膝蹴り、左かかと落とし。怯んだところに、二刀流“ロッソカリバー”振り抜き。

 ディメテルが吹っ飛んだところに、クリムゾン・ファイア。さらに強烈な手刀から乱れ飛ぶ“ウィンド”が、その炎の威力を底上げする。

 インパクトが炸裂した。ディメテルに引導を渡すまで、もう目の前だ。レイジは、全力で走り抜け、ディメテルに接近を試みようとしたが……。


「大正義デズモンドの旗のもと、私も負けられない! 明確な力の差というものを見せてあげる!」

 いざ、とどめの一撃……といきたいところだったが、そうは問屋が卸さなかった。

 ディメテルから吹き荒れる魔力の嵐の前に、レイジは一歩も近づくことができなかった。そればかりか、吹き飛ばされて距離を取られる始末。

 フォードは踏ん張っていたが、とても攻勢に転じられるような嵐ではない。


「“マザーゴーレム”!」

 ディメテルが指を鳴らすと、大地の奥底から重低音が響きはじめた。それから程なくして、この工業地帯の地盤が激しくうねる。

 彼女の持つ膨大な魔力が、この地震を呼び起こしているようだ。海が激しくうねり、老朽化が進んでいる工場は、あっという間にガレキの山へと変わる。

 やがて、地の底から母なる大地の化身が現れた。単なるゴーレムではない。女神のような慈悲深い顔を持った超巨大な石像。

 その巨体、まさにゴジラ級。それこそ、ジャンク・ダルク号さえかすんで見えるほどである。

 剛腕の一振りは、工場をスクラップに変える。


「やられるフリをしていて、ずっと魔力をしたためていたのか。なんて演技力だ……!」

「いや、まだ何か持っている!」

 マザーゴーレムを召還してもなお、ディメテルの周囲には魔力の嵐が吹き荒れていた。


「出でよ! “ユグドラシル”!」

 またしても、地響き。今度は、“ジャック・オー・ビーンズ”など比にならないほどの成長速度を持つ植物。

 幹は身体、枝葉は首や頭、翼。盆栽にも似た角を三本有し、根っこはシッポ。財宝の実をつける翼の一振りで、フォードの一味も、VFマスク戦隊も容易く吹き飛ばす。

 世界樹の名を冠したドラゴン、こちらもゴジラ級。超巨大戦力が二つ……最後の最後に、絶望すべき敵どもが待っていた。

 ディメテルの持つほぼ全ての魔力を注ぎ込んだであろう二体の怪物。もし、市街地にでも赴こうものなら、間違いなくシバレーは壊滅するであろう。


「植物の怪物たち……そんなヤツらにも明確な弱点はある」

「弱点……ですと?」

「植物は、大地からのその栄養を吸い取って生きている。ディメテルは、己の魔力で植物を育て、武器にする」

「ユグドラシルといったか……恐らく、ディメテルの魔力のほかに、この工業地帯全域の栄養で育てたのであろう」


 魔力のほかに、このカルミナの恵みを少し借りたマザーゴーレム、およびユグドラシル。

 ルベールには理屈やカラクリなど分からない。だが、明確に分かるのは、この勝負も終局であること。そして、これさえ倒せば勝利は目前であること。


「何だよ、単純なことじゃねぇか。蛇の道は蛇だぜ。リュイ、アレの準備は大丈夫か?」

「こんなこともあろうかと、整備をしておいて正解だった」


「行くぜ! レッドセラフィム、発進!」


 レッドがパスコードを入力すると、遠くから40メートル級の赤いロボットが飛び出してきた。

 ブースターのついた6枚の翼をもつ真紅の鉄人は、マザーゴーレムの剛腕をひらりひらりとかわしていく。

 VFマスク戦隊の持つ巨大ロボ。その中でも、レッドセラフィムは、合体せずとも戦う力を有し、さらに5機の中で唯一飛べる。

 レッドは、愛機のコクピットに飛び乗った。


「ちょっと、待ちなさい! 今から作戦を……」

 カトルーアが止めたときには、既に遅かった。


「作戦?」

 レイジは訊いた。


「そう、作戦があったの。このジャンク・ダルク号であの敵を誘い出している間に、アナタとフォードが……」

「限界の限界まで炎を上げて、その一撃をぶつけるという作戦か」

「ええ。察しが速くて助かるわ」


 目には目、歯には歯。レイジとルベールの持つ精神エネルギーのすべてをぶつける勝負。シンプルイズベストな策だったが、レッドは先走ってしまった。

 魔力に限界はあっても、その不屈の心に限界はない。しかも、ライバル同士。二人が張り合う心に、カトルーアは全てを賭けるつもりでいる。

 弱点は、レイジたちの準備が整うまでの間をしのぐこと。悟られぬようにしなければならないし、守り抜かなければならないこと。そして、何よりも相手以上の力を用意するということ。

 シンプルな割には、薄氷を踏むがごとく繊細な策。カトルーアの話を小耳に挟んだグリーンは、カトルーアに提案する。


「だとしたら、我々のVファイターオーである程度戦ってからの方がいい」

「まだ、そんな戦力が……!」

「出し惜しみしたようですまなかった。だが、あのままでは味方を巻き込むと思ったもので」


 カトルーア達が作戦会議を進めている間も、レッドは独り戦っていた。レッドセラフィムを駆使し、ユグドラシルとの空中戦を繰り広げている。

 ユグドラシルの翼から枝葉が矢のように飛んでくる。レッドセラフィムは、その自慢の超音速とローリングで枝葉の矢をかわしていく。

 戦隊の唯一の飛行戦力にしてチーム最速。小回りも十分に効く、まさにスピードに特化した赤いスーパーロボット。


 レッドセラフィムの剣とマザーゴーレムの剛腕がかち合った。しかし、体格において大きく勝るマザーゴーレムの方が、明らかに押している。

 このままでは押しつぶされる。レッドセラフィムは、すぐに逃げた。今度は銃を撃って、マザーゴーレムに対抗。ジャンク・ダルク号からの援護射撃もあったが、蚊が指した程度にしかすぎない。


「くっ……ダメか! だったら、ユグドラシルだけ引っ張り出して……!」

「そんな事を許すとでも……? マザーゴーレム!」


 ディメテルの声一つで、マザーゴーレムは、ユグドラシルに乗った。世界樹の龍による空中機動に加え、マザーゴーレムの破壊力。まさに、鬼に金棒。

 レッドセラフィムで競り合うにも限界がある。自慢の機動力を駆使して、三次元あらゆる方向から繰り出される剛腕をかわし続ける。


「くっ……“フレアウィング”!」


 レッドセラフィムが苦し紛れに剣を振って出した火の鳥だったが、マザーゴーレムの胸を焦がす事さえできなかった。

 合体すれば、マザーゴーレムのパワーに少しは対抗できるだろう。だが、その分だけ機動力を落とすことになる。

 スピードとパワーのあるディメテルの最強コンビ。どちらで対抗すべきか、頭を悩ませたレッドは、敵の攻撃をかわすように操縦するしか出来なかった。

 巨大戦力を出させるほどにディメテルを追い詰めたレイジたち。果たして、反撃の糸口をつかめるか……。

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