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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第4章 ミリオン超えへの挑戦
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第32話 第3の男

 ダベヤ村へと帰ったフォード一行。村長にタイガーゴイルとオレンジギガントの亡骸を持ち帰ると、村長は非常に驚いていた。


「なんと、タイガーゴイルだけでなく、オレンジギガントまで……!」


「これで報酬弾んでくれ、なんて言わねぇよ! ひとまず昨日の取り決め通り、討伐報酬として4000ルドでいいぜ」


「それは、良かったわい……そのもう一匹の報酬まではさすがに用意できん」


 村長は、ほっと胸をなでおろした。勇者が一刀両断したオレンジギガント、少し前の新聞よればその報酬は3万ルドを超えたという。そんな大金、ダベヤ村で賄えるようなものではない。

 取り決め通り、最初の4000ルドが支払われる。村長は、名残惜しそうにその袋を手渡す。


「随分と、世話になったの。こんな辺鄙な村でよければ、また来てくだされ」


「こんなに村が苦しいって時に、4000ルドなんて大金、ありがとうよ!」


「おっと、いけない! 仕込みをしなくては……」


「お、おい! ギュトー!」


 ギュトーは、慌てて村長宅を後にした。彼は、元はこの村の住人で、フォードに加担したのも助っ人になるためだった。

 フォードは、そんな彼の後を追いかけた。彼のその手腕は、この先の旅でも必要になる。スカウトしたかったのだ。


 村の大通りに面する肉屋の前。ガタイのよさそうな無精ひげのスキンヘッドが、腕を組んで立っていた。

 その表情は険しく、ギュトーはそれだけで委縮してしまった。


「た……大将、遅くなってしまいました」


「どこ行ってやがった? 随分と探したぞ」


「朝方、ある人物と一緒に畑を荒らすモンスターを……」


 ギュトーの目は死んでいた。声にも覇気がない。

 大事な人を怒らせたその罪を、重く重く受け止めていた。



「おめぇのような、朝の仕込みを忘れてほっつき歩くようなヤツ……こんなところにいても困るぜ」


「申し訳ありません、以後気を付けます……」


 ギュトーは、ばつが悪そうに謝った。しかし、大将の態度は相変わらずだ。

 大将は、イライラをぶつけたかったのだろう。空っぽになっていた一斗缶を勢いよく蹴飛ばした。


「お前は、下手に出ていれば許されるとでも思ってんだろ? その態度が前から気に食わなかったんだよ!」


「“以後”なんてねぇよ。今日から、店の敷居はまたがせねぇ! 好きにしやがれ」


 大将の怒号が響いた。解雇通告だった。

 行くアテを失った。明日からどうやって生きていくか……ギュトーは悩んだ。

 自分が思っていた以上に、大将からは嫌われていたようだ。いや、性格があっていなかったらしい。

 こんな田舎村で、住み込みで働かせてもらっていた。そんな食い扶持の保証も、今日でおしまい。路頭に迷うしかない……そう絶望した時だった。


「肉屋、クビになったんだって?」


 近くで聞いていたフォードは、急にギュトーの前に姿を現した。

 大将とは違い、あまりにも穏やかな顔をしていた。ギュトーは、顔を赤くした。


「き、聞いていたんですか……お恥ずかしい」


「あんなハデなケンカ……聞くな、って方が無理あるぜ?」


 実際は、大将が暖簾に腕押ししているような状態だった。


「僕にはほとんど勝ち目はありませんでしたけどね……」


「それもそうだったな。それで、話を変えるけどよ……良かったら、俺たちと来るか? お前のその手腕、ぜひとも買いてぇ!」


「本当に僕でいいんですか? 願ってもない話です!」


「当然。お前のナイフ術には驚いたから、こうしてスカウトしてんだよ!」


 こうして、フォードの一味に第三の男が、料理人のギュトーが仲間に加わった。実質、彼が最初の仲間である。

 フォードたちは、すぐにはディーニの街には戻らなかった。再びビッグマハルに巣食う強いモンスターを求め、旅に出た。

 J・Jとの決戦まであと9日。レイジは、少しずつ強くなろうと頑張っている。



 ――私のミスにより、おじいさまを死なせてしまいました。まことに申し訳ございません!


 白衣の男が遺族に向かって何度となく謝っていた。遺族は、その男に悲痛な拳を向ける。

 慰謝料として病院側に125万ルド、執刀医であった男にも80万ルドの請求がなされた。


 ――おい! ……のせいで、この病院も商売あがったりだ! どう責任を取ってくれるつもりだ!

 ――大体、お前のオペは前から信用ならないとクレームが来ていたぞ!




「……また、嫌な事を思い出してしまった。あの院長め……俺の医療ミスをとことんまで追求しやがって」


 フォードたちが、タイガーゴイルを倒した日の夜。ディーニ市内のとある一軒家で、男が苦悩していた。

 男は、頭をかきむしった。彼は、一年ほど前に医師免許をはく奪されたのだ。その前の職は、葬儀屋。やりがいを感じなくなってから、医者に転職したのであるが、医療ミスを何度となく繰り返し、命を奪った回数は数知れず。

 今は……というより長い間、仕事とは無縁。あるとすれば、裏社会で探すことだろうか。ヤクの取引、あるいは殺しの請け負い。

 彼の部屋の棚には、無数の女性の顔が並んでいる。しかし、そのいずれもかなり腐敗が進んでおり、既に白骨化したものも。


「次の新月……誰にしようかな?」


 男は、何枚もの写真を並べた。いずれも、若い美女ばかり。自分に多少の若さがなくなったとしても、やはり恋愛対象は若い女に限るらしい。

 そんな彼の傍らには、無数の刃物。いずれも、血で変色している。どうやら、ここにある遺体の数々も、この男が手掛けたもののようだ。


「悩んだときはこれだ。イニミニマニモ……」


 男は、どれにしようかと、写真をせわしなく指さしていた。

 わけの分からない選択のおまじないは、部屋に空しく響く。


「ザーラーム。……よし!」


 男は、エメラルド色の髪の乙女に決めた。その顔に深くナイフを突き立てる。

 その隣には一枚のメモがあった。彼女は、地元でも噂になっている偏屈な魔術師の血を引く若者だそうだ。

 次の新月が楽しみだ、そう思いながら男は舌なめずりをした。


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