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ふかしぎ真霊奇譚  作者: 猫音おる
第八章   ~冬季心霊編~
46/92

#46 クリスマス・ホラー 前編

 もうじき、クリスマスという一大イベントがやってくる。

街中は綺麗なイルミネーション。

売り出してる物などもクリスマス一色。

世間はこういったお祭り騒ぎだが、そんな事関係ないだろうというこの田舎町。

少し郊外に出れば山だらけの風景。

そして敷き詰められた白い雪。

そんな退屈な風景が、今や綺麗に真っ白な銀世界な一面が広がっている。

凛夢はちょっと前まで住んでたマンションを出て、遠い親戚の家で暮らしている。

(テストも終わったし…暇だな)

 なーんとなく、フラっと家を出て行く。

「あらぁ、何処か行くの?」

 親戚の叔母が気にかけたのか声をかける。

「ちょっと……暇つぶしに…」

「あら、そう。気をつけてね。田舎といえども、いろいろ噂聞くから…」

「噂?」

「妖怪がどうのこうのって…。凛夢ちゃんなら大丈夫かもしれないけど」

「あ、ああ…妖怪ね…。大丈夫ですよ」

 やはり、五大家の親戚だけあって凛夢の家の事は知っている。

とはいえ、直接関わりある訳ではないので本当かどうかも分からないらしいのだが。

凛夢の母方は五大家ではなく、現在住まわせてもらっている叔母は母親の妹に当たる、近しい親戚だ。

裏の世界の話を少し知っているようで、理解もある。

だが叔母本人はそういう力を持ち合わせていない。

どっちにしろ、この地域はそういった怪奇事件が多い。

真実味が強いといえば強いのだ。


 どうにも、凛夢の心は晴れない。

学校には不便はないし、今の暮らしも中々良く困った事はない。

でもどこか、息苦しさを感じられる。

言葉にはできない、何か………。




 所変わり、街中は本当にクリスマス一色だ。

イルミネーションが輝いている駅前通り。

一番人が賑やかに集まる駅前の商店街はクリスマス商戦が白熱している。

日付は12月の21日。

もうクリスマスの日が近くまでやってきている。

それに、クリスマスが過ぎればすぐ冬休み。

琉嬉達は先週の勉強会のかいあってか、赤点で終わる者はいなかった。

そんなホッと安心して、落ち着いた日々。

賑やかムードが漂う街中に、琉嬉はそのクリスマス商戦に乗っかって発売されるゲームが気になり、お得意先のゲームショップに来ていた。

そんな店中をチョロチョロ動き回る子供がいた。

派手なオレンジ色の髪。

そう、來魅である。

一緒に着いてきたようだ。

そこでもう一人、一緒にいる人物。

少し白く明るい髪の長めのボブカット。

寧音だ。

こういうゲームなどにも造詣が深い。

趣味が合うという事で珍しく一緒に行動している。

來魅が適当にゲームソフトを手に取る。

「ほぅ~。これはこれはいろいろ面白そうなのがあるのぅ。ほれ、琉嬉。これなんかどうだ?」

「……全部買えるわけないだろ。それは後回し。今回の目玉は、このRPGだよ。大体一辺に買っても積みゲーになるだけだし」

「積みゲー…?それより、そのげーむは多人数で出来るのか?」

「…出来ないけどね」

「そうですね。出来ませんね」

「え?」



 ゲームショップを出て、ショッピングモールを練り歩く。

多少、性格が破綻してても琉嬉も女の子。

普通に可愛い洋服を欲しくなる時もある。

「あ、これかわいい」

 いろいろ手に取り、鏡の前で自分の姿に重ねて大体の感触を試している。

普段の琉嬉からしたら珍しい姿。

「琉嬉さんって黒猫耳似合いそうですよね」

「…よく言われるけどしなからな」

「勿体ない~」

 來魅は何十分もこうしてる琉嬉と寧音に飽きたのか近くのベンチで座ってスマホでインターネットをしている。

「琉嬉も黒い服が好きだな~…」

 あまり目立つ事が好きではない琉嬉は、目立たない色の代表でもある、黒を好む。

「私の服…も黒いの多いな。琉嬉の服だからか。ふむ」

 よく考えたら來魅の服は大体が琉嬉が着ていたものだった。

何かを思ったのか、來魅も琉嬉が見て回っている場所へ向かう。

「のう、琉嬉。私専用の服も買うのだ」

「……は?なんで?」

「なんでって、私の服の9割はお前のものだ」

「じゃあ、あのゴスロリっぽい服だけで着てればいいじゃん。それかあの着物」

「阿呆。何を言っとるか。いくら大きさが合うからってな…」

「ハイハイ。わかったよ。じゃあ何着るか決めてきてよ」

 そう言われると來魅は笑顔になり、小走りで服を見て回る。

まるでクリスマスプレゼント。

琉嬉は來魅に対してのプレゼント気分になっていた。


 買い物も済み、そろそろ駅へ向かおうとしていたが、近くのゲームセンターが気になり少し寄ってみる。

「どうした?琉嬉?」

「いや、どこかのお知り合いさんでも居そうな気がしてさ」

「ほうー?」

「お知り合い?」

 言われるがまま、來魅は琉嬉の後に続き店内に入る。

そして、一直線に気になる箇所…ビデオゲームコーナーへ向かう。

案の定いた人物。

そう、凛夢である。

「はぁー……あんたも好きだねぇ。格ゲー」

「…なっ?なんであんた達が…?」

 いつだかと同じように大袈裟とも言えるリアクションする凛夢。

凛夢の目の前に突然現れた人物に驚く。

「そんなに驚く事じゃないでしょ」

「…う、うるせー!」


「さて、どうしようかな」

 フラフラ街中をあるく4人。

結局凛夢も共に行動する事に。

「しかし寒いね」

「冬だしね」

「天気悪くなってきたね」

「冬だしね」

「暇だな」

「冬だしね」

「冬だな」

「冬だしね」

「てめぇ」

 適当に受け答えしてた凛夢に琉嬉がキレる。

「ちょちょちょ、お二人!」

 慌てて止めに入る寧音。

「なんだなんだ。喧嘩なら他所でするといい」

 我関せず。

そんな余裕たっぷりな來魅。

二人の事を気にする事もなく、先にテクテク歩いていく。

「あ、來魅!先に行くな!」

 凛夢を放っておいて來魅を追いかける琉嬉。

「……まったく…。調子狂う」

「本当ですね」

「…貴方も大概よね」


 仲が良いのか悪いのか。

4人はいろいろ揉めながらも何かと楽しんだ。

あれから、再び買い物に行ったり、喫茶店へ行ったり。

外の空も暗くなってきたので、そろそろ解散という事になった。

「そのまま帰るの?」

「帰るわよ」

凛夢はぶっきらぼうに答えながら自分の家の方向へ歩いていく。

こっからそう遠くはないようだ。

「女の子一人での夜道は危険だぞー」

「うるせー。お前らこそ職質でもくらってろ」

 唐突な喋り方に寧音が驚く。

「凛夢さんって…結構口悪いんですね」

「べ、別に…そんな事ないわよっ」

「…なんか、他人と思えない気が…」

 寧音も気分が高まって興奮すると言葉が悪くなる。

「ま、相変わらず口の悪さは天下一品だな」

 お互い憎まれ口叩きながら別れる。

「さーて、帰ろうか」

「おう」

 琉嬉と來魅の二人はそのまま凛夢とは別の方向へ歩いていく。




「………なんなんだ今日…」

 凛夢は首を傾げながらもトボトボ自宅へと戻っていた。

何気なく考え事しながらも、すっかり暗くなった農道を歩いていく。

街中からちょっと外れただけで田舎な風景が広がる。

今はそんな場所にいるのだが、夜道は時々ある街頭や家の明かりくらい。

それ程暗いのだ。

少し歩いて行くといつもは気にしてもない、少し林道な場所がある。

そこを今通りかかる。

通りかかったのはいいが、何かいつもと違う雰囲気を感じる。


 凛夢もかなり高い霊力を持つ者。

その違う雰囲気は決して気のせいじゃない事が分かっていた。

「……なんだ?」

 まだこの地域にやってきてから時が経っていない。

まだ一ヶ月程度。

一ヶ月も経たないと分からない、地域の習慣や、場所がある。

「……異様な霊気感じるな……」

 どうしてだろうか?

霊感ある者は、どうして、こう呼ばれるように霊の誘いに乗ってしまうのだろうか。

そんな事考えながらも霊気の発信源へと足が自然と向かっていた。


 辛うじてあるだろうという険しい獣道。

雪が積もっていてなお険しくなっている。

そんな場所へおかしいと考えながらも凛夢は向かっていた。

なんとか、携帯電話の明かりだけを頼りに少し広い場所へ出た。

目の前には、朽ち果てた建物があった。


 廃墟…であろう。

年季が結構ありそうで、壁やら何やらひびも入っていて今にでも崩れるじゃないだろうかという風貌だ。

普通の一軒家…ではなさそうだ。

かなり大きめな、屋敷とでも言わないが洋風な作りの建物。

「こんな場所があったのね………」

 思わず口にもらしてしまう程、何か圧倒されるような雰囲気にのまれそうになる。

この廃墟から微かながらも霊気が感じられる。

そう、まさしく幽霊屋敷―――。

その例えはまさしく目の前にあるこの建物にぴったりだ。

自分が今住んでる場所からそう遠くない所に、こんな場所があるとは思っていなかった。

(……なんで私はここに…。何も関係ないだろ…)

 自分に言い聞かせるようにしてるが、思ってる事とは裏腹に足が前に進む。

これは危険だ――。

直感で解かった。

かなり、強力な霊がいる、と。

「………くっ」

 これ以上関わると危険。

それは普通の術者よりレベルが高い凛夢だから、逆に感じ取れる。

「これ程強力な霊気を持つヤツが…この町にいた訳ね……」

 変に関心してしまう。

危険と知りつつも、凛夢は廃墟の周りを足場の悪いながらも見て回る。

入れそうな場所は…見当たらない。

当然のように入れるようになっていない。全て入り口窓関連は板張りされている。

「当たり前か…」

 無理やり壊して入る事なんぞ、凛夢にとっては造作もないこと。

だが、そこまでして危険を顧みず進入する事もない。

ましてや琉嬉のように祓う義理もない。

まったくもって自分にとっては利益もない事だ。

(……気になるには気になるが…私には関係ないしな…)

 ここでようやく、我に戻ったように落ち着きを取り戻す。

(…………なんだってんだコンチクショウ)


 気になって気になって仕方ない。

仕方なかったので、無理やり窓の板を取り外し中に入ってしまった。

(やっちまった……。これじゃみゆのヤツと同じような事してるじゃんか…)

 中は外よりも光がさす事もないので、外より真っ暗だ。

携帯電話だけの明かりじゃ厳しいものがある。

だが、凛夢はなんとか手探りで進み始める。

(…なんだこれ…物がかなり残ってる…。埃まみれだけど…)

 そこである違和感に気づく。

(カレンダー……が12月で止まってる…。今から…25年前…か)

 25年前のカレンダー。

しかも、日付は12月。

細かい部分みると24日…。

「嘘でしょ…?もしかして…この日が近づくにつれて霊力が上がってるっていうの…?」

 今まで近くを通ってたのに、霊気を感じなかった理由がなんとなく分かってきた。

このクリスマスイブの日が関係してるのでは…?と…。

その肝心の霊気は二階から感じられる。

(行くべきか…行かないべきか…)

 迷いながらも、二階へ続く階段へ向かっていた。

「ええい!面倒くせぇ!」

 思い切って走り出す。

「うりゃりゃりゃ!!」

 ボフッと音がする。

右手には真っ赤な大鎌がいつのまにか現れていた。


 霊気の発信源の部屋に辿り着く。

禍々しいまでの、強力な霊気だ。

部屋の前には木で出来た札のようなものに名前が書いてある。

かすれてよく見えないが、マユ…と、書いてるように見える。

「ッッ……ふざけんなよ!!」

 ガタンッとおもいっきりドアを開ける。

開けた瞬間、霊波動がほとばしった。

「ひゃっ?!」

 なんとか、目を開けて見ると案の定とでもいうのか、なんというのか………、

小さな人影を中心に強烈な霊気を発する黒い影が蠢いていたのが見えた。

「これは……」

 有無言わさず攻撃的な霊気弾のような塊が凛夢を襲う。

「いきなりか!」

 それもその筈。

攻撃的な姿勢で乗り込んだものだから敵として既に認識されていたようだ。

「このぉっ!!」

 なんとか攻撃を弾き返す。

だが、尚も攻撃が続く。

これまでない尋常じゃない数の攻撃が凛夢を狙う。

「チィッ!これは防ぎきれないか…なら」

 鎌を横にして何やら霊気をこめる。

「因果ってやつだ!!」

 攻撃を受け止め、そのまま反射する。

反射した霊気弾は悪霊らしき影にぶつかっていく。

そうしたのも束の間、今度は違う攻撃パターンに相手は移行する。

触手なような物が伸びて凛夢に向かう。

それもいくつもの数。

「うわっ!」

 真正面から来ると思いきや地面や壁から襲い掛かる。

予想外の数の多さに避けきれなかった。

「ぐぅっ!」

 少しわき腹辺りをかすめる。

「んなろ!!」

 触手を大鎌でたたっ斬っていく。

(くっそ……被弾したってヤツか…。妖怪より性質が悪い……)

 転がりながら部屋を出る。

(ヤッバ……血が出てる…ったく……)

 自分でも分からないが、なぜか冷静な判断をする。

凛夢は鎌を一旦投げ捨てて両手を床に置き、霊気を込める。

「開放……!」

 そう呟くと凛夢の体中心に霊気の柱が立ち上がる。

そして、その霊気は部屋の入り口向かって伸びてゆく。

刹那、部屋に黄色い光が煌く。

凛夢はその瞬間にその場から離れる。



「この家……ヤバイな…。私一人でどうにかなる代物かどうか…」

 珍しく、凛夢が弱気になる。

大抵の事は自分ひとりで解決できるだろう。

一応五大家と呼ばれる大きな力を持つ霊力の一族の家系だ。

そこそこの大物でも一人で倒せる。

それだけの自信はあった。

だが、今回はそうでもなさそうだ。

「…なんだって、こんな凶悪な家が今まで残ってたんだ…?この地域はおかしな場所多すぎだろう…」

 そう、こんなに凛夢レベルの術者がいるのにも関わらず今の今まで放置されていた廃墟。

それほど遠くもないのだが、あまり気づかれる事もなくひっそりと存在していた。

それを凛夢が呼び起こした…のだろうか。

いや、凛夢が気づいただけだ。

(………これは…とんだランクS級の建物ね…)


 ポケットの中が軽い事に気づく。

(…あ…携帯…家の中に落としたかも…)

どうやら携帯電話を落としたようだ。

今はそんな事より、先程傷ついた脇腹がジワジワ痛む。

一応、応急処置レベルの治癒術を行う…が、苦手なのか、少し傷を塞ぐ程度しかできない。

治癒術が得意な琉嬉や御琴が羨ましくも思う。

さっきの術も封印式の術でもあるが、おそらくずっと持つ事はないだろう。

得意不得意がある中でこういう補助的な術は苦手な凛夢。

(…もう少し真面目に習っとくべきだったかな…)

 フラつく足で自宅に戻る。

(……みゆ達に協力してもらうか…。いや、それでも…)

 家に着いたとたん急激な疲れからか、部屋に戻るとそのまま意識を失うかのように眠りについてしまった。



 学校の校庭もすっかり雪に埋もれた。

真っ白の世界。

リン、と鈴の音を鳴らして琉嬉が教室へ入って来る。

「あれ?凛夢のヤツは?」

 もうまもなく、ホームルームが始まる。

だが、琉嬉と同じクラスの凛夢の姿はない。

いつもなら琉嬉より早く教室に居るのに見かけない。

「水無月さんは休みか遅刻かもねー」

「みなっち」

「確定じゃないけど、琉嬉ちゃんの方が親しいから直接連絡してみたら?」

 なぜかニヤニヤしながら言うみなっち。

「む…それもそうだけどさ…」

 なぜか気乗りしない。

とりあえず、メールを入れてみる。

返信はその場ではすぐ返ってこない。

(…珍しいな。アイツがこの時間でも来ないなんて。別に今日雪も降ってないし、交通路線が遅れてるっていう話もないし…)

 ついつい気にしてしまう。

それについ先日まで一緒に街中で遊んでた訳でもあるし。

ふと、窓の外をみる琉嬉。

見事までな晴れ模様だ。

太陽の明かりが雪に反射して眩しい。

不安な想いなんぞ、吹き飛ばしてしまいそうな天候の良さだった。

(風邪でもひいたのかな…だったら僕と來魅もやばいかな?)



 授業が始まって丁度4時限目。

まもなく昼休みとなろうとする時間帯。

静寂な授業風景の中に突如、その静寂が崩れる。

ガララッと、勢い良く後ろの戸が開く。

少しざわつき、クラスほぼ全員が音の方へ視線を向けた。

入ってきた人物は遅れてやって来た凛夢だった。

「あ、あの……大遅刻して…ごめんなさい…かなりの寝坊しました…」

 少し潤んだ表情で教科担当の教師に向かって言う。

「う、うむ。分かったから、席につきなさい」

男なら一撃で堕ちそうな、見事なブリっ子ぶりだった。

男子どころか、女子からも可愛いと小さな声で聞こえてくる。

ただ、一人琉嬉だけは鋭いジト目で、

(…あのやろ~…)

 と、心の中で怒りの声を発していた。



 すかさず昼休み。

琉嬉は凛夢の所へ一直線に向かう。

それに気づいた周囲は少し離れて警戒する。

「ちょいーっと、いいかな?凛夢さん」

「……別に構わないけど?琉嬉さん」

 みんなが息を呑む中、二人は最初に教室を出て行く。


「どうしたんだ?珍しく遅刻なんかして…?」

「……別に…。ちょっと体調悪かっただけだし」

「……?体調悪いなら休めばいいのに。昨日はしゃぎ過ぎて風邪でもひいた?」

「悪いっていうか……怪我したっていうか」

「怪我?何かと戦ったの?」

「……え、いや、まあ…」

 どうも、琉嬉相手だとなぜか押され気味になってしまう。

こんな小柄で可愛らしいのに、凄みがとてつもない。

「あー、そういや、携帯にメールしたのに起きたなら返信くらいしろよ~。心配したんだから。一応」

「…あ!携帯!!」

「んん?」

「落としたんだった…」


 昨日のあの廃墟にてちょっとしたトラブルで落としたと思われる。

帰ってきてすぐ寝てしまい、起きたらすでに午前の授業が始まってる時間。

琉嬉からのメールも気づく訳もなく。

「あー、面倒くせぇ。お前に話すか。しゃーねえ」

「は?」

 突然口調が本性モードになる。

そのまま、凛夢は昨日あった事を琉嬉に全て話した。



「なーるほどねぇ…。だから返事も出来なかったワケだ。しっかし…」

「しかし…?」

「いや、凛夢レベルの術者でも対応しきれない悪霊か…。それは困ったね」

「今朝通ってきたけど、昨日より霊気が強く感じられた。あのままずっと何年も何十年も放置されてたのが信じられないわ」

 琉嬉はその話を聞くと、腕を組み少し考え込む。

「あれだろ?お前も本気出してなかったんだろ?」

「…それはあるかもしれないけど、決して油断してた訳じゃないし、あれは「本物」の強さ…ね」

「ふむー」

 再び腕を組み考え込んでしまう。

今度は大きく首を傾げる。

「分かった。クリスマスまでにはどうにか対応しようか。今日は22日だから…。明日か明後日には決行しないと本当に手に負えないかもね」

「みゆら部員達に伝える?」

 少し、嫌そうにする凛夢。

みゆに伝えるといろんな面倒な事まで起きそうだからだ。

「ま、一応伝えといて。僕は、その廃墟について沢村刑事に直々に聞いてみるよ。時間かかるなぁー」

「…その刑事さん、本当に役に立つ情報あるのね。何者なの?」

「特係…特殊事件を解決する係で、自称、敏腕霊感刑事、だそうだけどね」

「……術者の一人か」



 凛夢は自分の不甲斐なさに嫌気がさしていた。

昔から、今ひとつ追い込みが出来ない。

外向きではなんでもそつなすこなすような振る舞いを見せているが、肝心な時には力不足が目立つ。

元々家系的にこういった強い力を持っているのだが、今程の力を持ったのはほんの2年程前程度。

琉嬉やみゆらとは違い、今のように戦えるようになったのはつい最近の事なのだ。

術者としての年季が浅い。

言ってしまえば、単に経験不足。

それを補うためにこの短い間で嫌なほど戦いに自ら身を置いていた。

だが、単体でここまで強力なのは…久々だったのかもしれない。

「…少し…眠気が…」

「……あ、おい!」

 立ちくらみのように、少しフラついて壁にもたれつく。

心配した琉嬉が駆け寄る。

「……大丈夫…ちょっと、フラついただけだ」

「…保健室行く?」

「大丈夫だって…!」

「まったく。それならあそこ行くか」


 琉嬉が凛夢を連れて来たのはふかしぎ部の部室…の隣の生徒会室。。

鍵を持っていなかったので生徒会室側から入った。

「だーかーらー、なーんで、ココなんですか~」

 にっこりした目とは逆に明らかに怒り気味の言い方だった。

生徒会室には会長のまどかだけ居た。

大抵部室より誰かが居る確率高いからだ。

凛夢をそこに連れて行き、部屋の隅にある椅子に座らせる。

「フー、しかし、重いなお前」

「…うるさいっ。アンタが小さすぎるのよ」

 凛夢を連れてくるのに少し手こずったらしい。

二人の大きさの差があるものだから、体の小さい琉嬉は支えるのがちょっと辛かったようだ。

「しかし…大丈夫ですか?水無月さん?」

「……大丈夫…」

「顔色は…そんなに悪そうでもないですけど。疲労ですかね?」

「そんなに体調悪いのなら休めばいいのにねぇ。早退でもしたら?」

「うるさいわね幽霊小娘は。アンタはいつからそんなに心配性になったのよ」

「おー。相変わらずの憎まれ口だねぇ。元気あるじゃん」

「うるせー」

「なんですか幽霊小娘って…」

 幽霊小娘の意味が分からないまどか。

「いや、修学旅行の時…」

「言うなっ!」

 こんな状態でも琉嬉とやり合う凛夢。

そんな二人をみて笑みを浮かべるまどか。

「まあまあ、仲良いですね。ある意味」

「良くない!」

 と、二人同時で否定する。


「それより、だ。お前の体から、何か別の霊気が感じられる…」

「…は?」

「怪我した部分みせろ」

「あ、ちょ!バカ!やめろ!」

 半ば、無理やり凛夢の制服を脱がし、下に着てるシャツも強引にめくる。

スレンダーで綺麗な肌が露出する。

「あらあらー。綺麗ですね~」

 と、言いながらもまどかも一緒になって凛夢を押さえつけながらシャツを脱がす。

「お、可愛らしいブラしてるじゃん」

「うわああー!やめろー!!」

「なんだなんだ!どうした!」

 凛夢の悲鳴のような声にびっくりしたのか、近くまで来てた龍翔が驚いて部屋に入る。

だが、その目の前には…

「や、いやぁーーーーー!!!」

 ドガンッと、龍翔の顔面に本が直撃する。

「ぐわっ!?な、なんだ…?」

 裸体を男に見られるのが嫌だったのか凛夢が投げつけた。

「す、すまないっ!!」

 急いで部屋から外に出る。

龍翔の目には、なぜか上半身下着だけの凛夢を襲ってるような構図にしか見えない琉嬉とまどかの姿だった。

「すみませんね~。龍翔さん。ちょっと取り込んでまして…。一応、誰が来ても入らないようにOKが出るまで待ってもらえますか?」

 戸を少しだけ開けながら頭だけを覗かせ、龍翔にそう言い聞かせる。

「…あのなぁ…、誤解を招くような事するなよ…。取り敢えず分かったぜ」


 あわれもない、姿となった凛夢。

それをなめるように見る琉嬉とまどか。

(ちっ、どいつもこいつもデカイ胸しやがって…)

 凛夢の胸をまじまじとみる琉嬉。

だが胸の下あたりに傷跡を発見する。

「な、なんだよ…。お前、そっちの気があるのか!」

「バカ、違うよ。怪我したと見せて」

「あっ」

 ぐいっと凛夢の腕を掴んで上にあげさせる。

昨日怪我した右脇腹。

傷が少し残ってるが、大した事はなさそうである。

傷跡もいずれ消えるだろう。

応急処置したのが良かったのかもしれない。

だが、琉嬉の目にはただの強めにかすめた傷には見えてなかった。

「これ…普通の傷じゃないね。なんていうか、怨念めいたのを感じる…。

体調の悪さはきっと、怪我のせいじゃなくて「霊障」…のせいかもね」

「霊障ですか…」

 まどかも笑顔が消えていて真剣な表情。

「呪い…って、訳じゃないけど、それに近い感じかな。厄介なもんだね。普通の攻撃だけじゃなく生気を奪うような霊障のある攻撃放つなんて」

「………」

 凛夢は無言のまま、おとなしくしている。

自分が踏み入れた事故とはいえ、他人の力を借りる事になってしまった事に情けなく感じる。

「…すまん」

「……何か、最近のお前、ちょっと変だよ。ま、深く聞くつもりもないけどさ」

「…………」

 室内が暗い雰囲気になってしまう。

「まあまあ、お二人さん、元気だしましょう。昼休みも早くしないと終わっちゃいますし。ね?」


 それでも、3人共しばらく無言になるが、その張り詰めた空気をといたのは琉嬉だった。

「まどかの言うとおりだな。ほれ、体こっち向けて。浄霊するから」

「……あ、ああ」

 目を瞑り、琉嬉の左手に強力な霊気が篭るのが分かる。

気づいたら数珠を取っていた。

ただの浄霊じゃない。

どうやら、真霊気を使った強力な浄霊のようだ。

「お、おい、琉嬉…」

「いいからっ。ほら」

 普通では考えられない、まばゆい光が生徒会室をつつむ。


「な、なんだー?!」

 一瞬だけ凄まじい光が生徒会室から放たれる。

当然外にいる龍翔も驚く。

思わず開けようとするが、

「龍翔様っ、また入ったら怒られます」

 遊希に制止される。

「あ、ああ…。何やってんだアイツら…」


「どう?」

「あ、ああ…。楽になった」

「それは良かった」

 今度は、琉嬉がフラつく。

「おっと…」

「あらあら。大丈夫ですか?」

「今度はお前が体調悪くなってどうするんだ」

「アハハ。ま、強力な霊障だから、全力で消滅させたよ。にひひ」

 普段あまり見せない笑顔。

(……時々見せるこの笑顔…ズルイな…琉嬉のヤツ)

 ようやく落ち着きを取り戻す凛夢。

そして外からドンドン叩きながら龍翔が何か言っている。

「おーい、まだか~?」

「やれやれですね。凛夢さんも服着ました?」

「え、ええ…着たわ」

「OKですね。じゃあ、龍翔さん~。入っていいですよ~」



「なるほどねぇ~…」

 凛夢は今度はまどかと龍翔に昨日遭った事を話した。

「今年最後手前にして、大きな厄介事だな」

「今回は凛夢が持ってきた話だけどね」

「うるさい、小娘」

「フフ」

 実際、このまま放置しても問題ないと言えば無いとも思える。

今まで大きな問題に発展していないからだ。

都合良い事に何も無く20年以上も存在し続けてるのだから。

だが、現状はそういう訳にもいかなくなった。

そういった事実を目の前にしたのだから。

「それに…私の携帯、多分あの家に落としたから…取りに行かなきゃ」

「ハイハイ。分かったから。早まった行動取るなよ。どっかのズタボロ剣士さんみたいにね」



「へぷちっ」

「わお、どったの?突然そんなかわいいくしゃみして」

 柚羽とみゆと御琴は3人で昼食をとっていた。

突然柚羽がくしゃみをしたのだ。

「あわわ、ごめんなさい。汚かったですよね。あわわわ」

「おおお、落ち着いて!鳴神さん」

「君も落ち着きなさいな、みこっちゃん」

 二人のほっぺを軽くつっつく。

こっちはこっちで少々騒がしかった。



「動ける?」

 琉嬉がまだ心配そうに凛夢に声をかける。

「なんとか…」

「体力が奪われてたから、今日のところはおとなしくしといた方がいいよ。RPGじゃないけど、一晩くらい寝たら回復するでしょ?」

「ゲームと一緒にしないでよ」

 少しゴタゴタしたが、落ち着きを取り戻した生徒会室。

「んで、どうするんだ?その廃墟とやらに行くのかい?」

「んー。今回は、危険そうだし、精鋭集めて來魅か銀杏にも応援頼もうかな」

「それ程なのか…」

「まあ、あの來魅は役に立つとは思えないけどね。銀杏なら安心できるし」

「あらまあ、來魅ちゃんは役に立たないって事あるんですか」

「アイツ、見た目通りに夜に弱いんだよ。しばらく一緒にいれば分かるよ。どこかお子様なんだ。それに…」

「それに…?」

 もったいぶるように、一息入れながら言う。

「幽霊系統の敵は苦手らしい」


 とにかく、琉嬉が言うには夜が弱いのと霊相手だと分が悪いらしい。

だから、極力避けてるとの事。

とはいえ、対処が出来ない訳でもないのだが一定以上のレベルの悪霊には苦戦するだろうと自分で言っていたという。

事実、がしゃどくろも霊体の妖怪も一人では仕留めることは出来てなかった。

また単に、運が悪いのかいくつか一緒に同行したが戦う事も出来ずに合流する事もなく終わる時もしばしば。

そもそも今は琉嬉の術で力が封じられている。

とにかくとにかくなんか相性が悪いらしい。

現在はそれらを克服するために何やら試行錯誤をしてるらしいのだが…。


「まあ、あれ以上弱点なくされたら手に負いようがなくなるだろっって話だけどね」

「俺は直接戦った事もないけど、それもそうだな」

「とりあえず、ためになるかどうかは分からないけど、沢村刑事から情報何かあれば仕入れとくよ」

 琉嬉はそう言い残し、先に部屋から出て行った。

凛夢も後に続くように出ようとする。

「大丈夫ですか?水無月さん?」

「ええ。大丈夫」

「転校したばっかりでまだいろいろあるでしょうけど…私達「ふかしぎ部」もいますからね。頼ってくださいね」

「……そう…ね」

 ぽつり、小声で凛夢は少し笑顔を見せ出て行った。

「はは、珍しいな。いつもここに居る時はいつもムッとした顔してるのに」

「そうですねえ。多分、あれは本心からの笑顔でしょうね」




 翌日となった、12月23日。

凛夢の姿はない。

浄霊をしたとはいえ、体力が戻りきらなかったのだろうか。

あの後凛夢は無理をして最後まで授業を受けて帰った。

なんやかんやで真面目な部分があるようである。

表向きでも優等生を演じるだけ立派なもんだ。

ふかしぎ部は放課後に部活動を開始していた。

「で、どうすんのー?琉嬉ちゃん」

「凛夢があんだけやられたっていうことは今回の悪霊さんは、かなり危険だってコト。だから少数でまず行く」

「ふむふむ」

「後は待機しつつ、まだ完全な全体図を把握出来てないから、予想外の事を視野に入れて何かあればそこを叩く」

「ほむほむ」

「まず、前衛は僕と凛夢と護とみゆと寧音、銀杏も参戦させる」

「おお」

「來魅を中心に御琴や龍翔君、まどか、叉羅沙は家の外で待機。何か起こったら突撃OK」

「ハハ、なんか凄いな」

 何やら作戦を立てている様子だ。

「ちょ、ちょっと待ってー!あたしやっぱり一番最初の部隊な訳?!」

 護が抗議しだす。

「ゆ、ゆずにゃんでも良くない?って、ゆずにゃんは?」

「下見に行ったよ」

「へ?」

 柚羽は単独で凛夢のお見舞いと同時に廃墟へ下見する事になった。

元々単独でスパイみたいな事が得意だからだという。

早めに学校を出て、凛夢の家の方向へ向かったのだ。

「一人で大丈夫なの?」

「自分から言い出したし。ま、無茶はしそうだけどねー。凛夢みたいなヘマはもうしないと思うけど」

「ほんまかぁ~?」

 心配になる叉羅沙。

今でも単独で旧校舎へ向かっていく柚羽の姿が思い出す。



 凛夢を見舞った後、柚羽は例の廃墟へ来ていた。

場所を聞いたうえで、なんとか着いた。

何か、こういう偵察的な事をやらされる事が多いような気もしている。

凛夢が通った足跡だろうか。

道が少し楽になっていた。

足跡はやはり一種類、凛夢のだろうと思われる足跡のみだった。

それ以外は誰も来てない様子だ。

「うわぁ…靴が雪でグシャグシャだよぉ…」

 気になるのが靴の事だった。

「……たしかに強力な霊気が…蔓延してる…」

 近づくのさえ嫌な霊気。

霊感が少しでもある者は、入るのさえ嫌な空気を作り出している。

「たしかに…大きめの家ではあるな…。お金持ちさんが住んでいたのかな?」

 いろいろな過去があったに違いない、と思わせる。

「これは…さすがに怖い…」

 こういったのは慣れっこのはずの柚羽でさえ、恐怖感を感じさせる。

圧倒的な畏れをかもし出している。

「水無月さん…良くこんな廃墟に一人で入ったなぁ…」

 少し勇気を出して柚羽は廃墟の玄関付近に近づく。

玄関といえども、協力に板張りがされていて進入不可能だ。

しばらくキョロキョロ見回す。

すると…、

「!!」

 柚羽は手に持っていた刀を構える。

そして、普通の人には見えないと思われる「何か」を斬る動作をした。

「………かなりの拒絶をしている…ここまで危険な、強力なのは中々ない…」

 その場から5m以上離れて、刀をしまう。

「たしかに一人じゃ危険だ…。今日はおいとましましょう」

 と、言いつつスマホの機能で家全体と、玄関付近を撮影する。

その後、大人しく柚羽はその場から去る事にした。



 柚羽の見舞いのあとに、20分くらい経ったくらいに家に電話がかかってきた。

「凛夢ちゃーん。クラスメイトの方から電話よー」

「…はーい…」

 力ない返事をしながら、自室のある二階から家の電話ある一階へ降りる。

電話の相手は琉嬉だった。

『おう、死神娘。元気?』

「…なんだ、幽霊小娘か。なんか用なの?」

『例の廃墟の情報分かったよ』

「…マジか」


 琉嬉は淡々と、凛夢に電話ごしに沢村刑事から聞いた情報を話す。

『25年前に、どうやら親戚類のゴタゴタで一家が殺人事件に遭ったらしいよ。

凛夢が今住んでるとこって田舎町だから騒然となったらしいけど、結構昔の話だしね。

ま、よくある話さ。一家殺人事件でどうのこうのって。廃墟にまつわる話なんて珍しい話もでもないけどさ…。

ただ、その廃墟はリアルで遭った事件みたいでさ』

「……それで、続けて」

『事件が起きた日付は、クリスマスイブの日。まさに今頃にピッタリ合っている。

資産家の家だったらしく、金銭問題で事件が起きたとみられる。

犯人は一家の主の従兄弟だかなんだかって言ってたな。そこはまあいいんだけど。

問題は、当時小学生の女子児童も殺されている。酷いもんだね。』

「……その女の子の名前って「マユ」じゃない?」

『…なぜそれを?』

「いや…部屋のドアにそう書いてたから…」

『うん。たしかに、マユっていう名前の女の子。クリスマスを楽しみにしてたのかな。心半ばに殺されたんだろうって。

僕も、浄霊した時に僅かに見えたよ。クリスマスを楽しみにしてるような風景の女の子が…』

「アンタって本当そういうの凄いわね…。霊視ってやつ?」

『そうとも言うね』

 少し琉嬉の話が途絶える。

だが、すぐに話を再開する。

『ま、分かるのはそんくらいかな。実際にあった、事件。

ちなみに、犯人は、捕まった後に、獄中で謎の死を遂げた………らしい』

「え?!なんで…?」

『僕が考えるには、一度犯人は犯行現場に戻ったんじゃないかな。田舎すぎて誰も不審にあまり思わないのを利用して、一度戻るけど…』

「…あの悪霊の仕業…?」

『だと、僕は思う。霊障を受けて、生気がなくなり、そのまま死亡――。

恨みは晴れず、今に至る……ってとこじゃない?』

「…はんっ、人間って、都合いいコトに恐ろしいもんね」

『妖怪とは違う、恐ろしさだね』

「わかった。ありがとうと言っとくわ、琉嬉」

『お、おおぅ。決行は最悪な事に明日になったけど…行けそう?』

「多分」

『…おけー。じゃ、今日はゆっくり休んどいて』

「ええ。また…」

 ガチャッと、電話を切る。

凛夢は、モヤモヤした感が少し晴れた。

「フフ…。あの時見た人影はその少女って事か…。生意気なヤツだな…」

 なぜか気合を入れなおし、やる気が出てくる。

柚羽も見舞いに来てくれるし、わざわざ家の電話にまで琉嬉が連絡をくれる。


 転校するまではここまでしてくれる「仲間」がいなかった。

それが、なぜか嬉しいのだ。

もう少し、心開いてもいいかな?と、自分自身で分かってるかのように思う。


 特に琉嬉に対しては、今までとは違う感情を抱く。

浄霊までしてくれるあの優しさはどっから来るんだろうと。

凶暴なのに、優しい。

変わった性格の少女に、今は感謝するのみだった。



「っていう訳で、來魅、銀杏にも参加頼む」

「ほいほい。私はあまり気乗りせんがな」

「來魅は来なくてもいいんだよ。銀杏の方が今回頼もしそうだし」

「だと。フフ、來魅も役に立たん事があるんじゃな」

「う、うるさい!」

 早速琉嬉は頼もしい応援を味方につける。

「あ、悠飛は今回ダメ」

「言われなくても行こうとしないよ…」

「今回はマジでやばそうだから。これは姉としての命令ってコトで」

「どこが、姉だ。どうみても妹にしか見えんだろう」

「何か言ったか?來魅ちゃーん?」

「お?やるか?」

「やったろうじゃん!」

「いい加減にしてよ…姉ちゃんも來魅も…」

 凛夢の家とは反対にいつもにぎやか彼方家。

緊張感がないのが、逆にいいかもしれない。



 琉嬉が凛夢に送った情報。

それは沢村刑事から直接会って聞き出した情報であった。


「とまあ、全体的な話はこんな感じだな」

「なるほどねぇ…。ひとつ、気になる点が」

「お?なんだい?」

「犯人は…なんで死んだの?どういう処理で終わったの…?」

「あー、それなぁ。25年も昔の事だしなぁ。俺も生まれてまだ幼稚園とかの時代だしな。今みたいな詳しい事は分かんないけど、

衰弱死……じゃないか、って事で終わったらしい」

「…そこが気になる…」

「お、名探偵琉嬉さんの推理が始まるかい?」

「そんなんじゃないよ。推理ならうちの妹の方が得意だけどね」

「はは、そうなんだ」

 しばらく考える2分程度。

琉嬉の見解はこう出た。

「いや、さ。単純な発想なんだけどさ。僕が考えるには、一度その犯人が犯行現場に戻ってるていう自供だったんでしょ?

その時に既に霊になっていた、その被害者になんらかの危害を加えられていて、知らぬ間に生気を奪われて…死んだ。

っていう、非科学的な答えなんだけど」

「…琉嬉ちゃんが非科学的とか言ってもなんだか違和感感じるけど…まあ、そうなのかもしれないな」

「今となっては真相分からず…か」

 琉嬉が生まれる前の話。

残る資料もあまりなく、既に犯人が捕まっている以上、事件は表向きには解決している話である。

「なーんか、しっくり来ないけど…貴重な情報ありがとう。沢村刑事」

「オーケーオーケー♪。俺はいつでも琉嬉ちゃんの力になるぜ」

「…フフ。本当にいつもありがとう」

「いえいえ」

「てか、こんな情報、一般の民間に教えてていいの?」

「いいんじゃね?別に琉嬉ちゃん信用してるし。そもそも一般の民間とは思ってないけどな」

 そう言われる琉嬉は何やら照れくさそうな顔をする。

「まあ、表向きには過ぎた事件だし。くれぐれも、「死なない」ようにしなよ」

「だいじょーぶ。今は、頼りになる仲間がいっぱいいるから」

「あの頃とは違うんだな。んじゃ、俺はここらで。その事件の本当の解決を期待してるよ」

「うん。ありがと」

 車に乗り込み、その場からかっこよく去っていく沢村刑事。

琉嬉は、何か理由もないまま、その強力な霊を退治するのも納得いかないという事で情報をもらった。


「…そんな昔の事件後にそんな心霊話があったとはな…」

 沢村刑事は運転しながら考え事をする。

(……しかし…犯人は捕まってるし、犯人への恨みの攻撃は完了してる…そういう見解だよな…?

………個人的にまだ調べる必要があるかもしれんね…)



 深まる疑問。

沢村刑事は単独で行動に出る。



 今年、最後だろうと思われる、悪霊退治が明日、

決行される――。

それも、クリスマスという、日に。



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