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落日の国  作者: 青山 樹
第四章 『昭和・平成連合』
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第十七話 『現実は変わらない』

 考えてみれば、とオータムは言葉を続ける。


「日本再生計画が始まる前から今の状況に至るまで、一連の準備は進められていたように思えるんだ。今から三十年以上前のことになるが、旧日本政府は増加し続ける高齢者に対処するため、高齢者の地方への集団移住と地域再開発計画を実施した」


 肉を全部食べてしまったので、サツキは仕方なく野菜に箸をつける。


「特に東北地方への集団移住が積極的に進められた。当時の東北地方は来る世界的な食糧危機に対処するため農業が振興されていて多くの人手を必要としていた。高齢者でも農業用のフレームを使えば十分な労働力になったからな。そう……、フレームの実用化が始まったのもその頃だった。フレームの生産拠点も東日本に集中していたはずだ」


 オータムは目を閉じて、軽く頭を振る。


「時を同じくして、首都機能の分散も進められた。この動きは二十八年前に起こった東京大震災をきっかけに本格化し、東は仙台、西は福岡に首都機能が分散された。知っての通り、これらの都市は現在の東日本と西日本の首都になっている」


 たき火の前にいる老人たちは、大声で歌いながら奇怪な振り付けの踊りを踊っていた。


「そして、各都市の開発が進められた時期に東日本では高齢者の生活保障を訴える団体『昭和・平成連合』が発足し、西日本では高齢者を切り捨てて若者の救済を訴える政党『新生ヤマトの会』が……後の全日本市民同盟が発足した。いずれも東日本、西日本の政府となる組織だ」


「あなたが考えていることは、結論から逆算して出した結果論なんじゃないかな」


 サツキが言う。彼女は燃え尽きようとしているたき火を見ていた。


「そもそもこの国でこんな戦いをおこしたところで、誰にどんなメリットがあるの?」


「君の言う通りだ。だからこれは、私の根拠のない憶測に過ぎない。しかしどうも納得できないことがある。この戦いに関して諸外国がほとんど何も反応していないということだ。いかに現在の国際社会が山積みの問題を抱え崩壊寸前の状態にあるとはいえ、日本を二分する戦いが起こっているのにひたすら静観している。いくらなんでも、これは不自然だ」


 オータムはゆっくりと息を吐く。


「他にも気になることがある。これも三十年近く前のことだが、この国の権力者や富裕層が自分達の親族を海外に移住させるという動きが活発化したことがあった。もちろん、多額の資産と一緒に。いつからかそういうニュースは報道されなくなったが、ネット上では様々なうわさがささやかれた。彼らが現地の有力者や企業と結びついたり、日本から企業や技術者を引き抜いたという情報もあった。確証はないが、彼らの中にはフレームや軍需産業を手掛けるものもあって、世界各地の紛争や内戦に介入し利益をあげているといううわさもある」


「じゃあ、私達の戦いもそういう人たちの利益になっているって、あなたは考えているの?」


「その可能性はあるかもしれないと思っている。しかし、仮に真実がそうだったとしてこの戦いが終結するわけではないし、我々や君達の憎しみが消えるわけでもない」


「それもそうだね」


「もし、私の考えたことが真実だとしたら、君はどうするかね」


「今までと同じだよ。死ぬまで戦い続ける。それだけ」


「やはりそうか。そうだろうな……。西日本にいる限り、君の運命は変わらないだろう」


 オータムはベンチから立ち上がり、サツキと向かい合うように立つ。


「この作戦が終わったら、君は東日本へ行くといい。そこでなら君も新しい人生を歩めるはずだ。連合の研究施設には信頼できる知り合いもいる。私の紹介があれば力になってくれるだろう。生体兵器の解析は受けることになるだろうが、それがすんで君の無力化が確認されれば、あとは自由に生きられる可能性がある」


「その話が本当だとしても、私は西日本から離れないよ」


「なぜだ?」


「ここには私の家族の魂が眠っているから。家族を置き去りにしてはいけない」


「そうか……なるほどな。まったく、君は、本当にかわっているな」


「それにここには私の仲間もいる。キョウカやトウイチを見捨てることはできない」


「仲間を見捨てられない気持ちはわかる。私にも仲間はいるからな」


「家族は?」


 いない、とオータムは答え、サツキに背を向けて夜空を見上げた。


「俺に家族はいない。一人だ。ずっと、一人だったんだ」

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