#57 会長の謎を暴け!
中学校の出来事終結から一日経ったくらいの日。
あれから特に問題あるような音沙汰はない。
悠飛も特に何も言わないので完全に問題解決したのだろう。
月も2月に入り、いよいよ卒業式が近くなる。
高校の方も例外なくいつも通りである。
「それにしても、おとなしいヤツほどキレると怖いって…本当だよな」
ボソっと、琉嬉が呟く。
「…は?」
突然の呟きに目が点になる護達。
「どうしたの?突然?そもそも普段おとなしいのは琉嬉ちゃんもでしょ?」
「……それって、皮肉?」
「いやいや、そういうワケじゃないけど。んで、最近何かあったの?」
護が不思議そうな顔をして聞く。
「ん?いんやー。僕の母校の中学校でさ。いじめ問題があったみたいでさ。それが悠飛達が解決したんだけどさ」
「…いじめ?深刻だねぇ」
「説明すんの面倒だから悠飛から聞いて」
「…んな、なんだいそりゃぁ」
横目にいる凛夢も無言ながら呆れ顔をしていた。
「…だったら話題に出さなきゃいいのに…」
こちらもぽつりと呟く。
「やれやれ、琉嬉ちゃんの言いたいだけ言うトークも未だに掴みにくいよ」
昼休み。
例に漏れず、いつものメンバーは部室に集まっている。
とはいえ、毎度毎度全員が集まる訳でもない。
琉嬉やみゆの中心的人物が今日はいない。
「そうなんですか?私はあまり話した事ないですね。そういえば」
会長のまどか。
ほとんど絡みはたしかにない。
生徒会が忙しいので会話をしない時も多々ある。
「あれ、会長はあまり話した事なかったけ?ほとんど毎日顔合わせてるのに」
「そうですねぇ。いつも護さんとかみゆさんとかと話しているので」
「あーそりゃそうだったね。じゃ、今度ゆっくり話してみるといいよ。ああ見えて喋り出すと終わりまで一気に話してくれるから」
「そうやな。普段おとなしい分」
「あ、そういやみゆは?」
「今日日直でいろいろやる事があるみたいです」
「うわっ」
実は部屋に居た御琴。
日直うんぬんと言ったのは御琴だった。
「い、居たの…?」
「はい、居ました」
影が薄い御琴ならではのみんなの驚きよう。
「………ま、まあ、いいや」
「いいんかい…」
「今日は琉嬉ちゃんも来ないねぇ」
「凛夢はんも来ないな」
「今日は静かですね」
「ですね」
「…………」
変な時間が流れる。
微妙~~な空気。
カチッカチッと時計の音が聞こえてくるくらい静か。
「あの~」
護がおそるおそる声を出してみる。
「どうかしたんですか?」
まどかが問いかけに応える。
「あ、いや~。やっぱなんでもないッス」
「そうですか~」
「あ、うん…(叉羅沙や耿助さんと同じようにいつもニコニコ…。この会長さん…謎なんだよな…)」
再び妙な時間が流れる。
そうする事15分ほど。
午後の授業が始まる予鈴が鳴る。
「あー、戻らなきゃ」
「そうですね、叉羅沙さん、行きましょう」
「ん。そやね」
まどかと叉羅沙は同じクラス。
「僕も戻りまーす」
御琴はさっさと部屋から出て行く。
学年が違うせいか、護達二年生より部室から教室まで少し遠い。
そのためかすぐ出て行ってしまった。
というか、女子だらけのこの空間で、仲の良いみゆもいないので少し居心地が不安だったのもある。
(うう、僕はなんて情けないんだーッ)
などと、心の中で叫びながら早足で戻っていた。
護はその後授業中も気になっていた事がずっとあった。
まどかの事である。
普段何をしてるのか、とか。
どういう家柄なのか、とか。
どういう術者なのか、とか。
今考えるとあまり知らないからだ。
それを気になって気になって、仕方なかった。
知っているのは霊術名家の家柄だという事。
「ってコトなんだけど~。興味ない?」
早速琉嬉や凛夢に言う。
「…ま、たしかに…ね」
「お?乗ってくれる?」
「………」
いつも以上のジト目で護を見下す視線の琉嬉。
「あ、え?どしたの?」
「本人に聞けばいいじゃん。僕は帰ってやりかけのRPGをやらなければいけないのだ。さらば」
「あー、ちょっとぉ~」
クルっと凛夢の方を向く。
「…わ、私は…別に…あの会長さんの事は別に…」
「だめ~?」
「そういうのはみゆとかが好きそうだと…」
「あ、そっか!なるほど、ヤツがいたか!」
と、携帯取り出し早速みゆに連絡を取る。
そして凛夢に目もくれずにどこかへ消えてしまった。
「…騒がしい人……」
護は早速自分の考えをみゆに話す。
「それはおもしろそう~」
「ね?良いアイデアでしょ?」
「そですね~」
「それにしても御琴くん、君わいつもみゆちゃんと一緒にいるね。ま、別にいいけど」
「はぁ……すいません」
「何、謝る事はないのだよ、御琴くん。仲良いね。ププ」
怪しく笑う護。
その護の様子に恥ずかしいのかうつむく御琴。
当のみゆはよく分かってないのかとり合えず楽しそうにしている。
「決まれば、いざ生徒会室へ!」
「おおう、いきなり本城へ乗り込むのかっ。やりおるのぅ護殿」
すっかり乗り気のみゆ。
「いざ出陣!」
結局放課後の今、生徒会室へ向かうのだった。
「何?まどかの正体を知りたいぃ?」
「ちょ、声デカイって!龍翔くん!」
「んあ…すまない」
生徒会室に早速ついた護とみゆと御琴。
生徒会室にはまどかや叉羅沙達の姿はなく、龍翔しかいない様子。
早速、護のやりたい事を龍翔に聞いてみたのだ。
「まったく…君達は気楽でいいね」
「えへへ、すみません先輩」
頭を掻きながら謝る。
「先輩は会長の事詳しくないんですか?」
「まどかの事か…?ん~。別に深く考えた事ないなぁ」
みゆはおそらく叉羅沙と同じくらい生徒会として一緒にいる時間が長いと思い、龍翔に質問してみた。
龍翔はなんとなく、その辺にあった資料に目を通しながら会話をする。
「毎日のように顔合わすしな。あー、そういやまどかの家の事とかあまり知らないな。
同じ霊術名家だけど別にそんなに接点あるって訳じゃねえしなぁ。
自分からも特に何も言わないし。たしかに謎が多いな」
「でしょ?でしょ?だからこれから尾行をしようと思うのだっ」
「探偵じゃないんだから…」
みゆへのツッコミが忘れない御琴。
そうしてるうちに戸が開く音がする。
「あら?みなさん早いですね」
まどかが早速現れた。
(おー、噂をすれば)
(よし、帰るまで待つとしましょう)
(……本気かお前ら…)
呆れる龍翔。
「……あ」
戸を開けた瞬間琉嬉が立ち去ろうとする。
「ちょ、なぜ逃げるの琉嬉ちゃん!」
まるで妖怪かのように素早い動きで立ち去ろうとする琉嬉に回り込む護。
「結局琉嬉ちゃん気になって来たんじゃん」
「………いや、なんか一日一回来ないとどーも納得しないっていうか、調子狂うていうか…」
「うんうん、なるほど。琉嬉ちゃんもそう思うか~。
で、早速なんだけど、私らはまどかちゃんをこれから尾行しようかなと思うんだけど琉嬉ちゃんも来る?」
琉嬉の目が大きく珍しく見開く。
コイツは何を言ってるんだろう。
そんな顔をしている。
「…興味ない訳でもないけど。尾行とか沢松刑事みたいじゃん」
「ね?琉嬉ちゃんも気になるでしょ?龍翔君ですらよく知らないまどかちゃんを………。
知りたいと思わない?」
くわっと琉嬉の顔に近づけて大きな声で言う。
廊下という少し寒い場所で琉嬉はしばし考える。
「…行っても…いいかな~…とか思うけど」
「じゃ、決まりぃ!」
ガシッと琉嬉の手を思いっきり掴む。
「痛い…って」
生徒会の仕事も終わりほとんどの生徒が帰宅する。
そしてまどかも席から立つ。
「さて、私も帰ります。みなさん、そろそろ帰りましょう」
「あ、お疲れ様です会長」
「おつかれさん」
「暗くなってきましたね」
寧音らも席を立ち上がる。
「お、生徒会が終わったみたいですよ」
と、ゾロゾロと生徒会室から出て行くまどか達と同時に部室からも出てくるみゆら。
特に護とみゆは変にドキドキしている。
期待しているのがなんとなく琉嬉には分かる。
「なんだか知らんがなぜこんな事に…」
「まぁまぁいいじゃん」
「……あほかー」
「それじゃ、さよなら」
校門からまどかが出て行くのを確認した護達。
ソソソ、と静かに移動しながら気づかれないようにする。
「…さぁ、護隊長、かいちょ発見です!」
「おう!追跡開始だ!みゆ隊員!」
「……まったく…」
なんだかんだで琉嬉も着いて行く。
「大丈夫でしょうか…?」
結局駅に到着してしまった。
まどかはどこも寄らずにまっすぐ駅に来た。
琉嬉はともかく、護らはいつもフラフラ寄り道はしてるのだが。
「うーん、どこも行かないね。駅まで着いちゃった」
「どうするの?」
「いんや、ここは最後まで追尾するのさっ」
「おお!」
無駄に輝く護。
それに謎の尊敬の眼差しのみゆ。
「ねえ、それよりさ」
琉嬉が何かに気づく。
「まどかって…みんなと家の方向まるっきり違うよね?
一番仲の良い叉羅沙でさえ、帰りの方向まるっきり逆だった筈だよ?
叉羅沙はたしか……鞍光北だったかな?まどかはたしか南の新鞍光の方だし。お前らだって東西だろ?家の方向」
「そういえば…」
「あたしは同じだよ」
護は琉嬉と同じ方向だから問題なし。
「南だったら僕の定期は使えるけど…、他の皆は電車代無駄にかかっちゃうよ?」
ここで家の方向の紹介となるが、琉嬉は鞍光の南の方である。
少し田んぼやら畑が多いのも特徴。
南からから東寄りが凛夢。
そして中央、つまり学校に近い場所に居るのが柚羽、龍翔。
護は中央より東北よりの場所。
琉嬉とは家が少し近め。
叉羅沙はより北方向。
御琴とみゆは琉嬉のまったく反対方向の鞍光西である。
みゆはさらに西へ進み、山奥にある大きな屋敷住み。
ちなみに、莉音紫音がいるお寺は鞍光の隣町、御琴の所から近いそうだ。
沢村刑事は中央住み。
耿助は中央から南寄り。
肝心のまどかは大体の場所は分かるが正式な家の場所は知らない。
「あー、南側かー。私はあんまり行った事ないですねー」
みゆがぼやく。
「あたしも自分の家より南奥の方はあんまり詳しくないね~。山多くない??」
「まぁーそうだね」
「…」
誰もそんなに詳しくなさそうだ。
叉羅沙も凛夢も元々こっちの人間ではないので知り得るような期待もない。(と、勝手に琉嬉達は解釈する)
「ホラホラ、急がないと見失うよっ!」
みゆはそう言いながらグイっと護のつけてるマフラーを引っ張る。
「ぐぇっ」
護の美人な顔が一気に崩れる。
「…ぐぇっって…もっと可愛らしい声出せよ…」
護の変な声に琉嬉はツッコミを入れざるを得なかった。
そんなやりとりしながら、まどかの後を追い、南へ向かう路線の電車に乗り込む。
「どこで降りるんだろう?」
「さあ?」
などと、気づかれないようにしてるつもりだ。
乗った駅からほんの10分しないくらい。
4つ目辺りの駅でまどかは降りていく。
「あ、かいちょ降りてくよ」
「よっしゃ。我々も降りるのだ」
完全に怪しさMAXの4人だ。
まどかはどんどん進んでい行き、駅から出て行ってしまう。
「あっ駅から出て行ったよっ」
「我々も続け!」
「ヘイヘイ」
4人は駅から外へ出た。
新鞍光駅。
中央の鞍光駅から少し南路線へ二駅程。
学校のある南駅からたったの一駅だ。
駅自体は中央駅に比べればそれは全然小さいが、外はビル建築物が多い。
広い街中ではあるから、栄えてる場所は栄えてる。
こういう所は夜に営業開始する居酒屋などが立ち並んでいる。
仕事帰りに近所の居酒屋で一杯という考えのサラリーマンもいるだろう。
そういう人が多いのか、こんな風に乱立するように営業している。
「…この辺は……来た事ないな」
来てから日がまだ浅い琉嬉がこうぽつりと呟く。
「奇遇だねぇ~。私もないよっ」
護も言う。
「お前もか。……元からここにいるんじゃないの?」
「んー、結構前からいるけどね。あんまり行動範囲広くなくってさ」
「…へぇ」
「あひゃっ」
変な奇声を出しながら、みゆがずでんっと尻餅つくように転んだ。
「大丈夫?」
御琴が手を差し伸べる。
「あいたぁ~。ぐぬぬー、雪国に住む人間として不覚だよ~」
人通りが激しいから地面は踏み固められた雪。
そして氷状態になっている部分もある。
これは雪道慣れてる慣れてないのレベルではない。
「まったく~。砂でも融雪剤でもまいといてよ~」
「…珍しくみゆがプンスカご立腹なのね」
「そうだな…。みゆ。今日はピンク色なんだな」
「ほえ?何がピンクなんですか?」
「それ」
琉嬉が指差す方向。
みゆが転んだ拍子にスカートがめくりあがっていた。
「ひょえ~~!」
慌てて隠す。
「ぼ、僕は見てないからっみてないからっ」
御琴は大きく目を逸らした。
駅から少し出た所。
4人はまどかの後を尾行していたはずだった。
「…あ、あれ?」
ほんの一瞬でまどかの姿を見失った。
キョロキョロ馬鹿みたいに見回す琉嬉以外の3人。
人の流れはそこそこ多い。
徐々に仕事終わりなどで人の流れが増えてくる時間だ。
「みゆがパンツ丸出しでこけたりするからだよっ!」
護が吐き捨てるように言う。
「な、誰がパンツ丸出し痴女だってぇ~!」
「誰もそこまで言ってないしっ!」
珍しく睨み合う護とみゆ。
「はいはい、バカ騒ぎはいいから」
琉嬉がよく分からないケンカを制する。
「そんな一瞬でいなくなる訳ないんだから。ちょっと進もうよ」
「む…そうだね…」
琉嬉に言われるがまま護達は少し進む。
ほんの2、3分だっただろうか。
みゆが転んだ場所から100mくらいしか進んでない所。
だがまどかの姿は見えない。
「あれ~?マジでどこいったの?」
「どっかお店入っちゃったんじゃない?」
「そうなのかな~」
だがこの辺は若い女子が行きそうな店なんてない。
「……あらまぁ、どうしたんですか?みなさん」
「!!!!」
4人が一斉に振り向き驚愕する。
まどかがいつの間にか後ろに居た。
「どうしたんです?みなさん?ここに」
「そ、それはこっちのセリフだーっ!」
「驚かしやがって…」
ドキドキが止まらない4人。
(…にしても、みんなに気配も感じさせないで後ろにいるなんて…幻術でも使ったのか…?)
琉嬉すらも一目置く人物まどか。
一度対戦している。
(まぁ……あの技量だもんな…)
なんとなく、まどかならやりかねない。
そう思い始める。
「で、どうしたんです?こんな所まで。ここら辺は若い子が遊ぶような所あまりありませんよ?」
「…たしかに…」
琉嬉がそこら一体見回しても居酒屋やちょっとしたスーパー、商店くらいしか見当たらない。
ちょっと奥へ行けば住宅街。
駅近くにはゲームセンターが一軒あったくらいだ。
「いや、その、ちょっとかいちょさん気になって…」
「何バカ正直に話してるの?」
「あっ」
護が慌てみゆの言葉を抑えようとしても既に遅し。
「私が気になったんですか?…はて、それはなぜ…?」
まだピンと来ないまどか。
「まどか。要するに、コイツらはまどかが普段どんな事してるのかとか、どんな所に住んでるのかとか、気になって来ただけだよ。
ま、僕もついつい乗せられてここまで来ちゃったんだけどね」
「そうなんですか~。それならそうと早く言ってくれれば、こんな私の家でも良ければご招待しますよ」
飾り気のない笑顔。
まるで女神のように微笑む。
「え?じゃあ…かいちょさんちに行ってもいいんですか?」
「いいですよ」
一発OKの返事。
「おおぉー!やった~」
護とみゆは手を取り合って大げさまでに喜ぶ。
「いいの?突然?」
少し心配する琉嬉。
「いえ、構いませんよ。それに…」
「……それに?」
「いえ、なんでもありません」
「あ、そう……(うーん。どう考えても尾けてたのに気づいてたと思うんだけどな…。腹の探り合いでは一番厄介そうだね。まどかは)」
こうしてしばらく進むこと10分足らず。
駅からは15分かからないくらいだろうか。
住宅街を突っ切って、進んでいくと少しひらけた場所へ出る。
なんとなく、凛夢が住んでいる場所に似ている、と琉嬉は感じていた。
「さ、そろそろですよ」
「ほぅ~」
4人の目線の先には古い作りの、家が出てきた。
庭は大きめ。
塀に囲まれた古き良き時代の、大きめな家。
「ここです」
(…もしかして、まどか先輩ってお金持ちのお嬢様?)
(なのかもね~)
ヒソヒソ話の護とみゆ。
「……お前んちも相当な金持ちだろうが」
ピョコッと軽くみゆの頭にチョップする琉嬉。
「大きい家だねぇ」
「いえ、そんな事は…。みゆさんの家の方がきっと大きいですよ」
「そっかな~」
家の玄関まで10m程あるくらい、庭が広い。
よくある日本庭園的な、和風の庭。
琉嬉達には名前が知らないけどよく見る日本特有の木。
「まあ、うちは古くからの地主やってたみたいで、その家をただ引き継いでるだけなんですけどね」
「へぇ~」
「家だけは立派なのです」
ニコニコしながら答える。
(……なんなんだろうな…まどかの、この…よく分からない安心感は)
いつのまにやら琉嬉もまどかのペースにはまり込んできた。
「ただいまです」
早速まどか宅へ上がりこむ4人。
「うお~、何か時代を感じる家だね~。じいちゃんばあちゃんの家に来たみたいな、昭和の香りってやつ?」
「フフ、こう見えても結構リフォーム繰り返してるんですけどね」
「ほほぅ~」
作りは古くても使っている壁などは良く見ると古くない。
こだわりのあるリフォームの仕方をしているのだろう。
「…リフォームならうちもリフォーム済みの家だけどね」
「へぇ、そうなんですかー。今度遊びに行きますね」
みゆが人懐っこくくっついて言う。
「はいはい…」
「…あれ?姉ちゃん…お客さん?」
長い廊下を歩いてるうちに突然バッタリ出会った子供。
見た目は女の子の様にも見えるが髪型が短い髪型なのでおそらく少年だろう。
「あら、緑。ただいま。学校の友人達ですよ」
「へぇ~…」
少年の名は緑と呼ばれた。
「わおっ、かわいいっ。かいちょの妹さん?弟さん?」
みゆが楽しそうにきく。
「そうですよ。私の弟です。まだ小学生ですけど」
「…ど、ども」
「何年生?」
「まだ小6です…。もうすぐ中学だけど…」
少し緊張したのか、ちょっと頼りなさげな返事。
「へぇ~。かわいいねえ。将来すっごいイケメンになるかもね」
「いんや~。もしかしたらみこっちゃんのように女装が似合うようになるかもよ~」
「女装が似合うってなんだよ~みゆちゃん」
(……何を言ってるんだこの人達…?)
あまりにも突然の事言い出すので少し混乱する緑少年。
「ささ、みなさん。一旦こちらへどうぞ」
まどかの案内に誘われて、客間の方へ向かう。
しばらくして、まどか自ら飲み物を持ってくる。
「さぁみなさん、どうぞ」
飲み物と言っても、あったかいココアだった。
「こんな冬に冷たいジュースってのもおかしいのでココア入れてきました」
「わはー、あったかいー。ありがとございます~かいちょ」
「…お前、一応後輩だろ…。慣れ慣れし過ぎないか…?」
みゆのフレンドリー過ぎる態度に琉嬉も呆れる。
「あら、私は構いませんよ」
「……ふぅむ…」
琉嬉はとりあえず、話す事も考えてないのでしばらく黙ったまま。
「さて、みなさん。私に何かご用件でもあったのでしょうかね?」
予想外に、まどかの方からふっかけてきた。
「いや~、用件というか~。ただただ、まどかって……何者なのかなあ…って思って」
喋りが下手くそな護。
「フフ、何者…か…、ですか」
不敵の微笑み。
(…たしかにな)
琉嬉も気になる人物の一人ではある。
「……さっきも言ったとおりうちの家系は地主としての家柄です。表向きは…ね」
4人は少し息を飲み込む。
まどかから普段考えられないような重苦しいような空気が流れてくるのが分かる。
「皆さんがご存知の通り、宮森家は霊術名家のひとつです」
「なるほどねえ」
「なるほどね、って護先輩もそういう家系ではないんですか~?」
ふと疑問に思ったみゆ。
みゆの家も五大家のひとつ。
基本的にふかしぎ部メンバーは何かしらの力を持つ家系だ。
護自身は家の事なんぞ話したりしないうえ、この年で一人暮らし。
「あ、え?私のコトはいいのよ~別に~。うふふふー」
「……自分の事隠しておいてまどかの事を聞くのか。なーかなかズルいんでないかい?」
琉嬉もまどかの事は気になるが護の事も気になる。
「あ、あっははははは。そのうちに……ネ?」
「まったく。今度お前の家に遊びに行ってやるからな」
「それよりかいちょに話を戻して~」
「そうですね」
気を取り直してまどかは話を続ける。
「でも期待するような話じゃありませんよ。鞍光市って、術者多いじゃないですか。妖怪も多いし、昔からの地域ですし」
「言われてみればそうだけどね~」
「こうして昔のうちに自然と術者が集まって、こうやって今に至ってる訳なんですよ」
「ま、たしかに」
名家が多いのも五大家が集まってるのも散々昔から聞かされた話。
改めて説明される事もないくらいだ。
「うちの親の世代の時に、学校でもそういう術者の集まりを作ろうってなったらしいです。
その時のリーダーはたしか龍翔さんの親御さんだったとか」
「へぇ~。まどかの親じゃないの?」
「ええ。違うんですよ。微妙に親の世代違うみたいだし」
「なるほどなるほど」
納得した顔のみゆ。
護はまたいまいちピンときてないようだった。
「護…理解出来てる?」
「なんとなく…」
とはいうものの、顔は強張っている。
(だめだこりゃ…)
「でもあれですね。私達が今度3年生になって、そして卒業していくと今のふかしぎ部は引き継ぎ現れるんでしょうか」
「あー、それは多分大丈夫」
琉嬉が手をひらひらさせながら言う。
「この前言ったと思うけど、僕んとこの妹と従兄妹が入学希望らしいから。
僕達がいなくなっても3年間は持つと思うよ。
もしかしたらこの前の引き篭もってたヤツも入るみたいだし」
「それは楽しみですねぇ」
ズズっとココアを飲み一息ついてから今度は琉嬉からまどかの質問をする。
「ねえ、今でこそふかしぎ部みたいに集まって入るけど、前身のグループってまどか達のすぐ上にいたの?」
「…私達が入学した頃はほぼなかったとは思いますけど」
「ふーん…。今まさに昔みたいな黄金時代みたいな感じなのかな?」
「多分そうでしょうねぇ。古い資料を今度探してみましょうか」
「それ楽しそ~」
こういう話が大好きなみゆ。
やる気満々な表情を見せる。
「…みゆちゃん生徒会入りなよ」
「んー、考えときます」
御琴の発言の前向きになるみゆ。
「鞍光高校のルーツか…。まったくふかしぎな学校だよな。がしゃどくろ封印されてたり。鞍光はふかしぎな地域だね。
この日本…いや、世界にこんな場所あるのかな」
「私の調べではこんなに頻繁に怪奇現象が強い場所なんてないようですよ」
「…そんな事まで分かるの?」
「ええ。だって私霊術会副会議長の娘ですから」
「え」
まどかの家系は霊術会名家。
その中でも幹部クラス。
副会長だという。
つまりは、桜月梓葉の次に偉いという話。
「はー、さすがは名家」
琉嬉が納得の表情をする。
「ってことは、桜月とは関わり合い強いのかー」
「まぁそういう事になりますかね。私は数回しかお会いした事ありませんけど」
「ふむー」
座る姿勢を変えて琉嬉は胡坐をかく座り方に変える。
そしてそのまま出されたココアを飲む。
「って、コトは、まどかの親が霊術会のお偉いさんなの?」
ここで護が初めて口を開いた。
「それなりに偉いんじゃないでしょうか?あまり家に帰って来れないみたいだし」
「へぇ…。どおりでまどかの情報網強い訳だな」
「…霊術会に関して、耿助さんに聞くよりまどかの方が情報力強いのかもな…」
「いえいえ、私に期待されても困りますよ。大体本当の事なんて直接娘の私にすら話すと思わないですし」
(腹の底が見えないお前だからそれも本当の事か分からないんだけどな…)
琉嬉はまどかの言う事すら怪しく思えてくる。
「霊術会か…。私も他人事じゃあないよね」
思いつめたように護は言う。
「まもたん先輩?どゆこと?」
「あ、いや。なんでもないっさ~。あははー」
「変なの~」
怪しい護を変な目で見る。
(自分から言っておいてすぐ話題を終わらせるんだよな。本当にバカなのかな…)
琉嬉は護を本物のお馬鹿さんと解釈する。
「いや、でも逆に好都合かもしれない。僕達に霊術会の繋がりが強くなったって事は」
「そう?」
「情報力が高い。そして、今後のために力を借りれるかもしれない。ま、期待薄だけどさ」
あっけらかんと言う。
琉嬉は琉嬉なりの考えがあっての事があるのだが、霊術会には入ってない彼方家にとっては少しよそよそしい所があるせいか、
あまり関わりたくないのが本音である。
でもそうも言ってられない…とも考える。
「私の力が及ぶかどうか分かりませんが…何かあれば霊術会の…私の父に話は通す事できますから」
「…桜月とも繋がる事出来るよね」
「かもしれませんね」
桜月。
琉嬉が以前一度会っている。
どうも物柔らかい物腰の青年。
奥底ではどこか計り知れない部分があるというのはなんとなく感じている。
「霊術会との繋がり、それは頼もしいね~。やっぱりこういうコネは大切だよね」
「みゆ、お前が言うと説得力高いな」
意外な話になり、まどかの正体がなんとなく分かった面々。
これで納得がいく流れとなった。
居間にある時計は19時を回っていた。
「あー、こんな時間か~。おなか減ってきたしどうする?みんな」
「そだね。そろそろお暇しようか?」
「あら、ご飯くらい食べていきませんか?」
思いがけないまどかの言葉。
それに反応する護。
「マジ?!」
決して裕福ともいえない護の暮らしにはとてもラッキーな言葉なのだ。
「と言っても、おかずなどはほとんど作ってませんから。みなさんお手伝いしてくれるのなら、ですよ?」
「そうきたか~。あちゃー」
舌出してがっくりする護。
「まーまー。こういうのも楽しいよ」
早速少し遅い時間だが、晩飯作りになる。
「おー、みこっちゃん包丁さばき上手いね~」
「そういうみゆちゃんこそ、お味噌汁作れるんだね」
「ふふん~。みゆちゃんは何も出来ないお嬢様だと思われたくないのだ~。
こう見えてもお料理はよくうちのメイドさんと一緒に頑張って作ってるよ」
「洋風の家だったけどめちゃめちゃ庶民的な和食も作るんだね」
「そだよ~。だって日本人ですから~」
などと、仲の良い二人。
「なんでい。一年生コンビはイチャイチャして」
なぜか嫉妬気味の護。
ブツクサ言いながらも手はちゃんと動かしている。
一人暮らしのせいか、料理の手さばきは素晴らしい。
「イチャイチャしてるって言っても、女同士に見えるけどな」
「うふふ、そうですね」
と、他のメンバーも料理をしている…と思いきや琉嬉は特に何もしないで見てるだけだった。
「琉嬉さんは料理しないんですか?」
「…まったくしないね~。うちの母さん専業主婦やってるし、悠飛もたまにするし。來魅もなんか手伝ったりしてるし僕の出る幕なし。以上」
「ふふふ。女の子は料理出来るとモテますよ」
「……逆なじゃないのそれ?」
あれやこれや言ってる女子達+御琴。
その様子を遠くから見ているまどかの弟の緑。
「姉ちゃんがニコニコでっかい姉ちゃん以外の友人連れてくるなんてねぇ…。珍しい事もあるもんだ」
と、ボソっと言った事を聞き逃さなかった琉嬉。
思い切ってまどかに聞いてみる。
「なあまどか」
「はい?なんでしょう?」
「…今さ、後ろにいる弟クンがでっかい姉ちゃんって言ってたけど、叉羅沙とはいつ知り合ったの?」
「叉羅沙さんですか。中学校の頃ですねぇ。たしか中一くらいだったかな?」
人差し指を口元にあて、思い出す。
「…その時から叉羅沙って大きかった?」
背が高い叉羅沙。
そこがどうしても気になる。
「大きかったですよ~。170以上あったんじゃないでしょうか?ほら、中学一年生くらいの時ってまだみんな小さいでしょう?
私だって145くらいだったんですから」
「うんそうだね。小さいね、うん。でも今の僕より既にそれでも大きいよね」
「あ、あらら…これは失礼しました」
現時点での琉嬉の身長、いまだに138cm也。
「それはおいといて、どういう経緯で知り合ったの?」
「うーん。ほぼ偶然でしょうかね?たまたま同じクラスになって。人一倍、いえ、何倍も他の人より、霊圧力を感じたんですよ」
「…同じクラスにいればすぐ感づくもんか」
「そうですね。違うクラスだったらすぐには気づかなかったかもしれませんね」
琉嬉もクラスメイトを見てなんとく霊感が強そうな者とか分かる。
「思い切って声をかけたんですよ。そしたらすんなり意気投合しまして。お互い霊が見えたり退治出来たりするというから」
「…思い切ってんなぁー」
しばらく叉羅沙の事について会話がはずむ。
琉嬉も叉羅沙の事をほとんど知らない。
本人から聞けばいいのだろうが、そういうタイミングもなかなかつかめない。
それになんか気恥ずかしい部分がある。
「…でもなんかひっかかるな~。まどか。お前……本当の本当の事……。まだ、隠してるだろ?」
ピタっと手が止まる。
「本心が感じられない気がするんだよねぇ~」
わざとらしく言う。
まどかは表情を変えずに重そうに口を開く。
「…………あらら~。琉嬉さん、鋭いですね」
「まあね。人一倍、疑がり深くて、細かい事は気になる性分で、感受性豊かなんでね」
「ふふ…?よく意味が分かりませんがそうなんでしょう」
(ボケが気づかれなかった…。案外天然か?コイツ…)
食後のデザートのための、りんごの皮を剥きながら話すまどか。
手つきは全然危なくない慣れた手つきだ。
「本当は叉羅沙さんとは霊術会の支部で出会いました。まさに中学一年の頃ですよ。
たまたま、親に連れられ行った時叉羅沙さんが居ました。在籍してたんですよ、霊術会に」
「支部?どこの?」
「京都ですね。彼女は京都支部に居た、エリートなんですよ。当時の若さで既に高い力を持っていたようです」
(……たしかに。一度手合わせした時油断したらヤバかったし)
「今でこそあんなににこやかでしたが、当時はあまり明るい表情はしてなかったように見えますね」
「へぇ…」
いつもにこやかにしてる叉羅沙。
その叉羅沙が今とは違う雰囲気だったとはとても思えにくい。
「しばらく滞在してた時に、叉羅沙さんが重傷負う様な大怪我したんです。その時の霊術会の扱いに嫌になったのか、
あっさり辞めたんですよ。あっさり手放す霊術会も霊術会ですが」
「あー、結構なかなかどうしてのドライさがあるって耿助さん言ってた。力なき者、心なき者はすぐ去れっていう精神なのかね。
無理に引き止めてさらなる堕落させるのもアレだし。そういう考えなのか知らんけど。
しかし…まあ。12、3歳の子供なら嫌になるだろうしね」
叉羅沙の過去を知り、少し思いつめる様に俯く。
「その時に、うちの父親の手引きでここに来る事になったんです。
ある意味の自由を手に入れた叉羅沙さんはみるみるうちに明るい顔するようになってみるみるうちに背も高く伸びて…」
「しれっとボケかますなよ」
「ああ、これは失礼しました。うふふ」
(抜け目ねえなコイツ……)
「なんにせよ、叉羅沙の今があるのはまどかのおかげでもあるんだな」
「私自身は特に大きな事してないですけどね」
「いや、同じくらいの年齢の人が一緒に居るって事は重要だと思うよ」
「そうですかぁ?」
ちょっと照れたように言うまどか。
目線を琉嬉から外した時の仕草がなんか可愛らしい。
(なるほどね。叉羅沙がいつもまどかと一緒にいる理由がなんとなく分かる気がするよ。一緒に生徒会までやってるのも)
「ねえねえ。何話してたんですかぁ?こっちそろそろ終わりまっせ~」
ひょこんっと2人の間に顔を覗き込ませるみゆ。
「おわっ」
「あ、すみません。それでは食卓の用意しましょう」
「おっけ~」
琉嬉は唯一の仕事、お皿運びを担当した。
「えーっ?!男なのっ?!」
「いや、だから…男子制服でしょ…?」
緑が大きな声を出して驚く。
何に驚いてたというのかは、周知の通り。
御琴が男だって事にだった。
ずっと御琴が女だと思ってたようだ。
「みんな女子かと思ってた…」
「…もうイイです。僕は男らしくは無理です…」
「まあまあ。泣かないの」
慰めるみゆ。
「しっかし…まどか」
「ん?」
「お前らしくもなく、よくベラベラと喋る気になって。質問した僕も僕だけどさ」
「…いえ、いいんですよ。琉嬉さんと話してるとなんだかいろいろさらけ出せる気がして。
ふふふ。不思議ですね。琉嬉さん。いつもぶっきらぼうに無口で静かなのに」
「あ、うん?それ褒めてる?」
「さあ?」
(…叉羅沙みたいにいつも笑顔で変なコト言うんだから…。
そういった点では似てるよな…。まどかと叉羅沙。昔からの付き合いだからか…)
よくよく考えたら琉嬉には小さい頃からの友達がいなかった。
気の合う友人は高校になってから。
あとは従姉妹の双子姉妹くらいが幼少の頃からの付き合い程度だ。
そういう点では少し羨ましいと思っていた。
「ごちそうさまでした~。今度うちでごちそうするよ~」
「それは楽しみです~」
ちゃっかり晩飯をご馳走になり帰宅につく面々。
「ではまた明日」
「じゃね~」
「お前はもっと先輩を敬う言葉遣いしろ」
ぽこんっとみゆの頭をチョップする琉嬉。
「へへ~」
「んじゃ~」
「お気をつけて」
お互いに手を振ってまどかの家から4人は駅へ向かう。
近くの新鞍光駅まで行き、そこからそれぞれの方向へ別れる。
ちょっと遠回りとなるが仕方ない。
琉嬉と護は直接南方向へ行けば帰れる。
みゆと御琴は一旦中央駅へ行き、そこから乗り換えしなければならない。
「はぁ~。結局今日も遅くなってしまった…」
琉嬉は携帯の時間を確認する。
時刻は夜の9時過ぎ。
(…何やってんだろ僕)
年中帰りの時間が遅い。
親がどうのこうのというより、ゲームをやる時間が削られてるのがちょっと気にかけてるだけだった。
「ただいま」
「お帰り。今日も遅いね」
出迎えたのは悠飛だった。
「いろいろ忙しいのさ」
「……嘘だ~」
「なんか疲れた」
「ご飯は?」
「まどかの家で食べてきた」
「あ、そう……。え?」
そう言いながら颯爽と自分の部屋へ向かって行った。
「…まどかって…姉ちゃんの学校の生徒会長さん?そんなに仲良かったけ?」
首を傾げながら疑問に思う。
「どうした?」
トイレから出てきた來魅。
「あ、いや。姉ちゃんが帰ってきただけ」
「ふむ。そか」
來魅はそのままトテトテと、琉嬉の部屋に向かう。
「……」
「琉嬉~」
「んなっ!なんだっいきなり」
部屋の戸を開けたら琉嬉が着替え中だった。
「なーに焦ってる。女同士ビビる事もなかろうて」
「そういう問題じゃないだろ。着替えてる最中にドアいきなり開けられたら誰でもビビるわ!」
「ふふふ。琉嬉め。可愛いやつめ」
なぜか抱きつく。
そのままベッドにボフンっと2人して倒れこむ。
「來魅!コラ!何やってるんだ」
「たまには一緒に寝ようぞっ」
「その前に服着させろ!」
「んふふー。相変わらず抱き心地がないやつだな」
「んなっ!」
「悠飛や嶺珠はぷにぷにして柔らかいぞ~。胸も大きいし」
ベシッといい音が響いた。
來魅の頭にお得意のチョップが炸裂していた。
「それは僕がペチャだって言うのか?ん?同じくらいの背でも僕の方がお前よりは胸はあるぞっ!」
「ほほぅ。じゃあ改めて触らせろ」
「なんでだっ!」
ドタンドタンと音が聞こえてくる。
「まーたやてるよあの2人。しゃあない」
バカみたいなやり取りをいつも収める役が悠飛の役目。
毎回面倒ながらも恒例行事だった。
翌日。
少し雪が降る中学校へ到着する。
どんどん降雪量が増えていく。
今年は大雪です、とニュースでもやってたくらいだ。
「今日も雪ですね」
「おっ。まどか」
靴箱でたまたま琉嬉はまどかと会う。
「昨日はすまないね。バカ金持ちとバカ巨乳のせいで」
「いえ。いいんですよ。楽しかったですし」
「そうか。それならいいんだ」
「ふふふ」
朝から爽やかな笑顔。
琉嬉はまだ眠気が取れないのにまどかはいっつも爽やかほわほわしている。
「…ま、これからもよろしく頼むよ。会長さん」
「こちらこそ」
琉嬉はちょっと背伸びしながらぽんっとまどかの肩に手を置く。
「半妖…の件。知ってるよな?」
「ええ。まあ」
朝から少し物騒な事を突拍子もなく切り出す琉嬉。
まどかも笑顔のまま頷く。
「いずれぶつかる時が来るだろうから。まどかの力。もしくは霊術会。なんらかの接触出てくるだろうから、さ」
「…分かってます」
半妖の件を忘れていた訳ではない。
あれから特に接触もなければ大きな動きも見せていない。
だからこそ、余計に不気味。
「こっちは人間もいれば半妖みたいなのもいるし、最強の純正妖怪もいる混合チームだしさ」
「ふふふ。そうですね」
そのまま二人は二年生の教室へ向かう。
まどかが教室入ると叉羅沙が既に来ていた。
「おはよーさん」
叉羅沙から朝の挨拶。
「あら、おはようございます」
「ん?妙に機嫌ええな。なんかあったん?」
いつも笑顔。
だがその微妙な違いに気づく叉羅沙。
「昨日琉嬉さん達が家に来て晩御飯を一緒に…」
「へぇ…。そらまた珍しい」
「ふふ。今度は叉羅沙さんもご一緒に」
「ふーむ。琉嬉ちゃん「達」って事は…さぞや賑やかやったんやろな~」
「ええ、それはもう」
和気藹々する二人。
タダでさえほわほわした朝がこの二人によってさらにほわほわする。
教室がすっかりほわほわ空気になっていくのだった。
そして時間が流れ、あっとう間に昼休み。
そして当たり前のようにふかしぎ部のメンバーは部室に集まる。
「やほ~」
暑苦しく入ってくるのはみゆ。
「おろ、かいちょさんいないですね~」
みゆが見回しても龍翔と琉嬉、叉羅沙の姿しかない。
奥の部屋には護と御琴の姿がある。
「いやはや昨日は楽しかったよね~」
みゆも機嫌がいつもより数倍良い。
よほど楽しかったのだろう。
「ふくかいちょさんも、来れば良かったのに~」
「なんで俺が」
「え?だって仲良さそうだし?」
「…勘違いされちゃ困るがそういう仲じゃないからな?」
ゴチャゴチャうるさい中琉嬉が呟くように言う。
「ま、まどかの正体というか、何者かって事が大体分かったからいいんでないの。
只者ではないというのは知ってたしさ。家は大きかったけど。結構金持ちなお嬢さんなんだな」
「そうそう、家、おっきかったよ~」
「ほーう。うちも負けてねえぜ」
なぜかここで龍翔が負けない発言。
「ふくかいちょも金持ちなんですか??」
「いや、まあ、お前んとこには負けるだろうけど、うちも代々伝わる家系だし、使用人もいるぜ」
「ほへ~。凄いですねぇ」
「…お前、自分の家、金持ちって自覚なさそうだな…。まあそこが庶民的で嫌われない理由なのかもしれんけど」
「いやいや、そんな事ありませんってっ」
なぜか照れるみゆ。
必死に否定する。
「僕としても、まどかと少しは距離近づけたかなって思うよ」
「そですね~」
「などと言ってますよ。護さん」
「……私が最初にまどかちゃんの正体探ろうとしてたのが、いつのまにかみゆ主導になってたんだけど…
なんでだ~~~!!」
なぜかみゆに突っかかる護だった。
「なになに~~?!」
訳が解からないみゆ。
そしてガララっと戸が開きまどかが入ってくる。
「あら、楽しそうですね」
「そう見えるか?!」
「二人して何やってるんですか?楽しそうですねっ」
なぜかまどかの後ろに居た寧音も混ざる。
「んも~、なんで寧音までぇ~」
「ふふふ、本当に愉快ですね」
楽しそうに微笑むまどかだった。
こうしてこの日もいつものように過ぎていくのだった。
ただ、宮森まどかという人物がなんだか理解できた気がする。
琉嬉はそう思いつつ、少しだけ笑ってた。




