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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第4章 ミリオン超えへの挑戦
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第29話 タイガーゴイル

「騒がれて当然やと? にいちゃん、ふざけるんはコメディだけにしときや」


「笑うに笑えねぇんだよ! 人様が丹精込めて育てた野菜だ、誰かに旨いって喜んでもらいたくて作った野菜なんだよ!」


「ほな、わしが食うて満足したら、農家のおっちゃんたち満足とちゃうんけ?」


 フォードは、わざとタイガーゴイルの右をかすめるように一発ライフルを撃った。


「畑から直接食い荒らされりゃ、怒るに決まってるだろ」


「人間の都合なんて知らんがな! 腹減ったからそこに食い物があったから食うただけや!」


 ようやく、本音をあらわにした。空腹過ぎて、あのような蛮行に及んだという。

 フォードは、舌打ちした。旨い野菜とは思わなかったうえに、ただ本能を満たしたかっただけの魔物に、怒りを覚えた。

 タイガーゴイルが、翼を広げてとびかかってきた。


「……皆さん、構えてください!」


 ギュトーは、マチェットを両手に構えた。レイジも、拳を構える。誰かの叫び声で、眠気はすでに飛んでいる、やる気は十分だ。


「まずはちび助、自分からやで!」


 バットを振りかぶってきた。しかし、それだけ大振りなら、レイジでも恐れることなどなかった。

 ぐっと踏み込んで、右手を突き出す。腕が伸び切るころには、手のひらに炎が灯っていた。


「“ファイア”!」


「熱っ! なんやねん自分……魔法使いか、やるやんけ!」


 タイガーゴイルは、上から目線だった。


「ほな、魔法使い言うたら……これには弱いわな。“ドレイン”や! これは効くで~!」


 タイガーゴイルは、レイジと組み合った。この“ドレイン”という呪文は、相手の魔力エネルギーを吸い取るものだ。

 しかし、レイジは首を傾げている。何が起こったのか分かっていない。というより、何かをされているような感覚もない。

 タイガーゴイルが“ドレイン”でレイジに執着している間に、ギュトーは背後を取った。


「な、なんでやねん! 自分、ホンマに魔法使いなんか」


 タイガーゴイルが、地団駄を踏んだ。フォードは、したり顔。

 焦った敵の左翼を狙って、フォードは、ライフルを一発。さらに、眉間に一発。


「惜しいな、タイガーゴイルさんよぉ……。コイツの魔法は、普通の魔法使いとはチョイと違うんだぜ!」


「レイジはん、もう一回撃てるわな?」


 アザミに問われて、レイジはうなずいた。それから、もう一度、右手に神経を集中させた。

 レイジの右手から、さらにもう一発。タイガーゴイルの腹が真っ黒に焼けこげる。

 魔力を吸収したはずなのに、炎が出た。そこに焦りを感じていた。さらに……。


「……削ぎますよ」


 ギュトーのマチェットが、タイガーゴイルの右翼を削ぎ取る。鮮やかで手際がよく、流石はハンター兼任の料理人だ。

 ワナを読む知恵はあっても、このモンスターは、後ろに回り込んだ人間の気配にまでは頭が及ばないらしい。


「痛いわ、ダホ! ……なんてな。“リペア”じゃ」


 タイガーゴイルは、ノリツッコミ。それから、無理やり翼を体にくっつけると、治療の魔法を唱えた。

 完全にとまではいかないものの、多少飛ぶことに不自由しないまでには羽根は修復したようだ。

 モンスターの使う治療魔法は、人間のそれ以上に優れている。外科医なんかがいなくても、治療魔法で一発で治るのだ。


「ほな、反撃……いや、猛虎神撃じゃ! “サンダー”!」


 タイガーゴイルは、高く飛び上がると、両手に電撃をまとってアザミを狙ってきた。

 飛び上がる隙を狙って、フォードは右翼の付け根を撃った。タイガーゴイルは、バランスを崩して倒れた。


「随分とコケるのが上手いどすなぁ。……新喜劇、いけるんとちゃいますの?」


「おどれら、コケにしおったな! もう、怒ったで! 三連発いてかますぞ」


 タイガーゴイルは、アザミめがけてバットを振り回した。鉄腕強打の一発が、襲い掛かろうとしたとき、レイジはアザミを助けようと飛び込んだ。

 アザミは無傷だった。しかし、レイジの脇腹に大ダメージ。レイジは、胃液を吐いて膝をついた。多少戦えるとは言っても、まだまだ素人の域を出ていない。

 それでも、レイジは立ち上がった。タイガーゴイルの追撃が、再びレイジに襲い掛かる。二発目は、頭めがけて。

 たった二発の打撃にも拘わらず、レイジはすでにふらふらの状態だった。


「レイジさん!」


 三発目が、襲い掛かった。胸に一発。レイジの口から、血ヘドが出てくる。

 向こうが力んだのか、バットは折れてしまっている。


「ギュトー、俺なら平気だ。それよりもアザミさんだ……。大丈夫?」


 痛みをこらえて、レイジはアザミの方を振り返って笑った。


「ウチは平気や。でも、アンタは……」


 アザミが“キュアー”をかけようとした。しかし、レイジは、首を横に振った。


「回復拒否したか。青二才のクセに、死に際がよう分かっとるな虫の息っちゅーところやな。死ぬんも時間の問題や」


「虫の息……? いいや、違うぜ! 火事場の馬鹿力ってヤツだぜ! なぁ、レイジ!」




「おうよ!!」


 レイジは、腹の底から声を出した。追いつめられている今なら、実力以上の力が出る。それは、フォードが一番知っていることだ。

 彼の両手に、赤く燃える炎。目は死んでいない、むしろ闘志に満ち溢れている。


「……青二才が気迫出したところで、たかがしれとる。ちーっとも怖くあらへん!」


「だったら、受けてみろよ! 俺の“ファイア”を……!」


 レイジは、タイガーゴイルを挑発すると、両手の炎を重ね合わせた。その熱気は、既に周りの木々を燃やしている。

 真夏のような暑さに、ギュトーは汗をぬぐう。レイジの持っている炎は、より大きくなった。あの日、フォードに見せたものに比肩するほど。

 まだまだ、やれるだろう……そう思ったフォードは、「もっともっと!」とゲキを飛ばす。

 レイジは、歯を食いしばった。もう、これを撃てば気絶しても構わない。その覚悟とともに、さらに炎の温度を上げる。

 あまりの熱量に、あたりには風が吹き荒れる。尋常ならざるレイジの底力に、タイガーゴイルは飛んで逃げようとした。


「こ、こないなモノ受け取ってたまるか!」


「……甘んじて受けやがれ」


 タイガーゴイルの飛ぶ速度は遅かった。フォードは、再び右翼の付け根を狙った。今度こそ、翼が落ちた。

 さらに、落ちてきたところをギュトーが追撃する。足の腱を牛刀で削ぐ。これで、退路は断たれた。

 レイジという勇敢なる男への道は、今開かれた。


「なかなか、面白い人物ですね……彼。こんなに逆境に強い人、初めて見ましたよ」



「いっけええええええ!」



 レイジは、叫びながらタイガーゴイルの腹に一発浴びせた。

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