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ふかしぎ真霊奇譚  作者: 猫音おる
第七章   ~修学旅行編~
40/92

#40 後輩達の奮闘・序章

 琉嬉達二年生が修学旅行へ行ってる約一週間。

それはそれでかなり寂しい。

ふかしぎ部の面々。

三年生はいなく、一年生だけしかいない。

みゆや御琴、柚羽。

たった三人しかいない。

どこかしら、物足りなさを感じる。


 そして、彼方家ももちろんそうだった。

かなり暇そうにしている來魅と銀杏。

そして全ての面倒事は悠飛に圧力がかかる。

一週間の修学旅行。

たった一週間、されど一週間。

それは長く長く感じさせられる。


 何かと、衝突気味の來魅と銀杏。

狐と狸の化かし合いとでも言うのだろうか。

しょーもない事でケンカになる。

ついこの間も、銀杏のたいやきを食べたとか食べないとか。

來魅のハンバーグを食べたとか食べないとか。

それのフォローに回るのが大変だ。

導はてんで役に立たないし、母親もド天然気味でさらっと流してしまう。

唯一、常識人のつもりではある悠飛が全て後始末しなければならないのだ。

少し、ストレスが溜まり気味だ。

なんせこの日本でも有名な高等妖怪の二人。

それを相手してるだけでも大変なのに…。

こうしてみると、なんだか人間くさいような、子供のような…。

おかしな二人である。

「コラ!來魅!お前まぁた、わしの納豆取ったじゃろう!」

「取ってないぞ。何を言うか」

「…この性悪ギツネめ…」

「やるのか?マジメだぬきめ」

「くぅ……子供の姿で言われると尚更ムカツクな!」

「いい加減にしろー!二人とも!」

「おおぅ、すまん」

「あ、すまない」

 と、言葉では謝ってい入るがお互いの箸をぶつけ合って競り合っている。

反省してなさそうだ。

(…銀杏でさえ手玉に取る來魅を抑える琉嬉姉ちゃんって、もしかして凄いのかな…)

 しみじみと、実の姉の凄さを知るのだった。


 あの上級の妖怪二人残すのは心配だが、悠飛は学校へ向かう。

面倒な電車にも慣れた。

残りわずかとなる中学校生活。

十分に楽しみたいところだが…、琉嬉同様、この頃いろいろ起こりすぎて大変だ。

同級生が怪しげな霊術道具を使用していた事が発覚。

それに個人的に巻き込まれた悠飛。

なんだかんだで、逃れられない運命とでもいうのか。


「おっは~!悠飛ー」

「…ん、ああ。紫音か。おはよう」

 朝からテンション高いのは紫音。

少し遅れて莉音もやってくる。

「おはよう、悠飛ちゃん」

「ん。おはよ」

「あれ、なんかあたしと莉音とじゃ態度違う~」

「…もう、朝からうるさいからだよ。紫音」

「んなーんだとー!」

 いつもこんなテンションでやってくる紫音。

いい加減少しうんざりだった。

「元気ないよー。悠飛。もっとテンションあげなきゃ!」

 バンバンと背中を叩いて先へ行く紫音。

怒ったり元気出せといったり忙しい。

「やめなよ、紫音。そもそも悠飛ちゃん…わざわざ鞍光から通って来てるんだよ?疲れてるんだよ」

「はは、フォローはありがたいけどまるで私が年寄りみたいな言い方だな…」




 琉嬉達二年生のいない鞍光高校。

生徒の数の3分の1もいないのでかなり閑散とした学校内。

ふかしぎ部の中心になる琉嬉やまどからがいないため寂しい部室と生徒会室。

そこで生徒会室に居たのは柚羽。

何かを調べてるのか、資料らしきものを読んでいる。

背が低いので高い所に届かないようで、ジャンプしたりして頑張って取ろうとしている。

「お邪魔ーしまー!」

 ガララッと派手に音をたてて開けて入ってくるのはみゆ。と、御琴。

部室の方じゃなく、生徒会室側の戸を開けた。

「ゆーずはちん!元気?」

「…び、びっくりしました…」

 驚いたのか、棚から資料を落としていた。


「大丈夫?」

「え、ええ…」

 手伝うみゆと御琴の二人。

「僕も背は高い方じゃないから…ちょっと辛いですね」

 と言いつつも、背伸びしてなんとか届く高さ。

「すいません…私が小さいばかり…」

「琉嬉先輩よりは高いよ~」

「みゆちゃん、それ本人いる時に言わないでね」

「分かってるよ~」

 琉嬉が聞くとぶっ飛ばされそうである。

「柚羽ちんって身長何センチ?」

「わ、私ですか?あまり言いたくないんですけどね…148くらいです…」

「おー、やっぱそれくらいか~」

「さっきから失礼だよみゆちゃん」

「あはは、ごめんね。でも琉嬉先輩はたしか140なかった筈だから…柚羽ちんはまだまだ大きいよ~」

「…あまり嬉しくないです」

 

 調べ物も終わり、部室で一服。

勿論、みゆの持ってきたおやつもある。

それを少しずつ食べる。

「…やっぱり、琉嬉先輩達いないと寂しいね」

「そうだなぁ」

 いつもなら、大勢でかなり賑やかだ。

今は3人しかいない。

そして、がしゃどくろの一件以来、大きな心霊的事件もない。

とはいえ、元が強力な霊磁場地帯。

時折、浮遊モノなどが学校を徘徊する。

そのおかげで、未だにこの学校の幽霊目撃談が絶えない。

必ず週に一度や二度あるのだ。

霊感ある生徒なんぞ、たまったものではないだろう。

「しかし、最近暇だよね~」

「琉嬉ちゃん達がいないからでしょ?」

「ですよね~」

「ふぅ…」

 珍しくみゆまでもがため息で黙ってしまう。

どっちにしろ修学旅行はあと一日で終わる。

それが過ぎればすぐ二年生達は帰ってくる。


「たしかに…寂しいですね」

 小声で囁くように言う柚羽。

それを聞き取ったみゆが急に立ち上がって柚羽の所へ向かう。

「あの…どうかしました?」

 そして、そのままみゆがちっちゃい柚羽に抱きつく。

「わわっ…みゆさん…苦しいですよ~」

「フヘヘヘ~。かわゆいなぁ柚羽ちんわぁ」

「あ、あの…あわわ」

 どたーんと倒れてしまう。

「あぐっ」

「いだぁ」

「何やってんの…?みゆちゃんそういう趣味あるの?」

 少し軽蔑の眼差しで見ている御琴。

「痛いです…みゆさん」

「ごめんごめんよ~」


「私…友達少ないんです…。昔から、怪我が多くて入退院繰り返してて」

 柚羽と出会った時も入院していた。

怪我が多い理由は、元々、陰陽師としての家系なのを敢えて慣れない剣の道を進んだ柚羽。

それが影響なのかよく負傷してたからだという。

「ほら、二人とも起きて」

 御琴が二人の手を引っ張るようにして起こす。

こういう所は男らしさを見せる。

「どもー」

「すみません…」

 照れくさそうに起き上がる柚羽。

「いやぁ、柚羽ちんって、ちっちゃいのにおっぱい結構大きいよね~」

「…な!」

 真っ赤になる柚羽。

唐突な下世話は発言に驚きを隠せない。

「自分こそ決して小さくないくせに…」

 御琴もボソっとツッコミを入れる。



「しかし…汚れてますよね。生徒会室」

「…そうだね~」

 部室から繋がっている生徒会室。

わだかまりがなくなったせいか、生徒会の仕事がない時はフルオープン状態でドアが開いている。

パっと見てもそうは思えないが、実際汚れが多い。

そこそこ歴史ある学校なので、新校舎になってからも30年以上。

古くもなれば汚れやキズなど増えてくるものである。

毎年大掃除をするものだが、隅々までそんなに行き届いてないのかもしれない。

「うーん…。掃除でもする~?暇だし」

「いやしかし…」

「いーじゃんいーじゃん、乗りかかった船に乗らないと沈没しちゃうよ?」

「何ことわざっぽく言ってるのさ…全然意味分からないよ」

 クスクスっと柚羽も笑いながら、

「私も手伝います」

 柚羽も承認。

「先輩達が帰ってきたらびっくりするくら掃除しよう~」

 こうして、なぜか生徒会室を大掃除するハメになる。



 そして―。

早速作業に取り掛かる。


「おお、これは…歴代生徒会の人達?」

「あーそうですね」

 みゆがみつけたのは歴代の生徒会名簿とその写真。

「うっわ…古いねこれ」

「およそ30年分の歴代生徒会ですね。今の生徒会も載ってる筈です」

「へ~」

 作業をストップしてみんな覗き込む。

「アハハ、やっぱり叉羅沙ちゃんって、大きさ的に浮いてるよね」

「フフ、そうですね」

「…そんな事言うと叉羅沙先輩泣いちゃうよ」


「へっぷち」

「あらら、どうしました?叉羅沙さん」

「いや、急にくしゃみが…」

 旅館へ戻るバス中で突然のくしゃみ。

鼻をこすりながら首を傾げる。

「寒いですからねぇ。風邪かもしれませんよ」

「ここまで来て風邪は嫌やなぁ」

 そのまま旅館へ向け、走り去って行くバス。




「でも、今までの生徒会長で女子は少ないのかな?やっぱり」

「さぁ~。他の学校は知らないからなんとも言えませんが、うちは10年以上ぶりくらいらしいです」

「へぇへぇへぇ~」

「みゆちゃんうるさい」

 完全にみゆと御琴はボケとツッコミの関係が出来ていた。

「ささ、早く進めましょう」

 ほうきをパタパタさせ柚羽がせかす。

その時だった。

バサンッと物が落ちる音。

奥の資料棚から一冊の本が落ちた。

「…なんだ?」

 奥の棚…。

少し手が届きづらい所に落ちてしまった。

「んー…届きませんっ」

「こういう時は、思い切ってこうします」

 みゆがドンッと棚を蹴っ飛ばす。

すると棚がズレた。

「無理矢理過ぎ……」

 二人はみゆの行動に少し引いた。

そんな二人を無視するかのように、本を拾い上げる。

パッパッと、埃を手で掃う。

「…これまでのふかしぎ部前身の組織の…記帳の日誌?みたいな物?」


 そう、今のふかしぎ部の前身とも言える生徒だけの組織。

名称は特に何もなかったらしいが、大よその経緯が書いてあった。

「へぇ~。そんな物があったんだ~」

 興味津々になってみゆがまたもや覗き込む。

「…掃除してみるもんだよね。こんな近くに、奥にあったなんて」

「まどか会長…就任してからここの部屋の物確認してないのでしょうか…?」

「有り得るね。毎日何時間もいる訳でもないだろうし。これは何かの予兆な予感…」

 楽しそうに言うみゆ。

緊張感ある柚羽とはえらい違いの顔をしている。

「みゆちゃんって……本当に変わってるよね」


 その日誌にはいろいろ幽霊目撃談など日付、時間など書いてあった。

以前ほどでもないが、昔から数々の妖怪など出現していた。

「…がしゃどくろ…の事は…書いてありますか?」

「…デッカイ骨の妖怪がどうのこうのって書いてるね~」

 詳しい名称までは書いてない。

どこかの陰陽師の末裔が封印したらしい…とまでは書いてある。

「なんだよ~書いてるじゃんか~」

「これは…私のお父さんの事ですね。一応ここの卒業生のはずですから」

 昔から柚羽の家系、鳴神家はここ鞍光に住んでいる。

30年以上前からあまり人知れず戦ってきていた。

「しっかし、おおざっぱだねー。これ」

「所詮は生徒だけで書き溜めたものでしょうからね」

「じゃあ、じゃあ、うちらふかしぎ部の事をこれから書き込めばいいんだ!」

「面白そう~」

「そんなノリでやるんですか…」

 少し、後ろめたい気になる御琴だった。



 あらかた掃除が終わった頃、時刻は夜7時近くだった。

パラパラ部活が終わって帰る生徒もちらほら。

「大きな事件みたいなのあります?」

「んー。特に……」

「そうですか」

「読みふけってるのもいいけど、そろそろ帰らないと怒られるよ」

「おおぅ、そんな時間っ?」

 みゆが部室の時計を確認する。

そして窓は真っ暗。

「いつの間やら……帰りますか~」

「そうですね」

 掃除する手を止め、帰る準備をする。



 駅までの帰り道。

柚羽はみゆと御琴とは違う帰り道。

別れる前にみゆは柚羽を足止めするかのように話をかける。

「ね、柚羽ちん」

「な、なんでしょうか…?」

 戸惑う柚羽。

どうも、いまだにぎこちない緊張がある。

「私ね~、もっともっと柚羽ちんの事知りたいな~」

「へ……?」

「ねぇねぇ~」

 異様にくっつくみゆ。

「あ、ちょっと…」

 ズテーンと、すっころぶ柚羽。

みゆよりも一回り小柄な柚羽はみゆの押し付けに耐えれず倒れてしまった。

「いたぁ…」

「だ、大丈夫?鳴神さん?」

 転んだ柚羽に手をさしだす御琴。

「あははー、ごめんごめん」

 御琴と共に柚羽を起こすみゆ。

「何やってんだよ…みゆちゃん」

「ふひひー」

 照れ笑いするみゆ。

「お詫びに、帰り…ちょっとご飯食べて帰ろうか?奢るよ~」

「え…でも…」

「だーいじょうぶ。みゆちゃんは~、金持ちなのだー」

「しかし…」

「まあまあ、鳴神さん。ここは、みゆちゃんのお言葉に甘えるといいよ」

「はぁ…」

 みゆの必殺のお金持ち作戦。

結局これにみんな渋々やられてしまうのだ。

柚羽もみゆと御琴と共に、付き添う事に。




 駅近くのファーストフード店。

以前悠飛がルナフラワードと再会したお店と同系列店。

そこでみゆらは軽い夕食をしていた。

「柚羽ちん、毎日その剣持って歩いてるの?」

 いつも柚羽が身にしている剣の入れ物。

「あ、はい。学校終わりに早碕剣道場に行くために…」

「早碕流ねぇ…。知ってるちゃあ知ってるけど」

「そうなんですか?港咲さん」

「おういえい。知ってるぜぃ。裏家業では有名だったみたいだけどね」

「ハイ…」

 ちょっとばかり物騒な話になる。

「…発祥の地は京都だからしいですけど、私は始祖の血筋でもありませんし詳しくはわかりません」

「でも、剣の達人だよねぇ~」

 がしゃどくろの一件に一度見ている。

護も剣士タイプの戦いだが、柚羽も刀を使用した戦いをする。

陰陽師としてはかなりの前衛向き。

その動きはまさに圧巻。

「い、一応…免許皆伝レベルとは言われましたけど…どうなんでしょうね…?」

「ほへぇ~。免許皆伝!凄いねぇ」

「…こんな小さな体で免許皆伝レベルの剣の達人…。鞍光高校の女子達って凄すぎる…」

 凹む御琴。

たしかに、術者が多い学校ではあるが、その大半は女子生徒だらけだ。

ふかしぎ部は御琴と龍翔くらいしか男子は在籍してない。

他にもいる…と信じたいが、出てくる様子も無い。

もしかしたら本当に二人だけしかいないのかもしれない。

「で、でも、たまたまですよ!元々陰陽師としての家系で昔から戦ってたし。基礎みたいなのは出来てたので」

「いやいや、それも才能だよ~。柚羽ちんのねぇ~」

「あ、いえ…そうです…か?」

 顔を真っ赤にしてうつむく柚羽。

褒められる事に慣れてないせいか、どこか気恥ずかしいような気持ちになる。

「かわいい~柚羽ちん~」

 また抱きつくみゆ。

まるでどこかの他の五大家の眼鏡女子を彷彿とさせる。

「ちょっと!みゆちゃん!他のお客さんいるんだから女の子同士で抱き合うなって!」

「ひぃ~」

 またまた、柚羽はみゆに押し倒される。


「まったく…。他のお客さんの目線が痛々しかったよ…」

(たしかに、鳴神さんは可愛らしいけどさ…)

 御琴も周囲の目線が気になって仕方なかった。

みゆの百合的行動に見てるこっちも恥ずかしい。

「……」

 まだ顔が赤い柚羽。

「いやははは!ごめんね~」

「まったく…信じられません…」

 さすがにちょっとご立腹になる。

少々度が過ぎるみゆ。

ようやく駅内に入ろうとするがなんだか騒々しい。

裏道の方からだ。

「なんだろ…?何かあったのかな?」

「さぁ?」

 決していつもならそんなに騒がしい事もない駅周辺。

帰宅ラッシュもちょっと過ぎていて落ち着きを取り戻す時間帯なのだが。

「…なんか、嫌な予感しませんか…?」

 ポツリ、柚羽がこぼす。

「へ?」

「うーん…。かもね~。行ってみる?」

 みゆも賛同し、騒ぎの方向へ向かう。

「あ、ちょっと…二人とも!」

 遅れながらも御琴も追いかける。



 駅裏から200、300mだろうか?

そう遠くない場所に人だかりが出来ていた。

ここは以前琉嬉と叉羅沙が戦った場所付近でもある。

激しい戦いをした場所であるが、その名残はないようだ。

「人が集まってるね…」

「あ、警察」

 人が集まってる場所へミニパトが向かう。

警察のようだ。

「ホラ、どきなさいどきなさい」

 二人の警官がその場所へ向かっていく。

「私達も行きましょう」

「あ、柚羽ちん」

 なぜかみゆよりも先に行動開始する。

がしゃどくろの時もそうだったが、柚羽は思った事をすぐ行動する。

行動力が半端なく、一人でつっ走ってしまうのだ。

「いやいや、みゆちゃんよりも行動力、早いね」

「みこっちゃーん、なんかバカにされてるように聞こえるよ~」


 なんとか人ごみの中を掻き分けて前に出る。

小柄の柚羽ならではのすり抜け術だ。

「柚羽ちん早い~…。剣背負ってるのになんであんなに早く…」

 みゆも舌を巻く程の素早い動き。

「あ!!あれって…」

 二人の男性が倒れこんでいる。

身動きすらしていない。

何かあったのだろうか?

警官が奥へ行き男性の下へ向かう。

もう一人の警官が何か連絡をし、まわりにいる野次馬を散らすように遠ざける。

「…あれって…もしかして」

 御琴が少し震えながらみゆに話かける。

「……うん。多分…死んでるだろうね」

「マ、マジか…!」

 死んでる…と、言っても目立った外傷はないように見える。

「……みゆさん。感じませんか?何か」

「…感じる?何が?」

「微量の…妖気です」

「あ、やっぱり妖気なのか。これ。なんか不快な感じがすると思ったよ…」

 なんだかんだでみゆも感じ取っていた。

「でも妖怪の仕業…なのかな」

 妖気は残っている。

確信はもてないが妖怪の仕業の可能性が高いと推測できる。

「人を襲う妖怪?殺してまで襲う妖怪なんて最近聞きませんよ…?」

 腕を組んで考え込む柚羽。

ここまであからさまな事件は今までになかった。

きっとニュースにでも取り上げられるだろうこの事件。

「物騒だね…。最近」

「今年になってから事件が多いですね…」

 現状は術者だからと言って一端の高校生にすぎないみゆ達。

この場では何も出来ない。

「後日、後で調べませんか?今は夜遅いですし…」

「そうだね~…。後で琉嬉ちゃんに連絡取ってみるよ。なんだかんだで詳しいからね~」

 琉嬉がいればすぐさま解決出来るかもしれないが、修学旅行中なので鞍光にはいない。

何かヒントになる事が聞けるかもしれない。

翌日にでも自分達で調べる事にするのだが。

外傷が見当たらない死亡者二人。

それと、微かに残された妖気。

怪奇事件の可能性が高いと判断する。



 みゆの自宅のデッカイ屋敷。

「たーだいま~」

「お帰りなさいませ。お嬢様」

 数人のメイドが出迎える。

「さぁてー、琉嬉先輩に電話しよう~。あ、これお願いします」

 制服の上着を脱いでメイドに渡す。

それだけでそのまま自分の部屋へ向かう。

携帯電話で早速琉嬉に連絡を取るのだった。




「琉嬉ちゃん、電話鳴ってるよ」

 一方、京都の旅館にて。

「ん。なんだみゆか…」

 ゆっくりまったりしてたところに連絡。

「…え?殺人事件?」

少々オーバーに声を出してしまう。

「……琉嬉ちゃん…?殺人がなんだって?」

 殺人という単語にびっくりするみなっち達。

「え?あ、いや…なんでもない。ゲームの話ゲームの…」

 あわてて誤魔化す。

その誤魔化し方が少し強引。

部屋には他の生徒がいるのを忘れていた。

(…またなんか厄介事の話か…?こっちはこっちで厄介事に巻き込まれたってのに…)

 ただ、凛夢だけはまた何かの事件だろうと気づいていた。


「…なんでそっちはそっちで面倒な事起きてるんだろうな…。で、それでどうしたいの?」

『いやー、ちょっと妖気らしきもの感じてさ~。妖怪に仕業ですかね?』

「……現場にいないからなんとも言えないけど、お前と柚羽が感じるんならそうなんじゃない?」

『んで、こっそり現場写真撮ったんだけど見ますか?』

「…お、お前なぁ…。そんな写真警察だけに撮らせとけよ…」

『んじゃー、送りまーす』

「……ちょっと…。まったく…」

 強引な話の進め方。

さすがに通話だけでは琉嬉も何も言えない。

「…自分達で手に負えないような事あったら悠飛や來魅達もいるから。

……お前らなら大丈夫だと思うけど、あまり深入りするなよ。面倒な事あるんだから」

『おっけおっけ~です。ではまたお願いしますー』

「…うん。(本当に分かってるのかな)」

 ピロピロ~ンと着信をたてて、メールが来る。

みゆが琉嬉宛に送った画像添付したメールだ。

受信して、画像を覗く。

「…うげ…。マジ撮ったのかよ…」


 そこには男性二人が倒れこんでいる画像。

それとその周辺。

基本的には写真を撮る時には音が鳴るものだがそれを掻い潜ったのか…。

それとも改造携帯なのか。

抜け目がなさすぎるみゆの行動。

柚羽が特攻タイプならみゆは策士行動タイプ。

どっちにしろ行動力が早い二人なので少し心配だった。

「しっかし…死んでる人間の画像送りつけるなんてあほかアイツは…」

 ブツブツ文句言いながらも画像を確かめる。

画像とにらめっこする事2、3分。

何かに気づく琉嬉。

「これは………」

 横たわる男性の画像の電柱。

何かの傷跡のように斜めに切れ端が入っている。

人の力ではつけれないような鋭い傷跡。

「……ふーむ。それとかすかに妖気じみたものが感じる…」

 画像越しでも分かる妖気。

一般的に言われる心霊写真と同じように妖怪の妖気も強いものであれば感じ取る事が出来るという。

琉嬉程の高い能力ならば造作もないコト。

「…悠飛にも連絡しとくか…」

 念のため、悠飛にも連絡を入れる。

地域が遠いため、力になれるかどうかは分からないが祖父にも伝えておく事を言う。

そして、管轄内の沢村刑事にも情報を入れておく。

警察ではどうしようもない事件であれば…、みゆ達に頼むしかないだろう。

なんとも、修学旅行で離れているのにこうも面倒事に付き合わされる。

それだけ頼りにされてるのもあるのだが。



 翌日、早速みゆ達は学校が終わり早々に事件現場に訪れていた。

すっかり何事もなかったのように、黄色テープが貼られて側に行けない以外、人気もなくなり静かになっている。

献花もなく、ひっそりとしている。

時折犬の散歩する人や、下校時の生徒や、仕事帰りの人達が通る。


 朝のニュース番組で例のみゆ達が見た事件の事が放送されていた。

ただ、死亡者の詳しい素性はそれなりに流れただけで大した情報はなかった。

そこで、琉嬉からのコネで沢村刑事と連絡をしたみゆ。

沢村刑事も何度か琉嬉達にお世話になってるという理由で快く情報をくれた。

というのもそれも完全な裏ルートでの話だからだ。

「どうやら、裏の世界にいる人たちみたいだよ。死んだ人ってのは」

「…はぁ~。なんか恨みか何かかなぁ?よくあるじゃん。そういう世界でドンパチやって…みたいなの」

「でも目立った外傷なく死んでた…んですよね?」

「そだね」

 学校から近い場所だけあって、しばらくはこの周辺一体は警戒態勢だろう。

パトカーがいつもより沢山回っている。

小中学校など集団下校など行われている。

鞍光高校でも朝に集会がありその話が少し出てた。

「まったく…。住んでる地域でこんな物騒な話…嫌ですよね」

 柚羽が力強く言う。

「物騒って……散々妖怪とかいるじゃないですか…ここって…」

 柚羽にツッコミ入れる御琴。

「…不可解な死体と残された妖気か…。これだけじゃ何にも分からないよね」

「私達じゃ探偵さんは無理か~」

「いつ探偵になったのさ…?」

「今!ふかしぎ部みゆ探偵団!っと言いたいけど…なーんにも分からないよね」

 少々途方に暮れかけたその時。

「まだ無理じゃありませんよ」

「おわ、君は…」

 そう、琉嬉達屈指の名探偵、彼方悠飛であった。



 濃い緑色のジャケットに黒のジーンズ姿の悠飛。

悠飛まで加入したふかしぎ部みゆ探偵団。

推理物好きの悠飛がいれば心強い。

「話はなんとなく姉から聞きました。また事件が起きたそうですね。妖怪絡みらしきの」

「そうそう。今度は死者が出たんだよ」

「物騒ですね…」

 世間話交えながら事件現場を見て回る。

「しかし…今までにここらの妖怪が人間を殺す程襲ったという話ありませんよ」

 長年携わっている柚羽とその家系なら信用ある言葉。

事実、鞍光周辺ではそのような「死亡」怪奇事件までは起きていない。

いや、ただ表沙汰になってないだけかもしれない。

だがそれならばみゆ達の情報力ならば耳に入ってくる。

殺人未遂なら琉嬉らの住んでいたお寺のある地域では吸血鬼騒ぎがあったくらいだ。

そもそも術者が多いこの地域。

妖怪達もうかつに手を出す訳がない。

自分達も術者に始末されてしまうからだ。


「今回は…ここらの妖怪に仕業ではない…と?」

「そうだと…いいですけど」

「あれ、そういや悠飛君と柚羽ちんは初対面?」

 みゆがふと思い出したように言い出す。

「え?」

 悠飛が柚羽を見る。

その柚羽は、

「あ、いや、初対面では…ないですけど」

 なぜか照れだす柚羽。

生徒会をやってる割には人見知りである。

「がしゃどくろの一件の時に、会ったくらいですね。あまり会話しなかったと思いますけど」

 チラチラと悠飛を見る。

なんか変な態度だ。

「あ、あの…悠飛さんって…琉嬉先輩のお兄さんですか?」

「え?あ、その私は…」

「おう~、そっか~。柚羽ちん知らなかったかな。このかっこいい子は琉嬉ちゃんのお兄さんじゃなくて、妹さんだよ」

「その紹介の仕方なんですか…みゆさん」

 姉の琉嬉と同じようなジト目の目つきでみゆをにらむ。

「ふひひ、ごめんごめん~」

 そのみゆの話した内容に柚羽は固まっていた。

「……い、妹……?!え?嘘ですよねっ?!」

「嘘じゃないですっ」

 思わず悠飛も声を張り上げてしまった。

「まあまあ、仕切り直して、何かないか見ていこうよ」

 話を戻す御琴。

「そ、そうでしたね…」

 少しグダグダとなったが、調査を開始するため歩き出す。。


「もしかして柚羽ちん、男の子だと思ったの?」

「…すみません」

「いえ、いつもの事ですから…」

 完全に間違えた柚羽。

得意の真面目さで何回も頭を下げている。

「あの…柚羽さん…もういいですから…」

 逆に申し訳なってくる気持ちになる悠飛。

「いえ、琉嬉先輩に妹さんとはつゆ知らず…私はバカな女です!」

「柚羽さん…あんまり考え過ぎると禿げるよ」

「そ、それは困りますっ」

 頭を抱える柚羽。

本気にする。

「それより調べに行きましょうよ…」

 姉がいなくても騒がしい面子に悠飛も苦笑いしか出なかった。




「…電柱の…傷跡…?これか…」

 所々に電柱に鋭利な物で切られたような跡が残っていた。

死体があった現場から少し遠く離れた所だ。

現場に続く道筋ではある。

「こっちもあったよ」

 御琴が指さす場所。

みんなの背丈より高い場所。

叉羅沙の背より高い所にも傷がついている。

「電柱の裏の塀にもいくつか」

 その傷跡にそっと手を触れる柚羽。

「…これは妖気。まだ微かに残ってますね。妖怪の仕業…決定的でしょうか?」

「かもね~。でもどうやって外傷目立つ事なく殺したのか…て、とこだろうね」

 腕を組み考えるみゆ。

「妖怪の術なら外傷つけることなく…命を奪える…。そんな術があるかもしれませんね」

「それは怖いねぇ」

 静かに悠飛は現場を見つめている。

何か考えてるようだ。

「悠飛君?」

 みゆが悠飛の目の前に手をひらひら動かす。

「な、なんですか?みゆさん…」

「いや~、ぽけーっとしてたから」

「…考えてたんです」

「ほへ?」

「……裏家業…まあ、暴力団関係でしょうね。殺されたのは。何か恨みを買っていたとか…」

「警察でもそう捜査してるのかな?」

「そういうトラブル関係はすぐに出てくると思う。でも、現状では殺したという確証が取れない。証拠がない。原因不明の死亡者」

「お手上げ状態…ってヤツ?」

「まさにそう…。と、言いたいけど」

「?」

 一息ついて悠飛が静かに喋りだす。

「……ちょっと時間経ってから、沢村刑事から情報聞きましょう。それじゃないと進展がありません」

「はーあ、結局そうなるか~」

「でも、特定の人間さえ出来れば、私達の能力で確証はとれますよ」

「…へ?」

 一斉にみんなが目が点になる。

悠飛が手にしたのは何かの切れ端…。

いや、よく見ると白い、破れた紙のような物。

「何それ?」

「……おそらく、妖怪か、それとも犯人と思われる人物が使用したお札…だね」


 警察の鑑識も全部は拾いしきれなかったのか。

ただのゴミと判断してしまったのか。

そこは不明だが、微かに札の切れ端があったのだ。

「よく分かるね…悠飛君」

「姉ちゃんがよく使ってますから…」

 そこで柚羽が紙切れに手を触れる。

「…これが妖気の発信元だったんですね…」

「なるほど」

 昨日の今日。

まだ完全に現場の状態は完全に手がかりになるものが残されていた。


「妖怪…、が符術を使うのがいるのだろうけど…。判断が難しい」

 まだブツブツ言いながら悠飛は考え事をしている。

「ええと…この紙切れから霊視して辿りつけないでしょうか?」

「あ、出来そうですか?」

「多分…」

そ してそのまま、目を閉じ集中する柚羽。

紙切れを片手に自分自身の霊力を高める。

息をのんでそれを見守るみんな。

その間悠飛は再び現場周辺をくまなく見て回る。

かなり真剣そのもの。


「…なんとなく視えました…」

「ほんと?!」

 しかし表情は険しい。

「で、どんなの視えたの?」

「………そこまで大きくはありませんが、人とは違う形状の妖怪…です」

「ふむ」

「そして脳裏にうっすらと…名前が…」

「名前?」

 次はまだかまだかと、前に詰め寄るみんな。

押され気味ながらも答える。

「ヤスダ…という事しかわかりませんでした…」

「ふうむ…ヤスダねぇ…。その辺に居そうだね」

 なんとなく名前が浮かんだのはヤスダ。

これが事件解決の手がかりになるのだろうか。

「ナイスです。柚羽さん。これで警察の方と照らしあわせば道のりが近くなります」

「上手くいくといいのですが…」

「あ、あの~…」

 流れを切るように御琴が手を上げながら疑問を投げかける。

「そもそも、警察がそう簡単にそういう情報くれるの…?」

 しかし…

「大丈夫です。姉のコネがあれば。それに、怪奇事件なら全面的に力を貸したり借りたりしてる方がいるんです」

 自信満々に悠飛は言う。

「沢村刑事だね~」

「は、はあ…」

「そもそも、これは完全に怪奇…ふかしぎな事件…。この札が決まり手になります」

 悠飛は完全に確信を持った。

「なんか私…なんにもやってないなぁ」

 珍しくがっかりするみゆ。

「それに……これは…」

 何か言いかけたまま、口ごもる悠飛。

(……何か嫌な予感………。もしかして……姉ちゃんの言っていた霊術会の言ってたっていう…?)

「さて、これはちょっと時間かかるかもね~」

 みゆがそう言うと、背中から何かを取り出す。

小さな御札。

「みゆさん?どうかしました?」

「んーと、ね。気配を感じました」

 気配。

何かを感じ取ったようだ。

「ですね。警戒します」

 柚羽も肩にかけていた刀を入れた袋を降ろす。

御琴も少し表情が険しい。

悠飛も次第に異変に気づく。

「お出まし?」

 電柱の影から、妙な影が伸びてくる。

まるで触手のようにスルスルッと。

そしてみゆ達に襲い掛かってくる。

「なるほど……こういう訳ですか」

 なんなく攻撃を受け止めるみゆ。

そしてジャンプして体を捻り上げたと思ったら蹴りをかます。

「な、なんですか…これ?」

 悠飛も右腕に氷の剣を作り出す。

「分かんないけど襲って来たからにはこういう事なんじゃないの?」

「それ、言ってる意味が良く分からないよ!」

「言いたい事は分かりますよ」

 悠飛はなんとなく察した。

この影の正体を。




 なんとか撃破した4人。

唐突だったので少し冷や汗をかいていた。

「なんだったんですかこれ…?」

 カチャリ、と刀を鞘に納める柚羽。

「うん、多分死んだ人を襲った奴…の残したヤツかな?」

「そうなんですか?」

「疲れた…」

「ほとんど逃げ回ってただけじゃん~」

「言わないでよ…」

 そう言いながらも頑張って対処はしていた。

「妙な敵だったね…」

 辺りを数枚の札を宙に投げるみゆ。

そしてパンッと高い音を立てながら燃え尽きる。

「な、何?」

 驚く御琴。

「あ、これね、残った霊気を打ち消すおまじない」

「おまじないー?」

「結界みたいなものですよ」

 柚羽が代わりに答える。

残りの霊気を完全に打ち消して、余計は被害を増やさないために完全にまっさらにするために結界を作ったのだ。

「さて、ここにはもう用ないね~」

 4人は現場を後にした。


 ともかく、みゆ探偵団はこの事件を追いかける事にしたのだが、少々時間をかけてみる。

一向に手がかりがないからだ。

あるのは、戦った変な影。

それと確証のない、霊視で見えたヤスダという名前。

繋がりあるのか分からないままこの日は終えた。




「やっぱり部長がいないうちに首ツッコむのはマズイんじゃない?」

 朝から御琴が不安な発言をする。

部長というのは琉嬉の事だ。

「うーん、そうだけどね~。わたしはこう見えても五大家のひとつの家系ですから」

 威張るように言う。

五大家と言われても御琴にはピンと来ない。

凄い家系だというのは分かっているが…あまりそういう世界に関わりない御琴にとってはどうも見えてこない世界。

「でもそろそろ帰ってくるよね」

「そだね~。でもさ、琉嬉先輩達に頼るのも…ってね」

「……そりゃそうだけど…」

 御琴はもしかして、みゆはどこか人には頼りたくないプライドみたいなのがあるのでは?

そう思い始める。

五大家としてのプライド?

それも少しあるのかもしれない。

(たしかに…みゆちゃんはかなりの術者だ。

でも……、いつも明るく陽気であっけらかんとしてる。

実は他の五大家の人達や名家、それに匹敵する護さん達の出現で何かしら意識してるのかも…)

 他の人物をかなり意識している。

そう推測するのだ。

御琴は少し笑みを浮かべる。

「みゆちゃん。僕が手伝える事は手伝うからさ。あまり先に走っていっちゃだめだぞ」

 むにっとみゆの頬をつっつく。

「お?何だ?みこっちゃ~ん。このこのー」

 なぜか同じように御琴の頬をつっついて反撃する。

「わぷっ、な、な、な?」

「おらおらおら~」

 連続でつっつく。

まわりの他の生徒はまるでいちゃついてるカップルにしか見えない。

それも人気あるみゆを相手してるのが目立つ事のなに御琴だからだ。

(なんだ神楽のやつ~みゆちゃんを独り占めしやがって~)

(許さん…)

 などと、御琴はみんなからの怒りをなぜか買っていた。




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