第十七話 『夜が明ける』
早まる鼓動を感じながら、ハルは必死に考える。
護身用の銃を取り出そうとすれば、彼はためらうことなく撃ってくるだろう。
相手が自分を殺そうとしたから、これは正当防衛だと理由をつけて。
とにかく今は、リオ達が来てくれるのを信じて時間を稼ぐしかない。
「どうして僕達が殺されなくちゃならないんだ。国防軍は、どうしてそんなことを」
「俺に聞かれても困るよ。知らないし、知りたくもないことだ。ただ、そのことが、西日本と東日本の運命を変える転換点になるらしい。それが本当なら、お前らの死も無駄じゃないんだ。よくわからないけど、まあ、それなりに意味のある死に方をするんだろうさ」
「そんな、そんな理由で、お前は人を殺せるのかよ!」
「家族のためだからな、それで十分だ……。俺の家族は、社会の底辺でずっともがいてきた。親はろくな仕事に就けず、金がかかるから弟や妹は防衛学校に行かなければ成人権を得ることもできない。おれはただ、家族を救いたいだけなんだよ。そして俺の家族は、俺に救われることを望んでいる。それが当然のことだと思っているんだ」
シュウの顔に、どこか誇らしげな笑みが浮かぶ。
「なあ、ハル、お前にはわからないだろうな。家族を見捨てたお前には、家族を守りたい俺の気持ちなんて。そのために、幼なじみであるお前を殺さなくちゃいけない俺の苦しみなんて。さてと、そろそろ終わりにしようか。ぐずぐずしていると邪魔が入る。動かないでくれよ。頭を撃てば、一瞬で楽にしてやれるからな」
シュウはハルの頭に狙いを定める。
その瞬間、ハルのそばで倒れていたオータムのフレームが、突如として起動した。
シュウは突然のことに体を震わせ、照準が大きくずれたまま発砲する。
それに反応するようにオータムは起き上がり、腕を大きく振り抜いてハルの体を薙ぎ払った。
次にオータムはシュウに狙いを定め、スラスターの出力を最大にし、突進する。
シュウは悲鳴を上げながらも発砲しようとするが、その前にオータムの体当たりをくらった。シュウの体は勢いよくはじき飛ばされ、地面を転がり、海へ落下した。
オータムの足元に、シュウが握っていた銃が転がり落ちる。オータムはそれを拾おうとしたが、フレームから警報音が鳴り、オータムはフレームの外へ押し出された。
フレームは役目を終えたというように崩れ落ち、同時に警報音も消えた。
オータムは着古された背広を着ていた。
それはハルにとって、見慣れた服装だった。
「先、生……」
ハルは自然と口を開く。
その声にこたえるように、オータムはゆっくりと振り向く。
オータムの両目がハルの姿を映した時、彼は言った。
「お前は、誰だ」




