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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第5章 ライバル再び
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第60話 ライバル決戦 レイジVSエルトシャン Ⅰ


 翌日14時。シバレーアリーナは相変わらず満席だった。立見席でさえも人が押し合いへし合いしている。

 レイジは、控室でフォードたちに励まされていた。ここにいても、観客たちの興奮が伝わってくる。


『さぁ、長きに渡り開催されたブロール・リーグも、気づけば決勝戦! そして、このカードになる事を誰が予想できただろうか!』


「俺……行ってくる!」

「おう、必ず勝ってこい!」

 フォードとレイジは、お互いの拳を突き合わせた。それから、レイジは控室を出ていく。


『青コーナー! 多彩な魔法を変幻自在に操り、今日という日に栄光の虹をかけられるか! 虹色のエルトシャン・ラー・デュガ!」


 東側の選手入場口、エルトシャンはスモークの中から颯爽と現れた。

 それとともに、和太鼓とトランペットが鳴り響いた。ミスターを倒した彼の雄姿をたたえ、ラオルドの応援団が駆けつけてくれたのだ。

 それだけではなく、応援歌まで考えてくれたのである。


「光の剣で 奇跡起こせ

 お前の虹は 栄光のアーチ 絶対勝つぞエルトシャン!」


『赤コーナー! 強敵難敵を気合で乗り切ったその炎、その魂で栄光を掴めるか! 不撓不屈……黒飛レイジ!』


 何度か応援歌が繰り返されたのち、赤コーナーにスモークがたかれた。

 レイジは、竜の翼に似たFマークを背負う。ファスナーを勢いよく閉じて、準備万端!

 一歩一歩を強く踏みしめて、いざ闘技場へ。勇ましいいでたちで、エルトシャンを見据える。


「心の炎が 天を焦がす

 今こそ根性だ、闘志を見せろ! レ・イ・ジ! レ・イ・ジ!」


 エルトシャン応援団に負けじと対抗したのは、フォード。両手を目いっぱい振って客席を煽っている。

 その熱意が少しずつ伝播し、10回ほど繰り返したころには客席の何割かが乗ってくれた。


「やっと来てくれたね、レイジ。最高のひのき舞台で戦える日を夢見ながら、僕も自分を0から鍛えなおした」

「待ってたぜ、エルトシャン! 俺は、今……心の底から震えている。この意味が分かるか?」


 エルトシャンは「分かるさ」と噛みしめるようにつぶやいた。


『それでは、両者見あって……決勝戦、開始ッ!』

 銅鑼が力強く鳴り響いた。その瞬間……。


「“エクスカリバー”!」

「“ロッソカリバー”!」


 早速、光と炎が剣となってぶつかり合った。

 さらに、レイジの右手からはビリビリと稲妻が走っている。

 その衝撃の大きさに、エルトシャンは口角を上げた。こうでなければ、楽しくないのだ。


 レイジは、左手にも炎の剣を持った。さらに逆手持ちに変えて、手数で勝負を仕掛ける。

 エルトシャンは、一刀流で猛攻を軽くあしらった。


「“ウィンド”!」

 空いた左手から、突風が吹き荒れる。レイジは、膝をグッと曲げて踏ん張った。

 エルトシャンも、これしきの事でレイジが吹き飛ばないと計算済み。体勢がわずかに変わった一瞬を逃さない。


「しまった……」

 レイジは、慌てて身をひるがえして突きを避けようとした。しかし、時すでに遅し。


「……甘いね」

 エクスカリバーは、レイジの左肩を貫いた。

 あの時と、同じだ。悔しいと、超えたいと思わせた一撃。レイジの心に火がついた。

 貫かれても、ひるまなかった。痛みを堪え、左アッパーを撃つ。熱い一撃が、エルトシャンの胸にクリーンヒット。


「あの日よりずっとイイ一撃じゃないか」

「当然だ! この炎は、精神の力……気合と根性の炎だ!」


 レイジは、エルトシャンに強烈な回し蹴りを浴びせる。エルトシャンが、一瞬バランスを崩した。

 この瞬間に、レイジは“ファイア”で吹っ飛ばす。エルトシャンは、狙い通りに吹っ飛んだ。

 しかし、タダではやられたくないのは同じ。彼の両手から、泡のようなものが無数飛んできた。



「小手先だけで俺を倒せると思うなよ」

 レイジが泡にパンチすれば、簡単にはじけた。レイジは濡れた。


「分かっているさ……君はそういう男だ。真正面から戦わないと勝てない相手だ。そして、その策も用意している!」


 場外寸前に追い込まれたエルトシャンは、光魔法“ライト”を唱えた。

 右手から一筋の白い光が放たれる。見当違いな方向を狙ったようにしか見えなかった。

 だが、先ほど放った泡に光が当たると、屈折して光の軌道が変わる。

 何度も何度も屈折と全反射を繰り返して、やがて“ライト”がレイジの背中を撃つ。



『なんという複雑な軌道! これも、虹色の魔法を使うエルトシャンならでは!』


 緻密な計算がなければ、決して成功しない複雑軌道の“ライト”。

 レイジは、意地でも近づこうとしたが、そのたびに“ライト”を撃たれる。それも、先ほどとは違う軌跡を描いて。

 これを破れなければ、一方的にエルトシャンに打ちのめされるのみ。レイジは、思考を巡らせる。


「無数の泡が浮いている。これさえどうにかなれば……!」

 レイジは、右手に渾身の力を込めた。神経をグッと集中させれば、炎が燃え上がる。


「“クリムゾン・ファイア”!」

 赤く燃え上がった炎を、泡へと投げつけた。もちろん、炎は消えた。

 しかし、同時に泡もはじけていく。これを何度も繰り返し、力技で泡を湯気へと変えていく。


「軌道を変える策を封じただけじゃなく、光を通しにくくしたか……」


 エルトシャンお得意の光魔法は、湯気によって分散されてしまう。

 口では悔しそうな彼だが、まだまだ余裕。まだ5色の魔法が残っている。


「“トルナード”、“サンドーラ”!」


 エルトシャンが両手を広げて素早く回れば、彼を中心に竜巻が展開された。

 その竜巻は、レイジが強引に作ったキリをも取り込む。それだけではなく、大地魔法“サンドーラ”によって攻防一体の竜巻に。

 レイジが近づけば、真空の刃と砂の砥粒で切り刻まれる。“ファイア”で竜巻に攻撃すれば、その遠心力で明後日の方向に逸れてしまう。


『レイジ選手の攻撃が、全く通らない! 鉄壁の防御にどう対抗するッ!』


「……ダテじゃないな。その魔法」

「だから言ったじゃないか。僕も鍛えなおしたってね」

「最初から飛ばしてもいいのか? 俺は……」

「知っているさ。後半戦にめっぽう強いってね」


 マスクドレッドが強敵なら、エルトシャンは難敵。変幻自在、虹色と紹介されているだけある。レイジは、そう思った。

 エルトシャンには、レイジの手の内が知られている状態。

 一方で、レイジにとっては、この竜巻を破ったところで、向こうはいくらでも隠し玉を持っている状態。


「読めない……次は、何で来る!? それ以前に、どう突破する……」


 レイジは、もう一度“ファイア”を撃った。しかし、竜巻に巻き込まれて弾かれる結果は変わらない。

 失敗に終わった一投だったが、レイジはここに活路を見出した。

 大ダメージを覚悟で、レイジは竜巻に突撃した。


『レイジ選手、何を血迷ったか攻防一体の竜巻に向かって走り出した!』


 やはり、吹き飛ばされる。だが、それでも構わなかった。

 竜巻の中心に、エルトシャンがいることは分かっているのだから。


「“ファイア”!」

 レイジは、ジェット噴射でエルトシャンの真上の位置を取った。

 エルトシャンは、レイジを見上げて不敵な笑みを浮かべた。


「そう来ることは読めていた。“サンダー”!」


 エルトシャンが指を鳴らせば、レイジに雷が落ちてくる。しかし、レイジはそれを左腕一本に受け止める。

 さらに、レイジは、右腕を高く突き上げて“ファイア”。


「お前の一発、お返ししてやる! “スパーク”!」


 エルトシャンの雷魔法を受けて増幅する、レイジの気合の雷撃。

 レイジの左手が、エルトシャンの七色の頭をわしづかみ。そのまま、地面に倒そうとしたが……。


「そう来るのは分かっていた。“エクスカリバー”!」


 エルトシャンの光の剣が、またしてもレイジの左肩を撃つ。レイジは、吹き飛ばされた。

 今度は、相打ち。この試合で初めて、ライバルにダメージ。両者ともに倒れている状態。


『会心の一撃が、お互いに炸裂! 両者同時にノックダウン! 1!』

 実況のカウントが、天にこだまする。


 3まで進んだところで、レイジは右拳を地面に突き付けて立ち上がった。それから、拳をパチンと叩く。

 その顔には、隠しても隠し切れないほどの笑み。ライバルとの一戦、逆境さえも楽しんでいるように見えた。


「まだまだ楽しもうぜ、エルトシャン!」

 レイジは、エルトシャンを挑発した。


「もちろん。僕がこんなことでくたばるとでも思ったかい?」

 4を数える前に、エルトシャンは立ち上がった。彼の問いかけを、レイジは鼻で軽くあしらった。

 仕切り直しの後、仕掛けてきたのはレイジ。拳を振りかぶりながら、まっすぐに走ってくる。


「今度はインファイトかい。だったら……“セラミカル・シールド”!」


 土と水から成る粘土を高温で焼き上げてできた、陶磁器の盾。

 レイジの拳は、堅固な壁の前に阻まれた。衝撃がそのまま跳ね返り、レイジの右手がしびれる。


「硬さは、武器だ! “ハイドロボム”!」


 せっかく気づきあげた壁を、今度は水素と酸素の爆弾で発破。

 レイジもろとも吹き飛ばすだけでなく、砕けた陶磁器が刃としてレイジに襲い掛かった。

 早くも、両者のダメージに差がついている。それでもレイジが焦ることはなかった。


「力の出し惜しみをしているんじゃないかい?」

 今度は、エルトシャンの方から挑発してきた。


「今、身体があったまったところだ!」

 レイジは、手首を伸ばしながら言った。


『早くもレイジ選手はボロボロ。だが、俺は知っている……お前の奇跡の数々を!』


「俺も見てきた、レイジ……お前なら勝てるってよ! よし、応援歌もう一丁!」

 フォードが客席を煽ると、アリーナの半分がメガホンを鳴らした。

 それに対抗するがごとく、もう半分がエルトシャンに声援を送る。


「“レッド・クライシス”!」


 レイジの身体が赤く燃える。開始10分、レイジが早くもギアを上げてきた。

 マスクドレッド戦の時よりも早いタイミング。レイジの闘争心が現れている証だ。


「来なよ、レイジ。その全力……叩き潰してやる! “アクア”!」


 エルトシャンの左手から、水の弾がレイジに向かって真っすぐ飛んで行った。

 牽制で撃った“アクア”は、レイジの持つ炎の前に消えた。そればかりか、水蒸気爆発を起こす結果に。


「おおおおおおおお!!」

「君のその炎は、“コレ”よりも熱いのかな? “ボルケーノ・ドライブ”」


 エルトシャンが地面に右手を突き付けると、彼の前に溶岩が噴き出してきた。

 もう目の前まで来ていたレイジは、その溶岩を浴びる格好となった。

 冷えて岩になり、それが体にくっつこうとも、レイジはそのまま突っ込んで殴った。


「炎に溶岩で対抗なんてナマイキな……!」


「だったら、もっとヒートアップすればいいじゃないか。まだまだ燃え足りないだろう?」

「やってやろうじゃないか! 俺の力は、こんなもんじゃない!」


レイジ、反撃の狼煙を上げられるか……!

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