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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第5章 ライバル再び
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第48話 真紅の炎の王者


『エルトシャン選手、先へ行こうとしたが、シュテンオーガに阻まれた!』


 ダンジョンタワー5階、7メートルの壁がエルトシャンに立ちはだかる。

 どうしても先を進めてくれないのなら、とエルトシャンは、シュテンオーガの目の前で両手を勢いよく叩いた。

 雷が落ちたような鋭い重低音が、ダンジョンタワー内に響いた。

 シュテンオーガも怯んだが、近くにいたマスクドレッドも耳をふさぐほどの迫力だった。まだ、彼の耳には雷鳴の余韻。


「シュオオオ……」

「な、なんてデタラメなヤツなんだ」


 マスクドレッドが驚くのは、まだ早かった。今度は、エルトシャンの右手には光の刃。


「“エクスカリバー”!」

 光り輝く剣が、ズブリと鬼の一つ目を貫く。

 シュテンオーガの足取りが、さらにフラフラになった。


「俺も負けちゃいられねぇ! “フレア・ウィング”!」


 マスクドレッドも負けじと攻撃に入る。彼は両手で燃え盛る巨大な剣を構えると、それを豪快に振り抜いた。

 その勢いで飛んだ炎は、言葉通り炎の翼を持った巨大な鳥のよう。フェニックスが、勇猛果敢にシュテンオーガの胸を焦がす。

 それでも、千鳥足は変わらず。シュテンオーガ、涼しげな顔で耐え抜く。


「お、俺の必殺技が……!」

 二次予選は、そんなに甘くない。今週の怪人など目ではないほどのモンスターやライバルが、右左どちらを向いてもいるのだ。

 目の前の壁さえ殴って突破できれば、6階まではすぐそこなのに……! マスクドレッドは歯がゆい思いをした。


「変身してもその程度じゃ、先が思いやられるね。“ファイア”!」


 エルトシャンの右手から炎の玉が飛んできた。その直後に、“ウィンド”の風魔法を唱えて炎の威力を強化する。

 シュテンオーガの目の前で、エルトシャンの炎が爆発した。戦隊レッドにも引けを取らぬ炎の威力。


『エルトシャン選手、ルベール選手! ものすごい炎の攻勢でシュテンオーガを追い詰める! これでは、後ろの冒険者も先を進むことができないッ!』



「変形! “グレン・ガンズ・マシンガン”!」

 レッドの持っていた赤い大剣が、キュルキュルと電子音とランプを光らせながらマシンガンへと変形した。

 銃にも剣にも変わるロマンあふれる武器。Vシネマヒーローにだけ許された専用装備である。

 マシンガンは、赤いオーラをまといながら、火を噴く。無数の弾丸がシュテンオーガに襲い掛かる。


「シュテエエエン!」


 シュテンオーガが、二人を薙ぎ払いにかかった。エルトシャンは、振りかぶったタイミングを見ていたので、上手くかわすことができた。

 しかし、イケイケ押せ押せで攻撃していたレッドの左わき腹に、鬼の金棒が直撃。なぜか火花を散らしながら、レッドは吹っ飛んだ。

 普通なら痛恨の一撃。二度と受けぬように慎重に立ち回るのだが、このレッド、無鉄砲にもほどがあった。


『退くことを知らない紅の戦士! これぞ、我らがヒーロー!』

 この実況、かなり戦隊贔屓である。


 続いて、エルトシャンの攻撃。今度も的確に急所を狙って“エクスカリバー”! 心臓を穿つ一発。

 しかし、シュテンオーガは、あまりにもタフだった。目つぶし一発に心臓への一発もあったにも関わらず、まったく倒れる気配がない。

 そればかりか、ヒョウタンの中身をグビグビ飲んで、二人の事をほとんど意に介していないようだ。

 ヒョウタンの中身を飲んだシュテンオーガは、ただでさえ赤い顔をさらに赤らめた。それこそ朱色、鮮やかな赤に変わった。


「ユェエエエン……ひっく」

「さらに酔ったようだね」


 さらに千鳥足の不規則さに磨きがかかったような気がした。エルトシャンが“サンダー”を撃っても、簡単にかわす。

 その足取り、まさに酔拳のごとし。シュテンオーガは、ヒョウタンで二人を殴る。


『おおっと! 呑んで呑んで、呑まれて! シュテンオーガ、泥酔モードに突入だ!』


「やべぇ……めっちゃ酒のニオイがきつい」

 レッド、マスク越しでも鼻が利くらしい。というより、シュテンオーガがあまりにも酒臭いようだ。

 ザポネ特有の清酒……ではなく、シュテンオーガが好んでいるのはスピリタス。ほぼ純粋なアルコールと言っても差し支えないこのお酒、すぐに酔って千鳥足になれるから好きなのだとか。


「そのヒョウタンの中身は、良く燃えるだろうぜ!」

 しかし、相手が酒だと分かれば、狙うべきは一つ。ヒョウタンをぶっ壊して、酒をぶちまく。

 レッドは、その赤い大剣でヒョウタンを斬りにかかった。高く飛び上がり、その勢いのまま振り下ろす。


「まさか、君も同じことを考えるなんてね。ただ、それじゃ隙だらけだね。“ハイドロボム”!」


 エルトシャンの指摘通り、レッドの攻撃は空振り。そんなレッドをも巻き込むように、エルトシャンは水から作った爆弾を爆発させる。

 シュテンオーガの巨体が、揺れた。レッドは、床に叩きつけられた。

 立ち直りが早かったのは、レッドの方だった。レッドは武器をさらにモードチェンジさせて、今度は槍に変えた。


「いくぜ! 必殺……“クリムゾン・ドラゴン”!」

 レッドが炎をまといながら、突進。そして、槍でシュテンオーガの腹を一突き。

 その姿が龍に見えることから、この技の名前がついたらしい。


『灼熱の一閃! ここでレッドの大技がシュテンオーガに決まったァ!』

 シュテンオーガ、ここでノックダウン。次の道が開けた。


「君のそのスタイル……誰かに似ているね。なかなか強かったよ」


「そういうお前こそ、とんでもない強さだな。俺たちの6人目になれよ!」

「丁重に断らせてもらうよ。僕は、一人で強くなる……そう決めたんだ」


「ちぇっ、食えねぇ男だぜ」


 エルトシャンは、ルベールの右手を振り払い、さっさと階段を駆けあがった。


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