#72 普段はぐだぐだ雑談部活
「ねえ、寧音。乳揺れについてどー思う?」
「はい?」
琉嬉が突然変な事を言い出した。
「何を突然…」
「今のゲームってさ、巨乳キャラって凄い胸が揺れるじゃん。あれって痛くないのかなって思って」
「はぁ…まあたしかに。揺れると痛いですよ?」
「だよね?」
部室。
ふかしぎ部は暇を持て余してた。
部室には琉嬉と寧音。
そして柚羽と麗未亞。
他の部員は来ていない。
委員会や用事など、当然のようにある。
生徒会は、今日はないようだ。
琉嬉はゲームをしながらふとある疑問を口にしてた。
これはふかしぎ部の何の変哲もない一週間の話。
「そっか」
すると琉嬉は立ち上がり寧音の所へ近づく。
「はて、なんでしょう?」
そして無言で後ろに回り込んで、両手で寧音の胸を鷲掴みにした。
「うにょのー?!」
悲鳴にもならないような変な声を張り上げる寧音。
「な、何してるんですかっ!琉嬉さん!」
「いや、やっぱ寧音の胸でかいな…。ふむ…」
パッと離す。
「どうしたんですか?今日の琉嬉さんおかしいですよ?」
「いや、羨ましいなって思って…」
その場にいた後輩達も驚く。
ましてやおとなしい柚羽と麗未亞だから、何も言えない。
「うんにゃー、同じ女なのに揺れるという仕組みが理解出来ないからさ…」
自分の胸を指差す琉嬉。
見事にぺったんこ。
対する寧音は豊満バスト。
自虐的にも見える琉嬉の言動。
「あ、それは…なんとも」
さすがに寧音も何も言えずじまい。
「やっぱ柚羽も邪魔だなって思う?」
「ええ?私ですか?あまり揺れないようにスポブラしてますけど…。あと本気で動く時はさらし巻くとか」
「サラシって…包帯みたいなやつ?」
「ええ、そうですね。包帯よりは幅も大きくて丈夫ですけど」
「さらしって売ってるの?」
「え?」
「え?」
なぜか会話が噛み合わない。
「寧音も何かしてるの?」
「ええ、まあ…揺れないようにはしてますけど、ちょっと大きいので全く揺れないようにするには…」
普通の下着だけでは無理なようだ。
「なんか嫌味だね」
「そんなことは…」
などと、下世話な話をしている。
「なんだって突然そんな話しだしたんです?」
「いやー、だって僕も18歳だよ?いい加減大きくならないかなあって思って…」
その場の者は皆、無言になる。
なんだかんだでかなり気にしてるようだ。
「いや…もう無理なのでは…」
などと、ボソッと小声でつい言ってしまう柚羽。
運よく琉嬉には聞こえてないようだ。
自分の胸元を確認する柚羽。
「……(自分もだけど)」
寂しそうにおとなしくする柚羽だった。
「うーん……そうですね!」
突如、立ち上がり手をぽんっと叩いて立ち上がる寧音。
手を叩くその仕草はまさに漫画やアニメと言った叩き方だった。
「琉嬉さん、夏のコミファに参加しません?!」
「…こみふぁ?」
「コミック・ファンケットの略ですよ!夏と冬に開催される日本…いや、世界最大のアニメ漫画を主体とした、
サブカルの祭典です!そのコミファでコスプレ参加してみませんか?」
「ああ、知ってるよ……、てか、えーと……どうしてそうなった?」
やっていたゲームする手を止めて唖然とする琉嬉。
勿論、後輩達もまた何も言えずに琉嬉と同じように唖然としている。
こんな生き生きとする寧音をあまり見た事ないからだ。
特に麗未亞は。
「何昇太郎みたいな事言ってるんだよ…」
「昇太郎って…緋瑪斗さんのお友達ですか?それはまあいいとして、どうですか?」
「一応僕ら三年生で受験とかあるんだよ?そんなのやってる暇あるの?」
「いいんですよ、あの三日間だけですから!あ、夏冬入れたら六日間ですね」
「そんなに参加するつもりかよ…」
目を輝かす。
まさにそんな表情で熱く語り出す寧音。
「寧音ってコスプレ好きなの?」
「本格的に参加してみようかなと思っています!」
「呆れた……風紀係委員がコスプレとか…」
「それとこれは別です!仕事と趣味は別物です!」
「そりゃそうだけど…」
多分何を言っても何らかの理屈で返される。
そう思った琉嬉はこれ以上不本意な言葉を言わないように心掛けた。
「琉嬉さんなら…きっと可愛いロリキャラ出来ますよね~。だって可愛いですもん」
「さりげなく失礼な発言だな」
「麗未亞さんも、柚羽さんもきっと可愛らしく…出来ますね」
眼鏡が怪しく光る。
そんな気がするほど怪しい笑みを浮かべている。
「あ、あの…夜栄守先輩、目が怖いです」
後退る柚羽。
「ほら、麗未亞なんて無言で怯えてるじゃんか」
コクコクと頷く麗未亞。
さっきから一言も発していない。
謎の威圧感に臆してる。
「一応考えておいてください。夏はすぐにやってきますよ♪」
「変なメロディ乗っけて言うな」
真面目な一方、変に砕けるととことん普段のキャラを崩壊させる寧音。
二面性…というのか、ここまで変わり身が凄いと疲れる。
「あら?今日は少ないのね」
「あ、唯子先輩ちゃっす」
「……ほんと、女らしくないわね…貴方って」
文字通り幽霊部員の幽霊、唯子。
時折姿を現さない。
でもこの日は姿を見せた。
「今日は暇なの?」
「そうですねー。テストも終わってるし、何もありません」
言いながらもゲームを再開する琉嬉。
「旧校舎も結界封じでお陰様で弱い霊は出現しなくなったのよね」
「時々中級くらいのが入り込んで来るけどね~」
「あらそう?」
あれからバカみたいに幽霊騒ぎは減った。
ただ、低級じゃなく、少し強い力を持った霊物質が入り込んで来る。
悪さしないように、ふかしぎ部が各々動いてる。
さすがに中級レベルなら個人個人ですぐ追っ払える。
「やっほー、琉嬉姉~」
「げっ、うるさいの来た」
にぎやか担当の一人、紫音がやって来た。
後ろから静かに入ってくるのは紫音の双子の姉の莉音と、同級生の隆治。
「悠飛は?」
「なんか軽音部に行くって言ってたよ。あの子音楽好きでしょ?」
「あー、なんかそんなようなコト言ってかも…。「姉ちゃん、私軽音部も兼任したいかも」とかなんとか」
家での悠飛の言葉を思い出す。
「部活って掛け持ちオッケーなの?」
ふと疑問が過ぎる。
「あ、大丈夫ですよ。基本的には」
寧音が答える。
「そーなんだ」
さすがは生徒会の寧音。
その辺の事情も詳しい。
「一応…私も剣道部と掛け持ちしてます…。試合は出れませんけど」
小さく手を挙げて言う柚羽。
いつも小さな体に不釣合いな大きな刀や竹刀が入った黒い袋を担いでいる。
「スポーツはおそらく難色を示されるかもしれませんけど、文化系みたいなのであれば
すんなり入れてもらえるみたいですけどね」
「ほんとかよ…」
関心する琉嬉。
「あら、でも柚羽ちゃんはだったら偉いわねー。だって生徒会やっててこのわけのわからないふかしぎ部もやって、
剣道部もやってるなんて」
「いえいえ、私は剣道部はどっちかというと教えるような立場なので…」
「そりゃそうだ。柚羽が本気出したらそこらの高校生は勝てないだろ?」
「あらんー?私がいますわよ?」
「おわっ」
琉嬉を後ろから抱きしめる人物。
金髪姿ですぐ分かる。
護だった。
「いつの間に…」
「掃除終わったよ~。はー面倒だった」
「掃除当番か。お疲れ」
「ふふふ、琉嬉ちゃん可愛いね相変わらず。抱きしめるにはいいサイズ」
「あ、ずるいです護さん!」
対抗する寧音。
「やめろ!お前ら僕を窒息死させる気か!」
また騒がしくなる。
「あらら、またいつものパターン」
叉羅沙とまどかも部室に入ってくるや否や、いつもの通りギャーギャー喚く琉嬉達。
「にぎやかですねえ本当に」
「ほんまなぁ。でも一番陽気でうるさいのがおらんみたいやけど」
「みゆちゃんはああ見えてもお嬢様の家なんで…いろいろあるみたいですよ。今日はすぐ帰りました」
「あら、おったん?御琴ちゃん」
「大分前からましたけど……」
実は、莉音達が来たすぐ後に来ていた。
こうして、大抵の部活は雑談ばっかりして終わる。
翌日の放課後。
この日はまた最初に居る部員の面子が違う。
琉嬉は相変わらず最初の方から居る。
丁度この日は生徒会があるため、まどから生徒会メンバーはいない。
珍しく凛夢が来ていた。
出席率が割と低い凛夢。
琉嬉とは会話せずにその場に座ってじっと携帯などを触っている。
琉嬉は当然、携帯ゲーム。
「今日は静か…ですね」
ボソッと喋ったのは麗未亞。
「そうだねえ。凛夢は今日暇なの?」
「……来ちゃ悪い?」
「別に悪くないけど?でもあんまり来ないじゃん」
「…一応、部員だし、顔出さないと……」
「そういう所は律儀なんだね。一応の」
「うっさいわねっ」
「こわっ」
仲の良さそうに見えない会話。
でもお互い何かの信頼があるのか、大きく喧嘩に発展するような流れにはならない。
なんだかコンビ芸のように。
「こんにちわ~。お久しゅう~」
「幽霊部員めこのやろ」
「あらやだ、幽霊部員はちゃんといるじゃないですかぁ」
「私の事?」
唯子が姿を現す。
「はは、唯子先輩はリアル幽霊部員ですもんね~」
叉羅沙とは違う関西訛りで喋る眼鏡っ子。
麗未亞や莉音達と同じ、一年生の香那巳が久々にやって来た。
「今日はちゃんと参加しますよー」
「と言っても、何もやる事ないけどねー」
「いえいえ、ずっとくっちゃべってるのも面白いやないですかぁ」
喋りながら机の真ん中に置いてあるビスケットを口に持っていく。
「お気楽だね」
「で、香那巳はどうしたの?今日」
「そんな藪から棒に…部活動しに来たに決まってるやないですかぁ」
毎度の事、なんともねちっこい喋り方。
明るいが、どこかしら含みのある言い方に聞こえてくる。
「ふーん…」
「ね、ね、香那巳ちゃんはオバケ退治は出来るの?」
突然香那巳の止めている髪を解く紫音。
「わお、ええと…紫音ちゃんやったけ?」
「あたり~。未だに琉嬉姉は間違えるんだよね~」
「いいじゃん、見た目だけは判別出来ないんだから」
「そーう?結構違うと思うんだけどな~」
(いや、見た目じゃ分からん…)
と、心の中で思う香那巳。
「んー。ま~、琉嬉先輩には劣るくらいやねぇ」
「ほへぇ。そうなんだ~」
なんともむずがゆい言い方をする。
琉嬉は聞きたくないのにどうしても聞こえてくる会話に意識を取られる。
「もー。あんまくっつかないで~」
「えー、いーじゃん~。抱き心地いいもんね~、香那巳ちゃんって」
「なんや、それ…まるでウチが太ってるみたいな言い方…」
「まどか会長とかも良かったな~」
「へくしょんっ!」
「?!」
隣の部屋から大きなくしゃみが聞こえた。
その音に部室に居た物は静まり返るくらい、驚いた。
「……ええと、今のくしゃみって…」
「うん。まどかっぽかったね」
「聞こえたのかしらね?」
凛夢がそう思い、言う。
「まさか」
「私そんな大きい声出てた?」
「出て…ないと思うけど…」
紫音の事をよく解かっている莉音が言う。
「フツーは聞こえないと思うけど?」
「地獄耳ってやつ?」
「かもね」
「前崎さん…髪ほどくと印象変わりますね」
「そうですかあ?それやったら琉嬉先輩とかまどか先輩とか、普段髪を縛ってる方みんなに言えると違います?」
髪を解かれた香那巳。
いつも後ろに纏めてある。
解くと結構長いのが分かる。
「おーおー、これまた綺麗な黒い髪ですね~」
何やら羨ましがるように遠目で見てる護。
「わ、私も…ちょっと羨ましい…かも」
麗未亞も話題に混ざる。
麗未亞も淡い色合いした髪の色をしている。
「二人とも派手な髪の色してるもんなー」
興味無さそうなわざとな言い方する琉嬉。
「なんで皆さん髪結ってるんですか?」
そもそもの疑問を投げかける麗未亞。
「基本髪纏めてるのって…琉嬉ちゃんとー、さらっさちゃんと、まどか会長と…そんくらい?」
「いや、動いたら邪魔でしょ?僕と叉羅沙なんて腰くらいまであるし」
「おっと、切ればいいじゃんていう発言はNGですよ」
護が予め誰しもが思うような事を言うのを禁止した。
紫音はまだ香那巳の髪を弄り回してる。
それに嫌がる素振りは見せない香那巳も香那巳だが。
「でもま、女の子なら髪のおしゃれはしたいじゃん?ね?」
護がドヤ顔で言う。
「お前に言われると説得力が爆発的に高いな」
「あー、何それー」
「あの~、護先輩の髪の色って…染めてるんですか?」
香那巳は当然の如く護の状況なぞ知らない。
「んーとね、面倒だから外人とかハーフとか言って誤魔化してるけど…一応地毛」
「ええっ、まさかの地毛とかマジですかあ。はぁー。麗未亞ちゃんも?」
「うん……。私は…クォーターだから…かな?」
「ほほぅ。クォーターねぇ。だからなんかちょっと外人っぽいんな?」
「ええ、まあ…」
途端に恥ずかしそうにする麗未亞。
「遺伝って凄いんやな」
「だね」
いつの間にか香那巳の髪型はツインテールみたいになっていた。
紫音が繕ってた。
「うーん、ちょっと似合わないね~」
「うへ、マジかい」
「うん。一昔前のアニメキャラクターみたい」
「なんやのその例え…」
話題は髪型へシフトしていく。
「やっぱツインテールは琉嬉姉だね」
皆が一斉に琉嬉の方を見る。
注目の的となった琉嬉はキョトンとする。
「いやいや、会った時からこの髪型だから違和感ないだけだろ?」
慌てて否定する琉嬉。
別に自分自身が凄く似合ってるとは思ってない。
……のだが、なぜかいつもツインテール。
「そうね。なんでいつもその髪型なのかしらね?子供っぽいわよ?」
凛夢が皮肉めいた言い方をする。
「お前に言われるとムカつくけど…解くとどうせ幽霊みたいだとか日本人形みたいだとか言われるし」
「だったらポニテとか、おさげとかさ~」
ススス、と紫音が琉嬉の後ろに移動する。
そして髪を解こうとする。
「おい、コラ!勝手に解くな」
チリンッと髪留めに使っている特殊な鈴も外す。
「ねえ琉嬉ちゃん。この鈴って何?アクセサリーにしては変わってるよね」
護が手に取ってまじまじと見つめる。
特別変わった様子はないが、微妙に霊気を感じ取る。
「単なる魔除けだよ。家族の中でも僕は霊感力が高いみたいだから子供の頃から付けてる」
「へぇ~……(今も子供みたいって言ったら絶対ぶっ飛ばされるな)」
思った事は物凄くセーブした。
「ポニテだと背中に当たって気になるんだよね」
「だから二つに分けてるんだ」
(だったら切ればいいじゃないの)
と、もう一人思った事をセーブした者がいた。
凛夢だった。
「髪型ねぇ…」
ポリポリと頭を掻く琉嬉。
別段大した気にしてなかった。
この髪型がより幼さを助長してたとか思ってもなかった。
さすがにちょっと間が抜けてるのかもしれない。
少しだけ反省する。
「でもさ、琉嬉ちゃんはそれがいい味出してるんだよ!問題なし!」
根拠のない護の推しの一言。
「護さんもツインテールにしてみましょう~」
そして紫音が今度は護の方へ近づく。
「ん?」
「いやはや…綺麗な金髪ですな~。どれどれ」
「ちょ、紫音ちゃん今度はあたしー?」
あれこれとまた弄り回す。
ツインテールにしたり、おさげにしたりいろいろと形を作る。
「似合わねー」
琉嬉が護のツインテ姿を見てぷっと噴く。
「んなっ、失礼な…こう見えてもね~、中学までは黒くて綺麗な髪だったのよ~?」
護はこう言う。
琉嬉は以前も同じような話を聞いたのを思い出す。
「え?そうなんですか?じゃあ今は染めてるって事ですかー?」
「いーや。これは天然です。あたしは生まれ変わったのです」
なぜか大きな鼻息たてて踏ん反り返るようなポーズ。
「て、天然って…黒から金色になったんですか?」
「簡単に言うとそうだね~」
「嘘やーん。有り得ませんって」
さすがに香那巳も信じきれない。
「たしかに…染めてるなら根本は黒い筈。でもそんな痕跡ないですからね」
頭皮を真面目に凝視する紫音。
「あの……頭を真剣に見つめられるとなんか恥ずかしいんだけど」
「ふかしぎ部で一番地味な髪型って誰だろ?やっぱまどか会長?」
「あー、あのふわふわした三つ編み…古典的で可愛いですけどね」
「みゆちゃんとか凛夢ちゃんは?」
「あー、二人ともいつも横に少しの髪縛って、ぴょこんと出てるよね。あれなんていうの?」
護は女のくせによく髪型はあまり詳しくないようだ。
「みゆ先輩のはぁ、ピッグテールかな?凛夢先輩はツーサイドアップて言われてる髪型だと思いますよー」
「へぇ…そうなんだ。あたしゃ女の子っぽく見えるだけでいいからなぁ」
「護って、結構女子力少ないよな……。私服もなんかいつも動き重視っぽいし」
「えー?そうかなぁ」
自分では気づいてないようだ。
「でも地味なのは悠飛じゃない?」
琉嬉が妹の名を出す。
「でも悠飛は片目隠した厨二な髪型じゃない?」
「紫音。お前この場に悠飛居たら殴られてるぞ」
「あはは、違いないね。でも地味なのはなんの変哲もないロングヘアーの私らじゃない?」
紫音が莉音の腕を引っ張て、横に寄せる。
二人共まったく同じの髪型。
どこからどこまでも双子だからと言っても似すぎである。
耳元にボリュームあるが、基本的にはストレートの綺麗な長い髪だ。
彼方家は基本的に黒くて真っ直ぐな綺麗な髪質のようだ。
「お前は見た目が地味でも性格が派手だから意味ねーよ」
琉嬉が一蹴。
「叉羅沙とか柚羽ちんは案外派手だよねー。叉羅沙って…あれなに?ツインテ?ポニテ?」
「確かにちょっと謎の髪型しとるねぇ」
ポニーテール状であるが、二つの結びを作ってたらしている。
ふたつのおさげを横にずらすとツインテールになる。
「一応ポニーテールになる…のかな?」
首を傾げる面々。
「うーん。やっぱ一番の地味は……隆治かな」
ビシッと指を差す紫音。
その指先は、さっきから一言も喋っていない隆治に向けられていた。
「失礼だな…君は本当に中学の頃から……。否定は出来ないけど」
でも自分でも認める。
短髪で、爽やかな髪型である。
これぞ、男子学生の見本…とも言える。
逆に言えば個性的ではないとも言える。
「ふかしぎ部で一番地味髪型は隆治君に決定~」
「いえーいおめでとー」
「おめでとさん」
「やったね!隆治!」
「いや、嬉しくないですけど…」
がっかりする隆治。
(なんでそんなんで盛り上がれるんだこいつらは…)
琉嬉はこっそりと、あほくささに呆れかえして、欠伸を噛み殺した。
またまた放課後。
この日も部活…なのだが、特に何も起きない。
当然の如く雑談タイムになる。
「今日は人少ないですね…」
琉嬉は毎日来る。
部長だから当然。
だが、この日は琉嬉ともう一人、隆治。
「んー。それぞれ用事があるんだろ」
意に介せず、琉嬉はマイペースでいる。
ゲームはしておらず、どうやら寧音が持参してるノートパソコンを使用している。
どうやらふかしぎ部共通で使っていいという名目で置いてるようだ。
「そのパソコンって…寧音先輩のですよね?」
「そだねー。ネットも繋がってるよ」
「はぁ…ノパソって…安くはありませんよね?」
「だねー。新品だと二桁はするね」
隆治はパソコンの型を見てみる。
「やっぱり、去年出たばっかりのじゃないですかこれ」
「そうなんだ。僕はあんまり発売年はこだわりないけど…ゲーム出来るスペックとネットさえ出来れば」
「…だろうと思いました」
琉嬉は根っからのゲームオタク。
やる幅は特になんでもいい。
オフラインオンライン関係ない。
「隆治はそういうの詳しいの?」
「え、ええ…。まあ、ふかしぎ部の中では詳しい方かもしれませんね…」
「そっかー。僕も新しいの欲しいんだよね~。來魅のやつに占領されちゃってさ…」
「來魅って…あの小さい子の」
隆治は來魅の存在を知ってるが詳しい事情は知らない。
「純粋なる妖怪だよ」
「妖怪……」
基本的には素人。
妖怪とはあまり対面した事はない。
「そーだ、今度パソコン買いに行くから隆治も来てよ。よくわかんないからさ…」
「は、はあ…別に構いませんが…」
「そういえば僕と隆治が会話するって珍しいね」
「そうですね…(いかん、普段は他の人がいるからいいけど…なぜ今日に限って誰もいないんだ?!)」
たまたま、同級生の悠飛や双子達とは別に部室に来た結果、この日に限って誰も来てない。
非常に珍しい。
他の先輩達もいない。
生徒会があるので生徒会メンバーは勿論来てないのだが、何もしてない生徒達がいないのが不思議だ。
「あの、悠飛さんは軽音部ですかね…?」
「だねー。後でこっち寄るかもとは連絡来てたけど」
「他の人達は…?」
「知らぬ。別に無理強いはしないし。部活として存続させるには人数が必要だからさ」
きっぱりと言い張る。
しばし呆気に取られる隆治。
だが、よくよく考えると、これだけの若くして強い術者が集まってるのも不思議である。
それをまとめ上げた部長の琉嬉。
そう考えると照れ隠しなセリフなのでは…?
隆治は深く推測する。
「琉嬉さーん、終わりました~」
ドンッと隣の生徒会室と繋がっているドアが勢いよく開く。
開いたと同時に駆け込むように寧音がやって来た。
「あれ?今日は少ないですね」
「そーだね。護は資金稼ぎ。悠飛は軽音部。麗未亞は家の事情。あとは知らん」
「皆さんいろいろありますからねぇ」
「あら生徒会の皆さま」
ゾロゾロと入ってくる生徒会達。
それだけでも十分な大人数だ。
「最近忙しいの?」
「そりゃそうですよ。そろそろ交代するのを考えないといけませんからね」
「交代?」
「はい。交代式が行われます。10月の文化祭を過ぎれば、私達現生徒会は引退です。
そして……次期会長候補は柚羽さんです」
「え?柚羽が…?」
皆が一斉に柚羽を注目する。
一気に顔を真っ赤にして照れだす柚羽。
「いえ、そんな……」
手をぶんぶん振る。
目も泳ぎ始める。
「ふふふー。柚羽ちんかーわいー。じゃあ私は副会長に立候補しまっす!」
「あーみゆが会長よりは副会長にとどめとけばマシだな」
「ぶー、なんですかそれ~」
「ウチら三年生は引退ってやっちゃな」
「そっか~」
そう、三年生であるまどかと叉羅沙、寧音、そして龍翔は生徒会を引退する事になる。
「言っとくけどふかしぎ部は卒業まで引退なんてないからね」
鋭い目つきで言う琉嬉。
「あはは、分かってますよ~」
生徒会が後に新体制になる。
一応、柚羽が生徒会長に就任して、副会長にみゆ。
会計に御琴が入るらしい。
「最後のお仕事は体育祭ですね~」
「あー…。寧音の実況がひどかったやつか…」
「えー、そんな酷い事言ってましたっけ?私…?」
「言ってた」
「言ってた」
「言ってましたね」
「そうだな」
皆が皆納得する。
「また実況するの?」
「依頼があればしますっ」
ふんっと大きく鼻息立てて胸を張る寧音。
(どこから来るんだその自信…)
時系列を考える琉嬉。
するとある事に気づいた。
「え…と、てことはまどかは僕が転校してきた時は就任したばっかりだったの?」
「いえ、私はどういう巡りあわせか分かりませんが、一年生の頃から会長職を務めて頂きましたね~」
「…マジで?」
「一年生が会長って有り得るんですね…」
驚愕する隆治。
「ちゃうちゃう、単に引き継げる人がおらんかったからたまたま、まどかに受け持っただけやって」
「あら、失礼ですね叉羅沙さん~」
軽く叉羅沙の腕を小突くまどか。
二人の間柄だから出来るやり取りだ。
「へぇ…。選挙とかってないの?」
「候補者が複数いなければ、自動的に任命に従って役職決まりますよ」
「なるほど…。てか、まどかは今三年だろ…?ってことは」
「…今で二期目…ですかね?」
琉嬉もさすがに驚く。
「会長ってそんなに連続で出来るものなんですか~?」
「みたいですね」
「そもそも僕らの上の先輩に適任者がいなかったんだろ」
「そうとも言えますね。フフ」
そういうまどかの笑顔は何か裏があるようで、一瞬ゾッとしたのだった。
「そろそろ進路確定しないといけませんしね」
机の上に置いてあるペットボトルジュースを手に取るまどか。
いっつもジュースを飲んでいる。
それも炭酸の。
イメージ的にはお茶とかを飲んでそうだが、そんな事ない。
「あー、そっか。そんな時期か」
「三年生の皆さんは…あらかた決まってるんですかぁ?」
聞きにくいような事をさらりの聞いてみてのけるみゆ。
「ウチは大学かな」
「私も進学します」
まどかと叉羅沙は大学へ進学する予定のようだ。
「へぇ~、お二人は同じ学校へ?」
「同じでも学科は違うかもな~」
「そうなんですか」
真面目に話を聞き入る後輩達。
「私は経済系の方を選択します」
「オレもそっち目指すわ」
龍翔もまどかと同じ方面にいくらしい。
「まー、家柄しゃあないわな。みゆも考えておいた方がいいんじゃないか?」
「えへへー、そうですね」
港咲家はもとより、名家である宮森家と加賀家。
名家抜きにしても、ある程度束ねる力がある家柄。
出資などいろいろあるようで、経済学を学んでおくのも良い…そう考えてるようだ。
「琉嬉さんは?」
「僕は探偵でもしようかなって」
「探偵~?!」
その場の全員が声を揃える。
「そ。ふかしぎ事件を追う探偵。別によくあるような探偵じゃなくって…勿論、進学はするさ。大学に」
「へぇ~…」
自分の未来のビジョンをなんとなく見据えて来た。
本格的にお寺に入るのもあり…そう思える時もあった。
だがそこは従姉妹らの家に任せるとして、自分は自分の道を開いてみる。
そんな想いが強くなっていた。
「でも合ってるんとちゃう?今もこうしてきっかいな事件事故を追う時あるしなあ」
「ついでにお金取れば…」
「なーんか変な目つきしとるわ…」
関心したと思えば呆れる叉羅沙。
「ま、商売とはそういうものですよっ」
「みゆちゃんが言うと説得力があるようなないような…。
……大学かぁ。まだ何も考えてないな~…」
「私も~」
みゆと御琴は二年生。
そろそろ進路を決めておかないとあっという間に卒業になってしまう。
「今からしっかり考えて置いた方がいいですよ」
にっこりと微笑みかけるまどか。
「そうですよねっ」
「どうせみゆくらいだと働かなくても生きていけそうだよな、しばらくは」
身も蓋もない事を言う琉嬉。
反面、少し羨ましそうにも妬みにも聞こえる。
「ハイハイ、家柄家柄ですね」
琉嬉を押しのけるように隣に座り出す寧音。
「おい、近いよ」
「いいじゃないですか~」
「寧音こそどうするんだ?」
「私ですかー?うーん…夜栄守直系なので…あちらに一旦行きます」
「…そーなの?」
夜栄守直系。
琉嬉は個人的に詳しくは話を聞いている。
夜栄守家は複雑で強大な一族らしく、いろいろ家庭環境が大変らしい。
なので寧音は実はあまり自由度は高くないらしい…。
が、本人は真面目だが裏の顔は結構はっちゃけてるのでどこまでが真実なのか琉嬉らはいまいち分かってない。
今もこうして琉嬉の隣に来てイチャイチャしている。
「やれやれですね」
「やれやれやな」
(……考えてそうで考えてないような…おかしな先輩達だ…)
頭を抱えてしまう隆治だった。
さらに、翌日。
放課後。
「こんちはー、あ、あれ?」
部室に入って来た紫音。
だが肩透かしをくらう。
「琉嬉姉はー?」
「あ、今日はいませんよ」
部室に居たのはまどから、生徒会。
そして護や麗未亞の姿。
「欲しいゲームの発売日だから先帰るって~。相変わらずだねぇ」
「寧音さんも先に帰りましたね。同じ理由でしょうか?」
「……そっかぁ。今日はゲーム発売日だったか…」
納得する。
琉嬉のゲーム好きは筋金入り。
どこに行っても携帯ゲームで遊んでる。
「悠飛は…いるね」
「いちゃ悪い?」
少し拗ねる悠飛。
相手がいとこだから余計に感情を表に出せる。
「ふっふふー。今日は琉嬉先輩がいないので実質わたくし、港咲みゆがトップでございますっ!」
妙に張り切っているみゆ。
そもそも、琉嬉に任命されて副部長を任されている。
「ひとつ疑問に思ったんですが…、琉嬉さんら私達三年生が卒業したらこの部活はどうするんです?」
まどかが誰しもが思っていた疑問を口に敢えて出した。
「確かに…。その時は私が部長に!」
挙手する紫音。
「はいはいはいーっ。ここは副部長である私ですよっ」
負けじとみゆも両手を上げて猛アピール。
「部長と生徒会…両立出来るの?」
御琴が痛い所を突いた。
当のみゆは無言に座り込んだ。
分かりやすい言動だ。
「なあ、それは琉嬉ちゃん自身からの任命あるんじゃねえのか?」
龍翔が壁に背にしながら言う。
「そやな~。いずれにせよ、この部活存続させるのもちゃんと部長らを候補決めとかんとね」
生徒会はある程度将来のビジョンが見えている。
しかしふかしぎ部は……今のところふわふわ浮いてる状況だ。
「大丈夫だよっ。私達が受け継ぐから、あと二年間は最低でも大丈夫ですっ」
「お前が言うと不安度が上がる」
悠飛がぼやく。
「こればっかりは琉嬉ちゃんいないと分からんなぁ」
「……そうですよね~」
「……だな」
「……」
なぜか一瞬無言になる部員達。
「やっぱ、琉嬉先輩いないと締まり無いですね」
「そりゃ、部活創始者だもん」
「うーん、なんだかんだでリーダーシップある子だよな」
龍翔が認める発言。
「まどかとは違うタイプでね」
「フフ、私はさすがに部活でのリーダーではありませんから」
得意の謙遜。
「でもまどか会長はふかしぎ部の主将になってますよ」
柚羽が部活記録のファイルを覗き込んで言う。
役職が書かれていた。
「しゅ、主将…?なんやそれ意味分からん…」
「こんなのあったの…?」
「どれどれ見せて~」
机の上に広げられた資料。
そこには各部員達の名前と役職が書かれている。
「ふむー。部長は当然琉嬉先輩で……、
副部長は私、港咲みゆ。
主将はまどかかいちょ。
会計兼事務はみこっちゃん。
記録係は柚羽ちん。
龍翔先輩はアドバイザー。なんだこりゃ。
叉羅沙先輩は書記。
寧音先輩は監査。
凛夢先輩は…マネージャー。
ええと…広報担当は紫音ちゃんと莉音ちゃん。
隆治君と麗未亞ちゃんはルーキー。
護先輩は…エース。何コレ。
前崎さんは、外部担当。
唯子先輩は幽霊部員。ぷふっ、なにこれ~、笑っちゃうよ~。
顧問は耿助さんで、担当教師は桜川先生…だって~」
「…無理矢理なんかの役職やそれっぽいのに当てはめてるってコト?」
悠飛がぽかんとしながらもなんとか言葉を発する。
「ほへ~、私ら広報担当だったんだ。じゃ、宣伝しなきゃね!」
「違う意味の宣伝になりそう…紫音なら」
莉音は不安になる。
「でも、これ琉嬉ちゃんが考えたって事なんやろなぁ」
「なんだかんだで皆さんの事を考えているんですね」
関心する。
「そんな風に見えないけどな、普段」
「でもああ見えて結構世話焼きですから…」
なんとか姉のフォローをしようとはする。
でも少し気恥ずかしそうだ。
「ま、それは理解出来るわね。なんとなく」
「あ、凛夢さん」
途中から凛夢が部室に来ていた。
「話し半分だったけど…私ってマネージャーだったのね…」
ショックなのかなんなのか。
いつの間にやらの変な役職になっていて驚きを隠せない様子だ。
「要するに、ヒラ部員ってのを無理矢理にでも無くそうと思ってたのかな」
「かもしれへんな」
「でもこの護先輩のエースって意味が分かりませんよ…」
「まぁ、いいんじゃね?護ちゃんらしくて」
「そうですかー?うーん…」
つい深く考えてしまう面々。
そしてみゆがある結論行き着いた。
「あれじゃないですか?暴走族だったら特攻隊長!みたいな。ほら、なんか切り込み役みたいなところあるし」
「なんで暴走族の例えなのさ…みゆちゃん」
「でも的を得ている感じはしますけどね~。例えばスポーツだったらそういうタイプかもしれませんし」
少し納得する柚羽。
「ふむ…そやな」
普段の体育の授業とか見てるとそう思える。
球技とか、複数でやるスポーツだと目立っている。
霊術や妖怪化など抜きにしても、元々運動神経は抜群だ。
そして明るくてムードメーカーめいたところも持ち合わせている。
さらにスタイルの良い美人。
「そら、人気出るわな…」
「叉羅沙さん、ちょっと違う方向に考えてません?」
「それに戦闘だと、前衛タイプだしな」
笑いながら言う龍翔。
なぜか話題が護の方に。
この日も護は不在。
「最近見ないよね」
同じ学年である叉羅沙すら、そう思う。
「忙しいみたいですよ~。お金がないって聞きました」
「なんでみゆちゃんが知っとるん?」
「本人から聞きました」
「そ、そか」
裏稼業が忙しいらしい。
学校が終わったらすぐ帰宅している。
お金がないとかなんとか…。
どうやら本人談のようだ。
「はぁー、やっぱ琉嬉先輩の存在は偉大だな~」
両手伸ばして伸びをするみゆ。
「…いなければいないで、寂しい感じがする。たしかになあ」
いつも琉嬉が座っている窓際の椅子。
いわば、琉嬉専用みたいな場所となっていて、誰も座ろうとしない。
というのも、基本的にはある程度座る場所が決まっている。
琉嬉の隣は大体護か、寧音。
向かい側には毎日は来れない生徒ら。
琉嬉側からみて右隣は大体生徒会達。
左側の棚が置いてある所は、後輩の部員達。
今や総勢15名を超える。
全員がギリギリ入れるくらいの広さではあるが、全員が座れない。
なので大抵誰かが立ったままだったりしている。
それを解消するために、生徒会室側も解放している。
大体は生徒会が行われていたり、週に2、3回くらいしか来ない物が居たりして全員が揃う事は滅多にないのだが。
「こりゃ本気で琉嬉ちゃんいなくなった時の考えた方がいいんじゃねーか?」
「…う、たしかに」
不安になる二年生と一年生ら。
「これからを担う未来の後輩達…頼みますよ」
笑顔で言うまどか。
三年生からの妙なプレッシャー。
「まあまあ、ここは未来のぶちょーのみゆちゃんに任せといてくださいなっ」
そんな中空気読まずに胸を張る。
「いいですね、みゆ先輩は胸が大きくて」
なぜかひがむ紫音。
「何カップですか?!D以上は確実ですよね?!」
「ちょっと…紫音、なんでそんな話になるの?」
「フフフ、こう見えてもEカップなのだっ。じゃーん」
わざわざ制服の上を脱ぎだす。
「こらこらなぜ脱ぐ」
ぽかっと軽くみゆの頭をツッコミのように叩く凛夢。
「ふへへ。つい…」
「男子の顔見てみぃ」
「んん?」
隆治と御琴は顔を少し反らしてる。
さすがに龍翔も少し呆れた顔をしている。
「放って置くとどんどん暴走するこの子が部長で大丈夫かいな…」
「それに副会長にも立候補するんでしょ?」
「未来の候補者は危ないかもなぁ」
細い目がさらに細く天井を見据えていた。
「くかーっ…あ、やべ」
「眠そうだねぇ、琉嬉ちゃん」
よだれを手で拭う琉嬉。
いつもの放課後。
琉嬉にしては珍しく情けない姿を晒す。
「昨日のゲームをほぼ徹夜で…」
「三年生なのに余裕ねぇ」
ふと現われた唯子。
「あら、唯子さん」
「えーと、護ちゃんだっけ?男の子みたいな名前の」
「あー、けっこう気にしてるんですよー。「まもる」って名前」
「あら、嫌なの?」
「嫌じゃありませんよ?意外と面白いんですよ~。あれ、女の子でしたか~って言われるのが」
「あら、そう?」
笑いながら机の上に腰掛けるようにする唯子。
元々幽霊なのでふわふわした動きで座る。
「ありゃ、琉嬉ちゃん今日はゲームしとらんの?」
「してない~……。眠い…もう帰ろうかな」
いつになく弱気な言葉。
というか単に眠いだけのようだ。
机に突っ伏してる。
「こりゃ~、起きろ~。今から寝ると大変だぞ~」
護が琉嬉の頬を何度も突っつく。
でも琉嬉は反撃する気力もないようだ。
相当眠そうだ。
「よく学校来れましたねー。ある意味尊敬します」
反面、寧音は元気そうだ。
さすがに生活リズムを壊さないようにしている。
そこの部分は生真面目だ。
「護さんって、師匠とかいるんですか?」
「はい?」
寧音の疑問。
それぞれかなりの霊術能力を持つ。
血筋によるもの。
努力の賜物。
しかし護だけは独自のスタイルを築いている。
「私はお祖父ちゃんですね~。週1くらいでよく関東にいるお祖父ちゃんの元へ修行しに行きました」
「…夜栄守家も金持ちだね~」
「ウチらはじーちゃんかとーちゃんだねー」
彼方双子姉妹。
こちらも同じようだ。
「名家や五大家は基本的には家系だろうな」
「琉嬉ちゃんは?」
「んー。僕は父さんから基本的には習ったかな」
「へー……。あの父親がねえ…」
護はどうもピンときてないようだ。
「そういう護はどうなの?」
「えー…。んー……師匠かぁ。どうだったかな。気づいたらこうなってたし。
戦い方は自然とかな」
「…だとしたら相当な才能やなぁ」
関心する叉羅沙。
「叉羅沙さんこそ似たようなものじゃないですか?」
いつものように炭酸ジュースを片手にしている。
「…ウチはちゃんとした師匠は居たけどな。てか、あんた、毎日そんなの飲んでたら太りますえ?」
「余計なお世話です」
笑顔だが、完全に目が笑っていない。
その場の誰しもが伝わってきてた。
「しかしなんだってこの部活は女の子が多いん?」
叉羅沙がふとした疑問を投げかける。
「それ、前も話さなかったけ?」
「護のくせに覚えてるのー?」
机に頭を乗せながら言う琉嬉。
「え?違った?」
自分で言ったのに琉嬉に言われてなぜか不安になる。
「言われてみれば…8割は女子ですね」
「おかげでオレ達は肩身が狭いよ」
「でも本当はハーレム気分なんじゃないですか~先輩~」
くねくねした気持ちの悪い動きで言うみゆ。
「男から見ても気持ち悪い動きするな」
「あでっ」
ぺしっとおでこにツッコミを入れられる。
「まさにふかしぎ」
「上手い事言ったと思うなよー、護~」
「う…いいじゃん別に~」
「ははは」
軽く湧く。
「あのー、皆さん。旧校舎…でしたっけ?あちらに向かう人がいますが」
「…居たのかお前」
琉嬉が顔を逆に向ける。
すると視線に丁度香那巳が居た。
窓を指差している。
護るらが顔をそちらに向ける。
数人の生徒が旧校舎方面に向かって行く。
「なんでい、あいつら」
「嫌な予感しまへん?」
他人事のように言う。
「…そうね。嫌な予感するわね」
唯子も言う。
ちょっと複雑そうな顔をしているが。
「えー、旧校舎って結界封じしたから大丈夫じゃない?」
「気楽そうに言わなさんな」
「でも気になりますよね?」
「気になるな」
「気になりますね」
「気になるー」
なぜかワクワク感が増す。
「やれやれだね……。気になるからついて行きますかね」
琉嬉が重い腰を上げる。
「これは、ふかしぎ事件起きそう!?」
テンション上げる紫音やみゆ。
「大勢で行くのもなんだろ。先発隊は…先ずは僕と護。それと…」
「ええっ?またあたし?」
「つべこべ言うな」
眠気はどうしたんだ、というくらい的確に指示をしていく琉嬉。
これだけの大人数。
役割をバンバン与えて行動を起こす。
「変な事起きなきゃええんけどな」
「一筋縄ではいかないのがこの学校ですね~」
「まだなんか裏があるとでも?」
「いえいえ。まさか」
「お前さんの事やから…何か隠してるのと違う?」
「そんなまさか。でも」
チラ見するように唯子の方を見る。
「あら、何かしら?」
「唯子先輩のようにまだ何かあるかもしれませんしね」
「…そら言えてる」
久々の部活動らしい部活動。
普段はこのように雑談だらけで終わる日が多い。
でも、必ず何かオカルトな事件めいた出来事が、密かに起きうる。
それをキャッチするのがふかしぎ部の活動目的…だという。
まだ二期目が発足してから一か月。
これからもこんな形で行われていく。
多分。




