第十話 『第五観測所へ』
昼食が一通り済んだ頃、四人のもとへシュウがやって来た。
彼は、トウイチが彼らを呼んでいると伝え、ふらふらとした足取りでどこかへと去っていった。
シュウは誰が見ても明らかなほどに顔色が悪く、声には生気が感じられなかった。
それでもハルは彼の目に、異様な迫力のようなものが宿っているのを見ることができた。
ハル達は臨時の司令部が設置されている体育館へ向かう。
そこにはかろうじて破壊を免れた通信機器や索敵装置が乱雑に配置されていて、何人かの隊員が忙し気に動き回っていた。その中心に立って指示を出していたトウイチは、ハル達が来たことに気づくとこちらへ来るようにと手招きした。
「支局にいる副司令から、今後の我々の動きについて指示が出た。私は捕虜を連れて守備部隊の本部へ戻る。第七観測所については、今いる隊員達で引き続き復旧作業が行われることになった。そして君達についてだが、第五観測所へ調査に向かってもらうことになった」
「第五観測所って、どこにあるんですか?」
ハルが尋ねる。トウイチは手に持っていたタブレットに地図を表示した。
「ここから東へ進んだところにある人工島に設置されている。どうやら最初に攻撃を受けたのはそこらしい。だが知っての通り、我々が最初に救援要請を受けたのはこの第七観測所だ。つまり第五観測所は、救援要請を出す間もなく壊滅したという可能性が高い。現地の隊員達も無事ではないだろう。とにかく、君達には現地の被害状況を調査してもらいたい」
了解、とハル達は口をそろえて答える。
それ以外の返事など、彼らにはできない。
もちろんシュウも同じなので、彼もハル達と同行することになった。
敵兵が潜んでいる可能性もあるため、ハル達はフレームを装着し、武装して第五観測所へ向かうことになった。
レーダーを操作しているリオを中心に正方形をつくるようにして隊列を組みながら、目的地へ向かって廃墟の街を進む。
「せめて教官殿がいてくれたら、心強いんだけどねえ」
フタバは残念そうに言った。
「そういえば、教官さんの姿を見なかったけど、今はどこで何してるのかな」
「あたしもよくわからないんだ。追撃から戻ったら輸送車の格納庫に一人で入ってさ、それっきり姿を見てないんだよね」
「そうなんだ。どうしちゃったんだろう。具合でも悪くなったのかな」
「俺も気になって隊長殿に聞いたんだが、俺達が気にするようなことじゃないらしい。とりあえず、動けるようになったらすぐに応援に来てくれるそうだ」
ヒカルが言うと、一番後ろを進んでいたシュウが言う。
「それなら教官殿と合流するまで待機してたほうがいいんじゃないか?」
「今は第五観測所へ行くことが最優先だ。もし生存者がいたらどうする」
「敵がわんさか待ち構えているってことも考えられるだろ。もしそうだったらどうするんだ。俺達の中で、まともに敵と戦える奴がいるのか?」
「その時は全員で協力して戦うしかないさ。まあ、安心しろよ。少なくともお前については誰も期待してないからな」
「は?」
シュウは苛立ちと不快感をあらわにした声を出す。
「やめてよ、二人とも!」
険悪に張り詰めた空気を払いのけるように、リオは大きな声を出した。
「今は観測所へ行くことだけを考えようよ。ケンカなんかしてる場合じゃないでしょ」
「おチビさんの言う通りだ。昨日の今日で神経がとがってんのはわかるけどさ、だからこそ落ち着いて、冷静にならなきゃだめだよ」
いさめるようにフタバも言う。
ヒカルは「悪い」と言い、シュウは小さく舌打ちをした。
ハルは二人の様子をうかがいつつも、いざという時のことを考えて覚悟を固めていた。




