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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第7章 失意の男たち
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第79話 デズモンド社、動く

 レイジがバハラと接触し、ホテルに戻っていた頃。フォードとルベールたちによる必至の捜索が続いていた。

 候補となる工場は、この地帯でおよそ100.一人頭で20の工場を調べて回る必要があった。たった一つの工場でさえ、すべてを調べるのには時間がかかる。

 しかし、シラミ潰しに捜しても、彼らが探し求めていた仲間の姿はない。時間だけが無為に過ぎていく。


「くそ……これでもマシとはいえ、かなり大雑把じゃねぇか。無事でいてくれよ、サクラ、アザミ、ギュトー!」

 ルベールの顔にも、焦りが見え隠れしている。


「あの土魔法の使い手の連中……今度会ったら、一刀のもとに斬り伏せる!」

 口調こそ穏やかなものの、リベンジに燃ゆる闘志までは隠し切れないアズール。

 昨日のダメージを考慮してフォードと同行する、という提案を蹴ってまで、一人で捜索を続けている。捜索開始から2時間程度が経つが、依然として仲間たちは見つからない。

 それでも、愚痴や弱音を吐くことなく、根気よく仲間を探し求めた。アズールがそう息巻いていた時だった。


「おう、アズールじゃねぇか。で、そっちはどうだったんだ?」

 それからほどなくして、フォードと合流した。アズールは、首を横に振った。


「こっちもダメだ。ってことは、このエリアは全滅か……?」

「……恐らくは。そうとなれば、メレやルベールを手伝いに行くぞ」


 フォードたちは、メレたちのサポートをするべく、このエリアを後にすることに決めた。

 いざ、出発……という直前で、フォードは何かに気づいて咄嗟に物影に隠れた。


「アズール、伏せろ!」

 フォードが叫ぶと、アズールは左にローリングしてからしゃがんだ。

 アズールの視界右側に一発の弾丸が見えた。どこかにスナイパーがいる気配を察知したようだ。


「助かった。すまない、フォード」

「いいって事よ。それより、1時の方向……500メートルあたりにスナイパーがいる」

「全く気付かなかった……俺もまだまだ甘いな」


 昨日の件から、不調が続くアズール。仲間を取られた責任感ゆえに、今は気が気でない。さらに、スナイパーが明確にフォードたちを狙っているので、なおさら。

 ここで、考えられることは1つ。犯行グループも、フォードたちが動いていることを知っているということ。そして、彼らを始末するためにスナイパーを用意してきたのだ。

 しかし、フォードもアズールも、どちらも始末することができなかった。向こうからすれば、敵の居場所を教える結果に終わったのだ。


「さて、向こうはスナイパーを用意してきたわけだが……近づけさせたくない場所がある、ということか。あるいは……」

「俺たちを迎撃する用意が出来てる。そう考えることもできるぜ。んでもって……」

「これ以上近づけば、仲間の命は保証できない。そう警告された、ということか」

「ああ。そういうことになる」


 フォードとアズールは、近くに別のスナイパーがいると想定して、さらなる警戒を持って捜索を続ける。

 時刻は、まもなく22時。この工業地帯は、すっかり闇の中。刺客が隠れるには十分すぎるほど。朝から仲間の事で気を揉んでいた二人の精神力を削りにかかる。


「敵の場所は、およそ分かったことになるな」

「いや、オトリかもしれねぇ。弾が飛んできた方向は、お前が捜していたエリアじゃねぇか」

「ただ、このことは仲間に……むっ!」


 アズールは、Vフォンを懐から取り出した。しかし、その直後、魔法陣の強烈な光が二人を襲った。

 思わず腕で目をふさぐアズールたち。フラッシュが収まったところで目を開けると、目の前には筋骨隆々な男と白スーツが40名ほど。

 中央にいる男に至っては2メートルを超える背丈、剃り込みの入ったボウズ頭で威圧感十分。そして、アズールには、忘れられない敵の一人でもある。


「ランド……!」

 アズールの目の色が変わった。クールな顔が一転、闘争心全開の獣の顔つきに変わった。


「あなたが噂のフォード様ですね」

「お前らが、犯人だな。名乗りやがれ!」

「彼がおっしゃってくれたように、私はランド……デズモンド社の社員でございます」


 ここに来て、レイジたちとともに探していた仇敵につながった。

 犯人と突っかかったが、ランドは否定する様子はなかった。ランド率いる部署が動いたことは間違いない。


「デズモンド社……! そこまでして、俺たち……いや、レイジに固執する理由を聞かせてもらおうか」

「それについては、私からはお伝えできません。上司曰く、社長と最高幹部の面々しか知らないこと……というわけですので」


 ランドは、淡々と返した。だが、ウソをついているようには見えない。

 ただただ、上からの命令。ランドたちは、深い事情も知らずにレイジたちを狙っていたようだ。


「アズール、頼む! 仲間に連絡を」

「ああ……!」


 この連中を不気味に感じたフォードは、アズールに仲間を集めさせることにした。

 しかし、大量にいる白スーツの一人が、拳銃でアズールのVフォンを持っていた左手を撃った。弾丸はVフォンごとアズールのてを打ち抜いた。

 Vフォンが足元に落ちる。それをすかさず拾い上げるのは、昨日の怪人・ムジコリザードだった。


「くっ……Vフォンを」

「他の連中がどんな強さか知らんが、仲間を呼ばれりゃ厄介なモンだからよ……」

 ゲブが、腕組しながら声を荒げる。


 卑怯も何もない。その強さの源が変身アイテムに、仲間との団結力にあるのならば、それを奪うまで。

 アズールは、ドクドクと血が流れる左手の甲を抑えながら、恨めしそうにゲブを睨んだ。

 昨日から、悔しいことばかりが続く。精神がパンクしそうなほどにすり減っている。


「昨日から、俺はどうしたというんだ……」

「落ち着け、アズール! 取り乱したら負けだ」


「柄にもなく取り乱すことが多い。仲間が取られても取り繕うけど、それでも冷静でいられなくて……」

「おい、アズール! ここは戦場……気ィ抜いた奴から死ぬ場所だ!」

 フォードは、目を覚まそうとアズールの頬をひっぱたいた。その右頬に、紅葉が染まる。


 フォードは、アズールを説得するが、本人は聞き入れてくれる状態ではない。

 心身ともにダメージは残っているアズールがいるが、この程度の人数なら自分一人でも余裕だとフォードは確信した。

 フォードは、構える。だが、ここで予期せぬ事態がもう一つ。


「そういえば、俺たち傘下の事をちょこまかと嗅ぎまわっていた奴がいたな」

「ふぉ、フォードさん! 私は、後悔なんてしていません」

「み、ミノルヴァ……!」


 後ろから、ムジコリザードがミノルヴァとともに現れた。ミノルヴァの喉笛には、ツルハシの切っ先がピタリとついていた。

 少しでも抵抗の意思を見せれば、この無垢なる市民の命はない。アザミたちやサクラだけに飽き足らず、同じ手。

 みたび、人質。この手段には、フォードも呆れるほかなかった。


「……お前ら、関係ねぇ人間を人質に取って恥ずかしくねぇのか?」

「申し上げませんでしたか? 抵抗すれば、彼の命がない……と」


「抵抗する意思はねぇ。ただ、このコイン一つと俺の命で、そのオッサンの命を取るのだけは勘弁してくれ!」

 フォードは、懐からコインを取り出した。5ルド硬貨に描かれたディーニの時計塔が輝く。

 既に1000万も稼いだ男がやるようなことではない。ナメられたものだ、とゲブは呆れる。


「この職人とは浅からぬ縁だと推測しますが、本当にたった5ルドの命の価値だとお思いですか?」

「ああ。……受け取りな!」


 フォードは、指パッチンで硬貨をはじいた。その硬貨は、弾丸のような速さで、ゲブの左手首を強打した。

 アズールのVフォンが、宙を舞った。それから、クルクルと回りながら放物線を描き、アズールの手元へ。


「アズール、今のうちに仲間に連絡しろ!」

「……ああ!」

 アズールは、Vフォンで仲間との連絡を取り始めた。

 彼がVFマスク戦隊を呼び寄せている間、フォードは時間を稼ぐことにした。


「お前ら、おひねりが欲しいってか……? だったら、くれてやる!」


 フォードは、再び1ルド硬貨を指ではじいた。今度は、一番手近にいた男のマグナムの手元を狙った。

 それから、マグナムを蹴っ飛ばして、もう一度コイントス。今度は、ムジコリザードのツルハシを持つ手。ムジコリザードのレンガの籠手に穴が開く。

 フォードは、横目にアズールを見た。


「……よし、次は派手に行こうか」

 4枚目のコインは、適当なドラム缶に狙いを定める。


「コインの威力は、十分理解いたしましたよ……。ですが、どこを狙うおつもりで……?」

「昨日、お前らがやったのと似てることだ。ドカン、と一発……」


 ドラム缶が爆発した。闇夜を燦然と照らすほどの炎、そして高く高く舞い上がる黒煙。

 スピーカー越しには、割れて聞こえたであろうインパクト。すべてを察した仲間たちが、アズールたちのもとへと急ぐだろう。


「おい、お前ら! 今の聴いただろ? ……早く来やがれ、ってんだ」

 フォードは、アズールのVフォンに顔を近づけながら言った。

 アズールは、Vフォンの通話機能を終了させ、変身コードを入力した。

 ここでドンパチが起こると分かっていても、ミノルヴァの足は震えていた。ムジコリザードの拘束から逃れていても、


「今こそ、リベンジの時! Vチェンジ!」

「いい表情だぜ、アズール。さながら、水を得た魚……ってか」


 アズールが変身ポーズをとると、青い特撮ヒーローに早変わり。じきに仲間が来るとなれば、それだけで心強いものがある。

 それに、今はフォードもいる。たった二人だが、これほどの軍勢を相手にしても、全く負ける気がしない。

 いざ闘うぞ……そう決めてアズールが太刀を構えると、フォードが腕を伸ばしてアズールを足止めした。


「どうして、止める?」

「いくつか、聞いておきたいことがあるんだよ。何かと気になる事ばかりでよ……」

 フォードは、ランドを睨みながら言った。

「どうぞ、何なりと」

 ランドは、余裕そうな顔だ。何を訊かれても、それなりの対応をしてくれそうだ。

 フォードは、アズールの方を一瞥した。アズールは、大人しく太刀をおろす。それを確認したフォードは、軽く咳払いした。


「さてと……そのオッサンと俺が繋がってるのをどうやって知りえた?」

「フォードさん。“ショージキ者がバカを見る”ってことわざをご存知ですか?」

 回答が早かった。ミノルヴァが青ざめた顔でフォードを見た。


「ま、まさか……俺たちの名を出して情報収集を?」

「はい……それで、捕まっちゃいました」

 フォードは、呆れた。


「世間では、それを“世渡り下手”って言うんだぜ。でも、こうして敵を寄せることができたんだ。ミノルヴァには感謝するしかねぇ」

 ミノルヴァは、ありがとうございますと何度も何度も頭を下げた。彼が捕まった事で、結果的にフォードに敵の正体を知らせることにつながったのである。

 大正義を名乗るデズモンド社にしては、随分と詰めが甘い。リスクも顧みないやり方である。


「まだまだ訊きたそうな顔をしていますね。では、次の質問をどうぞ」

「アザミたちは、無事なんだろうな?」

「無事は保証いたしかねます。では、次」


「世界屈指の大企業にしちゃ、随分と荒い作戦だな。ところどころ抜けてるっつーか、なんつーか」

「……上司曰く、怒られるのは辛いとのことです」

「じゃあ、何が何でもレイジを仕留めなきゃなんねーわけだ。それで、俺たちの仲間を狙うザツな作戦に出たってわけだ」

 フォードは、不敵な笑みを浮かべた。


「てめぇの上司なんざ知ったこっちゃねぇ! レイジは、当面シバレーには戻ってこねぇ。怒られて絞られるのも好きにしやがれってんだ!」

 さらに、啖呵を切った。もう、誰にもこの男の勢いを止められる者はいない。


「本来であれば、レイジ様を狙いたかったのですがいいでしょう。……では、フォード様には消えてもらいましょう。そこの青い剣士もね」

「野郎ども、かかれ!」

 ムジコリザードの怒号とともに、一斉にデズモンド社軍が襲い掛かってきた。

 フォードの一味とデズモンド社の因縁の戦いが、ここから開幕する……。

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