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ふかしぎ真霊奇譚  作者: 猫音おる
第十四章   ~部員青春編~
80/92

#80 折れた牙は甦る 後編

 琉嬉達は武良重宅の裏側の小道から続く、山道へと進んでいた。

ほんの、数km先だと言うのだが、登り坂となると話は別。

道中行き止まりの祠に日天が祀られているらしいのだが。

「なんだってそんな所に…」

「ほら、行きますよ!先輩!」

 ズカズカと進んで行く柚羽。

その足取りは凄まじく、やる気オーラが目に見えるくらいだ。

服装とやる気がまるで合っていない。

シュールは光景。

「元気だねえ…」

「……自分の事だからなあ。仕方ないっしょ」

「だよねえ」

 愚痴をまき散らす護。



 武良重は刀の修復は不可能、と言い切った。

ただ、合成は出来ると発言した。

あれから詳しく話を聞いた琉嬉達。


 合成するには同等の力を持つ刀が必要だと言う。

月天は元々対となる、同じ妖刀があった。

「あ、いや、てかさ、日天ってやつを使えばいいんじゃない?」

「…たしかに」

 二人はその点に気づく。

しかし、

「妖刀は使い手を選ぶ…のかも」

「え?何それ?」

「いや、要するに、刀が使い手を認めてるか認めないかって話だよ」

「…刀が意志を持ってるとか?」

「そうとも言えるね」

 少し歩みの速度を遅くする護。

「その日天がもしかしたら、柚羽ちゃんを使い手として選ばないっていう?」

「そうかもしれない。月天を触らせてもらった事あるんだけどさ」

「うん」

「極めて嫌な感じしたんだよね。なんていうか…反発するような霊力を感じたというか…」

「…へぇ…」

 どこか納得したような顔をする護。


「でもそもそも、日天自体はは手入れされてないらしいけどね。武良重さん曰く」

「刃こぼれ起こしてるとか?」

「作った本人の子孫も祠の手入れはしているけど、刀自体は一切触ってないらしいし」

「ふぇー。そうなんだ」

 どうやら刀に触れられない、何かがある様子だ。

だから武良重も近づこうとしないのではないか。

「でも只者じゃないのは分かるけど、さ」

「じゃないと霊具なんて作れないだろ」

「そーだよねー」

 

「でも祀ってるって事は…御神体として使われてるのか…?」

 琉嬉が推測する。

「御神体?それって神社とかの?」

「さすがに護でも分かるか」

「いやいや、勉強は出来なくてもそっちの世界で生きてるんだから御神体くらい分かって当然でしょっ」

 自分自身をフォローする護。

「だよねー」

「何その疑いの目…」

 半目がさらに半目になる。

「でも刀を御神体にしてるっていうのあるんだね」

「結構刀…つまり剣を御神体にしてる所はあるよ。有名な天叢雲剣だって御神体として保管されてるって言うし」

「ふむふむ」

「大昔から剣には特殊な力が宿るとか、神の力を持つとか、日本のみならず世界各地で剣が神様などの代わりとして信仰の対象みたいのになってるよね」

「あー、言われてみれば…」

 納得する。

漫画やアニメ、ゲームなどでも設定でよくある話。

現実でもそういう神話が残ってたり、実際にこうして伝わって残っているのもある。

「武良重家っていうのは、それと同等の力を持つ刀を作っていた…って事か…」


 武良重も琉嬉や柚羽が相当の手練れだというのは知っている。

ましてや名家や五大家の一族の者。

力を試したいのかなんなのか。

よく考えてる事が見えて来そうで見えてこない。

妙な男である。

「あ、見えて来ましたよ!」

 突然叫ぶ柚羽。

手をぶんぶん振って存在をアピールする。

その先は祠だった。

それもかなりの大きさ。

「うっわ…なんでこんな所に…」

 広く開けた場所。

これくらいなら普通の人間でもやってこれそうだ。

だが琉嬉は既に気づいていた。

「結界が張られてるね。來魅が居た神社のように」

「どういうことー?」

「霊力の低い人間や動物などを近づけさないように、普通には見えないようにする特殊な結界」

「見えなくなる…?マジで?」

「厳密に言うと、結界の場所を幽霊のような存在にするってこと。一定の霊力がないと視野に入らないんだ」

 琉嬉が一所懸命護に説明する。

うんうんと頷きながらも話を聞いているが、理解しているのだろうか。

「護にも見えてるだろ?でも他の人間には見えない…筈なんだよ」

「へぇ…」


「それはそうとして、柚羽。どうする?」

「……勿論、行きます」

 覚悟は出来ている。

己の為に。

祠に近づく。

しめ縄みたいなもので厳重に縛られてる。

傍から見ても不可解な状態。

「封印してるみたい」

「封印ねえ…。まさにその通りなんだろうけど」

 琉嬉らも近づいた途端。

バチンッと、電気のコードが弾けたような音がした。


「何っ?」

 護が警戒モードに入る。

その準備の速さは凄かった。

両手には既に霊力剣。

「なんていうか…本能というのか…凄いね護」

「え?何が?」

「野性的な勘はピカイチだよねっ」

 琉嬉も御札を手にした。

妙な風が流れて来る。

「来ますっ」

 柚羽が大声で叫んだ。

「くっ!」

 両手ガードを組んだ柚羽が何かの塊を防いだ。

だがそのまま軽く後ろに吹き飛ばされる。

「噂の式ってやつか?!」

 祠のしめ縄がなくなっている。

「…こっちにも来るよ!」

 護が霊力剣で防御姿勢。

「んなっ」

 琉嬉も防御壁を張る。

が、防御壁を貫いた。

「マジですかっ」

 間一髪避ける琉嬉。

「鋭い力…。日天の加護を受けているのか…」

 柚羽が納得した顔をしている。

なぜなら、祠が開いている。

中には、刀。

柚羽が使用していた月天とほぼ、同じ形。

鞘には納まってなく、刃剥き出し状態。

うっすらと輝いている。

「どうする?柚羽」

 気づいたら回りは大蛇のような、式の魔物。

「でっけ~」

「あの縄が変身したのか」

 しめ縄のような物は、どうやら蛇タイプの式だったようだ。


「いいでしょう。お相手します」

 柚羽が一応予備の為に持ってきていた、別の刀。

「その刀は?」

「ごくごく、普通のです!貞康さだやすです!」

 丁寧に名前まで言ってくれた。

そう気合いいれて言い切った後、突撃していく。

「なんで無謀に突っ込んでいくんだ!」

 追いかけるように琉嬉も柚羽のフォローに入る。

「…よくわかんないけど、柚羽ちゃん頼もしいね」


「ふと、思ったんだけどこれ倒しちゃっていいのかな?」

 琉嬉が疑問を投げかける。

「え?どうしたの突然?」

「いや…だって結界かけてさらに式が守ってるんでしょ?」

「大丈夫です!」

 自信満々に言い放つ柚羽。

「日天は私が認めさせます!」

「……お、おう…そっか…」

 いやに張り切る柚羽。

それだけ気合いが入ってるようだ。

そんな会話してるうちにも攻撃が飛んでくる。

「ええいっ、でっかいのに速いとか厄介だねっ」

 避けながらも切り裂いていく。

護自身も人間離れした動きを相変わらず見せつける。

「斬っても斬っても再生しますぜ、ダンナ!」

「生モノじゃないからね…さすがは式神の一種」

 琉嬉も体勢を整えながら反撃のチャンスを伺う。

「さて、どうするか…」

 左腕の数珠を気にする。

(こんな事なら來魅を連れてくれば良かったかな)

 今更ながら後悔する。

少しだけ左腕に力を込める。

真霊気を使えば、おそらく一撃で倒せるだろう。

だがそれは自分の体力霊力、気力を全開に使い切る。

大体、柚羽の為にならない。

その柚羽は護に負けないくらいの動きで戦っている。

ヒラヒラしたワンピース姿のまま。

物凄くシュールな姿だ。

(…僕でも分かるくらい、柚羽の本来の力が出てない)

 今まで愛用していた刀ではないせいか。

いつもの霊力の半分くらいしか出せてない。

(……でも柚羽、お前はその分武器に依存してたのかもしれないよ)


 霊力の蓄える事の出来ないごく普通の刀。

大蛇に攻撃を加えるが、致命的なダメージにもならない。

一応切り傷は与えれる。

だがすぐに再生する。

護の霊力剣でさえ、効果的ではないのだから。

「やっばいねー。本気出す?」

「出しましょう。惜しみなく!」

「やる気だねえ。あたしも…妖怪モード突入しちゃうかな?」

 そして護の瞳が赤く染まる。

「いっくよー!」

 閃光の如く。

異常に早いスピードで向かって行く。

「…やりますねっ」

 続いて突撃していく柚羽。

その状況を見ていた琉嬉。

「あの二人の本気は流石に僕は追いつけない…から、フォローに回るか」

 自分の役目を認識する。

本来、前衛タイプではないと、自分でも自負する。

補助が一番の役目。

そう思っている琉嬉。

二人の凄まじい動きにそれでもついていく。



「てか、パワーが違い過ぎるよ~」

 護が攻撃しても弾かれる。

とはいえ、妖怪化しているのでさっきよりは大ダメージを与えているのだが。

すぐ再生される。

大きな一撃を入れてもだ。

柚羽は護とは対照的に手数で勝負。

一撃の重みは護程にはないので、連続攻撃。

でも変わりはない。

「大丈夫です。すぐ再生されても効果はある筈です!」

「確証は?」

「ありません!」

「…案外テキトーだね、柚羽って…」

 呆れる琉嬉。

「世の中きっちりしてても生きにくいだけです!たまには手を抜くのも大切だと寧音先輩に教わりました!」

「…あの眼鏡巨乳何を教えてるんだ…」

 ふと、寧音の笑顔を思い浮かべてしまう琉嬉だった。



 そうしてるうちにどんどん押され始める。

相手は消耗してる節がない。

対して琉嬉達は体力、霊力が消耗していく。

日天の加護とも言われる、無限にも近い霊力供給を受けている大蛇。

「やっぱり、刀を狙った方がいいのかな…?」

「でも近づけさせてくれないしね~」

「どうしたものか…」

 作戦を立てようとする。

しかしそんな暇は与えてくれない。

少し離れれば、大蛇の口からミサイルのように霊力弾を撃ってくる。

「こりゃ、並の術者じゃ近づけないね」

 琉嬉ら三人がかりでも相当な労力を要している。

「あれ、使っちゃう?」

「いや…勘弁願いたいね」

 あれ。

つまり真霊気。

護は真霊気の強さと恐ろしさを知っている。

だからそれを使えばいいなじゃないかと、なんとなく琉嬉に催促する。

「日天…を狙う…か。なるほど」

 柚羽がブツブツと独り言を喋っている。

「何かいい案でも出来た?」

 期待を込めて聞く琉嬉。

「日天を先に倒せばいいんですよねっ?!」

「あ、う、うん…?」

 日天目掛けて走り出す柚羽。

「いや、大丈夫かよ」


 祠を目指し走って行く柚羽。

大蛇が行く手を阻む…が、柚羽は大きくジャンプ。

最早下着を見えるのも気にしない。

木から木へ、飛び移るように避けながらも近づく。

「おー、すっげー。忍者見たい」

「…お前も大概だけどな」

 護も妖怪化して姿が少し異様な状態となっている。

「さてさて、我々でフォロー致しますか」

「そうさね」

 琉嬉と護コンビ。

二人で大蛇に攻撃を仕掛ける。


 先ずは琉嬉の大量御札攻撃。

「思念流符っ」

 意志があるかのように動き回る。

沢山の攻撃を光り輝きながら動く御札で防御していく。

そして御札が大蛇の体を貼り付いて行く。

「グギャアァ」

 動きを止める。

「止めれるのも一瞬だけだっ!護、頼む」

「オーッケイ!サンダーストライク!」

「…そのネーミング、ゲームみたい」

「いいじゃんかっこよくて!」

 反論する護。

そして強力な霊力の塊を稲妻状に剣から放つ。

爆発するかのような、凄まじい爆音。

同時に大蛇が流石に怯んだ。

「チャンス!」

 だが、尾が柚羽を捉える。

「柚羽!」

「問題なしっ!」

 スパッと、尾を切り裂く。

そしてそのまま突破する。

「うお、普通の刀なのに…」

「月天が無くてもいけるんじゃないの…?案外」

 とんでもない剣術力に驚く二人。

しかし、大蛇の方は動きをまだ止めない。

尚も反撃してくる。

「でもまだトドメとはいかないかい」

「しっつこいねー」


 柚羽は日天の所まで辿り着いた。

怪しく光る刀身。

見た目は月天とほぼ同じ。

だが至る所にほころびがある。

300年近くも経っていると、流石にボロが出て来るのだろう。

「日天…噂には聞いてたけど…」

 さらに近づこうとした途端。

カッと光が強く放たれる。

「……?!」

 念が流れて来る。

他の二人は気にしないで戦っている。

どうやら柚羽にだけ、流れてきている。

「これは…」

 ぼんやりとした、風景が意識に流れて来るような感覚。

柚羽が見ている景色は、日天と月天と思われる刀が二本、古めかしい建物の中に安置されている景色。

そこに一人の着物姿の男性が歩いてくる。

にっこりと微笑む表情。

その顔立ちは少し武良重にも似てるような気がした。

(…もしや、武良重さんのご先祖様…?松之さん?)

 琉嬉に劣らず、霊感知力が高い柚羽。

様々な念が流れ込んで来る。

「でも、未来の為に、私の為に…力が必要なんです…!

力を貸して……日天!」

 日天から放たれる、霊力。

それを折れたままの月天で弾いて行く。



 ドサッと大きな物が落ちる音。

大蛇だったしめ縄が落ちる音だった。

無残にバラバラになっているが。

琉嬉と護はなんとか大蛇を倒したようだ。

「なあ、護」

「…は、え?何?」

 妖怪モードから元の姿に戻る護。

琉嬉が同じ女としても惚れてしまいそうなくらい、いつもの綺麗な顔だ。

「実はさ、ふかしぎ部でまだ戦った事のないやつって、みゆと柚羽、あとは戦力に考えてない御琴と隆治とか後輩達くらいなんだ」

「…ああ、そうなの?」

「お前とも戦った。他にまどかや叉羅沙や寧音や龍翔君や、決着はつけてないけど凛夢も。

それに、悠飛や莉音と紫音とも何度も手合せしてる。

「うん。それがどーかしたの?」

「…あのタフネスさ。敵にしたくないね」

「……言えてる~」

「ま、最終的には僕が勝つに決まってるけどな」

「またまたー。それは真霊気のおかげでしょー?」

「なくても勝つよ」

「嘘だあ」

「本当」

 表情崩さず言う琉嬉。

自信ありげ。

「……あたしにだって分かるけどね。柚羽ちゃんの強さ。伊達に名家じゃないよね」

 二人が認める強さ。

「折れた牙でも戦う狼…ってか」

「なーにそのカッコイイ言い方~」

 クスクスと笑い出す護。

「さて、あとは柚羽次第だ」




 日天の輝きが消えた。

それと同時に、柚羽の手に持っていた、折れたままの月天の輝きも消える。

火が消えた焚き火。

命が尽きたような。

そんなような、なんとも不思議な光景。


「ここで役目を終えた…とでも言うのか」

 琉嬉が小さい声で言う。

役目を終えた。

そのようにまさに見えた。

「そうみたいですね…」

 柚羽が手を日天に伸ばすと、あっさりと取ってしまった。

あれだけ拒否されるように、近づけなかったのだが。

「認めた…という事でしょうかね」

 自分でもよく分かってない。

「さぁ。認めたというか…」

「天寿を全うしたようにも思えますね」

「あー、なんとなく分かるよそれ」

 

 柚羽が手にした刀から何も感じられない。

それくらい霊力が失われていた。

言ってみれば、少し切れ味の良い刀と言っても差し支えない。

ただの刀みたいに。

「やあ、日天を入手出来たみたいだね」

「わっと、いたの…武良重さん」

「いや、今着いたばっかりさ。ごめんよ、なんか試すようなコトして」

「いえ…」

 ひと段落して落ち着いた頃。

武良重がちゃっかりと現れた。

その武良重の後ろに見た事のない、おじいさんがいる。

「えと…後ろの方は?」

「ん?このおじいちゃん?」

「…そうですけど…」

 白髪交じりの年配の男性。

顎鬚が立派に生えている。

「ああ、俺の親父さ」

「ええ?お父さんですか」

「如何にも。はるばるご苦労さんだったね、お嬢さん方」

 丁寧に頭を下げて挨拶する。

柚羽らも慌てるように頭を下げて会釈する。


 おじいさんは武良重の父親だった。

つまり、先代に当たる。

名前は武良重清三朗むらしげせいさぶろう

年齢も70を超えて、今は刀鍛冶をほぼ引退している。

「それでも一年に2、3本くらいは作るんだけどね」

 と、清三朗はにこやかな笑顔で言う。

「へぇ~…。武良重さんの家系の刀匠術はもしかして…一子相伝なんですか?」

「妖刀作りは他の人間にはあまり出来ない芸当だからね。基本はうちらの家系で作ってるものさ」

「弟子は取らないスタンスだからね」

 だから、最初訪れた時も人の気配があまりなかった。

基本一人で作っているようだ。

勿論、鞘や飾り付けなるものとなると、別の者に委託となる。

あくまでも刀身を作るのは一人だけのようだ。

「話は聞いてるよ。妖刀ともうたわれた、皇妖伐倒刀すめらぎあやかしばっとうがたなを使いこなしてる術者が

こんな小さな女の子とはなあ」

 清三朗は立派に生えた顎鬚を指で触りながらにこやかに言う。

「す、すめらぎ…あやかし…?」

 何やら小難しい名称が出てきて混乱する護。

「皇妖伐倒刀。ようするに、妖…つまりは、妖怪など魑魅魍魎を斬るという刀…だね」

「へぇー。琉嬉ちゃん物知り~」

「今調べた」

 スマホの画面を覗いている。

どうやらお寺からの情報らしい。

「柚羽ちゃんとやら、大したものだね」

「いえ…とんでもありません…。最近まで武良重さんの一族が作ったとはあまり知らずでして…」

「はは、無理もないな。まだ10代の若者だ。中学生くらいか?」

「高校生ですっ」




「中学生ならまだいいじゃん。僕なんていつでもどこでも小学生呼ばわりだよ」

「陽志郎さんも最初そう言ってましたもんねー?」

「ごめんってば…」

 申し訳なさそうに謝る陽志郎。

「何はともあれ、良かったんじゃない?だってその刀を使えばいいんでしょ?」

「護。お前話聞いてたか?」

「え?」

 ふぅー、と一息大きなため息を吐く琉嬉。

そして改めて説明する。

「日天は役目を終えた。だから妖を斬る力はもう残ってないのさ」

「へぇ…そうなんだ」

「だから、日天を回収、そして一度分解。

その折れた月天と一緒にする」

「一緒にする?」

「それってつまり…」

 陽志郎の考える事。

「刀身を一度崩して、日天と月天。一緒にしてやるのさ」

「ゲームでよくあるだろ?合成ってやつだな」

 むしろなぜか清三朗の方からゲームという単語が出てきて3人は驚いた。

「親父、暇だからってゲームばっかりしてるんだぜ。なんだか今の老人って感じだよなほんと」

 笑う陽志郎。

「それに…他にも皇の刀達がある」

 清三朗が台車で運んできた物。

他の刀達。

「…それって…もしかして…」

 柚羽は目を丸くして驚く。

「そう。他の、月天達の仲間だ」



 皇妖伐倒刀――――。

300年以上前から続く、武良重家が作り出した妖を斬る為の刀。

月天や日天。

それ以外にも存在しる。

全部で7振り。

皇日天すめらぎにってん

皇月天すめらぎげってん

皇火王すめらぎかおう

皇水迅すめらぎすいじん

皇木霊すめらぎもくりょう

皇金獅すめらぎこんじし

皇土閃すめらつちひらめき

それぞれ、七曜になぞらえた7種類の刀。

「え、これ全部同じタイプの刀…?!」

 覗き込んでまじまじとみつめる護。

琉嬉も驚きながらなぜか写真を撮る。

ただし、月天だけは折れている。

他の刀もよく見てみると薄汚れていて綺麗な状態ではない。

サビなのかなんなのか、刀身も綺麗な銀色ではないのもあり赤黒くなっているのもある。

これらはようするに、長い間使われ、そして役目を終えた者達なのだ。


「そして、今日、日天が役目を終えた。どっちにしろ、月天も限界を超えていたんだよ。

折れてしまったのは必然だったのかもしれないさ」

「…そう、なんですね…」

 悲しそうな顔する柚羽。

折れた月天を他の刀の横に静かに置く。

「まあ、あまりにも強い敵と戦い過ぎたのかもな」

 清三朗が並べられた刀の前に座り込む。

他の者も釣られるように座りはじめる。

「強い敵……ですか…」

「心当たりあるのかい?」

陽志郎が気軽に聞いてくる。

「……まぁ、そうですね」

「あ、ごめんごめん。言いたくなければいいんだけど…」

(そう言って詳細知ってるだろうなこの人)

 琉嬉はなんとなく陽志郎は気づいてると思う…。

そんな気がしてた。

「いえ、現代のに復活した大妖怪、がしゃどくろを斬ったんです」

「がしゃどくろ…か。伝説の妖怪だな」

「それが無理強いしてたのかもしれませんね」

「なぁに、柚羽ちゃんの霊力も高くなったからかもしれんさ」

 柚羽の頭を撫でる清三朗。

「そんな…えへへ」

 おもいっきり照れる。

「さて、一世一代の大仕事…。武良重家の歴史上最高の仕事かもしれんぞ。陽志郎君や」

「俺もそのつもりさ」

 武良重家の二人が立ち上がる。

「僕らも手伝う事あります?」

「ん?手伝うって言ってもなぁ。刀造り上げるのに最低でも一週間くらいはかかるしなあ。

ましてや妖伐倒刀となるとなあ」

「え?そんなにかかるんですか?」

 またもや驚きの声を上げる。

「そりゃ、一日や二日で出来るもんじゃないだろ。ゲームじゃあるまいし」

「それもそうだよね」

 納得する琉嬉達。

「でも…」

 柚羽も手伝いたそうな顔をする。

「いやいや、そこは大丈夫だよ。ましてやこんな可愛らしいお嬢さん方に手伝わせるなんてなぁ」

「そう言いながらもどうせ私達に手伝わせるんでしょー?」

 琉嬉らの後ろから突然女の子の声が聞こえた。

振り返ると、背丈は琉嬉とあまり変わらない少女が二人。

小学校4、5年生くらいの女の子。

姉らしき子はボブカットっぽい髪型。

そして妹らしき子はサイドテールにしたちょい長めの髪型。

二人とも琉嬉から見ても可愛いと感じた。


「ああ、孫達だよ」

 清三朗が孫発言。

「え?」

「ようするに俺の娘達さ~」

「あ、所帯持ちでしたか…」

「未来の武良重家の刀鍛冶だもんな?」

 二人の頭を撫でる陽志郎。

「か弱き少女を刀鍛冶にするとかヒジョーシキ!」

「そうだそうだ~」

 拒否の姿勢を見せる孫ら。

とは言っても、ニコニコしている。

満更でもない表情。

「大きい方は、燈南ひなみ、小さい方が奏楓かなで。俺の娘っ子達さ」

 可愛らしい二人。

護は琉嬉と見比べる。

(琉嬉ちゃん…二人と並んでも違和感ない~)

「?どうした?護?」

「あ、なんでもないー」


「はは、まあ、そんなこんなんで武良重家総出で頑張るさ」

「あ、そ、そんな…有難いです!」

 深々の頭を下げる柚羽。

「頭上げなって。この刀達は…柚羽ちゃんを選んだんだ。君がここに来たのも…偶然じゃないだろうし」

「…かっこいい言い方すれば運命ってやつ?」

「運命…ですか…。私の姉弟子は元気かなぁ…」

「姉弟子?」

 唐突に聞いた事ないような言葉を出す。

姉弟子と。

「あ、いえ…私の剣術の流派は早碕流居合剣術と言いまして…」

「だから居合の型なんだ」

 琉嬉は納得の顔をする。

「居合って、鞘から一瞬で刀を出すって言う…?」

「はい、そうです」

「ふむふむ。居合か。ならばより居合に合った刀を作らないといけないね」

 陽志郎はうんうんと頷く。

隣に居た清三朗も同じように頷いている。

親子だけあって仕草がそっくりだ。

「そんな、何から何まで…」

「いや、俺達も楽しみさ。皇達が武良重家に戻ってきて…生まれ変わる。そう考えただけで創作意欲が湧いてくるんだよ」

「私もね、今だけ現役復帰しようかと思うくらいさ」

 清三朗も何やらワクワクしている様子。

「なんだかとんでもな話になってきたね…」

「でもまあ、いいんじゃない?なんだかんだで思った通りに行ったようでさ」

「…それはそうだけど…あたし疲れたよ…。久々に妖怪モード出したし…」

 結局は戦いを行った。

移動の疲れもあり、それなりに体力を消耗している。

「今日はもう疲れただろう?うちに泊まって行きなさい」

「え?いいんですかっ?一応めぼしい宿を考えてたんですけど」

 近くの温泉施設。

田舎町でもよくある、最近になって出来ていく新しい温泉施設。

そこには貸部屋などもある場合もある。

「予約はしちゃったのかい?」

「いえ、急だったんで予約などはしてないんですけど…」

「琉嬉ちゃんが当日でも大丈夫だろ、って。田舎だからってばかにしてますよねー?」

「余計な事言うなアホ護!」

 べこっと強めに膝の裏を蹴り上げる。



 この日は結局武良重家に厄介になる。

そのあと、ゆっくりと妖刀に関わる話をしたり、琉嬉達がふかしぎ部として行動をとっている内容を話したりした。

燈南や奏楓らが興味津々に聞く。

よくよく話を聞いて行くと、娘二人もそれなりに強い霊力を持っているらしい。

一応は悪霊云々を退治出来るくらいは武良重家には備わっているという。

「でもそうでもなきゃ妖刀なんて作れないよね」

「ごもっとも」

 陽志郎が笑顔で返す。

「…君達、鞍光高校に来るつもりはない?」

「くらみつこうこう?」

 まだ小学生の二人には高校なんて遠い未来のような話。

ましてやかなり遠く離れている地域の学校だ。

「はは、だって。どうする?」

「えー。高校って…あと何年後ー?」

 燈南は小学5年生。

奏楓は4年生。

つまり最低でも5年は経たないと無理である。

「あー、でも僕らは今年で卒業だしなー。今の一年生でも被る事は無理か」

「でもこの先ふかしぎ部どうなるんですかね?来年も新入部員入るのかどうか…」

 柚羽が心配し始める。

柚羽は現在2年生。

来年度が不安になってくる。

「大丈夫だって。僕も顧問の座を狙ってるから」

「顧問って…今耿助さんでしょ?」

「別に二人居たっていいじゃん?」

「そ、そうなの?」

 話が盛り上がる。


「ねえねえ、護ちゃんって髪染めてるの?」

「外人さん?」

 なぜか懐かれる護。

「これはあ、地毛なの」

「えー、やっぱり外人さん?」

「…外人ではないけど…まあ似たようなもんかな」

 適当に誤魔化す。

相手が相手だけに半妖の事を言ってもいいのかもしれないが、琉嬉らにすらあまり話したくない。

「子供相手は護に任せて…と」

 琉嬉はゆっくりとソファに座る。

隣には柚羽。

向かいには陽志郎と清三朗の二人。

「新しい刀…の話だけど」

「はい」

「完成したら、届けてやるさ。飛びっきりのを作ってやるよ」

「有難いお言葉です…」

 土下座するかのような勢いで頭を下げる柚羽。

「ま、いろいろ話は聞き及んでるさ」

「あ、やっぱりですか」

 どうやら武良重家の人間も知っている世の中の変化。

「夜栄守の勇雲っちゅー、同年代のやつがな、言ってたよ。

半妖だかの集まりが動き始めてるってな」

「こちらにももしかして?」

「いや、それはないがな。いずれは…と考える」

 腕を組み出す。

「だからこそ、今の時代にまた妖伐倒刀が必要なのかもしれないと、ね」

「その伐倒刀の最高傑作だった皇シリーズの最終作…にしてやるさ。俺達が」

 力強い目つき。

かなりの本気の陽志郎。


 武良重家は今でも刀を作り続けているという。

皇シリーズとまではいかないが、大昔から続く技術と、現代の技術。

それらを組み合わせた霊具の一種の刀を作り続けていた。

霊術会からも買い手があるらしく、裏世界ではそれなりに使ってる者もいるという。

「水無月家っていう五大家のひとつの所も買ってくれてたんだけどなあ。

最近はめっきりなくってな」

「水無月って…凛夢の所か」

「やっぱ有名なんですねー。私はその手の話詳しくありませんから…勉強不足です」

 がっくりと肩を落とす柚羽。

「水無月家か。…あそこは数年前にいろいろあったらしくてね」

 何かを知ってそうな琉嬉。

「ま、水無月家の話は置いといて、これからもよろしくお願いします」

 琉嬉もぺこりとお辞儀をする。

「まあまあそんなにかしこまらなくてもいいさ。今日は疲れただろうし、お風呂にもで入るといいさ」

「すみません。わざわざ…」

「孫達と仲良くしてくれよな」

 ニカッと笑顔を見せる清三朗。



 その後、琉嬉達は別れの挨拶を済ませ、帰路へとつく。

見送る武良重家の者達。

「さて、早速始めますか」

「用意がいいな」

「親父こそ」

 作る準備万端。

他の刀達が眠っている作業場へ向かい出す。

「私達も手伝うよっ、仕方ないから」

「うん」

 燈南と奏楓らも着いて行く。

「家族全員で頑張るかっ」

「だな…どんな刀が出来るか…俺にも想像つかん。

メインは…陽志郎。お前が作ると良い」

「…言われなくてもそうするつもりさ。現武良重家刀匠として、ね」




 それから一週間以上経った頃。

柚羽は自宅近くの誰もいない、林の中の開けた場所。

柚羽の修練場として使っている。

私服とは違う、剣道着のような服装。

手には綺麗な刀身の刀。


「お力…借ります。皇…七曜しちよう

 居合の構えをする。

ピシッと何かの音が聞こえる。

柚羽の操る式神が小さな小石を空中に飛ばした。

その小石を、躊躇う事なく、刹那の速さで柚羽は小石を横に斬った。

二つに綺麗に割れた小石がカラカラと転がり落ちる。

(軽い……そして、凄まじい切れ味…)

 柚羽自身、ゾッとするくらいの威力。

(まるで自分の霊力を奪い取られるような…そんな力を感じる…。

これが…皇妖伐倒刀の進化形…最高傑作の中の傑作…)

 陽の光を刀に当てる。

すると白く輝きだした。

「……なるほど…日天と月天をベースにしたと言ってたけど…なんとなく理解しました」

 元々、月天は光の力を浴びて妖力を上げる。

日天も同じような力を持っていた。

あらゆる自然の元素から力を借りる…というより奪う。

そんな無理矢理な力を引っ張り出すような刀。

使い手をも危険ももたらす、妖刀ならではの力を持っている。

(武良重家…最強の霊具製作の一族…か…。陽志郎さん、半端ないです!)

 そして少し本気を出す。

いとも簡単に、目の前の大きな岩肌が鋭い斬り傷を作り、ズズズッと一部が崩れ落ちた。

「皇七曜…これからよろしくお願いしますね」

 ニコリと微笑みかける。


 完成した刀。

その名も、皇七曜。

これまであった皇シリーズをまとめたような形になった。

いわゆる「七曜」を基にして作られていた。

その七曜の名を受けた刀。

柚羽は、現代の妖刀を手にしたのだった。



「それで、どうよ?新しい刀は?」

 護がお弁当を食べながら柚羽に聞く。

「えと、なんだっけ?スメラギ…なんたら」

「皇七曜です。神刀・皇七曜…なーんって陽志郎さんは言ってましたけど」

 笑いながら言う。

「多分、月天の二倍は切れ味良さそうですね」

「…二倍ぃ?!てか、既にやばい切れ味だったよね?前の刀って…」

 何度も一緒に戦っている。

その切れ味の鋭さは護も当然知っている。


 午後の部室。

いつものように昼食をとる為に昼休み中解放している時が多い。

こうやって毎日のように部員達が集まる。

「良かったですねえ。これでもう落ち込んだ柚羽さんをみなくてすみますね」

 にこやかなまどか。

後輩が元気になって喜んでいる。

「使い勝手どうなの?てか…前よりでかくない?」

 琉嬉が袋に入った刀を手にしてみる。

長さが月天より長い。

「ああ、月天より10cmくらい長いそうです。

いろいろしてるうちに大きくなってしまったみたいで…」

「へぇ…。しかし…案外軽いね」

「ですね。小柄な私でも扱えるくらいですからね」

「どういう技術で作ってるんだか…なるほどね」

 袋越しにも分かる、皇七曜の霊力。

なんとなくだが、以前少し触った事のある月天の名残の念が…流れて来たような気がした。



「なにより元の柚羽に戻ったのが一番大きいよ」

「一緒に行ったかいあったね~」

 柚羽と共に行動した二人。

「えー、いいな~。私も行きたかったですぅー」

 みゆが柚羽に抱き着く。

「あはは、今度は一緒に行きましょう」

「それは刀が折れる前提~?」

「あははは…」

 笑いが巻き起こる。


 まどかが琉嬉の隣に座る。

珍しくまどかから寄り添うような形。

「いやはや…琉嬉さん、素晴らしいですね。なんか嫉妬しちゃいます」

「…は?嫉妬?なんで?」

「後輩の為に一緒になって行動する…。私も見習わないといけませんね」

「いや、僕は基本暇人だし…」

 少し照れる琉嬉。

「いえいえ。なんだか、そういう部分が尊敬します」

「お前はお前で忙しいんだろうに。次期霊術会幹部候補だろ」

「いやいやいや、そんな事ありませんよ~。……狙ってるのはたしかですけど」

 チラリと覗かせるブラックまどか。

目標…というか野望のようにも見える。

時折見せるまどかの黒さは琉嬉も理解済み。

「でも良かったよ。結局柚羽は前よりパワーアップした訳だし」

「ええ」

「お前にも感謝してる。家柄の特権で調べ上げてくれたんだろ?ありがと」

 まどかの顔の方には一切目を向けず。

そのままで感謝の言葉を述べる。

「うふふ。可愛いですね、琉嬉部長」

「う、うるさいっ」


 笑顔の柚羽。

あの後土下座レベルで感謝された。

何かと感謝される琉嬉。

「頭起こせばかもの」

 と、思いっきりチョップをした。

「頭下げ過ぎだ」

「いや、しかし…」

「いいんだよ。別に。僕がしたくてしたんだから」

 ぷいっとそっぽ向く。

いまだに慣れないので、照れ隠しの為に、携帯ゲームを取り出して誤魔化すのだった。


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