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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第4章 ミリオン超えへの挑戦
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第33話 初恋をとりもどせ!!


 フォードの一味によるモンスター討伐は、三日三晩続いた。

 盆地の村の井戸――その地下に潜む女のゾンビ“サッド・コア”……討伐報酬2943ルド。

 湿原地帯の村にて、スライムを討伐……100匹につき、120ルド。森の中に潜むマンドラゴラの討伐……5匹で60ルド。

 下町の工場に現れた機械の姿をしたドラゴンの“インボ竜”……二匹合わせて3600ルド。


 フォードたちは、着々と功績をあげている。通算報酬額は、ついに1万の大台に突破。

 しかし、それと時をほぼ同じくして、エルトシャンと勇者が500万の大台を叩きだした。ディーニタイムスが、そう報じたのである。

 彼らが4ケタ台のモンスターを倒している間も、ライバルたちは6ケタの報酬になるクエストに挑戦している。

 焦りがないわけではない。しかし、焦ったところでどうにもならないし。そして何より、自分も7ケタのクエストを控えている状況。余計なことは考えないに限るのだ



「爺さん、帰って来たぜ。仲間も一人増やしてな」


「ギュトーと申します。少しの間ですが、厄介になります」


 ギュトーは、ファウストにお辞儀をした。


「何ともまぁ真面目そうな新入りじゃのう……」


 アザミの件もあってか、ファウストはイロモノが仲間になると思っていたらしい。「何だよ、文句あんのかよ」と、フォードは小さな声で悪態をついた。

 しかし、ファウストは地獄耳。フォードの悪態を間接的に返してきた。


「ギュトー君じゃったかな。フォードの一味とは、お前さんも運が悪かったのう……」


「厄介者揃いだから、という意味でしょうか? それでしたら、僕も同じ厄介者ですよ」


 ギュトーは、作り笑顔で返した。元軍人、気合による攻撃だけが取り柄の少年、オネエ。そして、店の仕事を抜け出して狩りにいそしむ元肉屋。


「そないな事より……エマはん、えらい元気ないけどどないしたん?」


 アザミは、エマの様子がおかしいことに気づいた。彼女の目元にはクマが出来ていた。明らかにやつれている様子だった。

 不安で不安で……食事がノドを通らず、夜も満足に眠れぬ状態が続いているようだ。

 いつもは気立てがよくて、たまに気の強いところもある彼女。しかし、そんな素振りが全く見られない。


「落ち着いて、聞いてくれ……どうやら、わしのエマが狙われたんじゃ」


 ファウストは、一枚の手紙をレイジたちに見せた。文面には、確かに「ここに住むエメラルド色の髪の女を殺す」とあった。

 向こうがレイジとエマの関係性に気づいたかどうか、そんなことまでは知る由もない。しかし、これが届いたのは二日前の事だったという。それからというものの、エマはこの様子である。


「エマさん……」


「どうしよう……フォードさん、レイジ君。私……」


 エマは、フォードの胸にしがみついた。顔をうずめ、張り裂けそうな不安からか、嗚咽交じりに泣きじゃくる。


「何も怖がるなよ、俺たちがいる。何より、レイジを信じてくれ。もう、あの時の弱虫なんかじゃねぇ」


「うん……! 俺が絶対に奴をぶっ飛ばす……なんてアニキみたいに大きなことは言えないけど、それでも頑張る」


 あまりにも不器用な慰め。普通の女性が聞けば、さらに泣いてしまうような言葉。励ましにすらなっていない。

 しかし、エマはそのおかしさゆえに、思わず笑ってしまいそうになった。


「そうだよね……私が諦めてちゃ、レイジ君が本気で戦えないもんね」


 その声は、まだ暗かった。レイジには、女を慰める言葉の引き出しが少ない。

 無い頭をひねった。少しでも、エマを安心させてやりたい……その一心で。


「……無理にとは言わないよ。いつかきっと、元気なエマさんに戻ってほしい」


 レイジは、迷いに迷った末、シンプルに返した。エマは涙を手でそっと拭うと、ゆっくりうなずいた。

 未だに精神的に疲れている状態は変わらない。フォードたちは、エマを一人にさせておいた。

 彼女に立ち直ってほしいというのは本音だが、それを悠長に待っていられるほど余裕はなかった。


「いや、俺がいつものエマさんを取り戻すんだ……!」


 レイジは、力強く言った。フォードは、軽くはにかんだ。その後、二人はリビングへと降りた。


「エマさん……でしたか。彼女の様子は?」


「大丈夫だってことだけは伝えておいたぜ」


「命狙われとる状況やし、それくらいしか出来ひんわな……」


 エマが心配なのは変わらない。しかし、心配してばかりでは事は進まない。

 フォードは、手をポンと叩いて「話題を変えようぜ」と提案した。


「それもそうじゃな……身を案じていても仕方がないの。ほれ、これが今日の朝刊に挟まっておったものじゃ」


 ファウストは、ディーニタイムスに折り込まれていた一枚の紙をレイジたちに見せた。

 J・Jから挑戦者へ向けた手紙だ。決戦は、5月24日の23時。舞台は、ディーニ市街の北西部に位置するアイザー天文台。

 レイジからの挑戦状を受ける意志を示している。しかも、指定された日時は、ちょうど新月の夜だ。

 一度は好きになった女に、魔手が忍び寄っている。レイジは静かに怒りの炎を燃やした。



 残された時間は7日。フォードの計画では、最初の二日は体を休めることに使い、次の三日間は地道な練習にする予定だった。

 フォードと模擬戦闘を行うことで、J・J戦に備えることが一つ。そして、オレンジギガント戦で初めて試した“スパーク”の練習。

 さらに、基礎体力を養うためのワークアウト、および“ファイア”の撃ち込み600発。


 千本ファイアの時以上に、レイジはピリピリしていた。命の危機が目の前に迫っている。こんな事を考えるのも、初めてのことだった。

 地道な修業ではあるが、熱が入っている。倒さなければ、殺られる。それを回避したければ、今を頑張り抜くしかない。


 残る二日は、いじめ抜いた身体を休ませることに費やす。J・J戦を万全の状態で迎えるためだ。

 これだけではまだ足りない、とレイジは瞑想の時間を設けた。さらに仕上げとして、護摩行。とは言っても、お経を知らないので業火の中で邪念を振り払う瞑想ではあるが。

 ただひたすらに精神を研ぎ澄まし、敵を倒すことだけを考える。今は、エルトシャンに並びたいという思いは封印せざるを得ない状況だ。



 そして、迎える決戦の日。レイジたちは、胸を張ってアイザー天文台へと向かうのであった。


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