#77 大きなたまご再び
6月中旬。
それの土曜日。
世間は休日。
琉嬉らも世間と同じように、学校は休み。
彼方家の本家と分家+來魅ら家族は野球の招待チケットを貰った。
そのチケットで野球観戦しに来た…のだが…。
「おお、人が沢山よの」
「來魅ちゃんは来た事あったかしら?」
「一度だけあるぞ」
「あの時は龍翔君に会ったねえ」
「え?そーなのー?野球とかイメージないなあ」
「紫音、龍翔先輩に失礼だよっ」
「これだけ広い会場だし、3万人以上来るから知ってる人に会ってもおかしくないよね」
開場前。
行列に並ぶ。
いったいどれくらいの人数が並んでるのか。
健闘もつかないくらいだ。
「ねえ…マダ?」
携帯ゲームをやりながら待つ琉嬉。
少々、ぐだついてきている。
早く来すぎて暇を持て余している。
立っているのも疲れるので、レジャーシートを敷いて座って待機している。
「しかし…まあ…別にこんな早くから入らなくてもいいんじゃないの?指定席でしょ?」
琉嬉が手にしているチケット。
いわゆるお高いチケットだ。
以前ここでのふかしぎ事件の時に知り合った田村という人物から貰った招待券だ。
あの時のお礼か、わざわざチケットを丁寧にくれた。
「久々だね、家族で遊びに行くのも」
天が近くの売店から買って来た飲み物を持ってくる。
「じじいも来れば良かったのにねー」
「野球?俺は別にそこまで興味ないね。とか言って頑固だったし」
「すぽーつとやらも観てるのも楽しいぞ」
キラキラした目でそう訴えるのは來魅。
誰よりも年上の筈なのに誰よりも年下の子供のようだ。
「うんうん、來魅ちゃん分かってるな」
天が來魅の頭を撫でる。
満更でもない顔をする來魅。
「……しっかし…悠飛…」
「ん?何?」
ファイヤーズのグッズを身に固めている。
勿論、上着もレプリカユニフォーム姿。
「悠飛って野球好きだったんだね」
「うん、本当は私も野球やろうと思ってたんだけど…本気出す訳にもいかないでしょ?
それに野球熱が復活したのは最近だし」
「へぇ…、ミーハーじゃないアピール?」
ちょっと嫌味っぽく言う紫音。
「なんとでも言えばー。私は私で楽しむからさっ」
「おう、私も楽しむぞ悠飛~」
來魅ものってくる。
「…我がいとこながらよくわかんないや」
お手上げなポーズをする紫音。
さすがの紫音も理解出来ない領域のようだった。
しばらくすると開場のアナウンスが流れる。
そして列が徐々に動き出す。
なかなか前に進まないのがなんだかもどかしい。
「お、進んだよ進んだっ」
「テンションあがるねー」
「お子様は元気だねー」
並んでるだけなのに疲れが出て来る、中年導。
「普段から体動かしてないからだろー」
天からの忠告とも取れる一言。
今は一線から身を引いている。
とはいえ、そこらの術師よりは腕は立つ…のだが、現状は普通の人間となんら変わらない生活をしている。
仕事柄、あまり体を動かさないのも理由のひとつ。
移動するのもほぼ車ばかり。
「ほら、行くよ、父さん」
琉嬉に背を押されるようにして前へ進む。
入口で何やら配っている。
スタッフのお姉さんから琉嬉も何か渡される。
「何それ?」
「え?なんでお前ら貰ってないの?」
琉嬉と來魅に渡されたモノ。
それはファイヤーズのキャップ。
「琉嬉姉と來魅ちゃんだけなんで貰ってるのー?」
「姉ちゃんだけずるいー。てか、それって小学生以下限定で配ってるやつだよ」
「え?」
一瞬琉嬉が固まる。
「なんか見た目で判断されてたみたいねぇ」
嶺珠が笑う。
「ふふ、私はまだ子供だからなっ」
なぜか嬉しがる來魅。
その逆で琉嬉はあからさまに不機嫌な顔をしている。
「プフッ、琉嬉姉ったら…子供にまた間違えられたんだねー。プフフフー」
笑いが止まらない紫音。
「さすがに私達は貰わなかったね。何かと童顔だから…」
ちょっとは自覚ある莉音。
いまだに中学生に間違えられる事があるそう。
「…返したほうがいい?」
「いいよ、貰っときなって~。どうせ言っても信じてもらえないって…うぎっ」
紫音が喋ってる間に琉嬉に叩かれた。
座席はバックネット裏のいい場所。
賑やかに観戦するには外野席など、応援団が近く応援がうるさいくらいの所が楽しいが、
内野席もファールボールがよく飛び込んで来るが、ボールがゲットする確率が高い。
「はぁー、試合何時?」
「あと1時間45分くらいあるね」
「なが…」
さほど興味のない琉嬉と莉音は退屈過ぎる。
今は相手チームの選手達が練習をしている。
悠飛や來魅はフェンス越しにじっとグラウンドをみつめている。
そして丁度ファイヤーズの選手達が出て来る。
先発予定の神条投手がランニングを我先と言わんばかりに飛び出すように走って行く。
気合いが入ってるのだろうか。
すると選手の一人が琉嬉達の方を見て、気付く。
球団…どころか日本の野球選手一、背の高い三日林選手が、
「おー、ちびちゃん達じゃんー。元気ー?」
大声で叫びながら手を振る。
「こら、無闇に観客に話しかけるな」
後ろから軽く尻を叩かれる。
「すんません、沢松サン」
叩いたのは沢松選手。
走攻守揃った、現役の中でも万能型のトップ選手。
ファイヤーズでは主に4番を務める事が多い。
「わーっ、覚えててくれましたー?!」
最高潮にテンションが高くなる悠飛。
「覚えてるよ、兄ちゃんのような妹ちゃんだろ?今日は応援よろしくなっ」
「はいっ!」
「あ、あたし、従姉妹の紫音でーすっ。こっちは双子の姉の莉音!」
なぜか自己紹介するついでに姉も紹介する。
「ちょっと…紫音…私の事はいいから…」
「ハハッ、元気があってええやないか」
「後藤サンまで」
まわりの観客が驚く。
普通選手側からあまり話をかけたりしない。
でも珍しく選手の方から話をかけてきたのだ。
「あ、あの…特別知り合いってワケじゃないんですけどね…?」
導が冷や汗かく。
まわりの客に説明する。
「勝利の女神さん、応援よろしくな!」
三日林選手がそう言うと、他の選手達もベンチからぞろぞろとグラウンドに向かって行く。
「ハハ、ごめんねー。三日林君、ちょっとお茶目だからさ~」
「おめえもはよ行けっ」
三日林選手と同じように尻を叩かれる一際小柄に見える選手。
白石遊撃手。
一番打者にして、3割を超える打率と30本をコンスタンスに打つ長打力。
そして50以上をマークする盗塁数。
毎年のようにトリプルスリーを狙える素晴らしい選手。
そして白石選手を叩いたのは二番を担っている坂崎選手だ。
こちらも3割近い打撃に加え、いろんな小細工を仕掛ける選手だ。
特にバントが一級品。
「はぁー、いいなあ…みんなかっこいいー」
「急に乙女モードだよ悠飛のやつ…」
紫音ですら少し引き気味だった。
「あれ、子供らは?」
トイレから戻って来た導。
しかし琉嬉達の姿がない。
「皆で試合まで待つから暇だからって違う所行ったよ」
子供は悠飛だけ残っている。
「ん?悠飛ちゃんだけかい?」
「私はずっと練習見てるから」
「う、うん…そうかい?」
根っから野球ファンなのだろう。
熱心にずっと見ている。
しかし退屈を嫌になった他の子供らは…というと。
キッズコーナーに居た。
「凄いぞ、屋内にも公園があるぞっ」
楽しそうにはしゃぐ來魅。
「ねえ、ここって小学生以下じゃないと駄目なんじゃないの?」
「いーじゃん、來魅ちゃんも琉嬉姉も小学生にしか見えないし」
「私達はその保護者って事で…」
申し訳なさそうに言う手を合わせて謝るように言う莉音。
琉嬉はまたもや子供扱いされて不機嫌顔。
「ったくー。來魅こそ100年以上生きてるロリババァだろが…」
「それは中身だけでしょ?人は結局見た目外見だよ」
「さすがに僕でも小学生低学年や幼稚園児には間違えられないって…」
キッズコーナー内はやはり、小さい子ばっかりだ。
あまり高学年くらいの子はいない。
「だいじょーぶだよ~。受付のお姉さんは小学生以下と大人は保護者ていう名目付きでオッケなんだから」
年下のくせに大人ぶる紫音にいささか、イラっとくる。
普段から不機嫌そうな顔している琉嬉なのに、余計に暗い顔している。
「にしても…人多いね」
「そりゃそーでしょ。プロ野球なんて日本のスポーツの中じゃ集客数がトップクラスに多いイベントだからね。
それも毎日のようにやるんだから凄い話だよ」
「詳しいね琉嬉姉」
「じょーしきだそんなもん」
当たり前かのように言う。
そこまで興味ないにしても、それなりの知識はある。
日本では野球がなんだかんだで人気がかなり高く、競技人口も多い。
それに世界的にも強い部類だ。
だから日本の国内だけでもかなり発展している。
「琉嬉姉はゲームでの得た知識でしょ?」
「残念ー。ゲームからでも僕は気になったものはちゃんと調べるようにしてますー」
張り合うような言い方をする。
「子供じゃないんだから…」
見た目も合わさって、まさに子供のようだった。
「おーい、お主らは遊ばんのかー?」
滑り台を滑る來魅。
本当に楽しそうだ。
「ほんっとに子供だなあいつは…」
「妹みたいだよねー?」
双子姉妹はクスクス笑いながら遊ぶ姿を見て喜ぶ。
双子なので、実質兄弟姉妹の上下関係みたいなのはない。
一応、莉音が姉で紫音が妹なのだが活発な紫音、おとなしい莉音。
年下の妹か弟でも欲しいと思う時もあった。
「ねえねえ來魅ちゃん、今度うちに居候しに来てよ~」
「んー?それもいいかもしれんが」
「だーめ」
琉嬉が引き留める。
「えー、なんでー?」
「コイツは、僕の術をかけてるんだから」
「離れちゃ駄目なの?」
「そういう訳ではないぞ。ただ…」
「ただ?」
いきなり重たい話か?
そんな雰囲気を出した。
が。
「琉嬉が近くにいないと私は本気を出せん。本気を出すには琉嬉の術解きが必要だ。憎いがな」
「うるさい。お前みたいな反則級の妖怪は野放しにしておけん」
「ということだ」
そんなこんなで來魅は遊びに戻る。
「…妖怪ってよくわかんねー」
理解出来ない。
紫音は少なからずとも妖怪とは分かり合える気がしないかもしれない…。
ついついそう感じた。
試合が始まる。
ファイヤーズのオーダーの発表。
1番遊撃手白石。
2番二塁手坂崎。
3番中堅手三日林。
4番一塁手沢松。
5番三塁手後藤。
6番左翼手ロンズ。
7番捕手大嶋。
8番DH佐古田。
9番右翼手仁山。
投手は神上。
「ベストメンバーだっ」
テンション爆上がり状態の悠飛。
よく理解してない他の者は何がベストなのかベストじゃないのか分からないといった顔をしている。
だが、いきなり先頭ホームランを打たれるファイヤーズ。
「おいおい…いきなり点入ったぞ」
「むー」
不機嫌になる悠飛。
それを他人事のように見てる來魅と琉嬉。
「なんでファイヤーズは後から攻撃なの?」
ルールをよく分かってない莉音。
「ばかだなあ、莉音ったら。プロ野球は主催側が裏の攻撃なんだよ?」
「へぇ…詳しいね、紫音」
「当然っ」
余裕顔する紫音。
「…って、なんだよ!みんなしてなんで意外そうな顔するの?」
「いや、紫音が頭よさそうな言い方するから…」
「バカじゃないぞ!バカじゃないぞ!」
「その言い方がバカっぽい…」
試合はその後、スムーズに進む。
相手もエース級なのか、点が思うように入らない。
むず痒い展開が進む。
そして試合は動きを見せる。
三日林選手が特大のホームランを打った。
「おー…すっげー…」
「凛夢より凄いなあ」
打球はバックスクリーンレフト側寄りに飛んでいった…と思いきや外野のコンコースを遥か超えて、
上段のさらに上段に突き刺さった。
最早観客席でもない。
ただの通路の所だ。
今季早くも20本目。
今年も本塁打王かと思われる勢いだ。
ちなみに昨季は65本という新記録を打ち立てて本塁打王に輝いた。
が、打率は後ろの4番で打つ沢松選手が首位打者を取った。
あんだけ打ってもなかなか三冠王までは取れない。
それだけ三日林選手と沢松選手が異常に打つうえ、互いにタイトルを奪い合っている。
「あんな所まで飛ばすとか…人間じゃないね」
「琉嬉姉に言われるとおしまいだよね」
「うるせっ」
紫音の余計なひと言。
そう言ってる間にまたドッと湧く。
「なんだ?」
「おー、またいったぞー」
來魅がボールの行方をちゃんと追っていた。
次を打つ沢松選手がホームランを打ったのだ。
三日林選手とは対照的に綺麗に放物線を描いてスタンドインした。
「同じホームランでも随分違うんだね」
「そりゃそうだよ!力の三日林・技の沢松・心の後藤って言われてるからね!」
「…三つめのやつなに?」
「おー、次もいったぞー」
5番を打つ後藤選手もホームラン。
他の球団なら4番クラスだ。
「3者連続ホームランとか…珍しいね」
「相手ピッチャー可哀想だね」
誰でも言いそうな感想を述べるしかない莉音だった。
試合展開は6回を過ぎたあたり。
「ちょっとトイレ行ってくる」
琉嬉が唐突に立ちあがりそう言い、動き出す。
「あら一人で大丈夫?」
「母さん、子供じゃないんだから…」
「あ、私も行く」
「じゃあたしもー」
双子姉妹も立ち上がる。
「試合も終盤だから早くね」
謎の悠飛の念押し。
「わかってるって」
3人は席から外れる。
近くのコンコース。
そのひとつのトイレ。
「沢山あるんだね」
「4万人くらい入るからだろ」
「そっかあ」
用を済ませた3人。
「琉嬉姉ってさあ…小さいくせに、スタイルいいよね?手足長くてスラっとしてて」
「なにそれ褒めてるの?けなしてるの?」
「褒めてるのっ」
頭を撫でる紫音。
「年上だぞこら」
「えへへー。なんか妹みたいなんだもん」
「妹はあんたでしょ」
一応、紫音は莉音の妹になる。
とはいえ、双子だからどっちが上とか下とかはあまりない関係だが。
「それにしても家族だけのお出掛けも久し振りじゃない?」
「言われてみれば…そーかも」
ここ最近はいろんな人達と過ごす事が多くなった。
ふと思えば、中学くらいまでは友人も少なくこうやって従姉妹達と過ごす事が多かった。
今は家がお互いに遠く、あまり会う機会が減ってしまった。
そんな中ざわつくトイレの中。
「どうしたんですか?」
「大丈夫ですか?」
一人の若い女性がその場にへたり込んでる。
驚いた表情だ。
他の女性客が介抱するような形になっている。
「なんだなんだ?」
「そこから変な声が…」
「え?」
一番奥の個室。
しかしよく見たら貼り紙が張らている。
「使用禁止みたいですね、誰かいるのかな?」
ノックしてみるが、何もない。
「おかしいな…。隣から変な声が聞こえたんだけど…」
驚いてた女性は使用禁止の隣のトイレを使用していたらしい。
しかし隣から変な声が聞こえたと。
それに驚いて飛び出したみたいだが。
「…おかしな事もあるんだね」
不可解な出来事に琉嬉は興味を示す。
先程の客はそのまま出て行った。
そして人通りが丁度少なくなった時。
「うーん、やっぱ気になるんだけど」
琉嬉がぽつりと言う。
気になる発言。
「出たっ、得意の琉嬉姉の不思議少女発言!」
「紫音は黙ってて。で、何が気になるの?」
「むごっ…」
口を塞がれる紫音。
莉音は至って真面目。
ふざけたような発言はしない琉嬉。
そこは真剣になって聞く。
「……人集まる所には幽霊がよくいるって言うでしょ?」
「まあそうだね…」
「あれ」
琉嬉が親指を立ててその指を差す方向。
示された方向。
先程の奥の個室。
というか、なぜか使用禁止にされている。
「壊れてるのかな?」
「さっきの声が聞こえたっていう話…」
いつものように推測する。
「何かが、あったか。それか、何かが居たのか」
莉音と紫音は背筋が少しゾゾッとっした。
これだけ慣れてる術者でも怖いものは怖い。
得体のしれないモノ。
そこから何かが感じる。
「近づくの?」
「……気になる性分でね、仕方なく」
琉嬉は使用禁止の貼り紙が張られたトイレの扉の前に立つ。
他の客は不思議そうに見る。
だが琉嬉はその目線は気にせず。
コンコンと軽くノックする。
しかし何も返答はない。
数秒待つが、何も起きない。
「内側から鍵されてるのかな。開かないし」
起用に鍵をかけられているようだ。
「ふふん、事件の香りだね~」
ニヤつく紫音。
「中も見てみる?」
「や、危ないよ~、琉嬉姉、紫音…」
「いやいや、誰もいねーし」
いつの間にか登って上から覗き込んでる紫音。
見返りない行動力は流石である。
一応、人が誰もいなくなった隙にとった行動だが。
「人来るよ、降りろ。てか誰かいたらどうするんだ」
「ばかだなー琉嬉姉。人がいたらこんな張り紙する訳ないじゃーん」
「いいから降りろ」
莉音のスカートの裾を掴んで無理矢理にでも降ろそうとする琉嬉。
「わわ、引っ張らないで~」
「お前は少し強く言わないとやめないだろ」
「ごもっとも」
莉音が軽く頷く。
「おかしい…霊波動は感じられないし」
「琉嬉姉が感じられないなら私達も感じれる訳ないよ」
「まあたしかに」
双子姉妹も一緒になって考え込む。
やはり双子だけあって、考え込む仕草も似ている。
その姿を見た琉嬉。
「お前らのそっくり加減の方がなんか怖いな」
施設の担当者の田村に琉嬉は連絡を取る。
以前幽霊騒ぎを解決した時に連絡先を交換していた。
あの時は結局妖怪も絡んでて迷惑な事件になっていたようだ。
「気になる…試合終わった後にでも確かめるか」
「こうなると琉嬉姉は強固だからね」
すぐに諦める莉音。
「キョーコ?誰?」
「…紫音、あんたはもっと国語勉強しなさい」
試合は結局9-4でファイヤーズ勝利。
それなりに今年も点を取るチームだ。
メンバーもそんなに変わりなく、打線は強力である。
点を取られたら取り返せばいい。
そんなチームである。
「はー勝ったねー」
「面白かった」
「そりゃあんなにホームランが出ればね」
「こんな広い球場なのによくホームラン出るね…球が飛ぶのかな」
「今年もそうでもないらしいけどね」
などと、野球話をする悠飛と紫音。
「さて、試合終わったね…」
連絡をして話をつけておいた琉嬉。
早速田村に会いに行く。
「琉嬉ちゃん。どうしたの?」
当然、親は気に掛ける。
「ちょっとふかしぎ事件を解決しに…かな」
「…やれやれ。あまり遅くならないようにね」
結局甘い親。
「いいのかい?」
「そういう兄さんの娘達も付いていっちゃってるけどね」
「うちは自由主義でね」
「自由過ぎるわよ」
ぺしっと天の背中を平手打ちする三月だった。
「やれやれ…やっぱり嗅ぎ付けましたか」
「ってことはぁ、やっぱり知ってたんですね?」
「ええまあ…噂程度にはね」
どうやら何か知ってる模様。
また琉嬉らに頼ろうかといろいろ考えていたとは田村は言う。
「ところでこちらのお嬢さん方は…?双子さん?」
「いえすいえす!あたし達は双子でーす!あたしが紫音で、こっちが姉の莉音です!」
「やかましいっ!」
べしっと紫音の頭を叩く琉嬉。
「あだっ…」
「すみません…彼方莉音です。琉嬉姉とは従姉妹の間柄です」
「…なるほど」
なぜかすぐ納得する。
(雰囲気でも似てるのかなあ?)
悠飛は田村の納得した顔にちょっと不思議そうに思った。
田村の話によると、偶然琉嬉達が居合わせたトイレの奥の個室。
そこから不気味な声が聞こえるとか、入った者が人の姿を見たとか。
掃除中にも不可解な声がしたりするという。
試合やイベント終了後にスタッフらが最終的に客がいないか確認するのだが、
声が聞こえたのに誰もいなかった…なんて事がしょっちゅうあり困り果てたため結局使用禁止にしたそうだ。
「それがね…幽霊騒ぎとかに発展してしまって…またかぁって思ってたんですよね」
「ふむ……。でも僕らが確認しても誰もいなかったし霊気みたいなのも感知しませんでしたね」
「そうですか…」
お互いに残念がる。
「琉嬉姉が感じられないなんて、本当はいないんじゃない?」
「それならいいんだけどさ…。でも霊感があまりない人ですら何か気配感じてたんだよ。実にふかしぎだ」
「そうねえ…」
ついつい腕組んで考え込む。
「おーい、お前様達~」
手を振って駆け寄ってくる來魅。
手にはスマホ。
「來魅。何か調べてたの?」
「おうっ。私にかかればこの程度の噂話なんぞ…ちょちょいのちょいだ」
「…妙に古臭い言葉使うんだな」
悠飛が呆れ返る。
來魅のネットで調査した話。
この球場施設では幽霊騒ぎがまた最近勃発してたという事。
以前琉嬉達が解決したのは妖怪が絡んでいた。
だが今回また幽霊騒ぎが起き始めているという。
よくあるような話なのだが、不気味なくらい目撃談が多い。
それも昼夜関係なく。
客入りがあってもだ。
「ふーん……、なるほどね」
琉嬉もスマホ画面に出ているサイトに目を一通り通した。
匿名掲示板やら心霊系のサイト。
「なんか分かった?琉嬉姉」
「書き込みによるとさ…やっぱそこのトイレの事っぽいよね」
親指で指差すトイレ。
一階の通路の一番南寄りのトイレだ。
大きな施設なので沢山の箇所にトイレが設置されている。
でも複数のトイレではなく、明らかに一カ所だけのトイレ。
それも特定の。
だから現在は使用禁止にしている。
田村は仕方なく、そう判断を下したそうだ。
「ま、無理もないな。ヒトは理解出来ないものには蓋をするしかない」
意味深のような事を言う來魅。
少し陰りのあるような表情を一瞬する。
「…來魅の言う事は理解してるつもりさ」
來魅のほっぺを軽くつねる琉嬉。
「むむ、何をしとるか琉嬉よ。私のぷりちーなほっぺが伸びるではないか」
「何がぷりちーだ。ま、閉じ込められるのは生きてる者にとっては辛い事だよね」
「どーゆーこと?琉嬉姉?」
紫音には二人の会話がよく分からない。
「紫音はもっと洞察力を磨く修行が必要だね」
「えー?なんだよそれー?あたしまだ修行が必要ってワケ?」
「暇だろ?また頑張ってみればー?」
「悠飛まで!なんなんだよ~」
「本当に大丈夫なんですかね?」
不安そうな田村。
田村自身は一度妖怪を見ている。
琉嬉ら術者の存在も既に知っている。
だからこそ、琉嬉らに任せる事になった。
「大丈夫です。ここは彼方家に任せてください。そのかわり…またチケットお願いします」
抜け目がない事を田村に言う琉嬉。
「ま、まあ、それくらいならいいですけど…」
「今回はちょっと危険な感じあるんで…すぐ気づいて良かったです」
「危険とは…?」
「あとで話します。霊は…妖怪より厄介なモノなんで…」
「まあそうだな。私も幽霊とはなるべく関わりたくない」
來魅が珍しく弱気。
そもそも相性が悪い。
「お前様達の活躍を見届けてやるぞ」
「ケチくさいねー來魅ちゃーん。來魅ちゃんくらいのパワーならあっという間でしょー?」
「いろいろ干渉すると琉嬉がうるさいのでな…」
來魅を囃し立てようとする紫音を無言のジト目で見る琉嬉。
無言ならではのプレッシャーが凄まじい。
「…はいはいー。頑張りますよー」
「いちいちうるさいな紫音は…。やれやれ。私もあまり得意じゃないんだけどね」
除霊や浄霊は苦手な悠飛。
首筋を掻きながらも琉嬉の後に続いて行く。
「おっさんよ、何かあれば私が守ってやるぞ」
「は、はぁ…」
來魅以外の4人は使用禁止のトイレへ向かう。
これといって何も変化がない。
シーンとした静かな空気が流れるようだ。
「やっぱり何も感じないよ」
「時限式なのかなやっぱ」
不思議な事に、一定の時間になると現れる霊がいる。
普段は何も感じる事がないのに、突然現れる。
何度か琉嬉はそのような悪霊などを相手にした事がある。
なぜそのような事象が起きるのかは今の霊術の技術をもってしても不明。
「考えるだけ野暮か…。無理矢理にでも起こすしかないか。「居る」のは解かってるんだからね」
「さて…」
琉嬉が小さい声で呟きながら何やら準備する。
「何をするの?」
「さぁ」
悠飛や双子達は分からないポーズ。
無論、外に居る來魅や田村も何が行われようとしてるのか分からない。
時折通る、清掃スタッフや、イベント関係のスタッフ。
不思議そうにこちらを見ていく。
しかし施設関係のトップが居るから特に気にかけずに通り過ぎていく。
「普通なら私みたいな一般の者が居たら声をかけるだろうにな」
「ええ、まあ…そうですけどね」
「…お主は私の正体知っとるのかの?」
田村に唐突に自分の事を問い出す。
「はは、去年会ったじゃないですか。貴方は妖怪…って聞いてますよ?」
「ああ、そうだったけ…?」
首を傾げて去年の事を思い出そうとする。
「私もね、あれから「裏世界」の話を調べたんですよ」
「ほほぅ」
「こういう業界に居るとね、不可解な話もたまに遭遇しますよ、そりゃ」
野球だけではない。
他のイベント。
大物アーティストや海外アーティストなどのコンサート。
その他世界的なイベントも兼ねる大型施設。
そういうのをやっていくうちに裏情報が入ってきたりする。
「他の施設はどうかわかりませんがね…ここは思ったより変なモノが紛れたりする…そう思ってるんですよ」
「ふむふむ……」
腕を組んで何かを考えだす來魅。
「のう、田村とやら。彼方家と契約でもしたらどうだ?」
「契約?」
「いや、表向きの契約じゃなくて、裏向きとでも言うのか…、今後またこういった心霊現象が起きたら解決してくれる。
という契約な」
「はぁ…」
來魅が顔に似合わないような提案を勝手に進める。
「琉嬉がよく言ってるんだ。人が集まりし場所は霊も集まる…とな」
「……よく聞きますね。それって、本当なんですかね」
ゾクッとしながらも話を続ける。
「琉嬉曰く、「真実」らしいの」
真実。
本当という言葉より、よりリアルに、現実に聞こえてくる。
奇妙な空気が流れて来る。
冷たいような、生ぬるいような。
「ところで、妖怪でもある貴方はいかないんですか?」
「うむ。私は幽霊系とは相性が悪くてな。対処が苦手なのだ」
「…はぁ」
「妖怪と霊は近しいようで全然違う。実体がないだけ違う意味で危険なんだ。
対処が失敗すると…」
その後の言葉を聞かなくとも素人である田村にも分かる。
妖怪である來魅が言うくらいだ。
おそらく、過去に何かあったのだろう。
敢えてその事には深入りせず、黙って琉嬉達を待つ。
「琉嬉姉」
心配そうに琉嬉の後ろにいる莉音。
「一応、サポ頼む」
琉嬉は例のトイレの壁に自作の札を貼り付ける。
するとピシッピシッという、何かが軋むような音がしてきた。
「…音?」
「なんだっけ、なんとか現象…」
「ポルターガイスト現象?」
「そーそー、それ。悠飛って物知りだねっ!」
紫音が嬉しそうに言う。
「お前、本当に心霊解決する家の娘か…?」
呆れる琉嬉。
しかしその紫音を無視して、念じる。
ブツブツと低めの声で、経を唱える。
「姉ちゃん、結構本気だ」
その間、ほんの1、2分くらいだろうか。
妙な音が激しくなる。
するとパシュッと、一瞬だけん何かが弾けたような音がした。
「お前か」
琉嬉らの目の前にははっきりと人間の姿が見える。
まるで普通に存在してるかのように、透き通ってもなく。
そこには黒髪で長髪の女性…。
生気が感じられない、無表情。
顔色などもどことなく青白いような気もする。
やはり、生きてる人間とは180度違う雰囲気だ。
「おお、マジもんだ」
「普段から幽霊見てるだろ」
相変わらずはしゃぐ紫音。
後先をあまり考えてないのだろうか?
それくらい能天気だ。
「倒す?」
「待って」
紫音が攻撃準備をするのを制する琉嬉。
「僕が対話してみる」
「……琉嬉姉に任せるよ」
ここはおとなしく琉嬉に従う。
お互い微動だにしないまま、5分くらいが過ぎた。
琉嬉は何もするでもなく、うんうんと頷いてるだけ。
幽霊側は口も開いてない。
そのまま立ち尽くしている。
「大丈夫なの?」
「大丈夫だよ」
「やれやれ。サポ頼むってこの事か」
悠飛が何かに気づく。
いつの間にか、異様な霊物質が集まって着ていた。
「何これ?」
「琉嬉姉?」
「駄目だ、そっちに集中しちゃってるよ」
「しゃーないね。やっちゃおうか」
紫音が戦闘体勢に入る。
「気が乗らないけどね…」
莉音も構える。
悠飛は無言のまま周囲を警戒する。
「始まったな」
ピクッと頭を上にあげる。
何かを感じ取った來魅。
「少し結界を張らせてもらうぞ」
「結界…?」
來魅が手を掲げると、耳鳴りのようなキーンとした音が田村にも感じた。
「その気になれば1里くらいの結界なら張れるがな。ここは10間くらいでいいだろう。
これで余計な者は介入出来なくなる」
(1里?10間?もしかして距離の事かな?)
田村には何を言ってるのかちょっと分からなかった。
しばらく待つ事、15分程。
琉嬉達が出て来る。
「終わったのか?」
「ばっちりだぜーぃ!」
キメ顔で言う紫音。
「今の時間はー?」
「8時前くらいかな」
腕時計を確認する悠飛。
結局なんだかんだで20時を回りそうだった。
「終わったんですか?」
「ええ、まあ…」
一仕事を終えたような、まさにそんな安堵の顔。
「で、正体はなんだったんだ?」
「ん~、浮遊霊類のやつがたまたま住み着いたようだ。多分…誰かに憑いて、そのままここに住み着いたっていうか…」
「ほほぅ。で、退治したのか?」
「成仏させてやったと言ってくれ」
ぶっきらぼうに返す琉嬉。
「お前か?結界張ってそこらの霊を集中させたの」
「あ。バレたぁ?」
わざとらしく舌を出す來魅。
「余計なコトして…」
「なぁに、いっその事まとめてしまえばいいと思っての。どうせお前様の事だろうから」
「…分かってるじゃん」
「え?何々?」
紫音は分かってないようだ。
「やれやれ…そんな事だろうと思ったよ」
呆れる悠飛と莉音。
「今日はすみませんねえ…。また球団にかけあってチケットお渡ししますよ」
何度も頭を下げる田村。
「あ、いやいや、こちらこそ…出過ぎた真似を」
負けじと頭を下げる導ら親達。
「なぁに、今後何かあれば…また来ますよ。その時はこの子らじゃないかもしれませんけどね~」
「はぁ…」
ちらっと來魅の方を見る。
すると気づいたのか、彼方家に向かって、
「そうそう、私は言ったんだ。この施設と彼方家で契約でもしたらどうだ、とな。
なんせこの街は魑魅魍魎が他より巣食う所だ。
何かと心霊現象など、不可思議な事件が起こり得るだろうしな」
「そんな話してたの?」
來魅の発言に驚く。
「厳密な契約とも言わずに…でもいいのなら」
天が乗ってくる。
「お父さん…」
「まあまあ、いいじゃねえか。な?」
同意を求める。
「うん、まぁ…僕はそんな権限はもうないから…天兄さんがいいならいいんじゃないかな」
「おっし、決まりだなっ。彼方家、緋黄寺をよろしくっ!」
軽く決める次期住職の天。
強引…というより、ほぼ適当なノリだ。
妻の三月は…ニコニコしているが内心面倒くさそう。
そんなオーラが出てきてるのを琉嬉はなんとなく感じ取った。
とんとん拍子とも言ってもいいくらい話が進む。
そもそも、全責任者である祖父の炎良の許諾もなしに話を進める。
「いいのかね…」
「いーんじゃない?いい繋がり出来て」
「本当かなあ…?」
不安になる莉音。
なんだかんだで彼方家一行はたまご型ドームを後にする。
結局デイゲームだったのに夜の9時くらいになってしまった。
あれから田村とは強い繋がりが出来たため、何かとイベントには無料で参加出来る確率が…高くなったのかもしれない。
とはいえ、施設側の力も限界がある訳だが。
「ねえ、結局あの幽霊ってなんだったの?」
ふと、悠飛が思い出したかのように琉嬉に問う。
「んー。あの女の霊?」
「そーそー、だって琉嬉姉、対話するとか言ってたじゃんか」
「一応話してはみたけどね……。自分が生きてると思ってたみたいというか…まあ幽霊全般に言える話なんだけど」
「で?」
「なんの他愛のないただの幽霊だよ。さっきも言った通り、浮遊霊だったものが住み着いただけ」
「うっそだー」
紫音は信じてない様子。
しかし…。
「……」
莉音は黙ったまま。
でも琉嬉は何か隠してるような気がしてならない…が、そこは押しの弱い莉音。
聞き出すのが苦手。
だからこの場は一瞬口が動きそうになったが、スルーする。
「琉嬉姉…」
「ん、何?」
いつもと変わらないどことなく掴みにくい表情と返事。
「いや、なんでもないかも…」
「…言いたいコトあるならはっきりとしろよー。そういう所が紫音と違うよなぁ。お前も本当は強いんだから」
「わ、私は別に戦いとか…」
「はいはい、平和主義者ね」
「…そういう意味じゃ…」
ぼふっと莉音の頭に手を置く琉嬉。
「そもそも、死んでる相手に今更どうのこうの出来やしないしな、結局」
「そう……だよね…」
「僕らみたいな力を持つ者としては、生きてる者を守らなきゃいけない。
って、じーちゃんがよく言ってるだろ?」
祖父の炎良の言葉。
琉嬉はともかく、正統な受け継ぎを約束されている莉音にはよく聞かされている言葉。
「そりゃ、死んでも苦しんでるような霊達を鎮めるのも僕らのような家系の宿命かもしんないけどさ」
「うん…う?」
ぷにっと琉嬉は人差し指で莉音のほっぺを強めに押し付ける。
痛いくらい、本当に強めだ。
「いたた、痛いよ琉嬉姉っ」
「くふっ、変な顔ー」
琉嬉が珍しく笑う。
「もーっ、琉嬉姉のあほっ!」
ぷいっとそっぽ向く。
「あほって…」
「何やってんの…?」
じゃれ合ってるようにしか見えない二人。
「なんだ?楽しそうだなっ。私にもつっつかせろ」
「やだ、やめてよ來魅ちゃん~」
「こらー、あたしも混ぜろー!」
「なんで紫音まで…いや~」
「あらあら、仲良いわねえ」
「それで片付くうちの親達…まったく」
一日に何度も呆れる悠飛だった。
なぜあのような所に住み着いたのか。
霊の考える事は理解出来ない。
そもそも生きてる人間相手でさえ何を考えてるのか分からないのに。
莉音にとってはどうもしっくり来ない出来事だった。
「浮かない顔してるね」
「…え?そう?」
心配そうに悠飛が莉音の顔色を見る。
「ま、余計な霊達も居たからね。気持ちが優れないのは分かるけどさ」
「うん、ありがと」
「あまり考え込むと禿げるぞ」
「えっ?!」
思わず自分の頭を両手で触る。
悠飛なりのジョークだ。
「じゃ、僕らはここで」
「ほいほい。またな。琉嬉ちゃんも悠飛ちゃんも」
「じゃねー、琉嬉姉、悠飛~」
従姉妹達と別れる。
住んでる場所がお互いかなり離れてる。
琉嬉がちょこんと莉音の目の前にやって来た。
そしておもむろに口を開く。
「莉音、死んでるやつのコトなんかいつまでも考えなくていいから。な?」
「うー、なんかその言い方酷いよ」
「わかってるよ。でも身内とか知り合いとかならだけどさ、見ず知らずで害を及ぼす恐れのある霊だよ。
時には心を鬼にでもしないとやっていけないぞ」
つんっと、今度は鼻におもいっきり指で突っつかれる。
「いだぁい…」
「じゃあね。また明日」
「…うん、明日」
どうせ同じ学校。
同じ部活。
体調でも悪くない限り毎日のように会える。
ただ、莉音はいつまでも腑に落ちないような顔をしている。
二つの彼方家はここで解散した。
「にしてもいいコネが出来たのう」
「コネとか…よくそんな言葉知ってるな…」
「伊達に現代日本を勉強しとらんて」
してやったりな顔をしている來魅。
帰りの車内。
「結局どういう霊だったんだ?私に教えてくれてもいいだろう?」
「んー、面倒くさい」
「なんだ、つまらんやつだの」
「つまらんとはなんだつまらんとは」
と、しばらく二人のやり取りが続く。
が、結局琉嬉は何も語る事無く終える。
悠飛も多少なりとも現場に居たので気にはなる。
でも琉嬉は語ろうとしないのだ。
あのままあっさりと成仏させる霊術を使って霊を浄霊した。
「さて、寝るか」
「ほんっと子供だな…お前…」
琉嬉に寄り掛かるようにして、目を瞑る。
「あらあら、お疲れだったのねえ」
「いい迷惑だよ」
琉嬉はふくれっ面のまま、スマホを取り出してゲームを始めた。
「來魅ちゃんでもさすがに疲れたんだよ」
「そうねえ。観てるだけでも疲れるわよね~」
「うん…まあ…そうだよね…」
どうも、いまいちズレてる我が母親にツッコミを入れれないまま、悠飛は流れる景色を見る。




