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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第7章 失意の男たち
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第81話 怒りの炎を灯せ Ⅱ

 時は少しさかのぼり、パープルメロン社の所有していた倉庫。使われなくなった資材が乱雑に置かれている中、メカ系のモンスターやお化けがうようよしている。

 体の一部が機械になっているメカブリン、インボ龍はもちろんいる。夜間というだけあってフェレス、チカチカと光りながら目をくらまして驚かすライトブリミナル。

 マスクドレッドに変身して、赤い大剣で次々と敵を薙ぎ払っていく。ブロール・リーグでベスト8。さらに敢闘賞をかっさらった彼にとって、いずれも敵ではなかった。

 バッタバッタと倒れていく敵に、つまらなささえ感じるレッド。準備運動にもなりゃしない、とぼやいている。


 敵をなぎ倒しながら、探索を進めるレッド。しばらくして、5メートルほどの高さがある巨大な扉を見つけた。

 その扉には、直径1メートルほどのハンドルがついている。レッドはそれを回し、ゆっくりと扉を開けた。

 先ほどまでとは打って変わって、モンスターもいなければ、資材も整理されている。レッドは、用心に用心を重ねて探索を続ける。それからほどなくして……。


「BINGOだぜ! リュイの言ったとおりだ! 稼働してる工場なんかにゃ、危なっかしくて人質置くには不向きだもんな」

「むぐ……うぅ……」

 ようやく助けが来たということで、ギュトーが感極まって泣いている。


「落ち着け、すぐに助ける!」


 レッドは、捕らわれていたサクラとアザミ、ギュトーの3名を発見することに成功した。

 まるまる24時間、さるぐつわで口封じされ、全身を縛られている3人の顔は、いくらかやつれていた。

 レッドは、厳重に縛られている三人のロープを切って解放した。


「……ルベールはん! 来てくれはったんや」

「ああ。フォードも手伝ってくれてる」

「フォードさんにお礼を言わなくちゃ……きゃっ」


 サクラは立ち上がろうとしたが、急に立ち眩みを起こした。レッドは、そんな彼女の背中をそっと支えた。

「大丈夫か……って万全じゃねぇな。そっちの二人は自力で立てるか?」


「我々は平気ですよ。なんたって、アニキの仲間ですから」

 ギュトーが自慢げにそう言うと、サクラは思わず笑ってしまった。


「ほな、ここからオサラバやで! ルベールはん!」

「ああ。しかし……すぐには帰れねぇな」

 レッドは、振り返った。すると、ゲブと部下10人ほどが出口をふさいでいた。


「そうだ、お前たちは帰れない。ここで骨として埋まってもらうからな!」

 額全体に青筋を浮かべたゲブの顔は、もはや鬼神の領域。怒りの炎を燃やしに燃やしている。



「“ウィンチ・ストーン”!」

 ゲブが狂ったような声を挙げれば、彼の手元に鎖でつながれた巨大なレンガの塊が現れた。

 いきなりの攻撃に、レッドは応対できず。そのまま頭にレンガを受けてしまった。

 スーツに身をまとっているとはいえ大ダメージ。レッドは、一発でよろけてしまう。


「……お前らは、逃げろ! コイツは、やべぇぞ」


「そりゃそうだ! お前は先のリーグでベスト8、かたや俺はベスト4! この違いが分からねぇてめぇでもねぇだろ!!」

「リーグの結果、それ即ち強さの序列……そう思ってるなら大間違いだぜ?」


 レッドは、全身にグッと力を入れて、気合を入れ直した。先ほどの痛みがまるで嘘であるかのように、持ち直した。

 レッドにも、ファイナリストと全力で戦った誇りがある。レッドは、ゲブに急接近すると、インファイトを試みた。

 右フック、左アッパー、右回し蹴り、左のソバット、右ラリアット。さらに、クロスチョップでのけぞらせると、真空飛び膝蹴りでゲブの顎を狙った。

 反撃の余地も許さぬ猛攻だったが、ゲブは平気な顔をしていた。全身をレンガのようなプロテクターで覆っていたのだ。


「“ブリックメイル”」

 硬い装甲が、レッドの猛攻を防いでくれた。


「ルベールさん! 私たちも……」

 サクラは、Vフォンを右手に構えながら言った。

「お前らは下がってろ! すぐに戦えるような体調でもねぇだろ」


「ルベールはん、何を強がってはるん? みんなで……」

「これは、俺とアイツでやるべき敵だ……手出しだけは!」

「そこまで強く望むんやったら、もうええわ。せやけど、アイツはしばらく戻って来ぉへんで」


 レッドは、仲間にひどい仕打ちをしたゲブに激しく怒っていた。溢れんばかりの怒りが、炎としてレッドを包み込む。

 その怒りの中にも優しさあり。闘える状態でない3人を守りながら、レッドはゲブに挑む。


「サシで俺に勝とうなんざ、生涯修業したとしてもムリってモノよ! てめぇら、この赤い野郎をハチの巣にしやがれ!」

 ゲブの鶴の一声で、部下たちが一斉にマシンガンを構えた。一斉射撃、本気でレッドたちを殺す気で来ている。

 レッドは、三人を背に、弾丸をその身体で受け止める。弾丸が当たるたび、火花が飛び散る。スーツ越しでも痛みはあるが、レッドは歯を食いしばった。


「お、お前ら……無事だろうな?」

 レッドは、振り返らずに訊いた。

「はい、無事です。それより、ルベールさんは?」

「俺も、全然平気……くっ!」

 初手に受けた頭への衝撃がよみがえった。レッドは、思わず膝をついてしまった。


「“キュアー”! 仲間をかばって戦うやなんて、アイツと同じくらいムチャするやないの!」

 アザミは、ボロボロになっているであろうルベールを心配した。


「疲れ切った体で無理しやがって……でも、サンキューだぜ」

 レッドは、再び立ち上がり、ゲブを見据える。

 それから、マシンガンを構えると、先ほどのハチの巣へのお礼だと言わんばかりにぶっ放す。

 炎の弾丸が、次々とゲブの部下を撃ち抜く。火だるまになった白スーツどもが、のたうち回る。しかし、撃てども撃てども、ゲブの手駒は多数控えている。


「悪あがきはよせ……俺はデズモンド社のディメテル様直属の部下。そしてリーグでは……」

「何度も聴いたぜ、ンな事。俺が負けた相手はレイジだが……俺も、アイツと同じ炎の使い手だぜ! そんじょそこらの魔術師とは一味も二味も違うんだよ!」

「な、なんやと!?」

 アザミが思わず目を開いて驚いた。


「自ら弱点を晒すたぁ、随分とバカじゃねぇか! だったら……お前を絶望させるまでだ」

 ゲブが指を鳴らせば、レンガ造りの巨大な右腕が現れた。その手のひらには、血走ったような目のような模様がついており、見る者を委縮させる。

 サクラは、口元を手で抑えて吐き気を堪えたが、レッドは拳をポキポキ鳴らしながら余裕の笑みを浮かべた。


「“神判の右腕”! その目が赤けりゃ、てめぇらまとめて地獄行きだ!」

「ンな事で怯むヒーローがどこにいるってんだ! “フレア・ウィング”!」

 レッドのマシンガンが大剣に変形した。それを目いっぱいに振って炎の衝撃波を飛ばした。


「こんなもの、貴様もろとも握りつぶしてくれる!」

 ゲブが右手を握りしめると、それに応じて神判の右腕も“フレア・ウィング”を握りつぶした。

 しかし、レッドは寸前で回避することに成功。しかし、自由自在の巨大な右腕はレッドを追跡し続ける。

 さらに、そこへ配下による一斉射撃。レッドの方が、ジワリジワリと追いつめられている。


「サクラさん、仲間と連絡はつきませんか?」

 この戦況を見かねたギュトーは、救援を要請するように頼んだ。

「それが……アズールさんたちにも何かあったようで、応答してくれないんです」

 サクラも、レッドのピンチを察して動いていた。だが、アズールたちは、ランドたちに足止めを食らっている状況であった。


「来るわけがねぇ! アイツらはランドの仕掛けたブラフに綺麗に引っかかったんだ!」

「しかし、ルベールさんがここを突き止めた幸運までは誤算だった……と?」

「ああ、そうさ! すべては、ヤツをおびき出して倒すためだ! そのためにも、てめぇらは消えてもらう!」


 神判の右腕がギュトーに襲い掛かろうとした。レッドは大剣で切り伏せようと試みた。

 だが、軌道を変えるのが精いっぱいだった。


「そういや、ルベールはん。アンタ……さっき、“アイツと同じ炎”や言うてはったな?」

「それがどうかしたのかよ?」

 ルベールが訊くと、アザミは彼の背中をどんと叩いた。


「アンタは、こっからが本番やないの! ピンチはチャンス……せやろ?」

「ああ、当然だ! まだまだだぜ、このルベール・ヴァ―・ミリオンって漢はよォ!」

 レッドは、親指で自分の胸元を指した。その声色は、明らかに自信に満ち溢れていた。


「アイツと同じ炎だと言っても、その本質までは一緒じゃねぇだろ!」

「ウソだと思うなら、その身でとくと味わいやがれ!」

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