第十五話 『未明の空の下で』
オータムは叫ぶ。
「私に、家族はいない。私は一人だ。ずっとずっと、私は一人だったんだ!」
オータムは拳を振り上げ、サツキに向けて叩きつける。
拳が激突する直前、サツキは何かを投げつけるように握りしめていた手を振り抜いた。
彼女の手のひらから現れたのは、乾電池ほどの大きさのカプセルだった。
カプセルはオータムの拳にぶつかり、破裂した。
まさか、とオータムが思った瞬間、電流が走るような音が鳴り響き、フレームのいたる所から煙が噴き上げ、断続的に火花が散った。
……弾の中身を、直接ぶつけたか。
オータムは地面にひざをつき、倒れた。
一部始終を見ていたハルは、昼間に自分が受けたのと同じ攻撃をくらったのだろうと判断した。
なら、フレームの機能は停止しているはずだ。
ハルは立ち上がり、サツキのもとへ歩く。
「この人が、ハル君が会いたがっていた人なんでしょ」
ハルは口を開くが、言葉は何も出てこなかった。
目の前で倒れているこの老人が、行方不明になった自分の家族であることをハルはすでに確信している。
しかしそれを事実として受け入れることができなかった。
彼は自分の敵であり、自分もまた彼の敵なのだ。
血という絆で結ばれ、共に過ごした記憶があるにもかかわらず、自分達は殺しあった。
僕は、この人を殺すという覚悟をもってここへ来たんだ。
なのに今さら、自分の家族だと思う資格が、僕にあるだろうか。
「ちゃんと向かい合わなくちゃだめだよ。君の家族なんだから」
今の言葉と今までの行動から、サツキが自分達の関係性を知っていることをハルは理解した。
そのうえで、彼女はオータムを倒しに来た。
止めに来たのだ。
「生きている、うちに。まだ、わかりあえるうちに……」
今にも倒れそうに、サツキは体をふらつかせる。ハルはすぐに彼女の体を抱きかかえ、地面に寝かせた。
生きているうちに、わかりあえるうちに、という言葉がハルの心を動かす。
その時、ハルの近くで爆発音が轟いた。
スチール製のロッカーが置いてある場所で爆発が起こったらしい。
突然のことにハルの意識はそちらへ向く。
そのすきを突かれるように、ハルは背後から銃撃を受けた。
機動中枢をやられたらしく、警報音が鳴り、フレームは自動的にハルから離脱した。
ハルは倒れそうになりつつも、なんとか体勢を立て直し、振り返る。
彼の目がとらえたのは、シュウの姿だった。




