#62 ふかしぎ部二期目発足!
新学年度が始まった。
4月の6日。
雪もすっかり溶けて土の匂いがなんだか久し振りで懐かしい気分。
入学式。
新入生ドキドキの日である。
琉嬉達の学年は二年から三年になってもクラス替えがなし。
また同じクラスメイト達で一年頑張る。
そんな早朝の駅から歩いて学校に行く途中。
「やっほぅ、琉嬉先輩。ちょいお久し~」
早速登校時に顔合わせたのはみゆだった。
いつもと変わらずにくい笑顔。
「んお、みゆ」
「車で来たんですかー、珍しいですね~」
「ん、まあね。それに、うちの妹さんの入学式でさ」
「ああ、そか、そでしたね」
納得するみゆ。
「ども」
悠飛も車から出てくる。
「じゃ、後でね。琉嬉ちゃん悠飛ちゃん」
「うん」
導と嶺珠は入学式にも出席するようだ。
車を置きに一旦別れる。
「うわお、悠飛くん…。なんていうか……」
「…う?」
まじまじと悠飛を嘗め回すように見るみゆ。
山吹色の女子制服に反してなんかギャップがある悠飛の顔。
「なんていうか、カッコイイネ!」
「…えーっ」
ふと、みゆはある事に気づいた。
「あれ、そういやなんで琉嬉先輩も来たんですか?在校生は休みじゃなかったけ…?」
腕を組んでしばし考える。
「…お前と同じだよ。生徒会や他の部活と同じように、用事があってやってきた」
「おおーう、そうなんだ~。……って、え?」
「そのためには、お前さんに会う必要もあったんだけどね」
「へ?」
琉嬉の用事とは?
何かの企みがあるようだ。
普段はあまり見せない不適な笑みをみせる。
入学式が終わり、ちょいちょい中学が一緒だった生徒も見える。
とはいえ、9割以上は初顔合わせになる生徒だらけだ。
悠飛と双子は元々隣の町の中学。
あんまり同じ中学出身の者はいないようだ。
知らない顔が多いのも無理もない。
「やほう、悠飛」
「やあ」
莉音と紫音である。
悠飛と同じように、この日から鞍光高校に通う事になった。
「…や、やあ、彼方の悠飛さん。…久しぶり」
双子の後ろにいたのは、以前の事件で少し親しくなった今井だった。
「今井…、あんたも結局受かったんだ」
「ナントカね」
あれだけ不登校になってたのにも関わらず高校は受かったようだ。
成績優秀、運動もそれなりにこなす。
本人のやる気次第が認められたようだ。
とはいえ、少々変わった性格の人間も受かってるくらいの田舎校でもあるのだが。
多少くらいの問題児程度なら受け入れるのだろう。
「……ふぅん。仲いいね」
「でしょでしょ~、コイツねぇ、筋がいいって、じいちゃんも言ってた。まだまだ霊力低いけどもっと鍛錬すれば一般術者レベルになれるって!」
今井はあの事件以来、少しずつであるが緋黄寺に通い、霊術の修行をしてるらしい。
元々内なる霊感力が普通の人間より強かったらしく、
あの不可解な霊具も使いこなせてた理由から真っ当な力をつけさせたいと莉音と紫音は思ったのだ。
卒業式の時琉嬉らもお寺へ行った時も一緒だった。
なんだか最近一緒にいる時が多い。
「へぇ~…頑張ってるんだ」
「ま、まあね」
眼鏡つけてる人お決まりポーズの、中指で眼鏡の位置を調整するしぐさ。
「あれからあの変な霊具には頼ってないんだっけ?」
紫音が顔を覗き込むように言う。
今井は少し照れながらも、
「そうだね…。頼らなくっても僕は…」
「…てかあれはそもそもうちのじじいが、「慣れないうちに使っちゃいかん!」なーんて言って奪ったんだけどね」
「調べるために渡したんじゃなかったけ?」
「そもそも霊具を預かっていた父さんから奪ったらしいけどね」
「なんだそりゃ…」
ややこしい話に悠飛は理解出来ないといった顔をする。
「なるほど…」
その様子が鮮明に想像出来る琉嬉だった。
「紫音…そろそろ」
「ん?ああ、そうね」
「どうしたの?二人とも?」
莉音がこそこそ紫音に話しかけてる。
中学時代からあまり変わらない二人の関係。
あまり目立たないおとなしい莉音が騒がしい方の紫音に向かってこそこそ喋る。
双子とは思えない性格の違いは相変らずだった。
「ね、二人とも、部活何やるか決めた?」
「部活?」
悠飛と今井は首を捻る。
「そ。部活。いろんな部活が勧誘してるから見てこようかって話でさ」
「部活ね~。やるなら私はギターやってるから、軽音部でも見てこようかな」
「おお、音楽となっ。今井は?」
「僕は…別に…」
「今井君は何もしないの?」
ここぞとばかりに、莉音が今井に話しかけてくる。
「あ、いや…うむ。考えてみようかな…」
少し顔を赤くしながらも今井も一緒に行くことにした。
入学式が行われる少し前、琉嬉は生徒会へと出向いていた。
琉嬉が学校に来た理由。
それは……。
時を遡る事、琉嬉が悠飛と別れた午前中の話。
生徒会室からいつものように大きな声が響き渡った。
「ふかしぎ部を存続させる」
その為に生徒会へ向かった。
そして密かに準備をしていた。
生徒会室へ先ずは入る。
「おっすー」
「おはようございます、琉嬉さん」
「これ、よろしく」
何かの紙を渡す。
部活届のようだ。
「はい、承りました」
「今年もよろしく」
「はぁい」
語尾にハートマークでもついてそうな「はい」の言い方。
いつも以上に柔らかい言い方だった。
そのまま生徒会室から隣の部室へ向かう。
「お、ごくろうさん」
「人使い荒いよー琉嬉ちゃん」
愚痴りながら護が何かの作業をしている。
「文句言わないの」
入学式が終わり、悠飛は双子姉妹と今井と合流し、部活勧誘スペースに来ていた。
そこで悠飛達が見たのは…
ドカッと、ふかしぎ部と手書きで書かれたダンボール横に椅子に座っている琉嬉だった。
「な、な、な、何してるの?姉ちゃん??」
「ほんとだー。琉嬉姉、何してるの?」
彼方家の姉妹達が驚いた顔をしたまま琉嬉に近づく。
目がいつも以上に丸く見開いてる。
「……何って、部員勧誘」
「ぶ、部員って…ふかしぎ部の?それって…非公式な集まりじゃなかったけ…?」
「正式に部活として活動してますー」
「ああ、そうなの…?」
「てことで、お前ら、入れ。」
「……マジで?」
「………うむ」
30秒くらい静かになる。
一瞬悠飛は何を言ってるのか分からなかった。
全てを理解するのに30秒以上かかった。
「本気だよ。今部員は僕入れて、護、みゆ、御琴、まどか、叉羅沙、柚羽、寧音、龍翔君。
そして顧問に耿助さん。
新入部員がこのままだと0になりそうだから、お前らも入るといい」
「いやいやいや、新入部員って……。そもそも何か力持ってないとだめなんじゃないの?」
「まー、そうだね」
手を後ろに組んで、リラックスした格好を取る。
「部長の僕が面談するから大丈夫だよ」
「……なるほど」
なぜか琉嬉の言葉に理解を示す紫音。
「てか、琉嬉姉の判断で合格しないといけないんでしょ…?ほぼ無理じゃない?」
莉音が心配そうに言う。
「うんにゃ。この学校には多分術者がまだいる可能性がある。
だから炙り出そうと思ってね…」
「警察とかじゃないんだから…」
呆れる悠飛。
「…そこの後ろの眼鏡くんも入る?」
今井にも勧誘する。
「あ、ぼ、僕は…」
「いいじゃん、入ろうよ!琉嬉姉達といると楽しいよ!」
「しかし…僕が入る資格なんて…」
「おっけおっけ。資格あるか僕が視てあげる」
「入部する条件があるのか…」
「そりゃそうさ。普通のオカルト研究部じゃないんだから」
琉嬉は目をつぶり、今井の額に手をかざす。
ほんの、数秒だった。
琉嬉はすぐに手を下げ今井にこう言い渡す。
「…今井くんだったけ?下の名前はなんて言うの?」
「……今井、今井隆治です…」
「そか、隆治か。ところで、隆治。僕の隣にいる人見えてる?」
「…え?隣の人?……同じ部員の方ですよね?(てか、イキナリ下の名前を呼び捨て…?!)」
「うんうん。んで、どんな感じ人か分かる?」
「え?え?」
今井改め、隆治は琉嬉の隣にいるという人物をまじまじとみつめた。
見られてる生徒は微動だもしないで隆治の方を見ているが。
「どんな容姿か遠慮なく言ってみて」
目線を少し気にしながらも隆治は特徴を琉嬉に伝えだす。
「ええと…髪の長くて……綺麗な女子生徒さんですけど?」
と、自分で言って恥ずかしくなる隆治。
「んでんで、他には?」
楽しそうに聞く琉嬉。
「あ、え…と、少し右目が隠れるくらいの分け方の髪型で…背は…165くらい?かな…?」
女生徒の目線が気になるが、琉嬉が遠慮なく言えと言ったので思いつく限り言う。
なぜ琉嬉はこんな事を言わせてるんだろう?
そのような事を思いながら、その生徒の姿形をありのままに言う。
隆治にはちんぷんかんぷんである。
「あとは?胸の大きさとか腰回りの太さとか」
女子生徒は琉嬉を無言で睨む。
「え?………あの、スタイルはいいとは思いますけど…?」
「ふふん、おっけおっけー。隆治は合格!」
「え?え?」
訳が分からない隆治。
悠飛らもぽかんとする。
「どゆこと?姉ちゃん?だってさっきから姉ちゃんの隣に「居た」じゃん?」
「そうだそうだ」
「うん…」
他の3人は琉嬉の言ってる事が把握できてなかった。
「お前らは心配しなくても合格だから大丈夫だよ。だって僕の隣にいる人は、幽霊だもん」
「……エーッ?!?」
「ってコトは何?琉嬉姉は、スカウトするために隣に霊置いといて合否を決めてたの?」
「まーね。条件はまず幽霊が見える事。それと、僕が直接触れてその人物が十分な霊力を持っているかどうか、が条件だけどね」
「…なんて厳しい条件…」
琉嬉がやってた事は、部活をより良い状況するために部員を増やして存続をさせていく理由があった。
部を作ったとはいえ、琉嬉は三年生。
一年すれば卒業してしまう。
後釜として部員を増やしときたいと思ったからだ。
二年もいるのだが、ずっと先の事を考えると…と、未来の話を見据えた事なのだが。
「まったく迷惑な話よね」
幽霊と言われた女子生徒が喋り出す。
勿論その幽霊とは唯子だ。
「おおっ、幽霊が喋った!」
「失礼ね…。こう見えてもこの学校の先輩なんだから口を慎みなさいっ」
「は、はい…(え?)」
「私は、志崎唯子。ま、こうして幽霊やってるケド。たまに顔出すからよろしく」
「こういうツンデレなセンパイだからよろしくやってくれ。ふかしぎ部の文字通り幽霊部員さ」
「…アンタねえ、普段無口なくせしていつも余計な一言多いのよっ」
「おう。それは申し訳ないね」
「ぐぬぬ…」
(凄い、幽霊とも喧嘩してる。相変らず、喧嘩ふっかける性格なんだな…姉ちゃん…)
ふと琉嬉の後ろの置いてあるぬいぐるみが気になる。
妙な部活勧誘にシュールさを感じつつ、こうしてなんだか分からないうちに悠飛達4名は、ふかしぎ部に入部となった。
4人は言われるがままに、部室へと案内された。
校舎内の開いた部屋があるというのでまだ場所が分からないのにも関わらず、地図を渡されその部屋へ行ってみたのだ。
琉嬉はまだ残り、部員スカウトをするというので外に残った。
そのため自分達だけで行くという、なんとも無責任な事になっていた。
「なんか、罠にハメられたって感じ?」
どうも納得いかない感じがしてならない紫音。
「ああ、そういや悠飛、軽音部見てくるとか言ってなかったけ?」
「あー、別にそれは後でもいいよ」
「そう?なら行こうかっ」
所詮他人事…のようにガラッと力強く戸を開ける。
「たーのもぅ~!」
戸を開けた先には…見た事のある顔だった。
「あーっ、琉嬉ちゃんのいとこの双子ちゃん!」
「ほんとだ」
中に居たのは、みゆと御琴だった。
「あ、こんにちは…」
「ど、どうも…」
次々と挨拶する。
「そっちは見た事ないね~。もしかして琉嬉ちゃんのスカウトに合格した子?」
ぴょんと、椅子から飛び降り隆治の方へ近づくみゆ。
「あ、ども、今井隆治と言います…」
「ほほぅ、珍しきっすな~、男子が来るなんて」
「そ、そうなんですか?」
「うんうん、ふかしぎ部は男子はみこっちゃんと龍翔先輩しかいないからねぇ。あ、龍翔先輩はイケメンだよ」
「はぁ…」
呆気にとられる隆治達。
「僕がイケメンじゃないみたいじゃないか…みゆちゃん…」
「にゃはははー、みこっちゃんはイケメンじゃなくてカワメンだよね」
「何それ…?」
「カワイイメンズの略~」
勝手に後輩をさしおいて盛り上がる先輩達。
「あ、あの…男子生徒なんですか…そこの方は…?」
隆治が御琴を見てみゆに聞く。
「そだよー、ね?みこっちゃん?男子制服着てる女子ではないぞ」
「…よく言われるんですけどね…」
「はぁ…(マジかい)」
「美少年美少年~。むしろ男の娘~」
楽しそうに連呼するみゆ。
そして机に置いてあるお菓子を食べる。
「勘弁してよ…」
「あ、その…よろしくお願いします」
隆治が御琴の手を取り、握手をしようとした。
だがその瞬間だった。
「!」
ビクッと、御琴の方から手を離してしまう。
「あ、その、ごめんなさい。別に潔癖症とかじゃないんで…」
「ああ、そうでしたか…唐突でしたもんね、すみません…」
悪い事した気分になってしまう隆治。
「?」
悠飛達もはてな顔である。
「ま、ま、いきなりだったから仕方ないよね。ホラホラ、入って入って」
みゆが後ろに回り4人の背中を押しながらどんどん奥へ進む。
「ようこそ~、ふかしぎ部へ!」
一方、その頃琉嬉はまだスカウトをしていた。
時折気にかけて寄ってくる生徒はいるが、琉嬉の仏頂面を見ては去っていく。
というか、どうみても小学生が何かおかしなことをしてるようにしか見えないのである。
「琉嬉ー。なかなか来ないわね」
「……そうだね。まあ沢山来られても困るんだけど」
「そりゃそうだけど…」
他の生徒には唯子の姿なんぞ見えない。
一人でブツブツ喋ってる不思議っ子がいると思われる。
だから余計に人が寄って来ない。
危ない気がするからだ。
「あんたって意外と行動派なのね…。ま、自力であたしの所まで辿り着くくらいだもんね」
「えー。そう?」
「そうよ」
なんやかんや喋ってるうちに一人の生徒がこちらを見てる事に気づく。
「ねえ、あの娘、こちら見てるわよ」
「…んー?」
ふと琉嬉が「こちらを見ている」という生徒に目を向ける。
「……あのフランス人形みたいな子?」
琉嬉が目に入ったのは一際目立つ女子生徒だった。
フランス人形と言ったような形容が合ってるように、腰まで伸びた長い髪。
その髪は少しウェーブかかっていて、一見金髪のようにも見える淡い色をしている。
他の生徒と対照して分かるくらい小柄。
派手な縞模様のオーバーニーを履いた女の子。
凄く浮いたように目立つ。
顔立ちもどこか少し日本人ぽくない。
「女の自分が言うのもなんだけど、可愛いね。美少女だ」
「そうね」
二人して認めるほどの美少女。
「…あ、目が合った」
琉嬉が言うように目が合う。
その瞬間、ツカツカとこちらに近づいてくる。
「お?」
琉嬉の目の前までやって来る。
しばらく何も言わずにじっとするが、やがて声を出す。
「あの!」
「お、おう?」
「あの!なんで…幽霊と話してるんですか?!」
「お、おおぅ……。おう?分かるの?」
「あ、はい。ああ、またやってしまったのだ……」
「んあ?また?」
琉嬉は唯子と顔を見合わせる。
「あ、あの…今のは忘れてください…それじゃ…」
「ちょっと待った」
ガシッと、生徒の左腕を掴む。
「え…と?」
うろたえる生徒。
「あんた、今日入学した新入生?」
「はい、そうですが…?」
「…さっき幽霊と話してるって言ったよね?」
「…………はい」
妙な間。
琉嬉からふっかける。
「隣のコイツ、見えてるの?」
「コイツって言うなコイツって。あたしは先輩よ?死んでるけど」
琉嬉の暴言にしっかりとツッコミ。
「…あのさ、僕らはこういう部をやるんだけど」
と言いながら手書きのダンボールの看板を見せつける。
「ふかしぎ部…?」
「そう。ふかしぎ部。ふざけたような名前だけど至って真面目にやってるつもりだよ?」
「やってるつもり…て?」
「去年の途中から出来たばっかり」
「きょ、去年ですか…」
「そ。この学校付近に関わる心霊現象を研究しようという部活さ。ただ、条件は僕の軽い面接と、横にいる幽霊さんが見える事。
つまり、あんたはこの幽霊の唯子センパイが見えるから第一条件はクリア、て事」
「はぁ…?」
ますます困惑する。
「いやいやいや、私は、部活はしません!多分!さっきのは忘れてください!」
叫ぶように断りを入れてその場から去っていく女子生徒。
むしろ、ダッシュで逃げていくようにして行ってしまった。
「なんだったんだ?」
「さあ?」
後ろ姿はふわふわしか髪が綺麗に揺れてるのが印象的だ。
「………でもハッキリした事は分かる。あの子、唯子の事ちゃんと見えてたし、霊感はかなり高いほうだ。
てかさっきの忘れろと言われても無理は話だ」
「…そうねえ」
琉嬉は辺りを少し見渡す。
他の部活も勧誘して賑わっているが、めぼしい存在の人間はいない。
「……これ以上待ってももう今日は無理かな。部室に戻ろう」
「はいはい」
諦めて物をまとめる。
片づけてる最中にある人物を思い出す。
「ほんとはさ、緋瑪斗も同じ学校だったら勧誘してたんだけど…学校違うから残念」
「ひめと?」
「あ、唯子先輩は知らないんだっけ?まぁいいや。戻る時に説明するよ」
「あらそう…」
首を傾げる。
なんだかんだで、協力してやっている唯子だった。
部室に戻る琉嬉と唯子。
戻って来たら悠飛達が先に居た。
「姉ちゃん…隣って生徒会室?」
「そう」
隣の部屋を指で示す琉嬉。
去年まではなかった「ふかしぎ部」の表札。
みゆに頼んで立派なのを作ってもらった。
早速中に入る。
「ちょっとええ?」
隣に直結してる部屋のドアが開く。
すると異様に背の高い人物が目に入る。
「あ、叉羅沙さん」
「およ?悠飛くんやないの?あらあら大勢で…」
「ども」
「やっほーう、のっぽのおねえさーん」
気軽に手を振って挨拶する紫音。
「先輩に対して失礼っ」
ぽかっと莉音が紫音の頭を軽くぐーで叩く。
といっても拳。
結構容赦ない。
「今年の新入生…の生徒一覧表。これをどうするん?」
そう言って琉嬉に渡す何かの資料らしきプリント紙。
「あんがと叉羅沙。いや、ね。ちょっと気になる生徒がいてね。しかしまあこんなのよく持ち出せたね」
「そら…秘密どす」
ニコっと微笑む叉羅沙。
どこからか手に入れてきた全校生徒が載っている資料。
変なルートで入手したのか、無理矢理持ち出したのか。
相変らず抜け目がない。
今年からの生徒達が載っている。
「顔写真付きかー。判りやすいね」
「誰か探すん?」
「ちょっと気になる子がいてね…」
「ほう」
「今年の一年生は……と」
琉嬉が気になるのは先ほど会った少女。
その琉嬉が取っている行動に興味を示したのか、悠飛達も覗きに来る。
「どうしたの?」
「なになに?楽しそうなコト~?」
みゆもやってくる。
「…うっさいな…。あ、いた」
写真でもすぐ判るくらい目立つ少女。
「ん?誰?」
「あ、可愛い子だね~」
みんなも騒ぎ出すくらい、美少女っぷりだ。
「何かあったん?」
叉羅沙だけ背伸びしなくても覗き込める。
「そこの今井くんみたいに、私をじっと見てた子なのよ」
唯子が答える。
「へぇ~。それはそれは…」
叉羅沙も少し気にかけてしまう。
「……ええと…なりたがわ…。れいみあ?」
「おおっ、なんか外人っぽい名前だねっ!」
さきほど会った少女の名前は「成田河 麗未亞」(なりたがわ れみあ)という名だ。
今時というのか、和風からかけ離れた名前をしている。
「れいみあ、じゃないのか。れみあって読むのか。うーん、成田河…。知らない苗字だな。あまり有名な霊術士の家系じゃないのかな?」
「そやなぁ。ウチも知らん名前や」
「名家じゃなくてもそれらしい名前は霊術会にはいないのかな?」
「ウチはもう在籍しとらんからなぁ…何とも」
「そか」
霊術会系列に存在するかどうか。
それは現段階では不明だ。
「なになに?琉嬉ちゃんは霊能力者だとにらんでるの?」
「…そうっぽいけど…。まあ僕もまだまだ勉強不足だから知らない事ばっかり多いし。
みゆのところの港咲家の事は知ってたけど、護とか、寧音とか叉羅沙とかまどかの事知らなかったし」
自分自身の知識の甘さを痛感する。
「ふぅーん。でもまあ、そんなもんだよね?」
「そうかー?」
「そうそう」
なぜかふんぞり返るように出てくる莉音。
「よく考えたらあんな念飛ばすくらいの力持ってる柚羽の家系も知らなかったしなー」
霊術名家は五大家に劣らない、むしろ同格レベルの術者達。
そんな人間達が鞍光高校に集まっている。
「姉ちゃん、そもそもこういう仕事とかしてる人は同業者でもあまり知られないようにすると思うよ…」
「それもそっか」
変に納得する。
「フム。そう考えたらこの学校にはまだ隠れた術者が居るって事なのかな?」
「かもね」
「………気ーになるね。うん、気になる」
琉嬉の気になる病が発病した。
入学式が終ってから翌日の事だった。
「ふかしぎ部二期目ねぇ」
護が変なに裏返った声で言う。
「奇妙な声出すな」
「いや、だって…、マジで正式に部活としてやるんだなぁって…」
「いいじゃん。表向きは単なるオカルト研究部みたいなもんだし」
「なんだいそりゃ」
「幽霊部員もいるし、まさにうってつけじゃない?」
「唯子センパイの事…?」
「リアル幽霊部員だよ。凄いよね~」
「…そ、そうね…」
新学年が始まり、いろいろとゴタゴタする日。
特別大きな授業もなく、いろいろな決め事が多く少々面倒でもある。
だが時間を割いて決めていかなければ学校として機能しないものである。
部活も引き続き、役職を決めて行く。
部長は琉嬉が継続。
副部長はみゆ。
主将兼議長はまどか。
書記は叉羅沙。
事務は御琴。
監査は寧音。
アドバイザー兼資料事務は龍翔。
会計は柚羽。
マネージャーは凛夢。
エースという意味不明な役職は護。
外部特別顧問は耿助。
一応の担当教員は桜川先生。
リアル幽霊部員の唯子。
そして、今年から入部が決定的となったのは悠飛、莉音、紫音、隆治の4人。
一応生徒は全員霊術師としての力を持っている。
「ま、それはいいとして、ちょいと付き合ってくんない?」
「…ハイ?」
半ば強引に護を連れて行く琉嬉。
その目的先は勿論、先日会った生徒の麗未亞の所だ。
「それあたしも一緒に行く必要性ある?」
「一人じゃ寂しいじゃん」
「…何それ」
琉嬉の訳の解からない無茶苦茶な理由で護を一緒に連れて行く。
その護も若干頭が足りないせいか、断りもしないで結局着いて行く事に。
三年生の教室がある校舎から出て、別の校舎へ向かう。
「で、どこ行くの?」
「ん。気になる女の子の元へ」
「女の子?」
不思議そうにする護。
「そう。女の子」
「もしかして…琉嬉ちゃんってそっちの人?」
「違う」
げしっと護の脛を軽く蹴る。
昼休みで騒がしい校内。
そんな中一年生の教室が並ぶ校舎の方へ行く琉嬉と護。
一応先輩の琉嬉だがどうみても先輩に見えるはずもなく、その隣に学校で美人で有名な護も一緒に歩いてるもんだから変に騒ぎ立つ。
「ねえ、なんか視線が強いんだけど…?」
「護が目立ちすぎるんだよ。その金髪やめたら?」
「やめたくてもやめれないのよ!まったく…。地毛だって言ってるでしょー。黒く染めたってすぐ変な状態になるんだから」
「そうだったけ?」
「白々しいなー」
などと言ってたうちに目的先の教室へ着いた。
一年生の教室の3組。
ここのクラスが麗未亞のクラスだ。
「あのー、成田河麗未亞って子いるー?」
唐突に大声で琉嬉が教室中に聞こえるレベルで叫ぶ。
面白いように教室中がピタッと音が止まる。
その中で案の定ビクッとして一番に反応したのは当の本人、麗未亞だった。
「あ、あ、あの…私に何か用ですか…?」
ちょこんと手を上げて立ち上がる。
小動物かのように可愛らしい。
「あー、いたいた」
「…あの子が例の一年生の美少女かー。あ、思ったより小さいね」
てくてくこちらに寄ってくる。
渋々動いてるようにも思える。
「あ、あなたは…昨日会った先輩…?」
「うむ。先輩だぞ。敬うといい」
「はぁ…?」
「琉嬉ちゃん……そういうボケはいいから…」
単刀直入に琉嬉は麗未亞にとある話題を吹っ掛けた。
「麗未亞とやら。お前、「霊」見えてたよね?」
「…!な、何の事やら…」
琉嬉と護は麗未亞のあからさまな表情に顔を見合わせ、ニヤリとする。
「まも!」
「おうさ!」
まるで往年のコンビのようにお互いの掛け声。
ちょっとした掛け合いで護は琉嬉の考えを悟った。
その悟った内容は、…というと。
「ああわわわ、ちょ、ちょちょ、何を…」
護は麗未亞の体を軽く抱きかかえる。
琉嬉同様、麗未亞もかなり小柄なので簡単に捕まえる事が出来た。
「いざ!」
「あいよ!」
「あ~~~れ~~~~」
麗未亞は体育館裏の広場でちょこんと座らせられていた。
「あ、あの私…知ってます…彼方先輩の事…」
「え?ほんと?」
「凶暴な天使だって…、転校初日でケンカで停学になったって…」
噂は新一年生にも及んでいたようだ。
それにしても凄い怖がりようだ。
「あははは、だって、琉嬉ちゃん」
「…それは事実だけどそこまで怖がらなくてもいいじゃん…」
ふくれる琉嬉。
「…霊見えてたのは嘘じゃないよね?」
「………あ、あ、あの……」
「んんん?」
怖い顔で麗未亞を睨む琉嬉。
「はい……見えてました」
「なるほどー。麗未亞だったけ?んで、あんたのその力は家系?」
「…ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいぅ。突然なぜそのようなお話を??」
「いや、だって幽霊見えてたじゃん。そういう力持ってるのを僕達は探して、ふかしぎ部を盛り上げようとしてるだけだよ」
「だってさ」
琉嬉が楽しんでるだけのようにも思える。
「いや……その…」
声までも震える麗未亞。
本当に怖がってる様子だ。
「…あのさ、僕らも同じだよ。見える側の人間」
「あ……その…そう言われても」
「ね、僕らと一緒に活動してみないか!」
ガシッと力強く麗未亞の手を両手で握る琉嬉。
「あ!すみません!」
突然の行動に驚いた麗未亞はバッと振りほどこうとする。
その瞬間琉嬉の体ごとぶわっと半回転した。
「えっ?!」
その場にいた護が目を疑った。
「…うーん。随分気弱な子だね。気の強そうな顔つきしてるのに性格は正反対っぽいね~」
「……」
無言のままの麗未亞。
相当参ってる様子だ。
「琉嬉ちゃん。これじゃなーんかあたしらがいじめてるみたいじゃない?」
「…うむむ。ついつい部員増やしに暴走してしまったようだ。ごめんよ。麗未亞。
僕らが悪かった。でも、ね。この学校はたーくさん幽霊が現れるから大変だと思うよ。
困った事あったらふかしぎ部に来てね」
あっさりと琉嬉は麗未亞の事を諦め、その場から立ち去る。
「あらら。ま、そーゆーコトらしいから。ごめんね」
「いえ…」
「…みゆの話によると、一応結界を作ってあるらしいけど、どうしても隙間があるのか入り込むらしいから。その辺気をつけてね」
「……はぁ…」
ごめんポーズをして護も琉嬉の後を追いかける。
護にしては気のきいた台詞を発していたが。
ぽつんと取り残された麗未亞。
なんだかワケもわからなくなって目が点になっていた。
「琉嬉ちゃん、なんであの子を執拗に入部勧めてたの?」
「んー。なんとなく…ではないけどね」
「ほえー?」
琉嬉はある事に気づいていた。
それも初めて会った段階でだ。
「…護もそれくらい解かるでしょ?」
「いや、まあ…彼女が普通ではないくらいは解かるけど」
解けそうになったリボンを直しながらも言う護。
勿論、護も気づいている。
「……あの子、多分普通の「人間」じゃない気がする。護と会った時のような…」
「人間…じゃない?あたしと会った時の様な?どゆこと?」
「おそらく……だけどね」
「ふぅむ。琉嬉ちゃんがそう言うならそうなんだろうけど…」
そうは言ってみたものの、琉嬉自身もはっきりと把握しきれてない。
何か違和感がある。
そう、護と最初会った時の様な違和感。
「でも普通の人間じゃないって…もしかして」
「勝手な予測だけどね。護と同じようなタイプかなーって思っただけどね」
「そうなの?」
「でも…さっきのさ、僕の手振りほどこうとした時…見た?」
「見た見た。琉嬉ちゃんの体浮いてたよ。ブワーッって」
琉嬉の体が信じられないくらい浮いた。
一応、肉弾戦の為にも武術の心得はその辺の人間よりはある。
その琉嬉が回避する間もなく浮かされたのだ。
「…僕がさ、いくら軽くても麗未亞もたいした変わらない体格してたじゃん?それ考慮してもあの力…びびったよ」
「…だね」
結局勧誘は失敗。
半分以上無駄な足取りとなってしまったが、麗未亞の「力」なるものが垣間見えたのも事実。
何か秘密がある以上、気になってしまう。
「ま、深く関わろうとしてもまずいよね。もしかしたら普通に過ごして普通に生活したいだけなのかもしれないし」
「…あたしゃ普通の生活してみたいけどねぇ」
「ハイハイ。お前さんにはそれは無理無理」
トボトボ部室に戻る二人。
外はすっかり雪がほとんど溶けて春らしい景色になっている。
そんな晴々しい景色を他所にどんよりしながら歩く二人。
「…にしても琉嬉ちゃんがあんなにがっつくなんてね。珍しいね」
「………なんかさ、ほっとけない感じがしたんだよね。あんな見た目はきつめなお嬢様っぽい感じなのに、妙にあたふたして弱そうだしね」
「…あたしは君にも同じような言葉かけたいよ(見た目の反対すぎる性格だって事をね…)」
つまり、護が言いたいのは琉嬉も見た目に反してアブレッシブだって事だ。
「それにさ…なんか助けを求めてるような気もして」
「助け?」
「いや、なんでもないよ。さーて…吉と出るか凶と出るか…」
「基地に京都?何言ってるの?」
「……お前よく進級出来たな」
「へぇ、じゃ、その女の子…何かあるかも?ってことですかぁ?」
早速みゆが興味津々になる。
よからぬ事を考えてるに違いない…と、隣にいる御琴が感づく。
「まーね。でもさあ、だからって「なんで幽霊と話してるんですか?」っていきなり来るからそりゃ気になるよね」
「そうよねぇ」
唯子も頷く。
「あの子は……多分ちょっとお間抜けさんなのかもね。普通幽霊が見えても見えないフリするわよ」
「だよねえ」
琉嬉も納得する。
相変らず何もなくグダってるいつもの風景。
ただ去年までと違うのは、人数が劇的に増えた。
結局生徒会の仕事がある程度終ればやってくるみゆや叉羅沙や寧音。
まどかも遅れてやってくる。
なんだかんだで、このメンバーと一緒にいるのが居心地いいみたいだ。
新入生のメンバーも顔を出す。
「ども」
悠飛と隆治。
双子はまだ来てないようだ。
「お、新人来たねー」
「新人なんて…そんな」
照れる悠飛。
「いいですね…。フレッシュな顔ぶれが…それも琉嬉さんの妹さんと従姉妹さんも居るという…」
寧音の目つきが怪しい。
「あの…そこの眼鏡の先輩なんか怖いんですけど…」
隆治が怖がる。
「僕も嬉しいです。なんせ男子が龍翔先輩卒業したら僕一人になるところでしたから」
御琴は唯一の男子生徒…となりかけたが、隆治が入部したおかげで、男子率がほんの少し上がった。
(男子扱いされてないけどな)
と、その場にいた在校生達は御琴に対して思った。
「しかしですね…なぜこの部は女子が多いんですか…?」
隆治の素朴なギモン。
「そういやなんでだろね?唯子先輩わかる?」
「なんで私に…。私の代でも女子率は多かったかな?といっても5人くらいしかいなかったけど。
私含めて女子は3人。男子は2人。まあその後はどうか知らないけど」
唯子自信も良く分かってない。
「ふぅん。じゃあ今が異常なのかもね」
冷静に切り返す琉嬉。
「ふむ…。女性の方が感受性が強いとも言いますからね。霊感強いのは女性の方が多いという話も関係してるのかも…?」
隆治は隆治で冷静に推理する。
「しっかしまあ……たしかに女子だらけだわねえ」
机に腰掛けながら言う護。
「だってさー。あたしでしょー?琉嬉ちゃんにみゆにまどかに寧音ちゃんに叉羅沙サンに柚羽ちゃんに凛夢ちゃんに…そして双子姉妹が追加と」
「…あの、私は…?」
素で忘れられる悠飛。
「あは、ごめん、悠飛くん忘れてた。だってなんか男の子みたいなんだもん~」
「…なんで君づけ……?」
こちらは御琴と対照的にされていたのだった。
「しっかし、あの子もあんな目立つなりでよくまあ入学出来たね。髪の色も派手だし」
護が麗未亞の髪の色について心配する。
自身もド派手な金髪だからだ。
入学時にはすでに金髪だったからだ。
いろいろと面倒だったようである。
「護には言われたくないと思うよー」
「な、何をーっ!これは地毛なの!地毛!逆に黒に染めたらおかしくなっちゃうの!」
「ヘイヘイ」
「大丈夫ですよ。髪の色は千差万別。
日本人だからって真っ黒ってわけじゃないです」
寧音が力強く語る。
自信の事も兼ねているようだ。
「それに…風紀を乱すような染色してる者は…容赦しませんけどね」
眼鏡がキラリと光る。
「おお、こわっ…寧音先輩こわっ」
みゆがブルルっと震える。
「麗未亞さんていう一年生の方は何やら秘密がありそうですねぇ」
またペットボトルの炭酸ジュースを手に持ちながらまどかが言う。
言われて見れば、麗未亞の髪の色は明るい茶髪というか、明るいこげ茶というのか、とにかく派手だ。
それも霊が見える力との関連性はあるのだろうか。
琉嬉にはあるひとつの定説が浮かんだ……が、ここではあえて言わない事にした。
「それにしてもその子随分気にかけるんだね」
不思議そうに姉の行動を心配する悠飛。
「…まーね。これもうちの親の性格似たんかねぇ」
(お、親は関係あるのかな…姉ちゃんの性格と)
今日は新学年度始まって三日目。
ボチボチ役員など決まっていっていく時期。
とはいえ、まだ何もやる事も決まってない。
「さーて、そろそろ帰りましょうか」
いつの間にかいたまどか。
生徒会の仕事も早めに終わり、部室に顔を出していた。
この日は特に何もなかったので珍しく自ら帰ろうと言い出す。
「あらま、めずらし。まどか何か用事でもあるん?」
「ええ、まあそうですね。今日は早めに帰ります」
「そか。ウチらも帰ろうか」
「そだねー」
ぼちぼちとメンバーが帰宅しようとする。
「ほーら、部長さん、帰るよ」
「んあ?」
ぼけっと窓をみてた琉嬉。
紫音に手を引っ張られるような形で帰る事をすすめられる。
「琉嬉姉…何か…考えてた?」
悠飛同様に心配そうにする莉音。
「んー。いや、別に…」
琉嬉も帰る支度して座っている椅子から立とうとした時だった。
「あー、可愛いろりっこはっけーん!」
みゆのおかしな言葉が聞こえてきた。
「あ、あの……ロリっ子じゃないです…。あわわ」
みゆが戸を開けた瞬間に視界に入った生徒。
麗未亞だった。
「あ、す、すいません!」
なぜここに居たのかは謎…だが、麗未亞はすぐ駆け出してしまう。
「ふへへ!逃がさんぞえ!」
「え?」
みゆの驚異的なスピードで一瞬にして麗未亞に回り込む。
「わっ」
麗未亞の後ろには巨人…もとい、叉羅沙がしっかりと押さえ込んでいた。
「逃がさへんよ~」
ちゃっかり楽しそうな事にのっかる叉羅沙。
「あわわわわ…」
「お前らいじめるな」
「ぐはぁッ」
べしっと二人の頭をチョップする琉嬉。
結局麗未亞の登場で帰ろうとしてた者は一旦ストップする形になった。
麗未亞を部室に入れ、何かの用があったと思い話をする事に。
琉嬉が気にかけた人物が逆にこっちに近づいた事により、手間が省けた。
「んで、麗未亞ちゃん。何か用事あって来たんでしょ?わざわざこんな時間まで残って」
「あ、はい…。実は…」
「実は?」
「……あの…」
「お前ら近づきすぎだっつーの!」
べしべしっと、みゆ紫音護叉羅沙計四名の頭にまたもや琉嬉チョップが命中した。
「そんなに一気に詰め寄ったら話しづらいでしょ」
「琉嬉の言うとおりよ」
唯子が呆れ返る。
「あの…すみません」
「いいよ、別に。んで、用件を聞こうかな」
「はい」
麗未亞はこの学校に来る前から幽霊など、不可解なものが見えるという話をした。
無論、対処法とかも分からなくズルズルと来てしまったという。
そんな中、この学校に来てから幽霊の数の多さに驚いたと話す。
その際、琉嬉が先ほど言った困ったらふかしぎ部に来るといいと放った言葉を信じてやってきたらしい。
「なるほど…ね」
「………」
「でも見える事出来ても対抗する手段がないって事なのかな?」
「…はい。別に…私の家系はそんな霊媒師みたいな家系じゃないし…」
「ふーん。なるほどなるほど。隆治みたいなもんか」
「お、俺ですか?」
急に振られてあたふたする隆治。
「そ…うなんですか?」
「あ、いや…まあ…。そうなんだけどね…」
隆治は元々素人…とでも訳でもないが、少しだけ霊感があった一般的な人間だった。
中学の終わり頃に、とある事件がきっかけで霊感が強くなり、おまけに緋黄寺である程度の修行を受けている。
今はそれなりの祓いの力を身につけている。
「わ、私も、そういうのに慣れる為に、勉強したいんです!」
「勉強と言われてもね…。てか、お前さん、まだなんか隠してる事あるよね?」
「……え?」
ずずいっと、身を乗り出して麗未亞に顔を近づける。
小さいから大変そうであるが。
「ええと…」
「……ま、いいや。後でも。それに…」
琉嬉は回りに聞こえない程度に小声でこう言う。
「こう人が沢山いちゃ言いづらい事もあるしさ。それに…なんとなく麗未亞の事、分かるし。後日詳しく話ししようね」
「……あ、はい…」
「ってコトで、今日は解散!以上!みんな帰るよー」
突然打ち切る琉嬉。
「えー」
みんなから不満の声が溢れる。
「もともと帰る予定だったんだから、文句言うなー。帰るよー」
「えー、つまんないのー」
護が琉嬉に抱き着く。
「ちょ、何やってんだ…わぷ」
「ずるーい、私もー」
みゆも負けじと琉嬉に抱きつく。
「やめろぉぉー、お前らの巨大な胸で圧死する~」
「じゃあトドメをさしてあげますね」
寧音も入って行く。
「あはは」
「何やってるんですかこの人達は…しかも女同士で…」
隆治の顔が赤くなる。
琉嬉の体は完全に見えなくなっている。
別段広くない部屋に大勢でもみくちゃ。
「いつもこんなんですよ」
先輩面して隆治をたしなめる御琴。
「…ふふふ」
人知れず麗未亞も笑顔がこぼれていた。
夜9時過ぎ頃。
まったりとした時間が流れてる。
「で、どうしたんだ?そのれみあという娘っ子とは」
「何その男女同士の何かあったみたいな言い方は」
家に帰れば帰ればで、にぎやかにしてくれる來魅。
いつも通り琉嬉の部屋でお菓子を食べながら、ゲームをしている。
「…お前、マジでその生活改めたほうがいいぞ。太るぞ」
「の~ぷろぶれむぅ~。私は妖怪だっ。この程度で太るなんぞあり得んわ!」
「……いや、妖怪だろうがなんだろうが関係ないと思うが…その堕落ぶりは」
毎日飽きもせずネットサーフィン。
そしてゲームゲームゲーム。
完全なるニート妖怪化している。
追い返そうとも出来ないほど、強い妖怪であるから無理強いは出来ない。
今は仲間も同然、むしろ家族のような状態である。
琉嬉の両親も何も言わない(むしろ言えない)。
逆に言えば、これほど頼もしい味方もないのだが。
「んで、琉嬉が感じたものってなんぞや?」
「んー。それはね…」
翌日。
ようやく、通常の授業が始まる。
新一年生にとってはある意味、本当の始まりである。
琉嬉ら三年生は最後の年となる、授業の始まり。
その授業がわずらしくなるほど、部活に対して意識が完全向かっている琉嬉にとっては少しきつかった。
そしてあれこれ考えてる途中で寝てしまったりする。
教師は琉嬉の面倒さが分かっているのであえて無視する。(起こすのは担任の桜川先生くらい)
なんやかんやで昼休みになった時であった。
(さーてと…。麗未亞の所に行ってみるかな)
ふと、麗未亞のところへ行ってみようと思ってた瞬間だった。
「彼方さーん、教室の外に一年生の子来てるよ~」
「んあ?」
琉嬉のお客さん。
それも一年生。
心当たりあるとすれば妹の悠飛か従姉妹の双子姉妹。
どっちかだろうと予測しながら廊下へ向かう。
そこには予想には入ってない生徒だった。
「……誰?」
「あ、どもです。三年生の教室来るなんて緊張しますわぁ。あなたが彼方琉嬉さんですねえ。会えて嬉しいです」
「………だから誰?」
琉嬉の目の前にはまったく面識のない女子生徒。
眼鏡をかけておりきつそうな胸元。
つまり琉嬉の天敵の巨乳。
髪は後ろに纏め上げている。
そして妙に懐っこい、関西訛りの喋り方。
「ああ、申し遅れました。わたし、前崎香那巳と言いますー。よろしく」
その眼鏡の少女は前崎香那巳と名乗った。
「…何か用?」
「用と言いますかー、その、彼方琉嬉さん…有名でして」
「…有名っちゃあ有名だけどね…。で、それで?」
「わたしもふかしぎ部に入れさせてもらえませんか?」
その場の空気の流れが変わった感じがした。
窓は開いていない。
「……何を言うかと思えば入部希望者か。でもね。僕の目は節穴じゃないよ。お前さん…霊術師関係者?」
琉嬉は瞬時にしてこの生徒の持つ霊力に感づいた。
「さーすが、かの有名な彼方琉嬉さん。さすがや」
「…こんなに堂々と接触してくるヤツなんて始めてだな。で、何?どこからの刺客?」
「いやいや、そんなんじゃありません。ただ、興味があって…」
「…………なるほどね」
パンッ!と急に音が鳴る。
琉嬉の背中あたりに、何かが弾けるような音がした。
「いきなりケンカ売るとはやるじゃん」
「…バレたんや。さすが、彼方先輩」
近くにいた生徒が驚く。
何の音かとザワつくが、特に壊れた物とかもない。
またいつもの超常現象のように終らせる空気になる。
そんな現象なんぞこの学校では日常茶飯事だが、今回はちょっと違う感じだった。
「何?今の音…?」
「いつものポルターガイスト現象にしては音がでかくないー?」
かなりざわついてくる。
今までにないような巨大な音だったからだ。
「ほーら、お前さんのせいで騒がしくなった」
「はは、これは失礼しました。でもこれだけは言うておきますー。わたしはあなたの敵ではありませんえ。今のところは、です」
「今のところ…ねぇ」
「うふふ。また後日伺います。そないならまた」
前崎香那巳と名乗った生徒はその場から去っていく。
一見地味目な外見とは裏腹に、かなりの落ち着きと余裕さが現れていた。
「……ふー。なんなんだまったく…。今度は挑発込みの一年生か…。今年の一年はある意味豊作かもね」
琉嬉の足元の落ちた紙切れ。
半分になった人形をかたどった紙切れと、琉嬉がよく使う札がボロボロになって落ちていた。
それを他の生徒に見られないように素早く拾う。
(あの眼鏡っ子…。僕の力ためそうとこれを放ってやがったな…。僕の思念符と同じくらいの霊力を込めてた…)
唐突に現れだした生徒。
琉嬉の力を試そうと、白昼堂々、しかも放課後でもない昼休み。
さらに校舎内で試した。
(バレないような自身があったとでも言うのかね…。にしても……)
紙切れの中に、小さな色の違う紙が落ちている。
入部届のようで、前崎香那巳と書いている。
(……あんにゃろう……ガチでケンカ売ってるのか?)
琉嬉には麗未亞に続いて香那巳の正体に気づきかけていた。
まだ推測の状態ではあるが、きっとこのタイミングには何か意味があるとにらんで…。
「彼方…琉嬉さん、あれはどえらい力の持ち主やね。わたしの式が簡単に落とされてしまったわー」
『それはそれは…。流石…と言いたいですね』
「正直この学校おかしいで。琉嬉さんクラスの術者が複数おる。これはわたし一人じゃ荷が重過ぎますー」
『あはは。それもそうですね。ま、あまり無茶をしないよう…』
「もう無茶しとるわー。兄さんも人が悪い…」
どこからか話し声。
学校の裏手の駐車場。
怪しげに会話が進んでいく。
『フフ。すみませんね。本当は私が行きたいところなんですが、なんせ年齢が』
「そらそうや。ま、ええか。兄さんの期待に応えれるだけ応えるわ。あまり期待せんといて」
『いつになく弱気ですねえ』
「あれは一筋縄…いや、二筋三筋ともいかないやろね。百筋や。困ったもんやわあ」
『……いずれ時は来ます。その時は私自らまた行くと言っておきましたので』
「ならええんやん!ほんま人が悪いでえ、兄さん」
『フフフ。すみません。頑張ってくださいね』
「そっちこそなー、ほなまた…」
琉嬉がさっき会った女子生徒。
前崎香那巳が何者かと電話連絡を取っていた模様。
「こら、楽しみ半面高校生活厳しいなぁ」
ぼやきながらも、自分の教室へ戻って行く。
「まったく…貴重な昼休みの時間を短くしやがって…。なんなんだあのメガネ巨乳!」
琉嬉はご立腹だった。
せっかく麗未亞に会うチャンスを潰されかけてしまったからだ。
「…にしても……本当になんだったんだ?あの関西訛りだったら叉羅沙あたりが知ってそうだな」
麗未亞に会う前に、叉羅沙の方へ向かう事にした。
「はぁ、一年におかしな眼鏡っ子ねえ。ウチには心当たりはないなあ。どんな子?」
「どんなって…、なんか関西弁で眼鏡で、胸がでかくて…」
「ふぅむ。眼鏡で巨乳なら寧音ちゃんやないの?」
「あいつより失礼な眼鏡だよ」
腕を組みしばし考える。
考えるが…。
「あかんや。ウチにはわかれへんね」
「叉羅沙でもだめか。多分…霊術会の一員だと思うんだが…。術式がそれに近い」
人目見ただけでどんな系統の術師が把握出来る。
それだけ琉嬉の見る目が肥えて来た。
「ほほぅ。それやったらー、まどかの方が知ってるんと思うけど」
「まどかか…。霊術会の繋がりあるだろうけど…どうかね。まあ、当たってみないわけには分からないね」
「そやね」
放課後。
琉嬉は部室に行く前に生徒会室へ向かう。
「まどかー。いるかー」
「はい、なんでしょう?」
「早速だが、まえざきなんたらっていう一年生の眼鏡巨乳霊術使い知ってるか?」
「…はい?」
端折り過ぎてまどかには理解出来なかった。
琉嬉は落ち着いてまどかに説明する。
みゆら二年生の姿はまだ見えない。
まだ来てないようだった。
まどかはいつものにこやかな表情のまま聞く。
そこで出た答えは…。
「はっきり言って分かりませんね。残念ながら」
「マジかい。名家で幹部の宮森家の人なら解かると思ったのに」
「あ、でも叉羅沙さんのように、関西、京都あたりには同じような年齢くらいの術者がゴロゴロいるとも言われてます。
もしかしたらその中の一人なのかもしれませんね。少なくとも私は前崎という名前には聞き覚えがありません」
「偽名…ってコトもあるか。よくある話だ」
本名ではなく偽名で行動してる者もいる。
そういう者の一人なのだろうか?
「でも、今は敵じゃないって言うとったんでしょ。あまり気にかける事もないのでは?」
「…お前みたいに攻撃してきたんだよ。それも堂々と。気になるっちゅーの」
「ハハ、あん時は申し訳なかったなぁ…」
頭掻きながら照れ笑いする叉羅沙。
「ま、いいや。部室行こうー」
隣の部室に続くドアを開けて部室側へ行く琉嬉。
バタンッと音を立てて閉める。
「ほんまに知らんの?まどか」
「……そうですね。前崎…。そのような名を霊術会では聞いた事はありません。ただ…」
「ただ?」
バサッと前に琉嬉に見せた生徒の顔写真付の資料だ。
ちゃんと前崎香那巳が載っている。
「ほほう。この娘かー。一見地味な眼鏡っ娘やね」
同じ眼鏡の寧音とは印象が異なる雰囲気を出している。
ズラっと並んでる顔写真の中でも特別目立つような感じでもない。
ハッキリ言ってドコにでも居そうな地味な眼鏡かけた女の子のようである。
「……どこかで見た事はあるような気がします。どこかで…。はて…」
「ウチはまったく知らんわ。在籍してたのほんの数年やし」
「………桜月」
ボソッとまどかが呟く。
「へ?さくら?」
「いえ、なんでもありません…」
そう言うと後ろを向いて窓の方へ視線を向ける。
(……いえ、あの方に他のご家族は…聞いた事ありませんしね…)
珍しく少し険しい顔をしていた。
部室はまだ誰もいない。
琉嬉一人。
でも部室の外側に何か人の気配がする。
「……んもう」
少し気怠そうに廊下側の戸を開ける。
すると…。
見覚えのあるウェーブかかった長い髪の毛が見える後ろ姿。
麗未亞がまた部室前にいた。
中に入らずに。
「…れーみあちゃん。何やってるの?」
「わひっ?!」
「そんなに驚く事ないよねー」
「すみません……。そんなつもりじゃ…」
「ハイハイ。で、どしたの?やっぱり入部する?」
「あ…その…」
曖昧な返事しかしない麗未亞に対して琉嬉がついにしびれを切らす。
「んもうっ、ハッキリしなよ!」
麗未亞の両ほっぺを軽くつねりあげる。
「ひゃああ、イタタタタ」
「そんなに気になるんならさっさと入部したまえ~」
「わひゃっ」
琉嬉は自分よりちょっと大きい麗未亞を抱き上げる。
こう見えても普通の女子よりは大分力持ちではあるのだ。
ロリっ子がロリっ子を抱える不思議な光景になった。
そのまま部室へ入る。
「まだ誰も来てない。逆に好都合だ」
「え?」
「単刀直入に聞くよ。麗未亞」
「………ハイ」
ずずいっと、また顔を近づける。
相変らずそれに驚く麗未亞。
「麗未亞。お前、普通の人間じゃないな?妖怪とのハーフかなんかだろ?」
「!!」
麗未亞の表情が一変する。
「なぜそれを…?」
「んー。かすかに妖怪の「におい」がする…。て、言い方するとやらしいな。でも僕には分かるんだよ」
「…凄いです…。たしかに…、私は普通の人間ではないです。でもほとんど人間なんですけど」
「ほとんど人間?どういう事だろ?護や緋瑪斗みたいに元々人間とか?」
ほぼ人間の半妖なんて身近にいる。
「……正式には、私のご先祖様が妖怪…らしいです。だから代々、霊力が高いらしくて…。
妖怪の血が薄れても、霊力の高さは薄れないらしく…。
家族も親戚もみんな霊感が高いんです」
麗未亞から語られた話。
先祖の中に妖怪がいる。
琉嬉はすぐ納得した。
「なーるほどね。だから護のような感じがしてたんだ」
人間の中から微かに感じる、人間じゃない部分。
それを読み取っていた琉嬉は気のせいではなかったと、安堵の表情をする。
「あ、あの!ご先祖が妖怪なだけで、私は人間との人間との間に生まれた人間であって…!」
「はいはいはい。分かるよ。麗未亞は限りなく人間に近い半妖なんだね」
「………半妖…ですか」
「安心して。僕達の仲間は元人間の半妖や、妖怪の力を受け継いだ人間とか、妖怪そのものとかいるから。てか、幽霊まで居るからね。
ご先祖が妖怪くらいで驚かないよ」
「…はぁ」
ぽかーんとする麗未亞。
「あ、でも純粋な半妖は麗未亞だけかもね」
そう。
護も緋瑪斗も後天性の半妖だ。
先天性の半妖は実はふかしぎ部周りにはいない。
「そう…なんですか?」
「何の妖怪か知らないけど、その小柄な体格に似合わない怪力…妖怪の力だよね?」
「………」
無言でコクンと頷く。
麗未亞が言うには、昔、悪さを働いてた妖怪らしく、術者によって懲らしめられ改心した妖怪だという。
その妖怪はどこかで人間と一緒になり、半妖の子供が生まれる。
子供の子孫の直系に当たるのが麗未亞の家系だという。
「ふぅーん…。力持ちの妖怪なんて沢山居そうなもんだけどね。麗未亞のそのパワーは妖怪の力なのかな?」
「さあ……多分…。詳しくは分かりません…」
先日、琉嬉は麗未亞に投げ飛ばされそうになった。
直感で琉嬉は麗未亞はパワー系と感じた。
「ま、それはおいおいと後で詳しく聞くとして、麗未亞」
「はい…?」
「取り敢えず~入部しろ。怪現象の見舞われた時の対処法を手取り足取り揃えて教えてあげるよ。もちろん僕以外からも」
「…ふぇええぇぇ…?」
「……でもそうしたいから、ココに来たんでしょう?」
またもやニヤリと不敵な笑みを見せる琉嬉。
「…は、はい…!」
「よし、決まり~!新入部員確保ーッ」
麗未亞に抱き着く。
その時の麗未亞の感想は…
(…ほんとにちっちゃ……。私よりちっちゃ…)
だった。
「おはーっ、あ、琉嬉ちゃんに麗未亞ちゃんじゃん~」
「護か…。なんだかんだでお前も毎日来るよな」
「へへーん、クラスでも友達少ないからね。ここに来ると落ち着くのさ」
「…なんで自慢げに言うんだ…?」
人懐っこいくせに友達が少ないと言う。
琉嬉は言われてみればクラスの友人と遊びに行くという話は学校では聞いた事ないと思い返す。
案外人付き合いが苦手なのか?
そんな事をふと心の中で思う。
「あ、あの……新入部員になった…成田河です…。よろしくお願いしますのです!」
ガバッと勢いよくお辞儀する。
ウェーブかかった長い髪が綺麗になびく。
「わはっ、そうなんだ~。よろしくね~」
こちらも琉嬉同様に抱き着く。
勿論琉嬉みたいに小柄な麗未亞は護の体に埋もれるような形になる。
「あぷっ……ちょ、先輩……苦しいですぅ…」
「コラコラ。そんなに強く抱きしめたら落ちちゃうぞ」
「え?」
「きゅうう…」
案の定、その場に崩れ去ってしまう麗未亞だった。
新しい一年がこれから始まる。
そしておかしな一年生達。
さらに、琉嬉にケンカをふっかけたような形になった、前崎とかいう生徒。
琉嬉にとっては頭が痛いような存在がまた増えてしまったわけだが。
まだまだ面倒な厄介事が残っている。
壬珠達半妖が集まる組織。
桜月という日本霊術会のトップだという男の動き。
そして問題ありだらけの後輩となる新一年生達。
これらとどう付き合っていくか…。
難題だらけなのであった。




