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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第7章 失意の男たち
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第74話 工業地帯の大捜査 Ⅱ

 時は少しさかのぼり、海沿いのとある工場。ルベールとアズール、メレの三人は現場検証を行っていた。といっても、詳しく周辺を調べる程度のものではあるが。

 何か異変がなかったか、目を凝らす。しかし、何の進展もないまま1時間近く。


「ねぇ……ホントに何も無いじゃん! 疲れたし、お腹空いたし」

「現場に行こうって言ったのは、メレじゃねぇか」

「ってか、フォードがいたらもっと楽に進んだんじゃね? アタシ、フォード連れてくるし!」

 空腹からか、急に駄々をこね始めたメレ。一度言い出すと止まらないのが、彼女の悪いクセである。


「……妙に自信があったように見えたのは確かだが。蛇の道は蛇だとか言って出かけたからな」

「だったら、フォードが何か掴んでると信じて帰りたいし!」


 メレのワガママは止まらなかった。何か事件につながるような有力な手掛かりはなかった。

 結局、分かった事は二つ。工場番号が2943であり、鋳造作業を行っている会社の者であるということだけ。

 今も稼働している工場ゆえ、内部を捜査できなかったことが手痛い。


「腹が減っては何とやら、っつーだろ。俺たちも帰ろうぜ」

 ルベールたちは、Vファクトリーへと帰っていくのであった。



「皆、もう帰っていたのか」

 ミノルヴァに工場のクエスト状況を整理するよう依頼したフォードは、そのままVファクトリーへと戻ったのだった。

 フォードは、半袖ジャンパーをコートハンガーに吊るして、ソファにドカッと座った。


「威勢よく出て行った割には、随分と時間がかかったようだが……何か掴めたのか?」

 アズールが訊く。


「ちょっと世話になった人に情報提供を頼んだんだ。クエストの報酬として……な」

 アズールは、フォードにアイスコーヒーを淹れた。シルバーのマグカップが結露するほどに、キンキンに冷えていている。

 フォードは、それを口に含んだ。リュイ好みのブレンドコーヒーは、口元が歪むほど濃密で苦かった


「で、その情報っていつ分かるの?」

「その人曰く、ちょいと骨の折れる作業だとよ。何しろ、麦藁の中から針一本探すみてーな事だからよ。今日の18時、ガレ駅でもう一回会う約束を取り付けた」

「……18時か。結構、時間がかかるな」

 ルベールは、眉間にシワを作った。いつサクラが殺されるか、たまったものではない。そんな中で5時間近くも足止めを食らうのは、なかなかに痛いことであった。


「……で、そっちはどうなんだ?」

「ウチらの方はダメダメだったんですけど。何にもおかしな部分なんてなかったし」

 メレは、がっくり肩を落としながら言った。アズールをもってしてもお手上げだった辺り、そもそもの提案が間違いだったのだろう。

 とにかく、今はミノルヴァを信じて待つしかない。


「リュイ。アレの整備、頼むわ。……もしかしたら、必要になるかもしれねぇ」

「あなた方が出かけている間に、作業は始めていた」


 リュイが本棚脇のスイッチを押すと、本棚が横へスライドした。そして、地下室へ続く階段が現れた。

 その階段を降りると、そこは巨大なガレージだった。シェアハウスのような一階部分からは想像もつかないほど、

 鉄板の床を歩く音が、地下ガレージ内に響き渡る。ゴテゴテした機材が、ひっきりなしに動いている。

 直径数百ミリはあるであろういくつものケーブルが、一つの巨大なメカに接続されていた。

 そのメカの高さは25メートルほど。真紅のボディが目に眩しいその姿は、例えるなら翼を折りたたんだ天使のよう。

 コックピットは、胸部。右胸の上部には、通し番号として「01」がつけられている。


「さてと、始めるか……」

 リュイは、まずはルベールの愛機“レッドセラフィム”のメンテナンスから着手した。

 ルベールがムチャばかりするためか、最も手間がかかるのがレッドセラフィムだ。整備ロボットの力を借りて、ようやく8割がた直ったところなのである。

 VFマスク戦隊は、このような機体を他にも4機所有している。色は、もちろん青、黄、緑、桃である。


 その一方で、Vファクトリーの一階。アズールが神妙な面持ちでフォードを見ていた。


「フォード、俺に修業をつけてほしい」

「お前は、少しでも身体を休ませておけ。次の戦いに備えるんだ」

「だが……!」


 アズールは、なおも食い下がった。ルベールと張り合って勝てるまでにレイジを育て上げたメソッドに、どうしてもあやかりたかったのだ。

 それに、昨日の悔しさもあった。サクラを取られた責任感、アザミたちを助けられなかった悔しさは、メンバーの中で最も強く感じている。


「悔しさは分かる。何度だっていうけど、俺だって平気じゃねぇ」

 アズールの胸に秘めていた熱い思いを汲んだフォードは、そのうえで彼の懇願を断った。


「だったら、なおのこと。俺は強くならなきゃいけない」

 アズールは握りこぶしをフォードの前で震わせながら言った。


「でも、お前は一人じゃねぇんだぜ? 俺たちがいるし、ルベールたちもいる。誰かを頼るってのもまた、強さだぜ」

 フォードは、アズールの左肩をポンと叩いた。


「お前がそこまで言うのなら、そうするべきなのだろう。それにしても、この達観したような物言い……本当に何者なんだ?」

「元軍人。今は、ただの冒険者でレイジのアニキ。これで十分だろ?」

 フォードは、これでいいだろうとばかりに不敵な笑みを浮かべた。


「そうか……」

 そう呟いたアズールは、少しばかり不服そうだった。




 18時、ガレ駅前。



「フォードさん、随分と変わったお仲間をお持ちで……」

 ミノルヴァは、VFマスク戦隊の面々と一緒にいるフォードに驚いていた。彼からすれば、メンバーの顔ぶれが変わったようにしか見えないだろう。

「ンな事はどうでもいいから、例の件……割り出せたのか?」

「はい、こちらがリストになっています」


 ミノルヴァは、フォードにリストを手渡した。この工業地帯は、工場ごとに番号が割り振られているのが最大の特徴である。

 このリストに載っているのが、稼働していてかつクエストの依頼も出ていない工場。フォードは、ペラペラと紙をめくる。

 しかし、しばらくして、リスト名が変わった。調査不可能とされたリストだ。これだけでも100件近くはあった。


「あのさ……これって?」

「ええ、大抵の工場は快く情報提供してくださったのですが、パープルメロン社所有の工場だけは機密事項であると……」

「パープルメロンっていえば……デズモンド社の孫請けになっている半導体の会社か」


 パープルメロン社は、40年ほど前から半導体を製造している会社であり、十数年ほど前にデズモンド社に買収された会社である。

 年商4000億ルド、半導体のシェアは、このカルミナでもトップを争うほど。この会社こそが、シバレーの国の経済及びライフラインにおいて縁の下の力持ちである。

 それほどの会社が協力してくれないのは、何かウラがあるような気がしてならなフォード。

 あれだけの年商なら、工場の作業員もそれ相応だ。その中には、新聞を読んで協力の意思を示してくれる人がいるはずだ。

 だが、それさえもいなかった、とミノルヴァは語る。何度も何度も頭を下げながら、フォードたちのご機嫌を取ろうとしている。


「申し訳ありません、フォードさん。先方への協力は、幾度となく頼んだのですが……」

「いや、ここまで来たら、後は俺たちの手で候補の工場を絞れる。あとは、パープルメロン社とその周辺を調べればいいだけだ」


「ありがとうな、ミノルヴァ。スゲー有力な情報だったぜ」

 フォードは、ミノルヴァの肩をポンと叩き、大仕事をねぎらった。別に大したことは……とミノルヴァは謙遜した。


「では、私はこれでドロンさせていただきます」

 ミノルヴァは、指を組んで忍術の構えを取った。それから、とても初老のメタボとは思えない速さで帰っていった。


「すまなかったな、ミノルヴァ」

 フォードは、去っていくミノルヴァに手を振った。

 ここから先はシラミ潰しの作業。一つ一つを手分けして探る必要がある。


「さてと、ここで一つ問題だな……」

 フォードは、腕を組みながら言った。


「ミノルヴァさんが頑張ってくれたじゃん! 他に何が問題あるの?」

「……レイジに、この事態を伝える手段がねぇ」

 フォードは、口元を歪ませながら言った。山奥に修業に行かせたのだが、少なくともあと二日は戻るつもりはないようだ。


「大体の場所が分かってるなら、アレ出すぜ?」

「ルベール、アレはもう少しかかる」

「マジかよ……」

 ルベールは、愛機が使えないことにショックを受けた。


「大体、あなたはメカへの愛着がないのか? 最近は敵との戦闘が多いとはいえ、いつもボロボロにされては、我々の負担も重くなるというものだ」

「モノは大切に使え……ってか。わーった! わーったよ、次から気を付ける」


 ルベールは、後頭部をかきむしった。リュイの説教を軽く聞き流した。

 リュイは、なおもルベールの耳をつねり、説教垂れる。5人の中で最もメカへの愛着が強いからこそ、文句も多いようだ。


「リュイ、そこまでにしよーよ。早く、サクラたちの場所を特定しよーよ!」

「そうだぜ。今は、ケンカしてる時間すら惜しいぜ」

 フォードとメレは、我先にとばかりに先を急ぐ。


「お、おい! レイジのことはいいのかよ?」

「どうにもならねぇ以上、アイツ抜きでやるっきゃねぇだろ。どうしてもってんなら、早く戻ってくることを祈るんだな」


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