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ふかしぎ真霊奇譚  作者: 猫音おる
第十章   ~新規怪拓編~
56/92

#56 怪しい登校者・前編

#56 怪しい登校者・前編




 悠飛は思い切った行動に出た。

放課後、悠飛は隣のクラスに行き、今井の後を追いう。

すかさず人気のない所へ出たところで行動に移った。

「ちょっと…いいかな。今井クン」

「!」

 今井はビクっとしながらも、悠飛の存在に気づく。

「……な、なんだい?君は…たしか、隣のクラスの彼方さんの従兄妹の…」

「彼方悠飛。私の事は置いといて、ぶっちゃけた事聞くけど、あんた、今回の連続の事故…。関連してるよね?」

「…何を根拠に言ってるんだ?」

「あんたが突然登校してきてから、入れ替わるように6人ものうちの生徒が大怪我を負った。それだけだと偶然かもしれない。

けど、怪我したやつらは決して偶然じゃない。そういう情報は手にいてれるし、そいつらが、君をいじめていたってのも知ってる」

「!!……な、何をバカな事…」

 ふうっと、ため息をつくような動作をしながらも悠飛は話し続ける。

「回りもバカじゃないんだ。そんな事は他の奴に聞けばすぐ分かる。君……何か知ってるよね?いじめてた人間達が次々と大怪我負った理由」

「……ふ、ふざけた事言うな!僕がそんな事出来る訳ないだろ!バカバカしい!」

 逆ギレとも言えるような今井の様子にも動じない悠飛。

しかし、今井は悠飛に怒号浴びせながらその場から逃げるように走り出す。

「おっと~!逃がさないよ!」

 待ち伏せてた紫音。

「うわ!彼方さんか!」

「私はこっち~…」

 と、遅れて莉音も出てくる。

後ろには悠飛。

囲まれる今井。

周りには人気がない。

「くっ!バカにして…!」

 無理矢理に、莉音紫音のいる所を突破しようとする。

「逃がさないよーだ!」

「……!!」

 今井は双子目掛けて走ってくる。

それを捕まえようと紫音がタックルをしようとした瞬間だった。

一瞬黒い影のような物が浮かぶ。

「なっ、え?!」

 ドンッっと音を立てて、双子が軽く吹っ飛ばされる。

「きゃっ」

 そのまま走り去る今井。

「あ、待て!くそっ……。意外に軽快な動きだな…」

「悠飛!追いかけて!後で行くから!」

 悠飛は無言ながらもうなずき今井を追いかける。

「莉音、大丈夫?」

「なんとか…」

「…まったく。乱暴な奴め。熊をもなぎ倒す莉音をぶっ飛ばすなんて、なかなかやるじゃんか」

「………熊をなぎ倒すって…どういう意味?」

「あ、いや、なんでもない。あたしらも追いかけよ!」

「う、うん(私がいつ熊をなぎ倒したのよ…)」



 走る事5分程度。

学校から遠く離れてしまった。

通学路とはまったく違う方向。

あまり無闇に追いかけると慣れない場所に出てしまう。

そうなる土地勘がなくて追いかけにくくなってしまう。

「あの反応…やっぱりビンゴかな」

 悠飛は走りながらもついさっきの今井の行動に対して考えをまとめる。

一瞬見えた何かの影。

それも双子を吹き飛ばす力。

今井自身の力ではない。

きっと何かの霊的な力だ。

一瞬だけ大きな霊力を感じていた。

小さなメモ帳を取り出して中を確認する。


「………今井隆治。

私と同学年。

家は普通の家庭。

積極的な性格ではない。

去年から不登校状態が続く。

関連は、いじめの可能性…。

そのいじめに関連してると思われる生徒達…。

間違いないと思うなぁ…」

 沢村から聞いた情報をまとめたもの。

少しイケナイ事なのだろうが、お構いなしだ。

今井の身辺調査の内容を琉嬉経由で聞いたおいたもの。

いじめに加担してたと思われる生徒達の名前。

どうしてそこも分かるのかは不明。

沢村の裏の力が働いてたのだろう。

特係の厭らしい所だ。

「偶然ではないよね。加担してた奴等がみんな揃いも揃って重傷とか、さ」


 今井から発する僅かな霊気を頼りに追いかける。

「鍛練しといて良かった」

 他の者より劣る霊感知力。

それをより特訓すれば上昇はすると琉嬉に言われ結構頑張って修行をしていた。

おかげで前よりは大分マシになった。

「上から見た方が早いかな」

 そう考えた悠飛は、大きくジャンプ。

壁を伝い、そして家の屋根にあっという間に登った。

上から見ると今井らしき姿を発見する。

「あそこかっ」

 そして飛び降り、今井を追いかける。


「見つけたよ!」

 悠飛が今井の目の前に先回りする形で現れる。

「く…しつこいヤツらだ…」

 今井は方向を変え、全速力で逃げるが悠飛の方が数段早い。

あっという間に追いつかれた。

「逃がさないよ!」

「うるさい!」

 今井はズボンの右ポケットから何かを取り出した。

悠飛はそれを見逃さなかった。

よく見ると紙……札のようだった。

その札がいきなり、姿形を変える。

「…な、何?!」

 見た事ないような、大きな人形…とでもいうのだろうか。

2m以上はある巨大な人形…頭は黒い目しかない。

あとは鼻も口もない、不気味な…木偶人形のようだった。

「何だコイツ?」

 何も発しない、人形。

だが、ゆっくりと動き出し凄まじいスピードで殴りかかってきた。

「のわっ!」

 間一髪、避けきった。

だが、攻撃は続いて行われる。

「今井!お前…!何かヤバイものに手を出しただろう!」

「う、うるさい!僕は……僕は…この力さえあれば…!」

「…バカ野郎…!」

 そうしてるうちに今井は尚も逃げる。

「あ、ちょ…ぐぬーっ!」

 でかい人形が道を塞ぐ。

今井の意志で動いてるのだろうか?

まるで人形自体が意志を持っているように悠飛の行き先を止める。

「こいつを倒せってか~。やったろうじゃん」

 そう言い、不適な笑みを浮かべ右手に冷気が集約されていく。

「おっ先に~」

「ごめんね、悠飛ちゃん」

「へ?」

 その隙をついてすかさず双子が今井を追いかけて行く。

「んなーっ!」

 ザザッと人形が立ち塞がる。

「くっ…」

 悠飛の目の前に立ちはだかる大きな人形。

簡単には通してくれなさそうにない。

隙をついた双子が見事な動きだったのだ。

「あー、もう!面倒くさい!!」

 悠飛は一気に冷気を解放し、本気を出した。



「何処行った?」

「さあ……気配探る?」

 さっきとは変わるように今度は双子が今井を一歩リードして追いかける。

しかし途中で見失った。

そこで莉音が何やら少し目を閉じて集中し始める。

「………まあ、悠飛なら大丈夫だろうし」

 紫音はキョロキョロ見回す。

人の気配はないように感じられる。

近くに公園がある。

雪に埋もれてはいるが。

奥は林が広がっている。

足跡がかなり複数ある。

もしかして公園奥の林にでも逃げ込んだか?

そんな考えも出てくる。

「足跡で判別とか…無理かぁ?警察じゃないんだから捜しようがないしなぁ…」

 紫音がどうしようかと悩み始めた時。

莉音の方を見ると何やら集中しているのに気づく。

「………………」

 紫音は黙って莉音の様子を見守る。

「……多分、あっち」

 莉音が指差す方向は案の定公園の奥地だった。

「よっしゃ、行くべしっ!」

「一応…道はあるね」

 散歩道や近道として、踏み固められて出来た道がなんとかある。

莉音を信じて紫音は無謀とも言える勢いで突き進んでいく。



「はぁはぁ…。ざまーみろってんだいっ」

 悠飛の足元にはバラバラになった人形。

と思いきや霊的エネルギーを失ったのか、先程の札に戻る。

勿論札はバラバラに千切れているが。

「冬はやっぱり調子がいいな。さすが雪女パワー…」

 バラバラになった式神の紙きれ。

霊術道具の一種だろう。

僅かに霊気が発しているのが分かる。

「こんなの使うなんて…身近にいるとか思わないよ。さて、追いかけなきゃ」

 追いかける…そう言い切ると、尋常ではない速さでその場から走り去る。



 双子達は、公園奥地へ進んでいた。

足場がすっかり固まっている道筋。

だんだん怪しげな場所へ出る。

「……莉音、細かい場所分かりそう?」

「…近くに居る……。気をつけて」

「お、おおう。マジかっ。こりゃあ、素人相手だからといって決して油断するな…ってヤツですか?」

「………追い込まれた人間程何をするか分からない…。そうお父さんが言ってたから」

 双子の父親である、彼方天の言葉を今になって思い出す。

「ふーむ」

 腰に手を当てて納得する様子をみせる紫音。

「ま、うちの親父もとんちんかんなコトよく言うけど、まともなコトも言えるんだな」

 紫音にすら、あまり信頼がなさそうな父親の天の話。

「…そうだね」

 二人きりでもよく会話をする双子姉妹。

なんだかんだで仲が良く信頼し合っている。


 莉音がピクッと何かに反応する。

「莉音……見つけた」

 紫音は歩みを止め、周辺を警戒する。

それに続き、莉音も同じように警戒態勢に入る。

気づくと回りには、ただならぬ霊気が充満していた。


 ジリジリ、進んでいく。

今までも似たような緊張感が何回もあった。

けど、今回決定的に違うのは、同じ学年、莉音にとっては同じクラスメイトの人間。

こんな事はいまだかつてない。

余計に変な緊張感がある。


 住宅街が近いので時折車の通る音が聞こえる。

今井はおそらく、どこかに潜んでる。

そしてきっと何か仕掛けてくるに違いない。

そう思えて仕方ない。

「……莉音。せーの、で、二手に分かれるよ、一旦」

「…オッケー」

「せーのっ!!」

 瞬間、二人はその場から二手に分かれ、何かの攻撃から避ける。

ズドンッと音を立ててつい今まで居た場所に大穴が開く。

「うほぉぅ、これは凄い!」

 攻撃してきたのは悠飛と交戦してた、またしてもでかい人形。

面倒な事に今度は2体いる。

「これ相手にしなきゃいけないの…?1人1体って…事なの?」

 露骨に嫌な顔する莉音。

戦うのが面倒なようだ。

黒莉音が出掛かってる。

「そうみたいね。莉音!さっさとやっちゃうよ!」

「……ええぇぇー…」



「なんなんだ…?あの双子といい、従兄妹の男女みたいなのといい…。どうして、どうして僕の邪魔を…!

大体なんで僕の式神と戦えるんだ?!何者なんだ?!!」

 近くの物陰に隠れてる今井。

独り言をぶつぶつ言っている。

双子や悠飛の戦いっぷりに少々混乱してるようだ。

「……こうなったら……」

 今井はさらなる札を取り出す。

さきほど見せた札とは違う文字が書かれている。

「………これなら、これならあいつらも…。フフフ」



 キィーーン…と音が鳴り響く。

まるで耳鳴りのような音だ。

一瞬光り輝いたと思えば、静かになる。

しかし強力な霊気が響いてくるのが分かる。

「な、何?」

 割と余裕ありがなら人形に勝利していた二人。

人形を倒したと思えば、次は謎の獣。

「…これも、式の一種なの??」

 二人は見た事もない、狼のような獣の姿をみて少しだけたじろぐ。

「ええぇぇ……、またぁ?しかもコイツ、強そう…」

「グルルル…」

 低い唸り声をあげる。

その鳴き声は正に獣そのもの。

「ガァッ!」

 案の定、すぐ突進してくる獣。

「早い!」

「ぐっ」

 攻撃を避けきれず吹っ飛ばされる莉音。

「莉音!」

 咄嗟に莉音をかばいに行く。

尚も、攻撃を仕掛けてくる獣。

「んなろー!」

 両腕でガードをするが、完全に受け止め切れない。

そしてそのまま口から放たれた霊気弾をモロに受けてしまう。

「うあ!!」


「うわ…さすがにやり過ぎかな……?でも…」

 自分でやっといてビクビクする今井。

「やり過ぎも何も、既にむっちゃくちゃだよ。今井クン」

「?!」

 今井が振り向くと、悠飛がいた。

「な、なな、くそ!あ、あれ?あれ!?」

 すかさずポケットに手を入れるが、もう弾がなさそうだった。

「弾切れかい?」

「あ、くそ!」

 さらに逃げようと試みるが、一瞬で悠飛に回り込まれる。

「はぁー……後で詳しく聞くけど…どこで式用の札手に入れたの?」

「…うるさい!!」

 もうやぶれかぶれになって悠飛に殴りかかって来る。

でも簡単に避けられるのがオチ。

鍛錬された体術の達人の悠飛のそうそう攻撃が当たる訳がない。

今井の動きが鈍ってきたところに、今度は悠飛から攻撃を仕掛ける。

「ごめんよ」

 悠飛は左足を十分に体重かけて、思いっきり右足を上げる。

「あ、白…」


 ゴキッ。


 素晴らしく綺麗に、今井の右顔頬に悠飛の綺麗なハイキックが決まった。

今井は軽く意識が飛び、その場に崩れ落ちる。

下が雪で良かった。

「…さて…あの二人はどうかな」




「ぬー、面倒な式だなー!」

 完全に頭に血がのぼってる紫音。

「こーれでもくらいやがれい~!」

 とりあえず、霊気の弾をお返しとばかりに放つ。

獣は素早い動きでかわしていく。

「ホレホレホレ!!」

 といつつ、徐々に追い詰めていく。

これが戦法なのかどうなのか不明だが、見事な戦況有利の状態に持ち込んでいく。

「紫音、足止めどうも」

 隙が出来た獣に向かって莉音が勢いよく突っ込む。

接近が完了した同時に技を発動させた。

「殺真!!」

「グオオオオオ!!」

 獣が咆哮しながら苦しんでいる。

強力な霊気を送り込む技。

元々動きを封じるために殺傷能力はないが、動きをつかさどるような神経を一旦ストップさせる。

霊気の具現化した式であれば、尚更ダメージはでかい筈だ。

「ちゃーんす!」

 紫音の一撃だけでは、倒すに至らない。

動きが止まった獣の後ろ足を掴みだす紫音。

「フフフ、行くぞ…我が奥義……はぁぁ…」

 体全体に霊気を解放する。

そして、そして、なぜかぐるぐる回る。

まるでジャイアントスウィングのように。

いや、そのまんまジャイアントスウィングだ。

「どっせぇーい!!」

 そんで、思いっきりぶん投げた。

獣は軽く、5m以上の高さまでの上空にぶっ飛んでいった。


 しばらくして、バキバキッと枝が折れる音が聞こえる。

どうやら軽くこの林の木の背以上に飛んでたみたいだ。

「あ、落ちてきた」

 ドサンッと枝やら何やら折れる音と共に落ちた。

二人は近くに見に行く。

獣は完全にノックアウトしていた。

すると、そう時間も経たないうちに札に戻った。

「やれやれ…。素人なのにこんなレベルの式使うなんて…才能あるんじゃないの?アイツ」

 札を拾う悠飛。

「…姉ちゃんのとは全然違うしな…。よくわかんない字書いてるし」

「はは、そうだね。琉嬉姉のは適当に悪霊退散とか書いてるもんね」

 覗き込んで来たのは莉音。

「ふふふ、どうよ~。あたしの大技の超大回転投げ」

「その度ストレートな安直ネーミングセンスどうにかならないの?」

「え?」

 悠飛と莉音は紫音を放って置いて気絶した今井の方へ向かった。




「ん……、あ、あれ…僕はどうして…寝てた?」

「おーい、目覚めたか~」

「…はっ!!君達は…、あ、」

 立とうとしたが、足がふらついて尻餅をついてしまう。

「あれ…?どうして…」

 訳が分からない様子だ。

「あーあ。悠飛のキックがダメだったんじゃない?」

「え?そんな事はないと思うけど…」

 それほど思いっきり蹴っ飛ばしたとは思ってないようだ。

「悠飛ちゃんのキックていうより、多分自身の霊気の使い過ぎだと思う…」

 莉音が今井に手を指し伸ばしなんとか起き上がらせる。

「自分のレベルに見合ってない式を出したりしたからよ」

「なるほど…。たしかに霊術は霊力も使うけど体力も消費しちゃうからね…」

 立ち上がっても今井はフラフラしている。

「………うぅ…。君達は…一体なんなんだ…?」

「私ら?んー、みたまんま。こういう力使う人間だよ」

 紫音が両手の手のひらを今井に見せる。

特に物がないが、微かに光っているのを今井の目にうつってるのが分かった。

「……人間離れし過ぎてる…」

「ハイハイ、それはそれで、まずは、どこでこの札を手に入れたの?」

「…話さなきゃいけない?」

「じゃないと、またキックするよ」

 蹴りの動きをする悠飛。

「…ああ、そうだ!僕は君に蹴られてその後の記憶がないんだ!……ああ、そういえばパンツが白かったのを覚えてるぞ!」

「……また蹴る」

「わー、ちょっと待った待った!」

 急いで悠飛を抑える二人だった。


「悠飛は黒いタイツしてるのによく白だってよく分かったね」

 紫音が余計な事を言う。

悠飛は無言で紫音の頭を叩いている。

ドサクサに紛れて悠飛の下着を見てた今井だったが、手に入れた札の話をし始めた。

ルートはネット通販だったという。

今はサイトが消えていて足跡が不明になっている。

素人でも扱える、霊術道具販売をしていた者がいるらしい。

今井はそれを入手して使用した。

「…これ以上何も知らない?」

「知らないよ!僕は…本当に知らない…。ただ…」

「ただ?」

「ただ…この力を使うと、強くなれた気がして…。それで、僕をいじめていた奴らに復讐をして…」

「やっぱりね…」

 納得した様子の悠飛と紫音。

そんな中ずいっと、莉音が今井の前に出てくる。

「な、なんだよ…彼方」

「みんな彼方だけど」

 すかさずツッコミを入れる紫音。

だがそれを無視するように莉音は今井に話をかける。

「今井君…それは、間違った復讐の仕方だよ。ましてや、何も知識や能力がない人が手にしてはいけない力…。

今井君の気持ちは分かる気がするけど……私も、人との関わりあい苦手だし。今井君もそうだろうし…」

「…う、うう…だから、なんだ!誰も助けてくれない、そんな状態だったんだ!力を手に入れたら…やられるくらいならやってしまえと…

そう思ったから…僕は…!」

「まあまあ、落ち着いて」

「うるさい!君達も今頃なんだ!どうせなら、いじめられてる頃に助けてくれれば良かっただろ!!」

「う、それはそうだけど…私らは別のクラスだし…知らなかったし…」

「うんうん」

 冷や汗ものの悠飛と紫音。

正直この二人はほとんど部外者である。

こういった情報が知らなくても仕方ない事でもあった。

しかし同じクラスである莉音は後悔していた。

「…私がもっと勇気出せばよかったんだよね…。ごめんね。今井君…。同じクラスなのに…卒業も近いのに…」

 莉音の目に涙が浮かんでいた。

「莉音……」

 場に沈黙が訪れる。


 当時の事をこの中で一番知ってるのは莉音である。

去年からクラス替えなしで進級した訳でもある。

けど莉音は、助けられなかった事を今更ながに後悔する事になった。

その暗い雰囲気が耐えれなかったのか、紫音が喋り出した。

「……ま、過ぎたもんは仕方ないよ。うん。復讐っていうか、いじめてた連中も半殺しにしちゃったんだし。

あたしらも下手したら殺されかねない勢いだったしね。うんうん」

「何明るくまとめようとしてるんだよ」

「あ、いや…ハハ。だって辛気臭いの苦手だし~」

 一応紫音なりに場の空気を変えようとした発言。

「お前なぁ……。まったく…」

 なんともその場の空気をある意味読まない発言の紫音に愛想を尽かす悠飛。

もっとも、辛気臭いのを吹き飛ばすには結果的に良かったが。


「でも、いじめられながらも無茶やるなんて、結構度胸あるんじゃない?今井クンさ」

「………」

「それに…素人なのに式神を使いこなすなんて、マジで才能あるかもね…どこかで覚えたの?」

「…それは……ある程度の使い方はサイトの主から…。後は漫画とかで…」

「なーるほどねぇ」

 悠飛は今井の手慣れた技に感服してた。

素人ながらの式の使い方。

それに強力な式を出したという力に。

「ねえ、今井クンさ、うちの寺で少し修行しない?勿論卒業後でもいいし。

あ、かといって、私は今お寺住まいじゃないけど…」

「え?」

 悠飛の突然の誘い。

「こっちの双子がお寺が住居だからさ」

 双子を指差す。

「えー…うちで修行…?」

 嫌そうにする紫音。

「あー。それいいかもね。心身鍛えれるかも」

 莉音は肯定的だ。

「いや…しかし……僕は…」

「大丈夫。きっと、君には才能がある。別に悪霊退治手伝えとかじゃないから」

「あ、悪霊…?」

「ねーねー。うちの事ほとんど知らないで言ってない?二人…?」

 珍しくツッコミに回る紫音だった。


「さて……どうする?」

 結局は連続負傷事件の犯人は今井である。

が、しかし。

証拠となる力なんぞ、一般人に見せる訳にも行かない。

「でもまー、あれじゃない?大怪我った人達はざまぁって事で。だって、そいつらにいじめられてたんでしょ?

自業自得だよ。そいつら」

「うん、まあそうだけどね…」

「んー、どうする…?」

「琉嬉姉に連絡しよう」


 しばらく待つ事、一時間半ほど。

近くのファミリーレストランで待ってる所に琉嬉と沢村刑事がやってくる。

「姉ちゃん、こっち」

「おー」

 非常に小さい子と異様に背の高いスーツ姿の男の奇妙な組み合わせ。

店内でも非常に目立つ。


「んで、犯人が君かい?」

「……はあ……そうです」

「ふーむ…。いたって普通の少年」

「おいおいー、あたしらもいたって普通の少女だよー」

 何を根拠に。

反論する紫音。

「へいへい。そうだねそうだね」

 軽くあしらう。

そのまま話を続けていく。

「……それで、僕は逮捕ですか?」

 今井の発言にキョトンとする沢村。

「逮捕も何も、そもそも被害者は相手の顔を見てない、というか、ワケの分からんのに殴られたとしか言ってないしな」

「ですよね~」

 琉嬉も話に乗る。

「何よりも、証拠が確認出来ないだろ?それに…法律的に式神でボコボコにしたから傷害罪、とかって適用するのかね?」

 さすがの沢村もそんな法律はないと思う、とは言う。

通常では考えられない力での暴力沙汰は証拠が見つけにくいだろうし。

琉嬉はこう切り返す。

「社会的に知れ渡れば…改正とかで適用されるようになる…とか?ま、どっちにしろそんな事不可能だろうけどね。

そんな力を一般的に認知させる訳にもいかないし」

「もっともだ」

 沢村も納得。

「何より…日本霊術会がそれを許さないだろうね」

 霊術会。

それは政治的にも関与していると噂だ。

「まぁ…そうかもな」

 その理由に一番納得する沢村。


「なんか難しそうな話してるなー…」

 紫音の足りない頭では理解が不可能なようだ。

「現状は、逮捕とかそういうのは無理っぺだろうな。俺が言うんだから間違いない」

 キリリっと真剣な表情をしながら決める沢村。

悠飛達は変に心配になるのだが。

「でも、ま、罪は罪よね。だって、通常ではあり得ない力を使ったんだから」

 ここで莉音が会話に参加する。

普段琉嬉以上に会話には参加する事ない程に、おとなしい。

だがここは自分の案を出す。

「さっきも言ったけど…うちのお寺で、罪を償うべく修行をしてもらおうと思うの。

お父さんにもお祖父ちゃんにも話は通すから」

「あ……え?マジで言ってるの…」

 困惑する今井。

「ふぅむ…なるほどね。それに、その札のルート知らなきゃ行けないしなぁ…」

 渋々ながら琉嬉もその案に乗ろうと考える。

「安心して。卒業してからにしよ?だって、私達受験生なんだし」

「あ、そっか。受験生だったよな。すっかり忘れてたよ」

「決まりだな。今井。覚悟しとけよ」

 ビシッと、紫音が指差す。

「やれやれ…。君の将来決まったかもしれないネ」

 悠飛は先が思いやられるイメージをする。


「今日のところは帰ろう。時間も時間だし。もう9時近いぞ」

 気づけば夜の9時。

「ありゃりゃ。ほんとだね。てことで、沢村刑事、送ってもらっていい?」

「…まったく。いくら俺が暇だからってね…。ま、いっか。暇だしな」

「なんだそれ~。ハハハ」

 和気藹々とするみんな。

今井はどこか羨ましそうに見ている。

「今井君。まだ……式用の札って持ってるの?」

 沢村が今に問い出す。

証拠物品としてでも使うのだろうか。

「…家にまだ20枚くらいあるけど…今持ってるのは使っちゃったというか…君らに破壊されたし。

あ、でもまだこれが…」

 出したのは獣形になった式の札。

「ふむ。どうする?琉嬉ちゃん達。俺が持って帰ってもいいんだけどさ」

「あー。どうしようっか」

 琉嬉と沢村が少し悩む。

すると莉音が立ち上がり、まだ使用していない式の札を手に取った。

「これ、借りていい?本当は全部没収したいくらいだけど…」

「…分かってるよ……後で全部渡すよ…」

「ならオッケ~」

(う……この子らには勝てない…)

 可愛らしい笑顔を見せる莉音。

少しだけ、今井は魅かれる部分が見えてきたようだった。



 とりあえず、事件はなんとか解決方向へ向かった。

一度悠飛と琉嬉は帰宅し、今井もこの日は家に戻った。

双子姉妹の方も家に戻った。

今後の展開を考えると、まだ少しやる事がある。

そんな気がしてならないような悠飛。


 霊術道具の方は双子の方で任せる。

明日の学校での巡り合わせが少々、不安もあるが。



 緋黄寺。

夜中11時近く。

帰って来た莉音と紫音。

結局警察の沢村が送ったついでに、無理な行動をあまりしないようにと親に告げられ双子は母親に少し怒られた。

突然の警察の来訪で少々驚いたようだ。


「という事なんですけどね」

「ほう。なるほどなぁ」

 沢村の説明に頷く祖父の炎良。

「ま、後始末とでも言いましょうか。そこは特係でどうにかしますから」

「すまんな」

「いえ、それが仕事ですからね」

 そう言うと沢村は玄関を出て行く。

「ふぅむ…」

 髭を触りながら、炎良は沢村を見送る。

(……厄介事を持ち込まれるのはお互い様だな)

 


「お父さん、どういう系譜か分かる?」

 お寺での中。

怒られ終わった莉音が父親の天と何やら話している。

莉音は今井が使用してた札を天に渡す。

「どれどれ」

 札を角から角まで見渡す。

手にとった札から現在は霊気は少ししか感じられない。

使用者によって、ある程度力が変換される。

一度使った札を読み取るのが一番効率良いと考え、莉音は今井から借りてきた。

「…ちょっとじいちゃんにも聞いてみようか。ちょっと資料出して調べないと」

「うん。分かった」

「もう夜遅いけどいいのかい?」

「大丈夫っ」

 珍しく元気に返事する莉音。

「お?楽しそうなコトしてる?」

「…紫音、別に楽しくはないけどね」

「あれ?そう?」

「ハハ、君達はほんと性格反対だな~。双子なのに」

 娘の違いすぎる性格に父親は笑う。

「ぶー」

「ごめんごめん」

 紫音の頭をなでる天。

「さて、調べてこよう」

 徹夜覚悟で、調べに入る一家だった。




 翌日、何事もなかったのように今井は登校していた。

眠たそうに教室へ入ってくる莉音。

「おはよぅ…」

「莉音?大丈夫?ちょっとフラついてるよ?昨日も元々体調悪そうだったし」

「うん。ごめんね。大丈夫だから。昨日ちょっと調べ物してて…」

「へぇ。勉強熱心だね莉音。紫音の方も見習えばいいのにね~」

 と、クラスメイトからもクラスが違う紫音は散々な言われようだ。

「莉音」

 ふと教室の外から莉音を呼ぶ声。

声の主は悠飛だった。

「今井もちょっと…」

「………」

 今井も黙って席を立つ。



「結論から言うと~、うちの資料にはない系統のお札でした。

もしかしたら新しい…式神なのかも、っていう話でした」

「なるほどねぇ~」

「……………」

 以前今井は黙り込んだままだ。

「でも、ひとつだけ解かったのが」

 人差し指をピンっと立てながら話を続ける莉音。

「使われてる特殊な紙は……霊術会仕様だって」

「ふぅん……霊術会ね…」

 腕を組みしばし考え込む悠飛。

隣にいる紫音も考えるふりして悠飛のポーズを真似する。

「……霊術会にはうち正式に入ってないから、調査は難しいけど…霊術会がそんな事するとは思えないってお祖父ちゃん言ってたし」

 紫音をスルーして話を進める莉音。

その様子を見てさらなる困惑を見せる今井。

(なんなんだ…?この人達は?)


「残念ながら、霊術会に属してるのはうちにはいない…から調査は、後々になるかもだけど…」

「そうだね。耿助さん所に調べてもらった方がいいかな」

「琉嬉姉ちゃん経由で連絡とってもらおうかな。あと運が良い事に、姉ちゃんの部活には霊術名家の人達がいっぱいいるし」

 と、トントン描写に話が進んでいく。

「……何か、分かってきたのかい…?」

 おそるおそる今井が話に割り込む。

「んー。なんとなく…ネ。で、今井クンはさ、腹くくった?」

「え?何が?」

「…うちのお寺で、修行するってコト」

「う…その話か……。善処するよ…」

 突然今井の右手をガシっと掴む手。

莉音の手だった。

「だーめ」

 笑顔で駄目と言う莉音。

その笑顔の裏に鬼が巣食ってるのがなんとなく今井には見えていた。

「今井君…駄目だよ。いい?」

「……えええぇぇ~!」

 今井はふと、悠飛の顔を見る。

しかし悠飛はニコニコしながら何も言わない。

もはや完全に、諦めろ、という顔だ。



 この日はこれ以上特に何事もなく授業が終わる。

再び悠飛と双子姉妹が揃う。

「……で、どうしたのさ、莉音」

「ちょっと……お見舞いってやつに…?フフ」

「は?」

 悠飛はなんか呆気にとられたが、紫音にはなんとなく把握できた。

黒モードに入ってる莉音の状態に。




 とある病院へやってきた悠飛達。

少し遠めであるが、ここらで一番大きい病院でもある。

莉音がわざわざやってきた理由がある。

お見舞いという理由で、今井の式でボコボコにされた生徒が入院している病室へ案内された。


「こんにちは」

「!お前は…同じクラスの彼方…と、その兄弟か」

「ノンノン。妹と従兄妹だよ」

 ひょこっと紫音も顔を見せる。

「……何しに来た?」

 生徒は少し警戒してる素振りを見せる。

心奥ではどこか、怯えてるようにも見える。


「同じクラスとして、代表してお見舞いに「一応」来てあげたけど…」

「な、何?」

「どうしてこうなったかは、分かるよね?」

「…な、何の事だよ」

 生徒は怯えたような顔をしている。

「フフ、言わなくても私達は分かってるからいいよ。ま、それに助けられなかった私も結局は同罪だけどね…」

「………」

 生徒にはもう言われなくても分かっている様子だった。

いつもとは違う、莉音の様子にさすがの悠飛と紫音も少々引き気味。

「…今井君は、苦しんでた。その結果があなた達に復讐をする事でこうなった。

今井君の気持ちは分からない事もないけど……、これは間違いだと私自身は思うから…」

「………」

 男子生徒は黙り込む。

反論出来る余地もない。


「私ね、家がお寺だから、霊感っていうのがあるの。あなた達…なんかはっきりとしない影みたいなのにやられたって聞いて」

「…ああ、悪霊ってやつなのか…?今思い出してもぞっとする…」

 莉音は少し不気味な笑みを浮かべる。

「ぶっちゃけるけど、あれは今井君が、いじめてたあなた達に報復するために、使った普通ではありえない方法でやったの」

「な、どういう意味だ…?」

「それを知ったとしてもあなた達がどうこう出来る事はないけどね」

 冷たく言い放つ。

生徒はまたもや何も言えずになる。

「…でも、あなた達のやってた事が、元々悪い。だから、私はあなた達に「同情」する事もない。

今度は、こうならないように、気をつける事ね………」

「…くっ」

「卒業には会えないと思うけど。それじゃ、サヨナラ」

「あ、莉音、ちょっと!」

 悠飛があわてて追いかける。

言いたいだけ言ってすぐその場から出て行ってしまった。

「あ、うん、私からも一言。命あっただけでも今井の優しさに感謝するべきだね。んじゃ~」

 妙に明るい言い方で去っていく。

「あ、それともうひとつ」

 出て行こうとした紫音がさらに助言。

「今井にこの復讐考えちゃだめだよ。今度は命なくなっちゃうかも?次の今井は…強くなってるだろうから。今度こそじゃね」

「な……」

 茫然とする男子生徒。

そのまま男子生徒は、ゆっくりとうな垂れる。


 完全な真相は話はしなかった。

いや、話しても理解できるような話でもない。

それほど通常の人間であれば不可解な事件なのだから。

警察、法律どうのこうのというレベルではないのだから…。



 後日、例の札を耿助に見てもらった返事が返ってきた。

琉嬉は直接耿助の電話を通じて答えを聞いた。

「さすが、耿助さんだね。僕達が出来ない事ならほんと安心してしてくれるよ。持つべき者はいい先輩ですよ」

『あはは、先輩だなんて、恥ずかしいよ』

「何言ってンのさー。僕より年上のいいあんちゃんなんですから」

『ははは(……段々琉嬉さんもバラエティに飛んできた言葉言うようになってきたな…)』

「あんがとー」

 たまたま電話してた時に來魅と悠飛も一緒になって遊んでいた。

「耿助の奴はなんと?」

 興味津々に聞いてくる來魅。

「ルーツは霊術会で間違いないだろうって。でも現段階では今の霊術会にはないタイプの式札みたい」

「ふむ……。では極秘な術とか?」

「それはあるかもしれないとは言ってたよ。ま、耿助さん所は一応霊術会に属してるだけだから、裏奥底までは詳しく分からないとは言ってたけど」

「ふむー。そうなのかい」


 耿助以外にまどかや龍翔など、霊術名家にも尋ねた。

しかし名家だとしても所詮はまだ霊術会の幹部でもなんでもない、しがない学生の子供。

詳しい事は家に帰らないと分からないらしい。

名家だとしても同じ霊具を使用してる訳でもない。

「お前みたいな凶悪な妖怪を封じた五大家のひとつだからね。

霊術会側としてもそういう「力」ある所とは連携しておきたいんだよ。うちはしてないけど」

 五大家の存在と名声は多大な影響力がある。

それまでの力を持つ一族だ。

名家以上に強い効力がある意味ある。

霊術会としても繋がりを持っていたいとも考えるべきなのだろう。

「ははは、私を封じただけで人間の中ではそこまでの名声、力がついてくるものなのだな、ふふん」

 なぜか自慢げの來魅。

ない胸をこれでもかっていうくらい胸を張る。

「ところで、悠飛や」

「何?」

「その今井って生徒、マジでうちの寺で修行僧みたいな事させるの?」

「祖父ちゃんもOK出たし、いいんじゃない?」

「ふーん……。しかし、元々素人でも使える式って…考えたら恐ろしいな」

「だよね…」

 以前悠飛のクラスメイトでもあった霊術道具での事件。

そして今回の事件。

完全に世に出回っていると考えていいのかもしれない。

それも本来持ってない力をこうも簡単に扱える改良された霊具。

これからもしかしたらさらにこういった事件が表沙汰になるのかもしれない…と、危惧する。

「はぁー、こーれから大変だねー。うちのお寺でもこんな事件に関わっちゃうかもね」

「大変そうだな」

「…來魅も場合によっちゃ手伝ってもらうからね。ただ飯じゃあ、ないんだよ?」

「お、おおぅ…そうだったな…」

 ちゃっかり住み着いてる來魅とってはちょっと耳に痛い話だった。




 その後、悠飛の通う中学校では、いじめ問題など隠された問題が明るみになっていった。

学校側の過失もあり、グレーな部分がブラックになっていった。

それの裏には父親、導がライターとしてのせこい情報力を使い明るみにさせる。

そして終いには、寺に伝えて住職の炎良など呼び出し、生きる者は平等など関係あるのかないのかわからん説法を、

学校側に説いたりして戒めを強くしたのだった。

結局学校側も受け入れる得なく、いじめ問題なども確認。

いろいろと面倒な事に、この受験シーズンに大きな問題と鳴りローカルであるがニュースになったようだ。


 1月も終わる。

いよいよ受験も加熱。

悠飛や双子らは琉嬉達の学校の鞍光に完全にターゲットオンをした。

「今井君も鞍光にしたの?」

「あ、ああ。そこならちょっと離れてるけど、僕の嫌な奴もあまりいなさそうだし…それに」

「ん?」

 チラっと双子の方を見る。

「なーに?こっち見ちゃって。なんだ惚れたか?」

「な、何を言ってるんだ君わ!」

 猛烈に焦る今井。

でも、誰が見ても分かるような態度だ。

「まったく…バカバカしい事はっきり言うな紫音」

 やれやれポーズの悠飛。

そしていつものように一歩引いておとなしくなる莉音。

事件時のあまり見せない険しい表情とは一切無縁な笑顔を見せている。

「ま、いっか。今頃になって新しい友人も出来るってのも」

 無難にまとめる悠飛。

出席日数的に進学出来るか怪しい状態ではある、今井。

でも成績は元々良かったし現にこうやって登校して来ている。

学校側もフォローがあってなんとかなりそうだと言う。

目指す鞍光高校が寛大というのもある。

(来年度もまだまだにぎやかになりそう…)


 こうして今回の事件は解決となった。

だがまだ解決してないのは霊具の問題。

組織まで動き出していく状態になっていく。

いずれ答えが見つかるのかもしれないが、悠飛達はそれを追いかける決意であった。




 琉嬉のスマホに耿助からの連絡が入る。

「はいー。どうしました?耿助さん?」

『いや、実は……その筋からの情報なんですけどね…』

「…突然なんの情報ですか?……あー……」

 琉嬉はなんとなくピンっときた。

おそらく、この前の霊術道具のルートなどの話だ。

『以前ですね、似たような術を使う人物を見た事があるっていう情報がありましてね』

「ほほう~。それは興味深いね~」

『その人物は、半妖という話があるんですよ』

 一瞬間を開ける。

「………なるほど」

『…あら、案外冷静ですね。驚かないんですね』

 別段驚く事もない自分がいる。

「いや、別に気づいてたっていうんじゃないんですけどね。なんか、納得するというか、ああ、そうなんだっていう感じ?」

『はは、感が鋭い琉嬉さんですもんね。無意識にそう思ってたんじゃないですか?』

 直接半妖達と結びつけるような発想はしていないつもりだった。

だが、最近の活動が明るみになった事について、同じように霊術具も出回ってる事から

無関係ではないように無意識に考えてたのかもしれない。

琉嬉は無意識下でそう思ったのかもしれない。

「うーん。でもそのうち引っ張り出すよ。うちの強い妹達が」

『お、強気ですね。琉嬉さん自身は動かないんですか?』

「僕は僕で、正々堂々正面からぶつかりますよ」

『やっぱそうですか。なんか、男らしいというか、いや違う字で「漢」らしいとでも言うのでしょうかね』

「………あの……、一応僕、女なんだけどさ……。それ、褒めてるとは言わないよね?」

『あはは、これは失敬』

 耿助は時を経つに連れて、段々とちょっと失礼な事を言うようになって来た。

それも仲が良くなったからだ。


「しかし、半妖が霊術会にいるとは思えないけど…どうなの?そもそも札の術式のルーツが霊術会だっていうし」

『まだ詳しい事は分かりませんが、半妖といえども、半分は人間ですからね。人間側にいたっておかしくはない訳ですし』

「ああ……そうですよね」

 なぜか護の顔がちらつく。

護だけじゃない。

緋瑪斗もだ。

ただこの二人は後天性の半妖だが。

人間側の味方する妖怪も居る。

來魅の顔をチラ見する。

來魅は一所懸命パソコンをいじっている。


『それにしても悠飛さん達にとっては災難とでも言うのでしょうかね。卒業間近に』

「ん?悠飛?学校の事?」

『ええ、そうです。ニュースでもちょっとやってましたよね。

いじめ問題がどうのこうのって。

チラっと、琉嬉さんのお祖父さん、炎良さんからも聞いたんですけどね』

「あー、いじめ問題ってやつね。

僕の母校でもある訳ですけど、そういう問題抱えてながらもあえて深く詮索してなかった訳ですね。

なーんか心痛む気がするよ」

 かなり複雑な気分のようである。

一応三年間通った学校でもある。

琉嬉が居た時代とそう変わってないだろう。

今になって明るみになった問題。

なんとも言えない、奇妙な気分に覆われている琉嬉。

『…琉嬉さんの世代の時はどうだったんです?』

「さぁ。僕に話しかける人はそんなにいなかったしなぁ…」

 電話越しに物乞いにふける。

『……はあ…そうなんですか…(中学校の時でも何かやらかしたんですかね…この方は)』

「………うちの父さんってさ、ああみえても裏な世界にも顔きいててさ、どういうルートか分からないけど

あんなふうに明るみにリークさせちゃったんですよね。ペンは剣より強し?みたいな…」

『なるほど。なかなか、侮れない方なんですね、琉嬉さんのお父さんは』

「まーね」

 琉嬉らの父親だけあって一筋縄ではいかない何かの「力」を持っているようだ。



『では、また分かり次第、連絡しますね』

「何度もありがとう耿助さん。あ、後、もう少し多めに学校来れませんか?」

『あはは、それがなかなか厳しくてですねぇ…』

 笑って誤魔化す耿助。

「すみません、じゃまた学校で」

『いえいえ、ではまた…』

 そのまま通話を切る。

「…はぁー、まったく面倒過ぎる事に首を突っ込んだもんだ。悠飛も」

 結局は逃れられない運命…と、ゲームで培ったかっこよい台詞でも言いたい気分になる。

悠飛は琉嬉の部屋の隣。

その隣の部屋からは特になんの音も聞こえてこない。

ギターも触ってない様子だ。

「……なんだかんだで姉妹…か」

 カレンダーをなぜか見ながらぽつりと呟くように言う。

「ん?何が姉妹なんだ?」

 聞き逃さなかった來魅。

「いんや。何でもないー」

 琉嬉が携帯ゲーム機を手にしてONにする。




 悠飛はぼーっと天井を寝っ転がって見ていた。

特に深い考え事もしていない。

受験勉強を一旦休憩入れてゆっくりしている。

(なんだかんだで後始末は大人頼りだなぁ…。私達だけの力じゃ限界ある)

 今回の事件でも結局琉嬉など親兄弟や沢村など含めた信頼有る者達に力を借りた。

自分だけの力じゃ限界あると嘆いている。

(ま、子供は子供だし…ね)

 そこは割り切るしかない。

所詮、まだ中学生の子供。

まだまだ精進目指す悠飛であった。


 1月の終わり。

外はまだしんしんと雪が降り続いている。


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