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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第7章 失意の男たち
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第82話 怒りの炎を灯せ Ⅲ

「“FIRE”!」

「“ストーン”!」


 レッドの飛ばした炎に対し、ゲブは目の前に岩の柱を繰り出して防ぐ。

 炎が岩にぶつかるれば、すぐに四散。だが、レッドはこれしきの事では動じなかった。

 すぐに岩の陰に回り込んでゲブとの距離を詰めた。そして、赤い大剣を振り上げる。


「……甘いんだよ! “ウィンチ・ストーン”!」


 レッドのその剣筋は、ゲブに読まれてしまった。

 またしても、鎖付きの岩がレッドの頭を襲う。ぶつかった箇所から火花。

 しかし、レッドはひるまずにゲブの顎を蹴り上げながら起き上がった。さらに大剣を水平に振り抜く。

 至近距離の“フレア・ウィング”を受けて、ゲブは部屋の外へと吹き飛ばされた。


「これ以上あんな狭い中じゃ、戦いづらいんでな……」

「ホントは仲間を燃やしかねんのが怖ェんだろうが!」

「……かもな。さぁ、始めるぞ」


 レッドが大剣を再び構えると、ゲブは不敵な笑みを浮かべた。


「“ブリック・メイデン”!」

 ゲブが指を鳴らせば、アザミたちが無数のレンガに捕らわれてしまった。


「“神判の右腕”!」

 さらに、巨大な右腕が“ブリック・メイデン”を握る。ググっと力をゆっくり籠めると、檻がミシミシと悲鳴をあげる。


「くっ……なんて、卑怯な奴だ!」

「だったら、最初から守りやがれってんだ!」

 ゲブは、レッドの頬を蹴り上げた。

 対抗して、レッドも蹴り返す。しかし、ゲブには“ブリックメイル”がある。

 ただ殴っても、ただ蹴っても、硬いレンガの装甲の前には打撃は効かない。


「もっとだ……もっと! 精神のエネルギーを燃やすんだ、俺!」

 レッドが、全身に力を籠め始めた。溢れる熱気が、廃材を発火させる。


「俺なら出来る……俺なら限界を簡単に超えられる!」


「あの試合の事を思い出そうってのか? ……無理だな。てめぇの炎じゃ、俺の岩に勝てるわけねぇだろ!」

 ゲブは、岩で武装した右足で回し蹴りを浴びせた。


「てめぇは、低レベルなんだよ! 覚悟、度胸、温度、技、戦略、攻撃力、持久力……何もかものステータスが貧弱だ!」

 喋りながら、煽りながら、殴る蹴る。言葉の重みが、身体のダメージと同時に体にしみこんでくる。


「RPGで俺たちを考えるのはやめな。レベルだとか、ステータスだとか……んなしょっぺぇ単位系に収まるつもりはねぇ」


 レッドは、大見得切ってマシンガンをぶっ放した。

 猛攻再び。防がれようと、お構いなし。ただただ、攻撃としてその怒りをぶつけるのみ。

 ゲブも“ストーン”を盾に対抗する。しかし、レッドの放った炎は、彼の怒りの限界を超えて燃え盛る。

 鉄よりも硬い岩をも徹す炎。融かして穴を開ける。ゲブは、その炎の威力に驚いていた。


「なんと……! てめぇも岩を融かせるとは!」

「これさえ出来ちまえば、仲間を助けられる……」

「わきゃねぇだろ! 仲間を蒸し焼きにする気か! ……ったく、強すぎるってのも酷だねぇ。かえって弱ェ仲間を救えなくなっちまうんだからよォ!」

 ゲブが、煽る煽る。


 岩をも融かす高熱の炎。確かに、生身の人間では、骨も灰も残さぬことであろう。

 しかし、だからといって、檻をどうにかしないわけにもいかない。神判の右腕が握りつぶすのも時間の問題である。

 方法を考える。考え抜く。それで咄嗟に思いついたことが、一つ。思いつけば、ただ行動あるのみ。


「ならば、狙い目は一つだ!」


 レッドは、ゲブの右手首を狙う作戦を選んだ。

 神判の右腕を操るゲブの右手さえ封じてしまえば、少なくとも石の檻は無事である。

 安全を確保した先のことまでは、分からない。どうやって脱出させるかは、その時に考えればいい。


 しかし、狙いは良くても、ゲブにすぐに気づかれた。狙えども狙えども、攻撃が当たることはない。

 そればかりか、左手だけで軽くいなしていく。レッドは、歯がゆさすら感じる。

 レッドは、マシンガンを槍の形に変形させ、右手を狙いにかかる。諦めきれないのだ。

 このしつこさ、粘り強さに、ゲブも呆れた顔。実力差はハッキリしているのに、これ以上何をあがこうというのか。ゲブは、逆に理解に苦しんでいる。


「これ以上やったって、どうにもならねぇのに……。何をそこまで躍起になってやがる!?」

「大事な奴を守り抜く、大事な奴を傷つけたヤツを許しておけねぇ。そういった人間の血が通った理由だ」


 レッドが大真面目に答えれば、「くだらねぇ、くだらねぇ」と何度も高笑いしながら叫ぶゲブ。

 “ウィンチ・ストーン”をブンブン振り回して、レッドを決して近づかせない。

 レッドが大剣でゲブを斬ろうとすれば、その大振りな武器が災いして軽々といなされてしまう。

 実力差は、明確。だが、レッドにはヒートアップという強みがある。


「“FIRE”!」

 レッドの左手から、真紅に燃ゆる炎が飛び出した。その炎が“ウィンチ・ストーン”を融かしつくす。

 敵からの攻撃は防げても、仲間を救うにはあまりにも熱すぎるこの炎。ジレンマを感じたレッドは、歯ぎしりが止まらない。


 ゲブは、左手の指を鳴らした。すると、今度は無数の岩の弾丸がレッドを襲う。

 レッドも、これに対抗して、大剣をマシンガンに変形させてる。弾丸の撃ち合いに持ち込む。

 ペースは、レッド優勢。マシンガンをぶっ放しながら、レッドは少しずつ前進してゲブに近づく。


「“JET・クリムゾン・ドラゴン”」

 レッドは、全身に真紅の炎をまとった。マシンガンになった武器は、今度は槍に変形。

 さらに、高速で突進。その姿が真紅の龍に見えることから、この技の名をつけたのである。

 真紅の炎が、岩の弾丸を融かす。突き立てたその槍が、ゲブの腹を穿つ。


「ぐ……ぐはっ……」

 この勝負始まって、初めてゲブに大ダメージが入る。ゲブは、思わずよろける。

 これをチャンスと言わんばかりに、レッドの槍が追撃を加える。


「これしきのことで俺がくたばると思うなよ! “憤怒の左腕”!」

 無数の岩が、ゲブの左腕を取り巻く。それが、巨大な左腕となり、レッドの槍による猛攻を防いでいく。

 融かせども融かせども、次々に新しい岩が修復してくる。最終的に、タッパのいいレッドの5倍ほどの大きさとなった。


「……くたばれ、赤い戦士。お前は、しつこかったぜ」

 ゲブは、憤怒の左腕でレッドを殴った。その威力は、この倉庫を壊しながら猛然と進むほど。これまでの技とは、破壊力がケタ違い。

 レッドは、倉庫の奥の部屋にあったサクラたちの檻へと激突してしまった。

 さらに、ゲブの追撃。何度も何度も、憤怒の左腕によるパンチがレッドを襲う。サクラたちの檻を巻き込み、岩石の雨は降りしきる。


「俺の仲間に……ダチに手を出して、タダで済むと思うな……よ」


 気が付けば、変身は解けていた。ルベールの額と左腕からは、おびただしいほどの出血。

 それでも、ルベールは立ち上がる。仲間とダチを背にして、手出しさせてなるものかとゲブを睨む。だが、その仲間たちもまた、大ダメージで気絶している。

 生身の状態でも諦めきれないルベールは、叫びながらゲブに突進していく。


「お前……俺の仲間やダチを攫って何がしてぇんだ?」

「レイジという男を始末するためだ。攫われたと知れば、来るはず……だった!」

 ゲブは、半ば八つ当たりでルベールの頬を殴った。


「アイツを狙う理由は何だ? しょうもねぇ回答だとぶっ飛ばすぞ!」

「俺が知るわきゃねぇだろ! そもそも、てめぇら……俺たちデズモンド社に楯突いて何がしてぇんだ!」

「答えはただ一つ。仲間を返してもらって、ここを出る!」

「不可能だ。お前はここで散ると何度も言わせんな!」


 “ウィンチ・ストーン”が、生身のルベールに容赦なく襲い掛かる。

 満身創痍となったルベールは、一瞬は持ちこたえた。が、それでも度重なるダメージが重くのしかかり、血を吐きながら倒れてしまった。

 それでも、サクラたちを諦めきれないルベール。ゲブに交渉を持ちかけることにした。


「だったら、他の連中は見逃せ……俺一人の命で勘弁してもらいてぇ!」

「そういうわけにはいかねぇな!」


 即答だった。ここに来た時点で、ゲブは、最初から人質もろともルベールを殺す気でいた。

 さらに、ゲブは、倒れてしまったルベールの顔を容赦なく踏みつけた。さらに、足裏で頭蓋骨を地面にこすりつけ、ルベールに屈辱を与える。

 ルベールは、手を伸ばし何とかVフォンを手繰り寄せようとした。しかし、そのわずかな望みさえも、ゲブに取り上げられてしまった。


「くそ……俺は、俺は……!」

 ルベールは、その行き場のない拳を床に叩きつける。

 あれだけ威勢よく啖呵を切っておきながら、仲間を救えなかった。許せない敵を倒せなかった。


「遺言はねぇか? この世に未練はねぇか……?」

 ゲブが、ルベールに問いかける。

「……ひと思いに、トドメを刺せ。こんな屈辱……もう……!」

「潔くて、気持ちがいい!」


 もはや、ルベールに戦意はない。その目は死んでいた。

 ゲブは、岩の剣をルベールに突き立てる。ルベールに、ジタバタするという選択肢はない。

 すべてを受け入れ、殺される覚悟ができた、その時であった。


「“ツイン・プラズマ・ドラグーン”!」


 突如、二匹の稲妻のドラゴンがゲブを襲った。背中から撃ち抜かれたゲブは、剣を落としてしまった。

 ゲブは、振り返った。そこには、高さ15メートルほどのスチームパンクな機械があった。その上には、ゲブが待ちわびたレイジがいる。

 レイジは、スチームパンクな機械から降りると、ゲブの左手を蹴り上げてVフォンを奪った。


「そ……その技は、まさか!」

 ルベールの目に光が戻った。


「レイジ氏、本当にこっちでいいのですかな?」

「ああ、大丈夫。向こうにはアニキがいるし、こっちはダチが倒れてた」


「飛んで火にいる夏の虫とは、まさにこのこと! てめぇを倒して報酬をたんまりをいただいてやる!」

「バハラ、やれ」

 レイジは、ゲブを指さしながら言った。


「あいあいさー! レイジ氏のご友人を助けるためとあらば! このジャンク・ダルク号の大砲が火を噴く!」

 バハラは、ボタンをぽちっと押した。すると、いくつもの大砲が一斉にゲブを向いた。

 発射の掛け声とともに、砲弾の雨がゲブに撃ちつける。ゲブが吹き飛ばされ、ルベールが自由になった。

 レイジは、ルベールにVフォンを投げ渡した。それから、廃倉庫の最奥部で倒れていたアザミたちに近づく。


「遅くなってゴメン。みんな、助けに来たぞ!」

「待ってたぜ、レイジ!」


 レイジは、半袖ジャンパーの裾を直した。

 背中にフォードの一味の団旗を掲げるその姿に、エースの風格あり!

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