第40話 大都会・シバレー
トラハルの港から船に乗り、三日三晩。フォードの一味は、世界最大の都市・シバレーに到着した。
このシバレーという街には、デズモンドに比肩するほどの大企業・ブレイトン社の本社がある。
ブレイトン社もまた、技術開発を主軸にすえた企業であり、その恩恵もあってかビッグマハルの比ではないほどに技術が進んでいる。それこそ、レイジのいた地球と同じかそれ以上だ。
世界各地から人が集まるため、シバレーは人呼んで“種族のブラックボックス”。人種どころか、亜人族も背広を着て通りを闊歩している。
「……すごいなぁ。いつかテレビで見たニューヨークみたいだ」
「驚くのは、まだ早いぜ。ほら、見てみろよ」
フォードが指をさした先は、エアカーが作った渋滞。そして、小型ロボットと並んで歩く市民の姿も。
せわしない人と車の流れ。一説によれば、このシバレーの住民は世界で最も歩くのが速いのだとか。
レイジは、建物にも注目した。見上げれば天さえも貫くビルが無数に建っているのが分かった。さらに、ネオンの看板が所狭しと並んでいる。日が沈めば、ウン千億ルドの夜景と化すだろう。
港から出て数分歩いただけで、この光景が広がっているのだ。中心部がどうなっているのか、レイジには全く想像がつかない。
しばらく探索をしていると、警察帽をかぶった白いロボットのような物体が近づいてきた。
『ウゥー! ウゥー! こちらSCP、SCP。怪しい4人組を発見しました』
SCPと名乗ったロボットは、胸の赤いサイレンを光らせながら、レイジたちを怪しんでいるようだった。
“スペシャル・シバレー・ポリス”の頭文字を取ってSCP。だから、桜にも似たマークを掲げ、さらに赤いサイレンを装備しているようだ。
これだけ高性能に見えるロボットなのに、サイレンの音だけは刑事ごっこなみに棒読み。アザミにとっては、不思議でたまらない。
「ぼ、僕たちは旅の者です……仲間を探すためのね」
ギュトーは、ビッグマハルで新しく発行された冒険者パスを見せた。
「そうそう。俺たち、エンジニアを探してシバレーまで来たんだ」
レイジもSCPを説得しようと試みた。しかし、SCPを信用させるまでには至れなかった。
『スキャン、スキャン……』
SCPは、ジジジと妙な機械音を出しながら、レイジの周りを飛び回った。何か、SCPにとって気になる事があるらしい。
レイジは、困惑していた。ロボットとはいえ、こうして警察の検問を受ける経験もそう多くなかったからだ。
SCPがレイジの周りを飛ぶことをやめた。そして、サイレンを鳴らす……というより叫ぶ。
『ウゥー! ウゥー! 応援を要求。ショチョー、ショチョー!』
『こちら、ショチョー。SCP18号よ、何の用であるか?』
今度は頭そのものがパトランプなロボットが現れた。映画の上映前にしかお目にかかれないような存在が、今、レイジの目の前にいる。
レイジは、一周回って感動すら覚えた。自分の種族名で鳴くモンスターに続き、またしてもアニメじゃない、と思った。というか映画だが。
「また、警察ロボ増えたで……」
アザミは呆れていた。
『むむっ! この人物……ビッグマハルでJ・Jを倒した黒飛レイジと99.93%一致してるぞ!』
「そうだぜ! コイツがレイジだぜ。100万の男だぜ」
フォードは、レイジの背中を強くたたいた。レイジは、その勢いで転びそうになった。さらに、ショチョーが将棋倒しになりかけた。
身辺調査が終わったかと思えば、今度はSCPがせわしなくシャッター音を鳴らしている。
こんな場所で時の人に会えると思わなかったようで、嬉しさのあまり数十枚単位で写真を撮っている。
『あなたがレイジ、あなたがレイジ。出会えてうれしいな』
『こんな有名人を疑うなど、本当に申し訳ない。ぜひ、シバレーを楽しんでくれ!』
二体の警察ロボは、嵐のように過ぎ去っていった。
「何やったんやろ、あのヘンテコなロボット」
アザミは、警察ロボの背中をずっと目で追いかけていた。
「まあ、愛嬌あっていいじゃねぇか! 俺は、ああいうの好きだぜ」
フォードは、笑っていた。レイゾン時代はギアと呼んでいたロボットと一緒だったからか、あの手の事には慣れていた様子だった。
警察ロボに調子を崩されたレイジたちは、摩天楼の元を歩き続けていた。
しばらく進むと、今度はスクランブル交差点。数千、数万という人が歩行者信号に注目している。今にも合戦が始まるかのような緊張感が、そこにはあった。
このスクランブル交差点の一角には、やはり天を貫くほどに高い駅ビル。
「で、どうするのですか? これだけ、人が多ければ腕利きの技師を探すのも一苦労ですが……」
信号待ちの緊張感に耐えられなかったのか、ギュトーは訊いた。
「だったら……とりあえず、クエストを見てみようよ」
レイジは、冒険者パスを開いた。そして、シバレーで受けられるようなクエストを探している。
やはり、ビッグマハルの比ではないほどに、クエストが集まっているようだ。
下は数ルドから、上はやはりミリオンまで。あまりにも多いクエストの中、レイジは一つだけ気になるものがあった。
「このクエスト……“無制限の報酬”?」




