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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第8章 覚醒するエースの風格
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第85話 “豊穣”のディメテル Ⅲ

 仲間を守る、と息巻いていたレイジだったが、ディメテルは呆れて失笑した。状況が理解できぬ無鉄砲の発言としか捉えられていないらしい。

 檻の向こうから、“ウィンド”と叫ぶ声がする。檻の隙間から火の粉が舞った。だが、ルベールの半袖コートの裾が少しだけ揺れた。レイジの狙い目とは微妙に違うが、手ごたえがある。


「何度も何度も叫ばれては鬱陶しいわね……“ザクーム”!」

 ディメテルは、爆弾の実を着の檻の中に投入した。檻の中で爆発が生じたが、檻は頑丈。爆発の衝撃が容赦なくレイジを襲う。

 これが豊穣、これが最高幹部、これがレイジを狙う者の本気。一矢報いる事もままならず、早くも大ダメージ。


「ぐはっ……」

 レイジがせき込むと、口の中から血が飛び出してきた。早くここから脱出しなければ、ディメテルにやられ放題。


「全ては、デズモンド様のため……。予言に現れた、社長に脅威をもたらす者。すなわち、あなたが力をつける前に!」


 ディメテルの口から、仇敵デズモンドの名が出た。デズモンドが受けた予言に出てくる人物、それこそが黒飛レイジだった。

 あの日、アイン村に偶然現れ、一夜にして村が焼き払われた中に遭っても偶然生き残った。

 あれからメキメキと力をつけ、各地で時の人となったレイジは、デズモンドからすればまさにリスクの塊。それを排除するために、こうして最高幹部の一角が呼ばれたのである。

 そして、そのレイジは、虫の息。あと一手ないし二手もあれば、間違いなく殺せるだろう。


「ただの予言で、俺のマブダチ閉じ込めて酷ェことするじゃねぇか!」

 ルベールが、怒りに燃えた。この女に攻撃する暇を与えさせてはいけない。そう思ったルベールは、両手に闘志の炎を灯した。


 ディメテルが魔法を撃つ動作よりも早く、ルベールは手数で圧倒する。

 左掌底、右フック、左アッパー、右地獄突き、左逆水平チョップ、サマーソルトキック、左回転のキック。途中でフェルグスが邪魔をしようとも、ルベールは攻撃の手を休めない。

 こうして時間稼ぎをしているが、レイジのトライアンドエラーは未だに続いていた。“ウィンド”の成功ビジョンが、見えては消えてが何度も繰り返される。

 流石にスーツなしで戦うには限界があるルベール。彼は、とうとう痺れを切らして叫んだ。


「レイジ、もう風なんかにこだわるな! ここの地面はコンクリだぜ! お前なら簡単に融かせるだろうが!」

「そうか! 地面を融かして根っこからなぎ倒せば……!」


 プーチンムーは、燃えない。しかし、コンクリートは熱で融ける。

 レイジは、早速、全身に力をこめた。狭い空間で炎が燃え上がる。レイジは、地面に両手をしっかりつけ、さらに気合を込める。

 パトランプ警部を雑なインゴットに変えることができたのだから、コンクリートを融かすことなどわけはないはずだ。

 ここまで追い込まれた今、火事場の馬鹿力も味方してくれている。レイジは、さらにさらに熱くなった。


 もう少しで出られるだろう。そう確信したルベールではあったが、なおもディメテルへの猛攻を続ける。

 変身しようにも、フェルグスの並外れた身体能力が許すはずもない。さらに、変身の隙を突かれてレイジが狙われてもアウト。

 猛攻に猛攻を重ねる。体中の傷が疼こうとも、自分に限界を作らない。

 左膝蹴り、左肘鉄、右掌底、左地獄突き、サマーソルトキックから飛び上がり、ドロップキック。極めつけに、アームブリーカーからの一本背負い。

 ヒーローらしからぬ攻撃ではあるが、ケンカキック。容赦ない攻撃の数々が、ディメテルを襲う。


「それ以上ディメテル殿に危害を加えさせてなるものか……!」

 フェルグスがムチでルベールの腕を縛ろうとも、そんなの本人にはお構いなし。その熱気で、鉄線を融かして拘束から逃れるだけだ。

 ルベールが生身で扱える炎の範疇は超えている。体中が火傷しそうだ。だが、弱腰になる暇なんて、ルベールには与えられちゃいない。

 右手を焦がしながらも、アツく燃え上がるルベール。だが、ディメテルの余裕そうな表情は変わらなかった。


「こんなこともあろうかと、仕込んで正解だったわね。“ストロドール”!」


 ディメテルの胸元から、藁で編まれた人形が現れた。その顔は、ルベールによく似ている。

 すべては、この人形が身代わり。それだけならまだしも、ルベールの身体が鉛のように重くなる。

 受けたダメージを呪いの形でやり返す、恐ろしい植物。さらに、ルベールの耳元、不協和音でストロドールは言葉とも呪文ともつかないボイスで囁きだした。

 精神力を武器にするルベールにとっては、これ以上なく厄介な技。彼の目から、みるみる生気が失せていく。


「呪いの藁人形か……燃やしてくれる!」

 ルベールは、鶏が締め上げられたような声で言った。だが、それは威勢だけだった。

 ストロドールの術中に見事にハマったルベールは、炎が出せずに苦しんだ。


「VFマスク戦隊……やはり、変身させなければ何ということはない。精神力が武器ならば、その心をへし折ってしまえばいい」

「ならば、その黒飛レイジも同じように……」


 炎が使えなければどうということはない。そう言わんばかりに、フェルグスが刀でルベールを斬って斬って斬りまくる。

 それに対抗するように、ルベールも拳をお見舞いするが、やはり威力が出ない。炎が出そうで出ない。

 打ちのめされて、半袖コートがボロボロになろうとも、ルベールが諦めるはずもなかった。

 ストロドールの呪いを全身に受けても、力ずくで突破する。どんなものも真正面から潰してきた。そしてこれからも。


「うおおおおお! “FIRE”!」

 ルベールは、ストロドールに向かって手を伸ばした。すると、小さな炎がゆっくりと飛んで行った。

 フェルグスには簡単に消されてしまった。が、ストロドールの呪いにルベールは克ったのだ。気合と根性で。


「た……耐えてやったぜ、あんな呪い。俺たちの心を折るには一苦労するぜ?」


 ルベールの額から滝のように汗が流れ落ちていく。輝きが戻りつつあるルベールの目で睨まれたフェルグスは、歯ぎしりした。

 そして、ジャンク・ダルク号に目をつけると、ガンと強力なキックで壁をへこませた。ほぼ八つ当たりの一発、バハラをビビらせるには十分だ。


「出て来い、パイロット……今なら令状なしで話を進めてやってもいい」

「お断りしますぞ。某は、引きこもってレイジ氏の味方をしていたいので……」

「おい、ポリ公……てめぇ、無関係な市民に暴力やっていいのかよ」


 ルベールの周囲で、炎が高く高く燃え上がる。マブダチの仲間を歯牙にかけられて怒っている。

 燃え上がったルベールは、ボロボロになった服を破り捨てて上半身裸となった。

 手ごわい相手を前に、気合を入れるために脱ぐ。レイジのそんな癖が、ルベールにも移ってしまったようだ。


「二人同時に来い! 俺は逃げも隠れもしねぇぞ!」

 ルベールは、カンフーにも似た構えを取った。挑発されたフェルグスは、気絶してしまったギュトーを蹴り飛ばして、ルベールに近づいた。

 マブダチを蹴られた事で、ルベールはさらにヒートアップ。


「私はお断りよ。あなたではなく、あの男……」

 ディメテルは、コンクリートの地面に向かって球根のようなものをばらまいた。そして、レイジの檻の方へと向かった。

 ルベールも、彼女を追いかける。だが、その前にフェルグスが立ちはだかる。


「行かせるか! アイツだけは絶対に死なせやしない!」

「粋がるなよ、小僧……お前のような男から早死にするのが、この世界ってものだ!」


 フェルグスは、目にも止まらぬ速さで刀を振り下ろした。だが、ルベールは、その刀身を左手でグッと握りしめて直撃を防いだ。

 ルベールの左手から、血がドクドクと流れる。この痛み、仲間や友達が受けてきたものに比べれば、軽かった。


「ぅらあああぁっ!」

 ルベールが気合を込めると、刀が赤く光りだした。そして、ドロドロと鉄くずが地面に落ちていく。鉄をも融かした炎を込めた左の正拳突きが、フェルグスの胸を撃つ。

 フェルグスが怯んだ。今度は、ディメテルを相手どる。燃えに燃えているルベールであるが、彼女には“プーチンムー”という絶対の壁がある。

 ルベールがフェルグスと交戦している間に、ディメテルの方は準備が完了しつつある。


「お前……今度は何を企んで!」

「“レウケーの巨人”!」


 ディメテルが右腕を高く掲げると、今度は白ポプラでできた巨人が現れた。巨人は、パワーでねじ伏せるつもりでレイジの方へと向かっていった。

 ルベールは、右腕をその情熱で焦がしながら、“FIRE”を樹の巨人に向かって撃った。


「“プーチンムー”!」

 ルベールの目の前に、燃えない木の盾が現れる。


「その燃えねぇ木ごと吹っ飛びやがれ!」

 ルベールの火力が、さらに上がる。先ほどまでストロドールの呪いを受けていたことがまるで嘘であるかのようだった。

 盾ではとても防ぎきれない炎が、レウケーの巨人を焦がす。熱風が木の盾ごとディメテルを吹き飛ばす。

 難敵二人から隙を作ったルベールに、ようやく変身のチャンスが訪れたのである。


「今なら、イケる! Vチェン……」

「させるものか!」

 持ち直したフェルグスが、ルベールの右腕を掴んだ。そして、ルベールの手からVフォンを奪いとった。

 これで変身するという選択肢が完全になくなった。しかし、その逆境こそが、ルベールをさらに燃え滾らせる。


「計器類がどんどん狂っていきますぞ! 部屋の中もムンムンしてきましたぞ」

 バハラは、突然の事に焦っていた。ルベールの放つ熱で、機器に異常が出ているのだ。しかも、それだけに収まらず……。 


「この熱気……! それでこそ、レイジだぜ!」

 ルベールは、レイジの檻に向かってサムズアップした。


「出させるわけには……! “モーリュの……」

「悪あがきなら、ムダだぜ? コイツの熱気も……俺と同じモノだ!」


 ディメテルは、魔法を打ち消すという粉をばらまいた。しかし、これしきの事で、レイジの勢いが止まるはずもなかった。

 さらに、ルベールは、インファイトでさらにディメテルを攻撃し続ける。


「よし来た! 恐ろしい生命力の木だったけど、あとはなぎ倒すだけだ」

 レイジの足元が、赤く煮えたぎっている。レイジは額の汗を腕で拭いながら、目の前の木を押した。

 ゆっくりではあるが、木が少しずつ傾き始めた。脱出まであと少し、といったところで、さらに奇跡が起きた。


「“ウィンド”!」

 どこからともなく女性の綺麗な声とともに、突風が吹き荒れる音がした。

 その突風は、15メートルはあろうかというプーチンムーの木々を簡単になぎ倒した。

 燃えない木の檻は、無残に壊された。そこから、ボロボロになったレイジが現れる。


「またしても助っ人か。それも新進気鋭のオルアースからか……」

 フェルグスの興味は、レイジよりも助っ人の方に興味があった。


「……黒飛レイジ、アナタがずっと試したかったことはコレかしら?」

「あ、アンタは……」

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