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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
外伝1 虹色の魔術師VS改造された魔人
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EP3 苦しみからの解放


 複数の魔術を組み合わせることに勝機を見出したエルトシャン。

 今度は、土属性と風属性を組み合わせ、砂嵐を巻き起こす。ルシファーの目をくらませるには十分に思われた。

 だが、やはり翼の一振りで、その砂嵐はかき消された。逆に、エルトシャンの視界を奪う結果となった。


「小手先だけで勝てると思うな、と何度言わせる?」


「無論、力比べの方でも負けないよ?」


 ルシファーは、左腕を大きく振りかぶりながら、低空飛行でエルトシャンに急接近してきた。

 “ストーン”で岩の壁を繰り出しても、正面突破はされてしまう。

 そこでエルトシャンが思いついたのは、土と水を混ぜて、それを焼き固めたものだった。


「焼き固めた陶器の盾……名付けて“セラミカル・シールド”!」


 ルシファーの拳が、陶器の盾に阻まれた。衝撃がそのまま跳ね返る。ルシファーは、左手を振って痛みをごまかした。

 強靭な盾を前に、ルシファーが選んだのは、やはり“フレア・マシンガン”だった。何度も何度も衝撃を受けていれば、いずれは砕けるだろう。そう思っての事だった。

 相手が“セラミカル・シールド”に気を取られているうちに、エルトシャンは、ルシファーの背後を取った。


「“エクスカリバー”!」


 光の剣、再びルシファーを穿つ。今度は右腕、それも肉体と機械の境目をちょうど狙い撃ったかのように。

 ルシファーは、振り返るなりすぐに“サンダー”で反撃に出た。今度は、エルトシャンに直撃。

 自分が操るよりも痺れる一発。エルトシャンは、ルシファーの事を心の奥底で“強敵と書いて友”と呼ぶべきだと思った。

 だからこそ、負けたくなかった。エルトシャンは、土と炎の魔術を組み合わせる。


「“ボルケーノ・ドライブ”!」


 土を溶かして溶岩に。粘りのある溶岩が、ルシファーの翼にまとわりつく。

 溶岩が冷えて岩に変われば、ルシファーは羽ばたくことが難しくなった。


「うぐぅあああああ!!」


 ルシファーは、叫びながら“フレア・マシンガン”をぶっ放す。右腕のガトリングが、煙を上げている。

 コントロールも思うようにできていないようだ。そこまで離れていないエルトシャンに対して、一度たりとも攻撃が当たっていない。 

 再び、苦しそうな表情を見せかけたルシファー。しかし、エルトシャンは、一瞬だけ変わったルシファーの顔を見逃さなかった。


「ルシファー、君は本当は戦いたくないんじゃないかな?」


「降参したくて言っているのならば、失望したぞ」

 ルシファーは呆れていた。カッコつけて一騎打ちを選んだエルトシャンの実力を認め始めたところで、あの物言いだからだ。


「そうでもないさ。ただ……君を苦しめているこんなもの……!」


 エルトシャンの周りを光り輝くオーラが包んだ。ここで全てを出し切るつもりだ。

 選ぶ属性は、もちろん自分が使える6色すべて。


「6色の刃に斬れないものは無し。聖剣を超えた聖剣……“ゼクスカリバー”!」


 エルトシャンの周りに5つの魔法陣が現れ、そこから剣のようなものが現れた。

 まず最初に選んだのは真紅の剣。灼熱の炎が、ルシファーを追いかける。

 必死にかわそうと動き回るルシファーに、さらにもう一本。今度は緑の刃。大地の力を宿した剣が、地中からルシファーを追い詰めていく。

 地中からだけではない。空中から軌道を鋭く変えながら、紫の刃が襲い掛かる。炎と大地、そして稲妻の三本の剣がルシファーを少しずつ追いつめる。


「こんなもの……うぐっ!」


 見えない刃が、ルシファーに直撃した。エルトシャンが繰り出した真空の刃だ。

 さらに、水の刃がその姿を変幻自在に変えながら、ルシファーを何度も切りつけていく。

 エルトシャンの底力に追いつめられたルシファー。そんな彼に、エルトシャンの最後の一本が襲い掛かる。


「君は、もう戦わなくていいんだ。苦しまなくていいんだ……」


 エルトシャンは、最初から狙いを右腕のガトリングに決めていた。最後は、光の刃で一刀両断。

 切り落とされたガトリングは、鈍い音をたてながら鉄くずへと化した。

 バランスを崩したルシファーは、そのまま崩れるように倒れた。


「魔人の象徴である、その右腕は切り落とした……あとは、その心だけだね」


「……お前に、お前なんかに何が分かるんだ! 俺は、人間を殺すために!」


「そんな事のために手術を受けたわけじゃないよね。君だって、月にいる魔王を……世界を恐怖のどん底に貶める魔王を倒したかったはずだ」


「そんな昔のこと……!」


 ルシファーは、逆上した。確かに、5年も前ともなれば、昔のことかもしれない。

 エルトシャンは、一枚の写真を彼の目の前に突き付けた。地下鉄のホームで拾った日誌に挟まっていたものだった。

 写真の日付は、4月1日。場所はカナベラル宇宙開発部のビルの前。人種も種族の壁を超えて集まった精鋭たちが、肩を組みながら笑っている。

 そこには、竜の鱗を持った人間もいれば、魚の特徴を色濃く持った魚人も。そして、ルシファーも例外なく写っている。


「ほんのちょっとだけ、僕ら人間のやり方が強引だっただけさ」


「いまさら、思い出なんか……思い出なんか!」


 ルシファーは、写真を手に取り、あの日のことを懐かしんでいた。

 このカナベラルに来た目的は、この写真に写っている人たちと同じ、魔王討伐だった。

 しかし、どうしてもルシファーを戦わせたかった人がいたために、魔王討伐の計画は頓挫してしまったのだ。


「もし、どこかで何かがわずかに違っていたら……君は、120万ルドという高い額で冒険者たちに追われなくて済んだのかもしれないね」

 エルトシャンが語り掛けると、ルシファーは急に落ち着いた。


「IFの話は好きではないが……それを思わなかった日はなかった。俺は、誇り高きハーピーのまま、魔王を倒したかった」


 ルシファーの目から、すっかり殺意が消えていた。右腕の武器を切り落とされ、羽根が石で固まった今、もはや戦う意志はなかった。

 これ以上戦っても、エルトシャンの持つ変幻自在な魔術の前に沈むだろう。ルシファーは、そのように推測を立てた。


 この一戦において、ルシファーが苦しんでいたのは、破壊の衝動を植え付けられたためだった。それも、人間の勝手な都合で。

 だから、危害を加えたくないというハーピーの血が、ときどき攻撃を外させていたのだろう。


「なるほど、それで時々苦しんでいたのか」


「そういう事になる。話を変えるが……エルトシャンと言ったか、最後に頼みを一つ聞いてほしい」


「なんなりと」

 エルトシャンは、笑顔で二つ返事した。


「武器を失った今、俺はもう戦うことができない。これだけ暴れ狂った俺だが、せめて……最期くらい、誇り高きハーピーの男として散りたい」


「それは、僕に君の介錯をやれ……と?」


「ああ。頼む、その聖剣で一思いに」


「それは構わないけど……ただ首を刎ねるだけでは、僕の気持ちが収まらない」

 エルトシャンは、ためらった。


「どうした? 早くしてほしいのだが」

「一つ、君に……この宇宙開発部の皆に誓いたい事がある。君たちの意志は、この僕が継ぐ。君たちの無念を晴らすためにも、僕は魔王を倒すと誓おう」


「必ず、成し遂げてくれ。俺は、天の上からお前の成功を願おう!」

 ルシファーは、エルトシャンから光の剣を奪うと、それを自分の腹に突き立てた。

 その顔は、とても安らかだった。彼が倒れた瞬間、“エクスカリバー”は消えた……。


 魔王討伐の遺志を継いだエルトシャンは、羽根を一枚貰っていった。さらに、ルシファーのガトリングも失敬した。

 エルトシャンは、討伐報酬として120万ルドをシバレー政府から受け取った。しかし、ただただ嬉しいだけでは済まされない。彼のその表情は険しかった。


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