表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふかしぎ真霊奇譚  作者: 猫音おる
第十四章   ~部員青春編~
79/92

#79 折れた牙は甦る 前編

 ピキンッ。

そんな、ヒビが入るような音が聞こえた。

「あっ…そんな…」

 いつになく高い声を出して驚く。

声の主は柚羽だった。

茫然として立ち尽くす。

手には刀。

だが、その刀身は見事に折れて、二つになっていた。

「嘘でしょ…あぁ…」

 跪くように、その場にへたり込む。

「なんてこったいです……」

 

 一人、剣技の鍛練をしていた。

少し強く、霊力を込めて素振りをした。

が、その結果、柚羽の強い霊力に耐え切れなくなったのか。

何も斬ってすらいないのに刀が折れてしまった。

元々手入れはそれなりにしていたのだが、ついにその時が来てしまったようである。

「ごめんなさい……月天……」

 ポロポロと涙がこぼれる。


 柚羽の愛刀。

皇月天すめらぎげってんという名の刀。

長さは通常の日本刀と変わらない長さ。

より薄く、綺麗な刀身をしている、軽めの霊刀である。

しかし、長年使用してきたせいなのか、ついに寿命が来たのか。

無残にも折れてしまった。

「ああ、お父さん…どうしましょう…」

 途方に暮れる柚羽。

何も考える事が出来ない。

普段からあまり取り乱す事は少ない柚羽だが、さすがに今は焦りが出て来る。

変な汗も出て来る。

「…きょ、今日の修練は…やめとこう……」




「は?柚羽がおかしい?」

「そうなんですよー。ゆずたん…一日中うわの空で…」

 部室。

丁度昼休み。

みゆは柚羽と同学年なので、クラスは違うが教室が近いせいもあってよく会ってたりする…のだが、

どうも様子がおかしいと琉嬉にうったえる。

「体育の授業も、なーんかぼーっとしててえ、ボールが来てるのに顔面キャッチしちゃったんですよね~」

「顔面キャッチって…キャッチ出来るもんなのか?」

「いや、あたしにマジ質問されても…?」

 返答に困る隣にいた護。


 当の本人は部室には現れない。

おそらく教室でおとなしくしてるのだろう。

当然、騒がしい双子姉妹やらも昼休みに部室にやって来る。

騒がしくないタイプの柚羽も大抵は顔を出しに来たりするのだが。

「うーん。気になるね…」

「まぁーった、何か厄介事抱えてるんやないの?」

 呑気そうにパックの牛乳を飲みながら喋る叉羅沙。

「…そっか、やっぱ牛乳の飲むからその身長の高さに繋がるんだな?」

 琉嬉が気づく。

「は?いや…別にそういう訳じゃないと思うけど?」

「いやいやいや、叉羅沙先輩のそのお胸も牛乳のおかげですよっ!」

「わわっ、ちょ、何しとるの紫音ちゃん!」

 紫音が叉羅沙の後ろから抱きついて胸元を触ろうとしている。

「やめんか馬鹿者」

「あいだっ!」

 強めにゲンコツをしたのは悠飛だった。

「てか、叉羅沙先輩…まだ背、伸びてません?」

「はえっ?そ、そか…?気のせいや。うん。さすがにもう伸びないって」

「そうですかあ?」

 女子の中でも背は高めの悠飛。

その悠飛ですらも見上げてしまう程、叉羅沙の頭の位置は高い。

琉嬉はそのやり取りを横目にまどかの方をチラッと見てみる。

すると普段よりさらに強めな笑顔をしている。

きっと、何か知ってそうな。

「んー、生徒会の…というか霊術名家のよしみで何か知らないの?まどか?」

「ん?叉羅沙さんの身長ですか?」

「違うよー。柚羽の事」

「…うーん、あの子はいろいろと抱え込んじゃうお人ですからねえ。

こちらから突っつかないと表に出さないですからね」

「まわりくどい行動してたもんな…あの時は」

 琉嬉が言うまわりくどいという行為。

がしゃどくろの時だ。

あの時は自身が動けない状況だったというのもあるが。

「部長としてちょいとお世話してあげようかね」

「ふふ、なんだかんだで世話焼きですね」

「最近自覚してるよ」



「柚羽」

「…え?は、はい?!」

 必要以上に驚く。

「る、るる琉嬉先輩…」

「僕はるるるきていう名前じゃないぞ」

「あ、いえ…すみません。ちょっと驚いてしまって…」

「なんか抱えてる事でもあるの?」

「…分かります?」

「誰でも分かるよ」

 生徒会の仕事が終わり、出て来たところを待ち伏せ。

部活動はいつものように、グダグダしたトークだけで終わらせた。

「あら、琉嬉ちゃん。部活は?」

「早めに終わらせた。ちょっと柚羽に用事があって」

「…ふーむ。ウチらはお邪魔かな?」

「え?どうしたんですか?あれー、部活は~むぐう」

「あはは、僕らは帰ります~。ほら、早く行こうっ、みゆちゃん」

 みゆの口を塞ぐ御琴。

その場の空気を読んだのか、強引に連れて行く。

「んぐー!んぐー!ぐぐぐー……」

 みゆの虚しい叫び…とも言えない声がこだまするかのように小さくなる。

「ま、なんかあったら言うてね?」

 そう言うと叉羅沙も去るように歩き出す。

「それじゃ私達も帰りましょうか」

「お?そうか?そいじゃお先に」

 まどかと龍翔も先に帰って行く。

「デートですか?いいですね~。この次は私もお願いしますね?」

 なんともわざとらしい。

寧音も生徒会室の鍵を閉めて職員室方面へ向かった。


「僕らも行こうか」

「え?あ、はい…?」

 琉嬉は柚羽の腕を掴んで、足早に動き出す。

小さい体とは思えない、力強い動きに柚羽はなすがまま。



 学校近くの喫茶店。

ふかしぎ部達はもとより、鞍光高校の生徒もよく利用しているお店。

そこに二人で入る。

「あ、あの…琉嬉先輩…一体なんですか?」

「悩み事あるなら先輩である僕に相談したまえ」

 踏ん反り返りながらキッパリと言い切る。

しかも恥ずかしげもなく。

先輩である部分を強調したいのか。

無い胸を張るようにしたまま、椅子に座って。

「ええと、先輩?」

 首を傾げてしまう。

どうみても先輩後輩反対に見える…のだが、いかんせん柚羽も高校生にしては少し幼く見えるのだが。

でも観念したのか、柚羽は大きくため息をつく。

そして重い口を開いた。

「…刀が折れたんです」

「え、刀?」

 いきなり悩みの答えを言い出す。

普段単刀直入で問い出す琉嬉だが、逆にあっさりと悩みの種の問題点を言い出したのだから、逆にびっくりする。

「ええ。我が家系に伝わる妖刀…がしゃどくろをも斬った刀…皇月天というんですが…」

「それが折れたと?」

 ぽかんとするしかない琉嬉。

普段見せる事もないような、呆気に取られた顔をしている。

「家宝みたいなもんか…うちにもそんな伝統ある物あったりするのかな」

 彼方家の物に例えようとする。

思い当たるような物は今は思いつかない。

あるとすれば、本堂にででんっと構える仏像。

仏具。

その他、経典や代々伝わっている妖怪など記した巻物…くらい。


「で、そのゲッテンとかいう刀が折れたから気が滅入ってると?」

「………はい」

 力なき返事。

表情も冴えない。

元からあまり表に出さないようなタイプなのだが今回ばかりは相当へこんでるようだ。

「あああああ…代々伝えられてきた刀なのに……私の代で崩壊するなんて…!」

 まさかの自分の代で刀が折れた。

柚羽の顔色などで分かる。

相当参ってるようだ。

「やれやれ…。で、新しい剣が必要と?」

「あ、いや……必要というか…ええと……その…モニョモニョ…」

 口籠るような言い方。

どこか遠慮がちのようだ。

「はっきりしろー」

 思わず琉嬉は柚羽の脳天にチョップする。

「あだっ…」

「剣士だろ?剣が無かったらお前の戦闘力半減以下だろ?ふかしぎ部の戦力がガタ落ちだろ?」

 ずずいっと迫る。

「は、はぁ…」

「他の剣を使うとかはだめ?」

「特殊な刀じゃないと…私の霊力に耐え切れなくって…」

「うぇっ、マジで?」

 薄々とは感づいているが、柚羽の霊力はかなり高い部類。

あの霊感度も琉嬉やみゆと同等に近いレベル。

昨年のがしゃどくろの件。

強力な念を飛ばしてただけある。

ようするに普通の刀では柚羽の霊力に感応しない。

ちょっとやそっとの刀でも耐え切れないと自分で言い切る。

それだけ柚羽の力は強いようだ。

琉嬉は他の部員達とは手合せしているが、柚羽とはしていない。

(ふむ……。ぶっちゃけ、一度戦ってみたいと思ったけど…やめとこうか)


「自分で直すのは?」

「それは無理ですよぉ~」

 わたわたと手を振りながら言う柚羽。

「てか、刀って折れたら直せるものなの?」

「……直すのは…さすがに無理かと…」

「だよねー。ゲームならオリハルコンとか使って修復したりとか合成したりして、作り直すのとかあるのにね」

 ゲームに例える。

琉嬉ならではの発想だ。

「合成……作り直す……なるほど…」

 合成の言葉に反応する柚羽。

顎に指を当てて考えるポーズ。

ぶつぶつと独り言を何やら言い出している。

「んーと、何?なんか思い当たる節でもあるの?」

 琉嬉はほとんど冗談のつもりで言った。

だが柚羽は真面目な反応を示す。

「琉嬉先輩、手立てはあるかもしれません!」

 急に立ち上がり、琉嬉の手を両手で取る。

「は、はい?」


 柚羽少し興奮気味で話を始めた。

内容は、月天を作り出した刀鍛冶の事。

だが、月天自体は100年も前の昔の妖刀の一種。

柚羽の家系に代々伝わっている。

その刀鍛冶に会えば良い。

そう考えるが、さすがに作り出した刀鍛冶が現在も生きてるとは思えない。

「あのさ、もしかして…刀を作った人を訪ねようとしてない?」

「してます!」

「………いや、刀自体がもう100年以上前のだろ?作った人が妖怪でもない限りもうこの世にいないと思うぞ?」

「そうですね!」

「いや、なんで納得の返事まで気合い入れてるんだ…?」

 柚羽の独特のペースのテンション具合。

ついついツッコミを入れてしまう。

「あー……でも、もしかしたら…、子孫がいて受け継いでるかもしれないなぁ…。

ましてや霊具の妖刀なら…」

「はい!」


「そもそも、その刀鍛冶の家系とは繋がりみたいのはないの?」

「聞いた事ありませんね~。少なくともご先祖様が単に譲り受けた…とも言われてますし」

「譲り受けた…?発注して作ってもらったって訳じゃないのか」

 元は誰かの手元にあったようである。

「私もよく分かりません、なんせ江戸時代とかの話らしいので…」

「江戸時代?そんな昔なのか。って言っても江戸時代自体が長いからなあ。

てか、400年も前から?」

「本当かどうか分かりませんけどね~」

 てへっといった具合に笑顔を見せる。

「……そうだなぁ。ねえ、僕も一緒に行くからさ、お前の新しい刀、作ってもらおうよ」

「本当ですかっ?!」

「でもその刀鍛冶関連を捜さないとな。心当たりありそうな人に聞いてみようか」

 お得意の首突っ込み。

世話焼きの性格が出てしまう。

「でも…」

「ま、ふかしぎ部課外活動の一環って事にしようか」

 そして、琉嬉と柚羽は皇月天に関わった者、そして製作者を調べる事にした。


 それから二日後。

伝を回り、情報を仕入れる。

柚羽は名家の力を使い、霊術会などの情報源を頼りに調べあげた。

最も、霊術会でも力のあるまどかを中心に調べ回った。

快く引き受けたまどか。

一方琉嬉の方はお寺の方にも情報がないのかと調べる。

そしてネット情報。

今のご時世、ネットでの情報は無限大とも言えるくらい膨大に溢れている。

刀鍛冶関連で調べて行けばひょっとすると何かあるのかもしれない。

などと考えて調べる。

その結果。


「関係あるのかどうかは分かりませんけど、妖刀の話なら私の家系も聞いた事ありますよ」

「え?」

「え?」

 案外身近に知っている者がいた。

寧音である。

眼鏡をクイッと上にあげてキラリと光らせる…ように見える、まさに委員長的な仕草。

「知ってるなら早く言え~っ」

 琉嬉が寧音の襟元を掴んでガクガクと揺らしながら迫る。

「あうあう、落ち着いて下さい琉嬉さん!」

「教えてください!」

 柚羽は反対から寧音のスカートを引っ張る。

「柚羽さん!駄目です!脱げちゃいます!」

「寧音ちゃんのパンツ見えても誰も気にしないよ~」

「それは護ちゃんが女の子だからだろ?」

「う、龍翔君それ正解かも」

「何変な会話してるんですか、止めてあげないと寧音先輩があのままだと気絶しますよっ」

 取り敢えず止めに入る隆治と悠飛ら後輩。


 なんとか落ち着いた状況になり、寧音が喋り始めた。

「えと、夜栄守家も一応剣技を主体にした武術があります。

なので刀を用いってます。

大昔から伝わる特殊な霊刀れいとうですけど。

似たような刀を作っていたという人なら私の祖父の知り合いに居るみたいですけど…」

「でかした!早速その人に当たろう!」

「ですね!」

 早速盛り上がる二人。

「でも関連性あるかどうかも分かりませんし、大体鞍光からでは遠いですよ?なんせ関東の方ですから」

「…かんとー?」

 盛り上がった二人が止まる。

「そう、関東です。日本の首都東京がある関東地方です」

「………だって、柚羽」

「……………どうしましょう?」


 固まった二人を見て他の部員達も固まる。

その静まり返った部室。

ガチャッと優しく隣の生徒会室と繋がっているドアを開く音。

「あ、皆さん集まってましたね」

 まどかだった。

「お話は進んでますか?」

「あ、いや…丁度今行き詰まった所で…」

「私なりに調査した結果なんですけど…読みます?」

 少しいやらしい笑顔で資料と思われるプリント紙を自分の顔近くに出す。

「是非!」

 縋り付くようにまどかの腰元に抱き着く柚羽。

いつもおとなしめの柚羽の大胆な行動に面食らう部員達。


「さっすが会長~。見せて見せて」

 琉嬉もがっつくように資料を覗く。

すると、妖刀作成者らしき人物の名が複数名。

その中から該当しそうな人物を探す。

「こんな情報よく残ってるな」

 感心する龍翔。

「妖刀伝説なんて普通に残ってる話ですからね~。例えば、村正の伝説とか」

「ゲームにも出て来るやつだよな?」

「ええ。でも、そこから妖刀と言われる刀を作った人となるとまた別の話ですけど」

「どういうこった?」

「基本的には最初から妖刀として作ったという訳じゃないですからね。有名な逸話のは」

「ふむ。まぁそうか」

 巡り巡って結果的に妖刀として伝説を残してしまう。

有名なのは大体そういうのだ。

「最初から魑魅魍魎を斬る目的となると、話が違ってくるんですよ」

「霊具とかはそんなもんだな」

「使い手の霊力制御をしなければいけない。いろいろと手間暇かかるらしいです」

「…途中からざっくばらんと説明したな」

「そうですかあ?」

 龍翔のツッコミを笑顔でかわすまどか。

「寧音、どの人とか分かる?」

「あー、それはちょっと聞かないと分からないですね…今聞いてみますねっ」

 と言うと寧音は自前のパソコンの連絡通話アプリを起動させる。

そして誰かと連絡を取る。

「…携帯でやりゃいいのに」

「こっちの方が音質いいんですよ~」

 変に自信満々。

「いるよね、こだわり強い人って」

「音質にうるさいヘッドホン信者みたいな?」

「まさにオタク気質…」

 琉嬉でもさすがに少し引き気味だった。



 寧音が勢いよくバサッと文字列が並んだ紙を開く。

「私のお祖父さんに問い合わせてみたら、この方が浮上しました」

「おお、なんか捜査でもしてるみたいだな」

 複数の名前の中から、寧音が人差し指を紙の上からなぞり、そして止めた。

その名前は武良重陽志郎むらしげようしろうという名前だ。

「たけらじゅう…?あ、違う」

 そのまま読もうとした護。

「あ、この読み方はムラシゲと読むそうですよ」

「ほええ。さっすが寧音ちゃん!賢いねー」

「褒めても駄目ですよ」

「ああん、いけずぅ」

「ムラシゲ…?聞いた事あるような…」

 龍翔は聞き覚えのある名前だと言う。

「武に良に重でムラシゲって読むのか…へぇ……。この人が?」

 琉嬉は名前だけ見てもピンと来ない。

武具関係はさっぱりだ。

それっぽいような名前でもあるし、そうでもないような。

「おそらく、皇月天の作成者の、子孫」

 柚羽は確信するかのように、小さい声で呟いた。




 武良重なる人物は鞍光からそう遠くない所に住んでると判明した。

寧音の祖父が話を通してくれたようである。

そう遠くない…と言っても、位置的にはかなり遠い。


 6月最終の土日。

それを利用して柚羽と琉嬉は月天をどうにかしてもらう為、武良重の元へ向かう準備をしていた。

すぐにはもう出発出来るくらい。

「ちょーっと、なんであたしもなのー?もうすぐには体育祭でしょー?」

 目立つくらいの金髪。

護である。

「暇そうなのがお前くらいだったんだよ。生徒会は土日なのに登校してるし、後輩達も用事があるとかなんとか」

「うげー…」

「なーんであたしまで…。まー、いーけど」

 渋々ながらも自分が暇だという事に納得しながらも待ち合わせの駅に来た。

「おそーい」

 携帯ゲームしながら遅いと言う琉嬉。

「すみません…本当に」

 柚羽が姿を現した。

その服装は普通に余所行きのような、可愛らしい服装だ。

ただ荷物は多い。

「なんだその恰好…」

「あ、何かおかしいですか?」

「……浮かれた少女みたい」

 ワンピース型の青色の可愛らしい服。

「ふつーの旅行かよ…」

「やれやれってね」



 鞍光から300kmも離れた場所。

人口およそ、1万5千人弱。

佐我町さわれちょう

鞍光駅からの乗り換えで、東西北洋線に乗り、東側へ向かう。

一応、辺境とも言えるような端の海沿いの町。

「電車でどれくらいで着くの?」

「んー、三時間くらい?」

「そんなにかかるのぉ?」

「ええと…鞍光市から300kmくらいの距離ありますから…」

「300?!嘘でしょー?」

「でも陸続きだからいいだろ?飛行機代より安上がりだし」

 そう、飛行機で行くよりは幾分安い。

そのセコさを出す琉嬉。

そもそもまだ高校生。

そんな大金がある訳ない。

みゆならまだしも、他の者は家庭的には普通の資金の家庭なのだから。

「ねぇ、霊術名家ってお金持ちじゃないの?」

「わ、私の家系は落ちぶれた家系ですから…名家と言っても…」

「琉嬉ちゃんは?」

「うちが金持ちなのは父さんの実家の方。つまりお寺。ようするに双子の所」

「そうなんだ~。あたしも食っていくだけで精一杯だよ」

 などと、半分愚痴のような会話が続く。

電車内で3人の小旅行感覚。

まったりと車内で会話をしていく。

しかし内容はお金関係で少々下衆っぽい。


「あと何時間ー?」

「まだ出発して30分しか経ってませんよ?」

「嘘でしょー?」

 既に飽き飽き状態の護。

不貞腐れたかのように、ぐでっと背もたれを倒す。

「護はおこちゃまですねー、こんな景色変わっていって楽しいのに~」

「あたしは別に景色が好きな訳じゃないもーん」

「琉嬉先輩って案外渋いのが好みなんですね…。景色を見て楽しむとか」

「僕はもしかして鉄道ファンになれるかも?」

「…鉄道というより景色が好きなだけなのでは…?」


「あの、皆さんって、彼氏とかいないのでしょうか?」

「は?」

「え?」

 唐突に柚羽の質問に目が点になる琉嬉と護の二人。

思いもしない発言に時間が止まったかのようになる。

「あ、いえ…。その…お二人共普段毎日部室にいるので…お付き合いしてる男性とかいないのかなと…」

「……あのさ、それはお互いさまじゃないの?柚羽こそいるの?」

「いえ、私は…いませんよ…。今までお付き合いした人もいませんし」

 少し悲しそうな顔をして言う。

「びっくりしたね~、柚羽ちゃんがそんな事を言い出すなんて」

「いや、なんとなく…お二人お話ししやすいんで」

「そーう?あたしならまだいいけど琉嬉ちゃんなんて話やすいタイプじゃないと思うけどねー」

「るせっ」

「そうですか?私は琉嬉先輩は接しやすい方ですけどね」

 意外な返答。

柚羽にとっては琉嬉は接しやすい先輩のようだ。

「まあ見ての通り、彼氏なんざいないよ」

「あたしは…まあ、いないけど」

 少し歯切れの悪い言い方。

「なにそれ。前は居たみたいな言い方じゃない?」

「いやいやいないよっ!付き合ってたとかないからっ!」

 必死の否定。

両手も必要以上にぶんぶん振る。

「好きな人がいるとか?」

「それもないない!」

「あー、気になるー」

「たしかに」

 どうも煮え切れない態度。

過去に何かあったかのような素振りではある。


「もー、そういう柚羽ちゃんこそどうなのさっ!」

「好きな人はいません。残念ながら…」

「へー。ま、たしかにふかしぎ部って男子少ないもんね」

「狙ってる訳じゃないんだけどね」

 部長の琉嬉が言う真実。

全部員のうち、男子部員は龍翔、御琴、隆治だけである。

一応の顧問は男性の耿助だが、生徒ではない。

「でもさ、生徒会で一緒の龍翔君はどうなの?イケメンじゃない?ちょっとぼーっとしてそうな雰囲気あるけど」

「龍翔先輩は…遊希さんがいらっしゃるし」

「まどかちゃんとも仲良いよねー」

「御琴は?」

「みゆちゃんの仲良いよね?」

「じゃあ隆治は?」

「なんか双子と悠飛と仲良い」

「……先約ありって感じ?」

 そう、なぜか他の男子部員はここにいる3人より仲の良い女子部員達がいる。

どうも入る隙が無さそうである。

「部員じゃなくっても、クラスメイトとかは?」

「うーん…」

「うーん…」

 琉嬉と柚羽は腕を組んで考える。

「でも琉嬉ちゃんと仲の良いクラスメイトいるじゃん、なんだっけ」

「嵯藤眞太朗?」

「そうそう、そのしんたろーくん」

「最近あまり話してない」

「あら、残念。柚羽ちゃんは?」

「いませんねー」

 キッパリ。

どうやら現状は気になる男子いない様子。

「他の人はどうなんだろ。まどかちゃんとか叉羅沙ちゃんとか」

「なんか叉羅沙は自分より背の高い人がいいって言ってたな…」

「マジで?叉羅沙ちゃんより背の高い人って…学校にいたっけ?。龍翔君も背高い方だと思ったけど」

「さぁねー。大体あいつ身長いくつだよ?」

 なんでかキレ気味に言う琉嬉。

「188cmと去年は言ってましたね…。あれから伸びたようにも思えますけど」

「もしかして190あるとか…?でも龍翔君よりも遥かに大きいよね」

「そしてあの髪型だもんな…」

「あれって、ポニーテールですかね?それともツインテールになるんですかね?」

「ポニンテールっていう事で合成しちゃえばいいんじゃない」

 叉羅沙はいつも同じ髪型。

ポニーテールなのだが、そのポニーテールが二つ作ってあるのだ。

「あの髪型のせいで余計に大きく見えるよね」

「ですよねー」

「琉嬉ちゃんと何センチ差?」

「黙れっ」

 げしっと護の脛を蹴り上げる琉嬉。

ちなみに琉嬉と叉羅沙との身長差はおよそ52cm程度。



 しばらくする事1時間半。

護は静かになったと思ったら寝ていた。

柚羽は流れていく景色を見ている。

そして琉嬉は結局携帯ゲームに戻っていた。

なんだかんだで景色が飽きた様子。

「今どこら辺?」

 静まり返った3人のうち、先に口を開いたのは琉嬉だった。

「ええと……どこでしょうかね…。私来た事ないので…」

 地図を見ながら今通っている地域を調べる。

「あ、でももうそろそろですよ!」

 急にテンションあがる。

「お、そうなの?」

「はい、今佐我町の隣町ですね。次の次の駅で降車ですね」

「ゲッ、マジか!降りる準備しないと!」

 急いで降りる支度をする。



 プシューと、いつも聞きなれた電車のドアの閉まる音。

降り立った駅は人通りが少ない、まさに田舎な街といったような雰囲気だ。

琉嬉がいつも利用している駅とは大きさはそんなに変わらないように思える。

ただ、人の多さが極端に違う。

「…さて、こっからどこへ向かえばいいんだい?」

 駅の構内から出た3人は辺りを見回す。

そして地図を再確認する柚羽。

「え、と…。こちらですね」

「おお、地図が読める女!かっこいーねー」

「いや、地図くらい読めるだろ」

「ノンノン、甘いね、琉嬉ちゃん。世の女性は地図が読むのが苦手っていうのが定説なんだよっ」

 謎に誇らしげに語る護。

「あー。そんな話聞くね。柚羽は大丈夫?」

「え?わ、私ですか?さあ……、私はそんなに方向音痴ではないと思いますけど…」

 自分自身ではそうは思ってないようだ。

「ていうか、この地図によると結構山中に近いですよ?」

 広げた地図に指を示して場所を確認する。

柚羽の言う通り、住宅地から少し離れた場所だ。

近くの標高の低い山が連なっている。

そこの近くにバツ印をつけている。

その印の場所こそが武良重の家だそうだ。

「…宝探しじゃないんだから」

 いかにもアナログな目印に呆れる琉嬉。

この印をつけたのは寧音。

わざとなのか、本気で付けたのか。

「てか、あたしらが行くって事知ってるの?」

「一応は連絡してくれてるみたいですけど」

「そっか。なら」

 そう言いながら琉嬉は細い腕にも関わらず、片手で鞄を一気に拾い上げ、背負う。

動く準備万端。

「早速向かおう」

「あ、はい!」

 歩き出す二人。

「流されるまま…あたしはくっついて行くだけ~」

 元々関係ない護。

自分にそう言い聞かせながらも、着いて行く。



「地図見る限り…少し山の所じゃない?これ?」

「そうですねえ…」

「えー、何?歩くのー?」

 不満たらたらの護。

「方向はあってる?」

「おそらく…」

 しかし、二人は護の言う事には反応せず。

集中している。

「…あたし着いてきた意味あるのかなあ」

 不貞腐れるしかない。

「バスか何かないかな…」

 駅そばのバス停。

そこから一応近くまで行けそうだ。

「…免許取るかな」

 琉嬉がぼやく。

「そういえば琉嬉ちゃん、18歳になったんだもんね?車の免許取れる年齢かっ。18歳に見えないけどっ、って、痛い痛い!」

 無言で護の脇腹をチョップする琉嬉。

「でも高校に在籍してたら駄目なのでは…?たしか学校の規定が…」

「さすが生徒会!そういうのに詳しいね~」

「それはまあ置いといて…時間調べてよ」

「あ、はい!」

 どうもぐだぐだ感が漂う。

琉嬉はどっちにしろ旅行慣れはしているので速やかに行動を起こせるが。

柚羽と護は不慣れ。

護に関して言えば余計な事ばっかり言っている始末。




 見た事のない田園風景が並ぶ。

立ち寄った事すらない街中。

何もかも新鮮に感じる。

海に近いせいか、大型のカモメやらウミネコやらが鳴き声を発しながら飛んでいる。

「海と山が近いんだね」

「鞍光って山しかないもんね」

 それらしきバスに乗って20分もしないくらい。

目的地の近くで降りる。

降車したのは琉嬉達以外に誰もいない。

でもバスの乗客はそこそこ居た。

と言っても年寄りが多かったが。

若い人らは車が基本だろう。

「こっからどれくらいかな」

「あっついね」

「気温…25度くらいですね。6月とは思えませんね」

「鞍光は基本涼しいからな…」

 何かと自分たちの住んでる地元と比べる。

気候状況が陸続きなのにも関わらず随分違う。

「にしても…こんな辺境とも言える地に住んでるとなると…結構な変わり者なのかね」

「職人さんは静かな場所を好むんですよきっと」

「ふーん…」


「しかしまた…妖怪の気配がするね」

「辺境だし、あまり人が寄り付かない所だからだろ」

 冷静な三人。

妖怪の気配がする。

つまり、あまり人間がいない事を示しているとも言える。

「でもこっちを狙ってるというのもなさそうだね」

「きっと人間を襲う事が出来ないなにかがあるんだよ」

「結界的な?」

「ま、友好的というか、平和主義というか…」

「ふぅん…そっかぁ。鞍光とは違うね」

 毎日のように幽霊妖怪が飛び交っている鞍光。

こちらを狙うような妖気も感じられない。

先を急ぐように、歩き進む。


「すっごい今更なんだけどさ、刀って、確か持つのに免許とかいるんじゃなかったけ?」

「護にしては賢そうは質問だね。柚羽って刀持つ許可って持ってるの?ていうか持ってなかったら駄目だよね」

 本当に今更感の強い質問。

しかし柚羽は、

「あ、それなら大丈夫です。許可下りてますから。だから刀は所持出来るんです。ちなみに刀所持には年齢制限はありませんよ」

「へぇ…そうなんだ…でも持ち歩くのはちょっと…」

「何言ってんだ。お前だってその辺の剣より鋭い霊力の剣作り出せるくせに」

「いや、それと実物の刀は違うでしょ…」

 謙遜する護。

「ふふ、でも霊具とか違って物理的に存在する実物はちょっと萎縮しますよね?」

「そんなものなのかな?」

 これといった武器を使用しない琉嬉には少し理解し難い内容。

武器と言っても御札など紙切れくらいなのだが。


 降りてから歩く事15分程度。

山の脇の小道。

そこを進んで行く。

「あってるのかどうかも分からなくなってきたよ…」

 すると少し開けた所に家が出て来た。

そう古くもなさそうな家。

普通の、木造建ての家だ。

その辺の住宅地にあってもおかしくない家。

ただ違うのは庭の奥に、蔵みたいのがある。

そしてさらに奥に作業場のような、建物。

「もしかしてここ?」

「見なよ、表札にちゃんと武良重って書いてる」

「ほんとだ」

 当たりのようだ。

「人の気配ある?」

「さぁー」

 気配くらい琉嬉達くらいならすぐ分かる。

でもなんとなく淡々とした空気が流れている。

妙な雰囲気だ。

「すーみませーん」

 琉嬉がおもいきって声をあげて叫ぶ。

「武良重さん宅でよろしいですかー?」

 柚羽も負けじと叫ぶ。

しかし反応はすぐ帰って来ない。

「いないのかな?」

「でも鍵は開いてるよー?」

「あ、コラお前…」

 護が勝手に入口のドアを開ける。

鍵は掛けられてないようだ。

田舎特有なのかなんなのか。

「田舎の人って鍵をしないって本当なんだ~」

「たまたまかもしれないだろ」

「えー、そっかなあ?」

 などとたわいもない会話。


「えー、っと、お嬢さん方…どなた?」

 ビクッとする三人。

突然背後の方から男性の声がした。

「あ、ど、ども…」

「すみません突然…」

「あわわ、泥棒じゃないですよ!」

 護だけ変な事を言う。

「いやいや、それは分かるけど…俺に小中学生の知り合い居たかなあって思ったけど…」

「小学生じゃないです!」

 琉嬉と柚羽は必死に否定した。

「あ、そうなの…?てか外人さんの知り合いも居たかなあ?」

「外人じゃないよっ!」

 おまけのように護も否定した。



 男性は武良重陽志郎、本人だった。

見た目はまさに職人風。

短髪に少し無精ひげ。

背は180前後くらいで少しがっしりしている。

年齢は40歳前くらい、若くも見えるようで年がいってるようにも見えるようで。

と言っても山男とかそういう風某ではない、整った顔つきで小奇麗にしたら優男風になるような感じだ。

「あ、あの…私、鳴神柚羽と申します!早速ですが!」

 ずずいっと折れた月天が入っている刀袋を手にして武良重に迫る。

「ええと……鳴神って…霊術名家の?」

「はい!」

 なんとも気合いの入った声。

剣道部でもならしているだけある。

「柚羽…落ち着きなって」

「はっ!すみません…取り乱しました」

「やれやれ…。武良重さん、どうか柚羽の願い事、聞いてやってくれませんか?」

「願い事…?まぁいいや、こんな山の所まで女の子三人で来てくれるなんてないからね。驚いたよ。

疲れただろう?お茶でも用意するから中に入りなさい」

「お言葉に甘えて…」

「はぁー、疲れちゃったよー。早速行こ行こっ!」

 護は楽しそうに中へ入って行く。

「現金なヤツめ…。しかしまあ………いろいろ聞きたい話あるんですけどそれは後にしますかね」

「…ん?」

 何かといろいろ気になる琉嬉。

それが性分。

能天気な護とは正反対。




 三人は取り敢えず中に入れてもらった。

柚羽の主張を静かにうんうんと頷きながら話を聞く武良重。

琉嬉と護は黙っている。

「なるほど…この刀…妖刀皇月天が直らないか、だね」

「はい、そうです…家系に伝わる刀でもありまして…」

「ふむ。単刀直入に言うと、一度折れた刀は修復は不可能に近い」

「ええっ!やっぱり…」

 がっくりと肩を落とす。

「ほらね?ゲームとは違うんだよ」

「ゲームでも修復とかあるの?」

 そこまでゲームをやらない護にはよく分からない。

「そうさな…ちょっと月天を見せてもらっていいかい?」

「あ、はい…」

 柚羽は袋から折れた月天を取り出す。

そして武良重に見せる。

すると途端に見る目つきが変わった。

鋭い眼光になる瞬間を琉嬉と護は見逃さなかった。

「これは……」


「ご先祖様が作った…なるほど。やはり」

 独り言のようにぶつぶつ言いながら一人納得する武良重。

「あの…?」

「ああ、ごめんよ。噂には聞いてたけど、実物を見るのが初めてなんでね」

「え?そうなんですか?」

「そもそも柚羽の家系に伝わってたんだろ?今の代の武良重さんが持ってた訳じゃないだろ」

 琉嬉が柚羽にツッコミを入れざるを得ない。

「あ、そうですよね」

 少々情緒不安定気味の柚羽。

考えが追い付いていってない。

「修復は無理……だけど、作り直す事なら可能だけど…どうかな?」

「作り直す?」

「そう。一から作り直す。ただし、時間はかかるけど」

 つまり、最初から刀を作るという事だ。

「でも、お金とかないですよ?私。あ、でも家のお金集めれば」

「いやいや、お金の問題じゃないけどね。いやはや…俺のご先祖様でね、武良重江三郎松之っていううちの刀匠としての始祖がいたんだけどね」

「松之…聞いたコトありますね」

「さすが剣士」

「はは、名前くらいは知ってるだろ?でも表向きの人じゃないけどね」

「妖刀――」

 妖刀、と、琉嬉がぽつりと言う。

「僕も知ってるよ。というかこっちに来る前に調べた。武良重、と聞いてお寺の資料とかで見たんだ。

徹進松之…っていう刀が呪いを放つっていう話をね…」

「ご名答。さすがは五大家のご息女だね」

「あ、知ってました?」

「勿論」

 ただの刀鍛冶じゃない。

武良重陽志郎は、いわゆる裏の世界に一番詳しい、繋がりのある刀匠だった。


 松之という名前を付けられた刀が世に出回った。

しかしそれは完全に表世界ではなく、魑魅魍魎を断つ刀として。

そして松之は自身の霊力が高く、極めて珍しい存在の刀匠だった。

そこに目を付けた霊術者達が武器として松之の刀を好んで使った…という。

そのうちの傑作とも言われる、皇月天と名付けられた妖刀。

それが鳴神家に渡った。

「実はね、月天の他に、日天にってんという刀もあったんだ。つまり二本が対となる、双子みたいなものかな?」

「……へぇ、だって、柚羽。知ってた?」

「…存在は知ってます。この月天と同等の刀がある、と。それが日天だって。お父さんから何度も聞かされました」

「よくわかんないけど、すっごい話だね?まるでゲームみたい」

「ゲームみたいって…能天気だな護。かくいう僕も実際にそんな話があるなんてちょっとワクワクしてくるけどさ」

 実に素直な二人。

「なあ、この月天、俺に預けてくれないかな?こいつを生かして、新しく生まれ変わらせようと思うんだが」

「本当ですか?!」

「ただし、条件がある」

「条件っ?!」

 この展開、まさにゲームなどでありそうな展開だ。

「条件ってなんです?」

 琉嬉は柚羽のかわりに聞く。

「元は二本一組の刀。それを纏めちゃえばいいんじゃないかって。どうせ月天はこのままじゃ使い物にならないしな」

「というと?」

「日天と合成する」

「合成?!」

「ほわあ、まさにRPGゲームだね」

 さすがに驚く琉嬉。

「で、その日天はどこにあるんですかっ?!」

 テンション爆上がりで柚羽が問い詰める。

武良重は静かにすっと右手を上げた。

腕は上をあげ、指は山の方を差す。

「この山の奥地に祀られている。ただし……守護する式神がいる。そこを突破出来たら、の話だけどな」

「…ええぇ?」

 どこまでもRPGゲームのような展開が続く。

「ようするに、ボスモンスターを倒してキーアイテムを手に入れろ!みたいなもんでしょ?」

「はは、まあそういう事だね。見ての通り、俺は単なる刀鍛冶。戦い専門じゃないんだ。

まあお嬢さん方が、というか柚羽ちゃんが見合う程の実力者かなって、上から目線だけどさ」

 笑いながら言う。

単に遊び心のようにも思える。




「合成ねぇ…。そんな事リアルに出来るの?」

「さぁねー。んで、結局登山?」

 愚痴を言う護。

「登山っていう程登山じゃないだろ。柚羽ははりきってるよ」

「ほんとだね」

 どんどん前に進んで行く柚羽。

「こうなったらとことん付き合うか…」

 琉嬉達は妙な出来事に巻き込まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ