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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第4章 ミリオン超えへの挑戦
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第30話 ダブルヘッダー


 タイガーゴイルの身がどんどん焼けていく。羽根はすっかり骨格だけになってしまい、もはや“リペア”の余地もないだろう。

 燃えるモンスターを眺めながら、フォードはモッタイナイ精神をたぎらせていた。


「あーあ。あの手羽先は美味そうだったのになあ。尻尾はムチになりそうだったのにな」


「それでもいいじゃないですか、これはこれで。香ばしいダシが採れそうですよ」


「アンタら何言うてはりますの? それより、レイジはんの気合が強すぎて、山火事なるで!」


 アザミは、ぐったり倒れたレイジを抱えながら、しきりに“フリーズ”を森中にかけている。

 氷魔法なのだが、原理は熱を奪う事である。そういう意味では、炎魔法の派生なのである。


「確かに、多少ハデにやらかしてしまいましたね。とても、一人で消火なんて厳しいですね」


 ギュトーも消火に向かったが、“フリーズ”なんて気の利いた魔術を持っていない。

 そこで、急いで近くの川へと向かった。本来であれば獲った食材を入れるための革袋に、泥と水を詰め込んで火事の現場へと戻る。

 ここにフォードも加わったのだが、延焼を防ぐことで手いっぱいだった。


 村への被害を防ぐ。タイガーゴイルの翼を持ち帰ることなど、それからでも出来る。

 しかし、懸命な消火活動の途中、奴はむくりと起き上がった。自慢だった黄色と黒の縦縞は、もう黒一色である。

 タイガーゴイルは、怒っていた。しかし、脚も羽根も負傷している今、戦う力はほとんど残されていない。


「自分ら……ホンマ、大概にせぇよ。んなふざけた魔法使って、村人ホンマに喜ぶんかっちゅーねん!」


 だが、その減らず口は、どんなにボロボロでも健在だった。


「すこし、静かにしていてくださいよ。僕らは、消火活動に忙しいんですから」


 タイガーゴイルは、相手にしてもらえなかった。今は、森の方が大事だったのである。

 消火にいそしんでいると、どこからともなく地響き。そして……。



『ぎがああああああああ!!』


 魔物の叫び声が、より一層強く響いた。かなり距離は近い。あと、数分もすれば、こちらに接近してくることだろう。


「ある意味では、真打の登場かもしれませんね」


「おい!レイジ、起きろ。もう一番やるぜ!」


 フォードは、アザミに抱えられているレイジを揺り起こした。しかし、レイジは起きてはくれない。

 目の前にピンチがある。それでもレイジは、先ほどの森をも巻き込まんとするほどの炎を出した反動で気を失っている。


 縦長の耳と巨大な一つ目を持ち、オレンジ色の屈強な体をした5メートル級の巨人。

 この怪物こそが、オレンジギガント。怪物は、タイガーゴイルを見つけるなり、こん棒を大きく振りかぶった。

 タイガーゴイルは、駆逐してやると言わんばかりに恨みのこもった眼差しを向ける。


「自分やろ? わしの事を起こしたダホは! おどれら、憎いんじゃ。くたばれオレンジ、そーれイケイケ!」


 オレンジギガントが唸り声とともに棍棒を振りかぶった瞬間、タイガーゴイルはなおも挑発していた。

 このタイガーゴイルは、天敵であるオレンジギガントの事が心の底から憎いようだ。橙色でGIGANT……ギュトーは、それを知っていたので、あのようなワナを仕掛けていたのである。

 “くたばれ”などと口では豪快に言っているが、そんなものなど、オレンジギガントの長い耳には届いちゃいない。


『ぎがあああああああ!』


 オレンジギガント、タイガーゴイルを一撃粉砕!

 見た目に違わぬパワー。もはや、巨人を超えた暴君。フォードたちの目には、橙色の反り立つ壁に見えたことだろう。

 フォードは、ライフルを撃って気を引いている。この怪物、マッハ3の弾丸をも跳ね返すほどの筋肉ダルマである。


「アザミ、こいつに“キュアー”だ! 絶対に起こせよ!」


 とても、フォードとギュトーの二人で勝てるような相手ではない。今度も、レイジがいなければ勝てない相手だ。

 アザミは、“キュアー”を掛けて、眠っているレイジを起こした。この呪文に、傷を直接回復させる効果はない。ただ、疲労感を取り除くのみ。

 それでも、構わなかった。むしろ、下手に回復させてしまえば、レイジの本領を発揮するのが難しくなることだろう。

 “キュアー”をかけて、揺さぶる。これを何回か繰り返していると、レイジはようやく目を覚ました。


「……あれ? さっきまでタイガーゴイルと戦ってたんじゃ……?」


「ダブルヘッダーや。虎の次は、巨人退治やで!」


 レイジは、一人で立った。目の前には、いつか新聞で見たことのあったモンスターがいた。

 コイツを倒せば、あの頃の“勇者”キャプテン・オールAに並ぶことはできるだろう。そう思うと、俄然やる気が出てくる。

 体のあちこちがまだ痛い。朝飯も食べていなくて、腹は鳴りっぱなし。それでも、力が湧いてくる。


「アニキ! ……ゴメン、ずっと寝てた!」


「本気で謝る気があるなら、一発ぶちかませ!」


 謝るつもりがあるなら、誠意があるなら行動で示せ。これも、フォードがドゥバンから教わったもの。フォードは、その教えをレイジにも伝授。

 レイジは、フォードのゲキにうなずくと、左手に力を込めた。


「“ファイア”!」


 レイジの第二回戦、開始! 先手を打ったのは、レイジ。左のオーバースローから放たれる炎のストレート。

 しかし、相手は鋼の肉体。これしきの事では、火傷すら負わせることはできない。

 続いて、ギュトーの攻撃。マチェットを深く突き立てるも、斬ることまではできなかった。あっという間に、刃が折れる。


「……ダメですね。筋を一本や二本切ったところでは、コイツの力は落ちませんね」


「だったら、神経か関節だ! 一番手っ取り早いのは……膝カックンだぜ!」


 フォードは、撲殺されたタイガーゴイルからバットを失敬した。そして、膝裏をめがけて思いっきり振りかぶった。

 オレンジギガントが、バランスを崩した。大木を杖の代わりにして、膝をつくほどだった。

 あまりのパワープレイに、味方であるギュトーが怯んでいる。


「ギュトー、今だ! 肘の内側だ!」


「あ……はい!」


 ギュトーは、フォードに言われて、すぐにナイフを構えた。しかし、オレンジギガントは、既に体勢を戻していた。

 フォードも人間の域を超えた力を見せたが、オレンジギガントは、もっと力に優れていた。

 人間が草木をかき分けるがごとく、木々を次々薙ぎ払って先を進んでいくのだ。まさに、退くことを知らずに進撃し続ける巨人。

 炎も効かない、急所を狙うにも隙を作るのが難しい強敵。ここで、レイジは、ある提案をする。



「こんな状況でアテにならないと思うけど……試したい事がある」


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