#38 京都へおこしやす?
先日は凛夢との喧嘩をしながらも、源聖樹という人物と出会う。
と言っても、琉嬉にとっては再会みたいなものだった。
まだ姿見せぬ組織らしき物があると言いながら姿を消した。
どうやら東京で人知れず活動してるらしい聖樹。
どっちにしろ、今後また会う確率は低そうではある。
いずれ、同じ組織とやらを追う事になればまた出会うかもしれないが。
そんな事をネチネチ琉嬉は考えていた。
結局は世話焼きというか、お節介というか、自ら首を突っ込んでしまう癖もある。
気になる事はどうしても考えて込んでしまう。
「どうーしたのっ」
ポンっと琉嬉の背中を軽く叩く手。
その手はみなっちだった。
「あ、いや…別に」
「まーた何か考え事?琉嬉ちゃんそうやってよくポケーっとしてるよね」
「……まーね」
そっけなくまた窓の方へ向く。
琉嬉達二年生は京都へ電車で向かう途中だ。
電車の旅…と言っても通学で良く使ってるので珍しくもなんともない。
そして住んでる所も今の景色と似たような田舎な風景。
見てて別段新鮮さはない。
むしろ飽きてきた。
「何かあったのか知らないけど、あまり深く考え込んじゃハゲちゃうよ」
「ハ、ハゲ…る?」
ビクっとする琉嬉。
「アハハ、なんてね。女の子が禿げたら嫌だよね」
「…男でもそうだと思うけど…」
いつもみなっちは面白可笑しく物事を言う。
同じクラスになってから、どんどん他のクラスメイトの事を知る。
今までどこかしら、ぎこちないものだったのが段々解消して言いたい事を言えるような間柄になってくる。
こういう、人間関係というのは不思議なものだ。
上手くいかないのはいつもたっても上手くいかない。
琉嬉は意識して自分から他人の領域へと入り込む事をしないでいるつもりでる。
昔から孤独タイプ。
だが、今はどうだ。
クラスメイトやふかしぎ部のメンバー。
挙句の果てには妖怪との繋がり。
僅か、一年も経ってない間に沢山の繋がりが出来た。
いい加減慣れてきたものだ。
「あとどれくらいで京都ですかねえ」
「さぁ。今どこらへんなんやろな?」
「さぁ。どこでしょうねえ?」
「……」
「……」
まるでコンビ芸のように、会話していく二人。
こっちはこっちで楽しそうだった。
相も変わらずマイペースな叉羅沙とまどか。
「叉羅沙さん、たしか京都出身でしたよね?」
「……そやな」
「……なんとなく距離感とか分かるんじゃないんですか?」
「……小さい頃の話やからな。人生のほとんどは鞍光やし」
「……」
「……」
大した会話の広がりもなく終わる。
そして護は………
(…ん~……もっと琉嬉ちゃん達と楽しみたいな~)
なにやら難しそうな顔で京都に着くのを待っているようだ。
クラスメイトからは話かけられにくい状況。
同じクラスじゃないのが恨めしい。
こうも、運命とは残酷なものだ…。
それから移動に次ぐ移動の連続であっという間に京都へ着いた。
途中途中で観光スポットになる場所へと寄ったりし、時間は午後の2時頃。
ここからまた団体行動で京都中を見て回る。
少々ハードなスケジュールにも思えるが、生徒達は疲労を忘れるかのように
にぎやかに楽しんでいる。
琉嬉も冷静ながらも内心楽しんでいるようだ。
(……ここが、京都。妖がもっとも多く居るとも云われる……)
かつて日本の中心として栄えた街。
今もその面影が残っている。
しばらくはクラス毎に移動しながら、団体行動。
この日は自由行動は少なく、少々堅苦しい。
窮屈ながらも、有名所を見て回る。
歴史ある街ゆえ、どこかしら見た事のある建物や風景。
それが生で見れるのは中々楽しいものだ。
午後6時まで自由行動となる。
時間は4時程度。
あと2時間弱。
琉嬉はクラスメイト達と離れて、ふかしぎ部メンバーと合流する。
「うあーん。琉嬉ちゃーん。寂しかったよぉー」
「わぷ、バカ、やめ…」
胸一杯に抱きしめる護。
またもや琉嬉は豊満な胸に挟まれ窒息する。
「私も負けませんよ~!」
寧音も乱入する。
「ごろずぎが~」
ノックアウト寸前だ。
「あーあー…。まーたやっとる…」
以前このような光景を見てる叉羅沙。
またか、と言った感じでやれやれポースを取る。
「男としては幸せな状況なんだろうけどな」
唯一男の龍翔。
その一見幸せそうな状況がちょっとだけ羨ましいと思ったが苦しそうな琉嬉を見て、哀れに思った。
「あらあら、羨ましい」
「……え?」
まどかの発言にジト目でみつめる凛夢。
「ほほほほ…」
ごまかすように笑い飛ばす。
一瞬そっちの気があるのか?と思ってしまう発言を聞いてしまった。
何かが、分からないが、凛夢はまどかの底知れぬ「何か」が恐ろしくなっていた。
「ゲホゲホッ!まったく!護のアホ!デカ乳女!死んだらどうする!」
「ごめんごめん…」
「お前もだ!寧音のバカ!眼鏡巨乳!死んだら恨むからな!」
「すみません…」
「なんだかお約束になりそうやなあ」
二度ある事は三度ある。
と、使い方はおかしいが、またこのやり取りがありそうだ。
護が寂しいというのでこのメンバーが再び集まった。
今日と、明日。
まだまだ回れる。
目一杯楽しもうという魂胆だ。
「このメンバーなら、まだ気許せるし。まあ、いいか…」
「しかし、凄いですねぇ。時折妖怪チックなのが見えたりします」
「え?そうなの?」
護はまったく気づいてないようだ。
「そうやなぁ。さすが京都」
琉嬉と凛夢は無言のままだが、ある程度は気づいているようだ。
「何なに?私だけ気づいてないってオチ?マジでぇ~」
そう、妖怪と言っても、害のあまりない者達。
何かの家電や傘などが妖気を放って置いてあるのがたまにある。
いわゆる、付喪神ってヤツだ。
京都ではそこらの土地より多く確認出来る。
これも昔多く存在していた名残なのだろうか。
力が弱い物が大半で、感知力が他のメンバーに比べると乏しい護には感じにくいのだ。
それも、普段の護ではの話だが。
「よーし!残り短い時間だけど、観光観光ー!ホラ、行こ行こ!」
「ハイハイ…」
「さあさあ、堪能しようしよう!」
護はどんどんテンションを上げていく。
よっぽどみんなと行動できて嬉しいのだろう。
これまでの移動の疲れを見せない、タフな女、護。
「しっかし…付喪神ねぇ。普段ウチらの所じゃ見ないよね」
「そうやねえ」
琉嬉達が住んでいる地域は妖が多い。
また、霊磁場も強いためかなり高い確率で霊自体が強くなって出現する。
やはり、ここは京都。
昔からの伝統ある街。
非常に小さく、弱い妖怪もチラホラいるようだ。
「……別に気にするような程でしょ?」
凛夢はぶっきらぼうに言う。
たしかに、この面々ならそうだろう。
かなりの能力者なのだから。
「んー…。まあ、そうだね」
と、言いつつも、微量の霊気さえ感じ取ってしまう琉嬉にとっては気になってしまう。
それがうざいというか、どうしようもなく目障り。
今、現在いる場所が古くからある京都の中でもさらに年月が経っている街。
そのせいなのか、妖が多く見受けられる。
「さあさあー、妖怪とかいいからさ~」
「……ハイハイ」
そして、一行はさらに奥地へと進んでいく。
「ここ、どこ?」
「地図には…ここら辺や」
「……叉羅沙さん、京都出身なのに何も分からないんですねぇ…本当に」
「だからぁ。ウチは生まれて5歳くらまでやって。ほとんど分からんて言うとるやんか」
「まったく使えねー京都人だなぁ」
「つ…!使えないって…!だから、京都生まれだけやって言うとるやんか…」
さすがの温厚な叉羅沙も少しムッと来たようだ。
「まあまあ、叉羅沙さんも、みなさんも、落ち着いて。何も知らない土地を見て楽しむのが観光ってものですよ」
ごもっとも。
まどかはまともな事を言って場を収める。
こういうまとめ方がうまい、まどかならではの実力。
というか、まどかのフニャフニャした言い方だとどうも力がなくなので、その場が収まるといったところか。
「フフフ、それにしても、落ち込む叉羅沙さん……可愛らしい…」
寧音が変な妄想をしている。
「……なんか、変な悪寒が…」
「ほぅ~。見晴らしいいねぇ」
「街が見渡せそう」
少し高い山の展望台へ来ていた。
バスで一直線で到着。
古くも、綺麗な町並みが確認できる。
「絶景絶景かな~」
護が髪をなびかせながら景色を眺めている。
他のみんなはその様子を見ている。
秋空と紅葉が綺麗なこの場所で妙にマッチングした護。
(…芹澤さんって……美人なんだな…。美人ていうか…セクシー可愛い系…)
自分も美人美人と言われてきてる凛夢も思わず見とれる。
どうしてこんな女の子がこっちの世界にいるんだろう。
そんな事を考えていた。
自分も言える事なのだが。
「フフフフ。護さんも可愛くて綺麗ですね」
「ですよね?ですよね?」
テンション高い寧音と、冷静ながらも見惚れているまどか。
「……なーにブツブツつぶやいてんの?」
琉嬉がまどかの発言に気づいた。
「いえいえ、なんでもありません」
「ねー?」
「……??」
少々、百合的な発言が目立つ。
可愛いもの好き…らしい。
メンバーがここの展望台で楽しんでる時。
何やらガサガサと音が聞こえる。
物音に気づく琉嬉。
「……ふーむ」
ポケットにしまってある御札を中で掴む。
「ん?どうしたの?」
「いや…ちょっとね」
何かの気配。
他のメンバーは気づいていない様子。
そして、テクテク歩き出す琉嬉。
展望台の塔から飛び降り、すぐそばの森へ近づく。
「……さあ。用があるなら出てきな。出てこないならこっちから…」
ぐっと腰を落とし、身構える。
そのまま10秒程経つ。
そして…。
「バレちゃ仕方あるめぇ!人間の女子なんぞ喰ってやるわ!!」
突如、出てきたのは大きい妖怪。
カバのような、動物のようなタイプだ。
いきなり太い腕で攻撃仕掛ける。
「おっと」
余裕でかわす琉嬉。
軌道が丸見えだ。
「一度避けただけで満足するなよぉ」
続けさまに攻撃を続ける。
「なんだなんだ?!」
他のメンバーが騒ぎに駆けつける。
「何?妖怪?」
「ふむ。ここは聞いた事あるなぁ」
「そなの?」
叉羅沙は深い記憶の底から何かを思い出していた。
ここは昔から神隠しがあるという、噂がある。
心霊スポットとしても有名だそうだ。
どうやら、この妖怪に襲われた人間がいるのだろう。
リアルに迷惑な話だ。
「手助けする?」
護が準備をする。
「……その必要もなさそうですけどね」
それもそのはず。
みんなが何もせず黙って見ている。
それは琉嬉が一人でどうにかできると確信してるからだ。
「ホラホラホラ!逃げ回ってばかりでは何も出来ないぞ!」
妖怪は攻撃の手を緩めない。
琉嬉は黙って攻撃をかわしている。
「ハハハハ!!」
「バカ笑いもそれくらいにしといたら?」
「ハ?」
一瞬の隙をついて簡単に懐に入り込む。
そして、札を直接体に貼り付け…
どーん。
軽い爆発が起きる。
妖怪は一撃で吹っ飛んだ。
「ありゃー」
「派手に行きましたねぇ」
「そやねえ」
「…弱っ…」
結局デカさだけのハッタリ妖怪だったようだ。
「いやー、小さいのが大きいのをぶっ飛ばす瞬間ってのは見てて爽快だね」
「そこ!小さいって言うな!」
不機嫌になる琉嬉。
「しかし……こんな昼間から妖怪が」
「死んだの?アイツ」
「さあ?」
「ぐがが…お、お前達は一体…」
「あ、生きてた」
かろうじて生きていた妖怪。
だが、すでに戦意はない。
「あー、うん。ふかしぎ部」
琉嬉は謎のピースサインで決める。
「な、な、なんのこっちゃ…」
そのまま妖怪はドタッとその場に倒れこむ。
そのまま絶命した。
「残念ですね~。私もぶっ飛ばしたかったです」
「お前も手加減しなさそうだからやめとけ」
龍翔の冷静なツッコミ。
結局妖怪の死体は邪魔そうなので皆で森の奥へぶん投げた。
少々派手な騒ぎを起こしながらもその場を去っていくメンバー達。
「そやけど、もうええのかいな」
「何が?」
「少々、派手にぶっ飛ばして。もしかしたら、報復に来るかもしれへんよ」
「そん時はそん時。迎え撃って返り討ちにする。当然だよ」
「そ、そか…」
琉嬉の冷静な発言に少しひく叉羅沙。
解かっていた事だが、琉嬉はそこらの女の子とは違う。
妙に男らしいというか、強気過ぎて裏の世界にいる自分でも驚く。
こうして今まで、生き抜いてきたんだ…と。
つくづく思った。
生半可な性格じゃ生きていけない。
それは自分にとってもそうだ。
叉羅沙も決して弱い心だとは思っていない。
かといって、現在の10代の女としての心も忘れる訳にはいかない。
割り切りが大切なんだ…。
あれこれ考えながら歩く。
「おー!なんかおいしそう~」
道の途中にあるおいしそうなスイーツなお店。
護はさらにテンションを上げ、その店に入っていく。
「おいおい…」
「おいしそう……」
じゅるり、とよだれの音が聞こえる。
見てみると、凛夢までもが心奪われていた。
「り、凛夢さん?」
琉嬉が凛夢の顔を覗き込む。
凛夢には琉嬉の事なんぞ視界に入ってなかった。
「芹澤さん!私も行きます!」
「あ、おーい」
置いていかれる琉嬉。
「あらあらー。入って行っちゃっいましたね。私達も行きましょう」
「……仕方ないなぁ…」
「フ、フフフフ。ほんま、おもろい人達やなあ」
こんなギャップがあるからこそ、面白い。
一癖二癖もある者達が集まる。
鞍光高校ふかしぎ部。
奇跡的とはいえ、こういったメンバーが集まったのも何かの縁。
叉羅沙は思いっきり楽しむ事にする。
店の中は案外、若い女性を中心に賑わっていた。
護と凛夢は他のメンバー構わず、自分勝手に店の中を見て回っている。
「どうもこの場は俺が浮いてて視線が気になるな」
男一人の龍翔。
自分には似つかわしくない場所に少々気にしている。
「へぇ~。古い感じの作りだね」
「京都に似合う建物やね」
そこで琉嬉はスマホをいじくりまわしている。
「何しとるん?」
「ん?この店の情報。なんかお土産にでも買っていこうかなと。
情報によると2年くらい前に出来たばっかりで京都らしいお菓子が沢山あって有名らしいよ」
「ほぉ~。ウチも何か買おうか」
「新しい割には建物が古いよね。
元々昔からあった建物を改装したんだろうか…」
いろいろ品定めをする。
「………??」
「どった?」
ピタッと琉嬉の動きが止まる。
違う何かを探すかのように、首をキョロキョロ動かす。
お得意の琉嬉のいつもの不思議少女っぷりが始まる。
また、何かの気配に感づいたようだ。
「いや……ちょっと…」
「なぁに?またこんな所まで来て霊とか妖怪?」
「気のせいかな?」
「なんだよぉ、気になるな~」
琉嬉が気のせいなんて事は滅多にない。
この中で一番付き合いが長い護には分かる。
感知力ナンバー1の琉嬉が言うのだから間違いない。
そう確信がある。
「……また、何かいるの?この前のラーメン屋みたいな…」
「うーん…、ちょっと違う。霊じゃなくって……。妖怪的な気配?」
「…さっきのヤツみたいにとか?」
さっきのヤツ。
つい3、40分ほど前に展望台で琉嬉がぶっとばした妖怪。
多分死んだので復讐はないと思われるが。
別の妖怪…という場合もありうる。
「違うと思う…。うーん。人間の霊気と混ざって分かりにくいや」
渋々、集中しての感知を諦める。
(…こっちの気配を逆に感じて気配消したか…?)
どうやら、琉嬉の考えはこの店に紛れ込んでいる妖らしきモノがいた。
が、こっちの詮索に気づき、気配を絶った。
妥当な考えだろう。
だが、本当にそうなのだろうか?
ただの気のせいじゃないのだろうか?
そう思いつつ、一応の警戒はする。
「……でも、こんな大勢の人で、しかも広いとは言えないお店で何かするでしょうか?」
笑顔でも少し緊張が見えるまどか。
「まあ、そうだろうねぇ。賢いヤツなら騒ぎは起こさない筈」
「そう言ってさっき派手に暴れたのは誰だっけ?」
「うっさい」
鋭いツッコミを琉嬉に入れる護。
どっちにしろ、後先考えず暴れるのは琉嬉の専売特許だが。
「よーし、買ってこよう~」
「…変な部分で大雑把に明るいお人やなあ…護はん」
「そうだね…」
「ちょっとぉ。気づかれたんじゃない?」
「ん?何がだ?」
「…さっき店に居た制服のツインテールの子供が、何か探すようにキョロキョロしてたよ」
「それがどうかしたか?」
「こっちの存在に気づかれたかと思って…」
「まさか。俺らに気づく奴なんざ、いるか?今は「人間」側だぞ?」
怪しげな会話をする二人。
一人は金髪の大男と、少年のような、可愛らしい小柄の人物。
よく見るとボーイッシュな女の子のようだ。
男はやけに胸元の開いた服。
女の子の方は野球帽を被って至って、ストリート系ファッション風。
席でおいしそうにケーキなどを食べている。
琉嬉が感づいた、妖怪のような気配。
それを発していたとでもいうのだろうか。
「でもあっちはあっちで強い霊気感じたけど?」
「ハッ、それこそ気のせいだっての。第一見た事ねえ制服だぜ」
「…違う地域の学生なのかな。修学旅行とか?」
「そうじゃねえの?それにガキなんざ、気にするこたぁねえ」
ガタッと、大男の方が席を立つ。
かなり大きい。
190cm以上はありそうだ。
「ホラ、もう行くぞ」
「あーん待ってよぉ」
二人はそのまま店を琉嬉達よりも先に出て行く。
逆に琉嬉達は二人を気にする事もなく会計をしている。
いや、厳密には琉嬉だけは異様な出で立ちに気づいた。
(……なんだ?あの派手な凸凹カップル…)
気にしていたと言っても、見た目と印象だけ程度だった。
護や凛夢は楽しそうに会計を済ます。
「いいね、アンタらは気楽そうで」
「ホラホラ、琉嬉ちゃんも買うてきな」
「ヘイヘイ…」
日が暮れきた。
あっという間に暗くなる。
冬が迫ってるというのが改めて認識されられる。
とはいえ、京都は琉嬉らがいる場所よりもまだ暖かい。
それが救いだ。
「そろそろ戻らないといけないね」
「まだまだ回り足りない~」
「…それはまた明日にして下さいな」
「ちぇっ」
どうやら煮え切らない様子の護。
どっちにしろ、明日は自由行動。
一日中回れる。
まどかの巧みな話術でなんとか護を落ち着かせる。
「面倒なやっちゃなぁ…」
「まったくだ」
(しかし………さっきの二人…?)
叉羅沙も実は先ほどの店での二人を気にかけていた。
(はて…どっかで……。気にしすぎかな)
「…叉羅沙?」
「あ、いえ、なんでもないどす」
「……ふーん?戻るよ」
「そやね」
一旦ふかしぎ部それぞれ別れて、自分のクラスへと戻る。
そのままバスで泊まる予定のホテルへ向かう。
少し疲れたのか、護は寝てしまっていた。
琉嬉や凛夢も疲れた表情。
寧音は一瞬で寝てしまい、龍翔は涼しい顔のまま。
叉羅沙、まどかの方も…と、思いきや、まどかは平然とした表情だった。
(…この人は疲れないのやろか…?)
「ん?どうかしました?」
「いや、なんでもあらへん…」
ホテルに着き、早速の部屋割り。
琉嬉らは、毎度の如く、みなっちやゆう達と一緒の部屋。
「着いた着いた~」
「あと明日一日。それに備えてしっかり休もう~」
「…そんな事言ってもどうせ寝ないんだろ?」
「だよね~」
4人部屋。
あとの一人はなぜか凛夢。
何かの力が働いたとしか言いようがない。
「…また小娘とか…」
「何か言った?死神女?てか小娘って省略するな」
「べーつに」
妙な状況を作り出す二人。
その様子を遠くから見守るみなっちとゆう。
(あ、あの二人…凄いオーラ出してる)
(大丈夫かな…?)
みなっちとゆうは顔を見合わせる。
果たして、こんな部屋割りで良かったのかと…。
自分達が決めたとはいえ、何やら不穏な空気だった。
一方、その頃の叉羅沙とまどか。
こちらも同じ部屋にしていた。
「ん~……」
「どうしました?」
叉羅沙が背の高さを生かしたように、部屋の隅々を調べる。
蛍光灯の裏側まで。
大きい和風のホテル。
前も調べたが、こういう和式の部屋に飾られている絵の額縁裏にお札。
そういうのがよくあるという。
叉羅沙はそれを気にしてかいろいろ調べまわっている。
同じ部屋の女生徒も少し不安そうな顔だ。
「いや、ちょっとなぁ。怪しいお札とか貼られてないかなぁと、思て」
「またまたぁ。叉羅沙さんも心配性ですね」
「はは、ごめんなあ」
逆に、まどかは落ち着き過ぎなのかもしれない。
「大丈夫、なんにもあらへんって」
「ならオッケーです。さ、お茶でも飲みましょうよ」
すぐさま、お茶を用意するまどか。
「あ、でも飲みかけの炭酸ジュースが残ってました。これ飲んでからにします」
「……炭酸ジュースにお茶って…なんて飲み合わせや…」
ぽふっと、畳の床に敷かれた座布団に腰をおろす。
一息をつきながら、少々先ほどの人物の事を思い出していた。
(……どこかで見た事がある気が…。どこやったけなぁ)
しばし、考えモードに陥る。
思い出そうと必死に考える。
そんな叉羅沙にお構いなく、まどかはマイペースにお茶を啜り始める。
他の生徒も同じくお茶を啜る。
「うーん…うーん…」
「どうしたんだろうね、城樹さん…」
「さあ?」
「懐かしき生まれ故郷に戻ってきたんで感慨深いんですよ、きっと」
まったくあてずっぽうなコトを言うまどか。
「さて、私はお風呂に行ってきます。他のみなさんは?」
「私達は後で~。城樹さんは?」
「…ん?あ、ええ?何の話や?」
「お・ふ・ろ。ですよー♪」
楽しそうに言う。
既に準備万端のまどか。
抜け目がないというか、なんというか、ちゃっかりした行動が多い。
みゆと同じように番狂わせをする人物である。
「そうやなぁ。ウチもお風呂行こうか」
「じゃ、他のメンバーも誘ってきますね」
「…他のメンバー?」
他のメンバー。
それはいつのも面々である。
「やほー。大浴場楽しみだよ~」
ニコニコしながら護もやってくる。
ジャージ姿だが、どこかしら健康的な色気をかもし出している。
男女問わず、人気がある護ならではの特権。
「あれ、凛夢さん、琉嬉ちゃんは?」
「……な、なんで、私に聞くの…?」
「だって、同じクラスやし、今日は同室なんやろ?」
「………なんか、持ってきたノートPCで何かやってたけど…」
「むむ、琉嬉ちゃんめ。ここまで来てそんな事を…」
「…何を今更…。どこ行ってもゲームとかやってるお人やで」
今回は長旅ともなるので、PCまで持ってきてたようだ。
チェックするのは普段巡回しているサイトなど。
「んもー。琉嬉ちゃんめ…」
護は徐に携帯を取り出す。
「なんや、持ってきたん?」」
そのまま琉嬉に連絡を取る。
「琉嬉ちゃーん?お風呂行こうよ~」
「うるせー。お前らの目の前にいるだろうが」
「え?」
いつの間にかいた琉嬉が護の膝の裏を軽く蹴飛ばす。
「のわっ」
バランス崩し、その場に崩れ落ちる。
「うへぇ。まったく気がつかなかった」
どうやら、琉嬉も一応凛夢から話は聞いてたらしく、ちょっと遅れてやってきたようだ。
そこでタラタラやってたみんなに追いついたところ、電話がきた。
「まったく…。今日の護はみゆみたいだな…」
「たしかに」
思いのほか、寂しやがり屋なのか?
どうしても、一番近しくて親しい琉嬉達と一緒に行動したいようだ。
「いやいや、凛夢さん。中々の大きさですね」
「!!」
ビクっと凛夢がのけぞる。
後ろからまどかが、凛夢の胸を覗き込んでいた。
「な、な、ななな…まどかさん!?」
「さすがですね。ふむふむ」
寧音も一緒になって覗き込む。
まるで変態オヤジ。
「……私より、芹澤さんとか、城樹さんの方が大きいですよ」
「叉羅沙さんは何度も見てるので飽きたんですよ」
「なんやソレ」
そしてターゲッティングは護へ。
「へ?」
「さあ、護さん。見せてください。そのFカップとやらを!」
「な、なんでサイズを…てか、ちょ!やめ…」
ドタバタする脱衣所。
入る前からテンション高すぎである。
「あたしより寧音ちゃんの方が…」
「いーえ、私のような筋肉もついてる女とは違う、ぴちぴちむちむちの護さんの方がいいに決まってます!」
「どういう理屈なんだ~」
もみくちゃになる。
寧音は程よい筋肉質。
といってもそんなに目立つ訳でもなく、綺麗な体である。
「……何やってるんだよ…コイツら…」
ジト目がさらにジト目になる琉嬉。
そして、自分にはないものを見て遊ぶまどかがちょっと嫌いそうになっていた。
「ホラホラ、他の生徒にも迷惑やろ。さっさと入りなさいな」
叉羅沙がみんなを無理矢理背中を押して風呂場へ連れて行く。
いつもムスっとした表情の凛夢も笑みがこぼれていた。
「何なのこの人達は…。アハハ、可笑しい」
「……お、笑った」
「…な、なによ、私が笑わないとでも思ったの?」
「うーん?まぁねー。あんまり心から笑った事なさそうだし」
「……うるさい。私も先に行くわ」
そのまま先へ浴場へ入っていく。
顔は少し赤らめていたように見えた。
たしかに、今思えばあまり笑った印象はなかった。
学校でも所詮、営業スマイル。
本性を出さない限り、上辺だけの表モード。
少しは心を開いてきたのかもしれない。
「はぁーっ!気持ちいいーっ!」
「…だねぇ~……」
気持ちよさそうに温泉に浸かる。
体も洗い、あとはゆっくり浸かるだけ。
修学旅行の日程も明日一日自由行動。
その次はもう帰るだけの移動となる。
明日一日のために疲れを癒す。
「……ふぅ~…。しかし…」
琉嬉はまわりのメンバーを見る。
みんないいスタイルしている。
護はもとより、寧音も凛夢も、叉羅沙も。
まどかも決して劣っていない。
いい肉付きしている。
ふかしぎ部のメンバーはみんな素晴らしい。
なのに、琉嬉だけは背も小さく、ペタンコ。
スタイルは残念である。
「どうしたんですか?」
テンション低めな琉嬉を察したのか、まどかが心配そうにする。
「いや。みんなスタイルいいなぁ、って思って…」
そのままブクブクとさせながら、顔半分湯船に浸かっていく。
ちょっと困ったような顔するまどか。
「大丈夫ですよ。琉嬉さん。世の中、琉嬉さんみたいなスタイルでも好む方々がいますから」
「…それ、フォローになってへん」
隣に居た叉羅沙が即答。
「……まどかのバカ」
プイっとそっぽ向く琉嬉。
さらに嫌いになりそうだった。
そして、それを見てた凛夢はまた笑いを堪えていた。
「なあなあ、琉嬉はん。ちょいと、真面目な話、いいどすか?」
「…何?」
「気になる事があってなあ…」
「そうなの?」
「ま、お風呂、上がってからみんなに言いますえ」
「…わかった」
気になる事。
そう、あの店ですれ違った派手な二人組み。
それが気になっていたが、どうやら察しがついた様子だった。
風呂からあがったメンバーはそのまま自分らの部屋には戻らず、あまり人通りのない旅館そばの公園へ来ていた。
こっそり抜け出している。
そこはまどかの得意な結界術で、バレないように。
能力の使いどころがズルいというか、少し小賢しい。
さすがに夜だと寒い。
だが、あえてこんな場所にした。
「で、叉羅沙。話ってのは?」
「それの事なんやけどな。今日行ったお菓子のお店あったやろ?」
「うん」
「あの派手な二人いたやろ?」
「いたねえ」
派手な二人。
やたらとでかい男とボーイッシュ風な女。
「……多分、ウチが一度会った事ある連中…かもしれへん」
「…どういう事?」
少し険しい表情になる。
過去に何かあったのか?
「昔な、半妖達が集まったグループみたいのがあって、それといっぺん戦ってるんや」
「はんよう……?それって…」
護はまだよく解かってないようだ。
だが、琉嬉はピクっと反応しながらも、そのまま黙って話を聞いている。
「半妖……つまり、人間と妖怪のハーフ…て事ですか」
「まどかの言うとおり。人間でもない、妖怪でもない、どっちつかずの種族や」
凛夢も話の輪に深く入り込む。
「……非常に珍しいんだっけ?」
「そや。凛夢はん。多種間の生物…」
そして琉嬉がこう切り出す。
「妖怪といえどもピンからキリだしな。人間に近い妖怪とじゃないと生まれない。
実際にそういったヤツらとは何度か会った事あるけど、非常に厄介でさ」
「厄介……なの?」
「…まったく。護は本当、バカ担当だよな。何も知らないの?」
「あー、ヒドイ~。私はそこまで知ってる世界じゃないんだよー」
「まぁ、いいか」
サラっとスルーして話を進める。
「厄介の理由は…外見が人間とほとんど変わらない。そして、両方の力を備えている…」
「簡単に言うと、人間が妖怪のような力を使うもんなんですよ」
「なるほど…」
人間と妖怪の力を持つ。
それが半妖。
人間が持つ霊力と妖怪の妖術。
これほど厄介なものはない。
そんな者達が集まった組織めいたものがあるというのだ。
一度、そんな組織と会った事がある。叉羅沙はそう言う。
「ま、会ったと言ってもそれっきり戦ったりとかはしてまへん。まだ存在してるんやー、ていう感想が現状やな」
「ふーむ…。そいつらって、京都に存在するグループなの?」
「まぁ、そうやな。あの時…5年前程かなぁ…?少数だったし。
あれからどれくらい伸ばしてるかは知りまへん」
「…そか」
「いずれにせよ、仲間にはならないタイプだとは思うけどね」
しれって琉嬉は言う。
どこか、気に食わなかったらしい。
「…その根拠はなんで?」
「……チラっと、天叔父さんや、じいちゃんから聞いた事あるんだ」
「あー…、あのテンション高い人達ね」
護が何やら思い出していた。
一度琉嬉らの祖父らが居るお寺に訪れている。
「日本霊術会と敵対する、妖怪に身を売った人間達の組織があるって…。もしかしてそれが半妖達の組織なのかな」
「…日本霊術会……ねぇ」
まどかが今度は日本霊術会の方に反応する。
「なんや、琉嬉ちゃん知っとたんか」
「一応ね…。ウチは別に霊術会に入ってないし、単なる他所の話だって流してたし」
「え?琉嬉ちゃんのとこ霊術会に入ってないって…」
「あー、言ったでしょ?うちは古くから伝わる一族で、ほんの狭い地域での霊能一家だから。そんな大きなのは入ってないよ」
「…そうなんか」
「あとホラ、來魅を封印した五大家のひとつってだけで有名になったのはここ100年の間の話だって」
「それだけで十分じゃないの?」
同じ五大家の凛夢が皮肉まじりに言う。
「…そういや、みゆのとこってそれに入ってるのかな?」
首を傾げながら護は考える。
「入ってるというより、商売連携してる…って感じよね」
「へぇー…」
凛夢が答える。
「霊術名家として言わせてもらいますが、五大家は名家と違って、もっと特別な存在ですからね。
敢えて言うのなら、「ライバル」でしょうか」
「ライバル…ねぇ」
敵対してる…という訳でもない。
ただ、同じ同業者として鎬を削っている。
日本霊術会。
こういった、霊術が優れた家系や人物が属しているようだ。
まとまって統一性を持つ事により、日本中、世界中とネットワークがあると、さまざまな体制が整える。
それが組織化の強みだ。
琉嬉の家はそれには入っておらず、単独での祓い業をやってるという。
「……私の帰る場所なんてないけどね」
ボソっと凛夢が呟く。
それを聞き取る者はこの時誰もいなかった。
「日本霊術会ねぇ…。そんなのがあるんだ」
「本当、一応形としてだけだと思うよ。本当に活動がまともだったらがしゃどくろ事件だって力貸してくれるだろうし」
つまらなさそうに言う琉嬉。
「でもま、ウチはそれに入ってないから力借りれなかったんだろうけど」
それもある。
「てか、來魅ちゃんですら、倒せそうになかったバケモノに太刀打ち出来ると思わないけど…」
どっちにしろ、護の言う通り。
「あーあー、話それたけどええ?」
半妖から話がズレてしまった。
元通りに話を進める叉羅沙。
「…これは、思ったんやけど、あっちがあの時、ウチらに気づいとったら…?という話」
「…接触はいずれありそう…とか」
「そや。京都にいる限り」
「………なるほどね。そういう事に巻き込まれる一年だしね、今年は。覚悟はしとくかな」
もう、いやいや琉嬉は事件に巻き込まれる運命を受け入れる事にする。
散々な目にあった。
どっちにしろ、こういった世界にいる限り、その半妖達とも会う事になりそうだが。
「その霊術会の一番偉い方も、その変な源っていう人もある組織が動き出したって言ってたんですよね?」
眼鏡を人差し指で直しながら言う寧音。
眉毛が吊り上がって少し険しい表情。
「そやね」
「その組織が叉羅沙の言う半妖達の……としたら?」
「確定は出来ねぇけど、確率は高いんじゃねえの?」
両手をポケットにつっこんだまま龍翔の発言。
後ろには遊希の姿がうっすらと見える。
「龍翔君も霊術会の名家だったよね?」
「一応な。名家って言ったて他にまだいるんだぜ」
「そうですね。私達の他にも10数家…」
「そんなにいるの?」
驚きの声をあげる護。
「そんな人達が集まってるから霊術会は「怖い」んだけどね」
面白くなさそうに言う琉嬉。
「オーイ!お前ら、なーにやってんだここで?」
突然の声。
みんなビクっとなる。
いたのは琉嬉の担任の桜川先生だ。
両手には袋いっぱいに何か入っている。
重たそうにするところ見ると、何か缶のような…。
「せ、先生!先生こそ何を沢山…って、それビール?」
「おう。ビール。これから飲むんだよ」
(……教師あろうという者が…生徒の前で堂々と…)
全員が心の中でツッコミを入れていた。
「あまり遠出するな。ていうか旅館から出るなよ。怒られるぞ」
そう言いながら、注意しただけで、さほど怒らずさっさと旅館へ戻っていく。
本当に、マイペースでワイルドな教師だ。
「でも、桜川先生の言うとおりですね。寒いし早めに戻りましょう」
「ヘイヘイ。生徒会長が言うなら帰ろう帰ろう」
パラパラと各自戻り始める。
「あ、護。ちょっと」
「ん?何?」
琉嬉は護だけを呼び止める。
「あのさ、護。半妖についてなんだけどさ」
「あー、あれね!アハハ。まだ言ってなかったけ」
「……??言ってないも何も、あれからなーんも言ってないよ。僕も聞いてないだけってのもあるけどさ」
「ふーむ…」
少しトーンダウンしながら護は自分の事を語りだす。
「あたしさ、半分妖怪なんだよ」
「…それは知ってる。なんとなく」
「そう、人間もであり妖怪でもある」
「…親が妖怪なのか?」
「あー、違う。ていうか全然違う」
「…え?」
「正式には、元人間、今は半分人間。かな。自分で言っててわけわかんなくなりそうだ。アハハ~」
「……悠飛と同じ…?」
「ん?悠飛くんがなんだって?」
「あ、いや…なんでも」
話を戻す。
「んーとね、ほんの、3年くらい前かな?中学3年の時にさ。一度死に掛けて、その際とある妖怪に命を救われた」
「………マジで?」
「救われたっていうより、必死こいてその妖怪の力を奪ったというか…」
琉嬉の顔がいつになく真剣になる。
「マジマジ。おかげで妖怪の血が混ざって半分妖怪化したってわけ」
ぽかーんとして何も言えない琉嬉。
まさか、護が妖怪側の人間だったなんて、と。
一度戦った時やがしゃどくろの時も一時的に妖怪化していた。
あまりよく見ていなかったが、あの時の力は凄まじかった。
「…厳密に言うと、無理矢理、妖怪の血を入れられた人間…かな。
この髪の色や、妖怪の力開放した時に目の色が変わるのはその影響のせい。
金髪なのも、その妖怪が金色の毛してたからかなぁ……」
護はいたって真面目に説明をする。
「……む、無理矢理って…。そんな事が可能なのか…」
「なんじゃないかな?妖怪の持つ妖力のせいかもしれないけど」
「…その妖怪、かなり高等な妖怪なんだね。そんな事出来るヤツなんてほとんどいないと思うけど」
「そうなのかな?おかげで、いろいろ大変だったけどね」
明るい表情の向こうにはどれくらいの努力や辛さがあったのだろうか。
想像にも出来ない。
そして、判明できたのは、護は純粋な半妖ではない事。
無理やり妖怪化させられた、人間である事。
非常に複雑な状態なのだ。
「そう……か…。悠飛の他に護もそういうタイプだったのか」
「悠飛くんもそういうタイプって…?」
「…悠飛の力を知ってるでしょ?」
「あの冷気の力?」
「そう。あれは…元は彼方家に伝わる力じゃない」
「……そう…なの?」
「詳しい事は本人から聞くといいさ。僕の事じゃないし。ただ、護と近しいモノがあると思ってさ」
「………ふむ…。なるほどね」
「でも…」
勿体ぶったように琉嬉が重い口を開ける。
「これじゃまるで…アイツと……。緋瑪斗と同じ…」
「緋瑪斗?あの赤い髪の女の子?」
「……緋瑪斗も護と同じ、半妖だ」
「え?」
「元々は普通の人間。護と違うのは、霊能力があった人間じゃないって事」
「へぇ…それは災難だっただろうね」
「気になるのはその半妖達が護と同じタイプなのかどうかって事さ…」
「どうゆう事?」
リンッと髪飾りの鈴が鳴る。
琉嬉は後ろを向いていた。
「先天性の後天性との違い。
先天性だったら…厄介だって事」
「…ふぅん?」
そのままお互い無言になる。
「ここで暗くなっても仕方ない!ホラ、部屋に戻ろう!折角の修学旅行だしネ!」
「あ、うん」
なんだか話がおかしな方向へ行ってしまったが、ここで暗くなっても仕方ない。
護の言うとおりである。
持ち前の明るさで琉嬉の手をひっぱり旅館へ駆け足で戻る。
「護、ごめんね。辛い事聞いちゃって。どうしても気になってさ」
「なーに言ってんの、琉嬉ちゃん!」
琉嬉の鼻に指を押し付ける。
「いずれ分かる事なんだし。早かれ遅かれ、ね」
「……フフ、護らしいな。わかったよ。戻ろう」
「おっけ~」
二人はそのまま旅館へ入っていく。
新たな不安も増えた中、これにて修学旅行三日目も終わる。
残る二日のうち、一日。
自由行動。
ふかしぎ部のメンバー達は四日目に備えて、各々の部屋に戻り、夜を過ごす。
はてさて、自由行動はどうなることやら……。




