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ふかしぎ真霊奇譚  作者: 猫音おる
第六章   ~秋季心霊編~
34/92

#34 踏切という名の狭間の中で

すっかり木々の葉が赤や黄色に染まる。秋である。

日中も気温がそんなに上がらなくなる。

肌寒い日が続くが、この田舎町。

自然が沢山で景色が素晴らしい。

もう上着を何枚も重ねないと外出はできなくなる季節だ。


 ひんやり風が冷たい。

冬も近づいてくる。

11月に入ろうかとする、冷たい空気が身に染みる。

どこかの山奥では初雪も観測したそうだ。

そのうちこちらにも雪が降るだろう。

そろそろ準備もしなければならない。



 ……そんな中、琉嬉の家はにぎやかだった。

「コラ、それはわしのじゃ!」

「いつお主のだと決まった?この玉子焼きは私の分だ」

「何をぉー?!」

「いい加減にしろぉ!」

 すかさず來魅、銀杏の二人の頭にチョップが直撃する。

「痛いなぁ…」

「毎朝毎朝うるさいんだよ!」

 そう、あれから銀杏がしばらく居候となり、毎朝こういった戦いがあるのだ。

普段おとなしい彼方姉妹だけに、この妖怪二人はにぎやか担当。

まったくもって不思議な光景となる。

「沢山あるから食べてね」

 嶺珠の持つフライパンからさらに追加される玉子焼き。

大量だ。

お互いに食い意地を張る。

どこまでもライバル意識を燃やす銀杏。

「まあ、どこかの誰かさんみたいだけどね」

 悠飛が琉嬉を横目で見て言う。

「……何ー?」

「なんでもないよ~」

 悠飛を睨みつける琉嬉。

どこの誰かとは、琉嬉と凛夢の事だろう。

琉嬉凛夢もお互い譲らない強気な性格。

どっちにしろ、琉嬉の周囲はにぎやかなのは変わらない。


 とあるサイトのチェック。

琉嬉が最近作った心霊、怪奇現象解決のためのふかしぎ部のサイトだ。

少々アングラなサイトっぽい。

適当にダメもとで作ったモノだ。

「ふかしぎ」な事件を取り扱ってまとめている。

何もしないでいたら、駄弁って終わってしまう。

それをしないために、こちらから探そうという案だ。

勿論、知名度もなければ大した作りもなっていない。

ただ誰か来た時のために、連絡取れるようにメールだけは設定してある。

一応確認を取る…のだが。


 まさかのメールを受信していた。

「んー…。どれどれ」

スマホ経由からチェックする。

メールが入ってる事を確認すると、それを躊躇せず開く。

「うむぅ」

 唸りながらメールの内容を確認する。


 その内容とは、ここから少し離れた隣の隣の町。

千年葉せねば市。

あまり馴染みはない所。

実家の寺がある所とはまた違う町。

むしろ住んでる鞍光を挟んで真逆方向だ。

千年葉は農業が盛んで、市だけあって人口も多い。

なかなか栄えてる街である。

大きな湖があってそこが観光になっていていい所だ。

そこに住むという女性からのメール。

踏切での事故が多発しているというのだが、どうやら不可思議な事に巻き込まれたという話だ。

琉嬉は少し興味も持ち始めた。

踏切事故の多発なんてよくある話だ。

だが何かひっかかる。

不思議な体験したという話…。

後日そこへ向かうと返信する。




 学校終わりでその場所へ向かう。

時間はまだたっぷりある。

どうせなら暗くなる前に行きたいのだが、時期的にそれは無理だろう。

午後5時にはもう日が沈んでいる。

夜は相手側にも好都合でもある。

早速琉嬉はその町へやってきていた。

琉嬉の自宅から電車だと30分程かかるくらいの距離。

そこそこ遠い。

学校からだよ1時間かかってしまう。

待ち合わせ場所へと向かう…が、少し遠いので寝てしまいそうだ。

ウトウトしかけた所に、千年葉市へ入った。



「……ここかな」

 駅前通りの少し華やかな道路沿い。

普段来ない町なので何もかもこの風景が新鮮。

待ち合わせ場所は駅前のタクシー乗り場付近。

その場に少し不釣合いな制服姿の少女が居た。

「えー、とメールくれた…ミカさん?」

「あ!え?はい!」

 驚いた様子の少女。

「…あー、言っとくけど、小学生じゃありませんから。こう見えても高校生です」

 琉嬉は先手を打つように高校生だという事を言う。

「あ、そうなんですか…」

 案の定、小学生に間違えられてたようだ。


「…よくふかしぎ部のサイト分かりましたね」

「ええ、近場で運営されてる心霊系をサイトを探してたので…」

「ふむー、えと…詳しく聞きたいんですけど。その踏み切りでの話」

 早速単刀直入で不思議体験とやらを聞く。

「……はい。実は…」




 話の内容はとある踏切を渡る時。

時間も夜。

人通りが少なくなる時間帯に通った時である。

何かに引っ張られる感触があったという。

それもかなり強く。

踏切はすでに降りていて電車が通る。

危険な状態にも関わらず強烈な力で引っ張られる。

「その時見たんです……。はっきりと。いくつもの顔が…」

 トラウマ状態なのだろう。

それ以上の言葉はしゃべれない状況。

「あれ?でもなんで助かったの?」

「偶然通りがかった人がいてなぜかパっと消えてしまって…」

「ふむ……?」


 その通りかかったという人間が気になる琉嬉。

だがそれは一先ず置いといて、その踏切へ向かう。

ミカは踏み切りへ行きたくないという事で一旦その場から別れた。

琉嬉は単身その「噂」の踏み切りへ向かう。

やってきた踏切は街中から少し離れた場所。

すぐ近くには森林が生い茂るような山道となる。

街中から大体、2、3キロと離れた場所だろうか。

たしかに、人通りも少なく、不謹慎ではあるが自殺するのにも持って来いの場所とも言える。

來魅にネットで調べてもらった内容は事故が多い有数の踏み切り。

度々、霊目撃談も本当かどうかは分からないがあるようだ。

いわゆる、心霊スポットとして有名な踏切らしい。

「ここねぇ……。今は何もいないようだけど…?」

 日が沈みそうな時間帯。

カンカンと鳴る踏切の音と夕焼けが妙にマッチする。

踏切のバーが降りる前にすかさず渡ってみる。

「…………」

 これといって別に何にもない。

琉嬉程の感知力が高い能力をもってしてもだ。

ただただ、電車が通りすぎていく。

その後も空しく車が通っていくエンジン音がチラホラするだけ。

電車が通り過ぎてまた静けさを取り戻す。

(…時間帯によるものなのかな…?)

 札を宙に舞わせ、辺りに何かないか確かめる。

が、何もない。

しばし、時間をおいて再度訪れる事にした。



 夜の9時過ぎ。

真っ暗。

近くのゲームセンターでミカと時間を潰してきた。

時間も時間なので家には連絡。

まあいつのも事だが。

ミカは先に帰宅。

終電にまで間に合えばいいとは思っている。

「さぁて……。どうでるかな…?」

 再びやってきた踏切現場。

夕方とはまた違う、不気味な姿へと変貌していた。

「これはこれは雰囲気あるね」

 電車の本数もこの時間なら減っていく。

車すら台数が減っている。

「……行きますかな」

 そう思った瞬間。

「……!」

 急激に高まる霊気。

そう、目の前の踏切から強力な霊力が溢れていく。

「へえ……。これは…中々大物だね」

  視覚にはまだ現れないが、強力な霊気は確認できる。

とりあえず、近づいてみる。


「うっ!?」

 凄まじい霊圧と怨念。

近づくのが厳しい。

琉嬉はポケットの中の御札に手をかける。

「……これ程とは……。普通の人でも違和感くらい感じるだろうね…」

 だが、分かった事がある。

ここで死んだのは現段階で把握しているのは大体5、6人程度。

ネットでの情報だけだが。

多分ここの悪霊化した霊が呼び寄せてるのかもしれない。

仲間を作るために。

「このままだと永遠に呪われた踏切になるな…」

 このまま黙らせるために、祓ってしまおう。

琉嬉はそう考える。

「……」

 一旦その場から離脱する。

目の前にははっきりといくつもの顔らしきものがうごめいている霊物質が視える。

これまでにない、凶悪なモノだ。

「コイツは…動けない自縛タイプなのか?」

  以前戦った事ある悪霊とは違う。

その場に寄生して通るものを餌にしているヤツだ。

「うっかり近づくとヤバいねこりゃ…」

 しばし1、2分の間に対策を練っていると悪霊の塊はいつのまにか姿を消していた。

「あ、あれ……?」

 すっかり何もない、さっぱりした踏切の風景。

辺りは静かさが増す。

時々、風で揺れる草木の音。

車の音。

冷たい風が通って行く。

何もなかったのように…。

琉嬉はその後に何回も踏切を行ったり来たりするが何も起こらない。

時折付近を通る人にとってはウロチョロしてる怪しい小学生にしか見えない。

(……どういう事だ?気配すら消えるなんて…?)

 首を傾げしばらく考え込む。

それから15分、20分と経っても何も起こらない。

「…なんかバカらしくなってきたぞ…。さて…」

 ミカに連絡取るが返事は返ってこない。

何度も同じように連絡しても一向に返ってこない。

「……なんだ、この化かされたような気分は…」

 とりあえず、時間は夜10時を過ぎていた。

「う……寒い」

 おとなしく帰る事にしたのだった。




 翌日の学校。

放課後の部室。

琉嬉は不機嫌そうな表情で椅子に座って頬杖をついてた。

「おーっす。どったのー?琉嬉ちゃん」

「護か…。いや、昨日ちょっとね」

「ん?悩み?」

「悩みってわけじゃないんだけどさ…」


 昨日のあった出来事を簡潔に話す。

あれからミカとの連絡も取れない。

結局寝る事もあまり出来ずに、睡眠不足に陥っていた。

サイトのメールをチェックするが特に何もなし。

「いつの間にこんなホームページ作ってたの?」

「テスト終わって暇だったし」

「……ほとんどは僕に作らせてたじゃないですか~」

 嘆く御琴。

「あの、私も手伝ったんですよ!」

 寧音が無邪気にくっついてくる。

けど琉嬉はいつものように手刀を喰らわす事もなく、冷静だ。

何かの考えをまとめたのか、ガタッと立ち上がる。

「……しゃーない。少し情報を沢村刑事から聞くかな」

「…琉嬉ちゃんの情報網って、なんか凄いね」

「んー、あくまでも「怪奇事件」の関連性ある情報だけどね」

「ふぅん」

 琉嬉自身も調べれる範囲は調べる。

そこはやはりインターネットという情報網が強みでもある。

本当か嘘か分からないまでも何も情報ないよりはマシだ。

「もう一回行ってみれば?あたしは今夜暇だし、付き合うよ~」

「…来てもいいけど…。別に楽しくないよ?」

「わ、私は残念ながら…今日は夜おとなしくしてないと…」

「…寧音は普段家に帰って何してるの?」

 そう問われると無言で俯く。

琉嬉らは顔を見合わせて、笑う。




 再び訪れた踏切。

時間は昨日と同じ夜の9時程度。

「ここね~」

「うん。……しかしミカとの連絡取れなくなったなあ…」

 あれから不思議とミカとの連絡は取れない。

何があったのだろう。

「あ、でも気になる事あるから攻撃は仕掛けないでね」

「え?まあ、琉嬉ちゃんの言う事ならそれに従うけど」

 しばらくする事10分ほど。

徐々に辺りに霊気が溢れ出す。

やはり踏切付近に先日現れた悪霊が現れる。

「うっへ…何コレ?気持ち悪…」

 異形の状態になっている悪霊。

琉嬉と護は30m離れた場所で見ているだけ。

「…護。僕近づいてみるから何かあったらよろしく」

 そう言いながらそのまま近づいていく。

踏切から5m離れた位置まで近づく。

踏切のバーが降りてくる。

カンカンと電車が来る音が鳴り響く。

音が鳴った突如、悪霊の塊からいくつもの手が琉嬉を狙って絡みつく。

「うわ!?」

 霊とは思えない力で引きずり込む。

「琉嬉ちゃん!」

 間一髪護の霊力剣で手を切り落とす。

「大丈夫?」

 その瞬間電車が走っていく。

「……あっぶな……」

 電車が走り去った後悪霊はまたもや姿を消していた。

「あれれ?いない…」

「やはり…ね」

「…?」

 護は何がなんだか分からないようだ。


「おそらく、夜の9時から9時半の間だけ、活動を開始するようだね」

「そんな芸当ができるの?まったく霊気も感じないよ」

「どんな力使ってるのか分からないけど……そういうコトが出来るみたい」


 琉嬉の推理はこうだ。

夜の9時以降、ここを偶然通りかかる物を引きずり込み、電車で轢き殺す。

なんとも趣味の悪い悪霊だ。

電車によっては時間帯に通らない場合もある。

こうやっていくつもの命を奪って、悪霊の仲間にしてきたのではないだろうか、と。

同じような事故が重なっていて、不可解過ぎる。

そのため報道はされなくとも、地元住民からの伝などで、知らずうちに広まる。

その情報がネットなどを介して有名になっていく。

勿論、心霊愛好家の中にも知れ渡っている。

そんな状況なのだろう。

「だから、今までうちらみたいな霊感ある人間も気づかなかった訳だ」

「…だろうね。まったく、面倒事を持って来て貰ったよ」

 その面倒事を持ってきた本人との連絡が取れない。

何か、違和感というか、モヤモヤした気持ちになる。


「……まさか、ね」

 ポツリ、琉嬉が漏らす言葉。

「何が?」

「いんや、何でもないよ…」

「………?しかし、まあ、気配をゼロに出来る芸当なんて出来るもんなんかね」

「…龍翔君の使役してる妖怪が似たような事できるけど…。それとは違うと思う。

「生きている」僕たちにはどうせ理解できない力だよ。…決して「生きている」妖怪にもね」

 完全に、霊気・気配を絶っている。

霊物質にはまだまだ理解できない部分がある。

琉嬉にとっては生きているうちには霊の本質なんぞ解からない。

所詮は生きてる者、死した者。

相容れない存在。

完璧に分かり合える事なんてない。



 不思議な事はそれだけじゃなかった。

ミカに何度も連絡するが、返事は返ってこない。

返ってこないが、一応届いてるようだった。

普通なら番号が使われてませんや、メールであればエラーメッセージが返ってくる。

ところがどっこい、そういった事はなく届いてるみたいだった。

「うーん……。困った。祓おうと思ってもあの短い時間だし…。ミカとは連絡取れないし」

 何度もメールを確認する。

連絡手段はメールしかないのだ。

「通話出来る手段聞いとけば良かったかな…。電話でもアプリでも」

 少し悔しがる。

今のご時世、電話だけじゃなくても会話が出来る手段がいくらでもある。


「とーりあえず、あたしでは力になれなさそう?」

 ちょっと寂しそうな顔をする護。

でも琉嬉はその寂しそうな顔をする護の頬を優しく撫でる。

「え?ちょ?」

「いやいや、十分だよ。一撃で仕留められなかったら困るし。人手集めて一気にたたもうと思う」

「なるほどー。てか琉嬉ちゃん程の力でもやばそうなの?」

「万が一…ってのと、ふかしぎ部だしね」

「そうだよね~」

 能天気な護。

撫でられた頬を擦る。


「珍しくみゆはノッて来ないんだね」

「あー、最近家の方が忙しいらしいよ。年度末近いし」

「家が?なんで?」

「僕も良く知らないんだけど、港咲家って…五大家の中でも一番有名なんだ」

「へぇー」

 良く分かってない護。

この裏の世界…というより、別世界に居ながらもあまり事情を詳しくない。

「ほら、表向きは海外貿易だかなんだかの…」

「あ、それは聞いた時ある」

「なんていうか表向きの商売が忙しいらしいよ。難しい話すると、円安がどうのこうのとか」

「…頭痛くなりそうだからそういう難しい話はパスパス」

「……だと思った」

 単純に国内国外に商売してるため、いろいろ大変だという。

みゆも少しながら手助けをしてる…らしいが、どんな手助けなのかは不明。

どうせロクな事じゃないと琉嬉は考えている。


 テクテク駅中を歩く。

仕方なく帰りの切符を買う。

この町の駅では、琉嬉達が通学区間じゃないので定期が使えない。

余計な出費がかさむ。

「面倒だな…。まったく」

 ブツブツ独り言をぼやく。

(琉嬉ちゃんって普段無口なのに喋りだすと少々うるさい…)




「お帰りなのじゃ」

「お帰り~」

「お帰りーっ」

「…ただいま」

 出迎えが沢山の彼方家。

銀杏、來魅、導の3人がドア開けたらその場に居た。

一時期住んでいたお寺時代も似たような光景だった。

「今日も遅かったね。またなんか問題事でも抱えてるのかい?」

 父親らしく、心配する。

とはいえ、娘の帰りが深夜近くになっても寛大に許すのは家柄のせいだが。

「ん、大丈夫。なんとかするから」

 そのまますぐ自分の部屋に戻る。

すぐ、スマホを確認する。

沢村刑事からの着信があった。

「あ、やべ…折り返ししなきゃ」

 早速連絡を取る。

「もしもーし…」

『お、琉嬉ちゃんかー。こんな時間にごめんね~』

 電話の向こうは刑事らしかぬ明るい口調。

『事故系統は担当じゃないから少し手間取ったけど、とりあえず分かった事があるんだけどさ~。いいかい?』

「おっけーです」


『その踏切で死亡事故は8件。異常に多いだろう。ここ5年の間でだ。

呪われた踏切とまで言われてるらしいね。

地元の人間ですらあまり近づかないていう話を聞いたよ』

 しばらくその事故などの状況の説明を聞く。

予想してたよりも事故の件数が多かった。

それも表沙汰にされる事もなく。

完全な自殺も何件か含まれている。

だが、「あきらかに」事故も含まれているという。

車とかではなく、「歩行者」での。

それはおそらく琉嬉が体感した、あの悪霊のせい……。

「沢村刑事、その事故って夜の9時以降ばっかりですか?」

「全部とは言わないけどそうだね。ほとんどは」

「なるほど…。これはますますほっとけないね…」

『…もしかして、今回結構危険?』

「危険ていえば、危険だけど…今回のはタイミングが命、かな…。

沢村刑事、ありがとう」

『なぁーに。可愛いお友達の頼みならではね』

「プッ、何です?それ…」

 少し笑ってしまう琉嬉。

『じゃ、健闘祈る!以上!』


「話は終わったんかの?」

 全部聞いていたのか、銀杏がいつの間にかいた。

「な、なんだよ!銀杏!」

「フフフ。お困りなのであれば、力を貸すぞ?」

「…なんか、失敗しそうでヤダ」

「な、何を言うか!高貴なるこのわしの助力が必要ないじゃと!?」

「ハハハ、銀杏。琉嬉は結構我儘だぞ」

「うぬぬ…」

 來魅までいる。

そのままパソコンの場所まで行き、ネットを始める。

「ま、そこの狸に構ってないでこれを見ろ。琉嬉」

「ん?」

「な、狸…ではあるが…。て、ちょっと…」

 自分のペース乱されまくる銀杏だった。


「一応、その踏切とやらの情報探し集めたぞ。ついでに、掲示板にも聞いてみた」

「…だんだん手馴れてきたね…來魅」

 すっかりネット中毒者・來魅。


「どれどれ…」

 数は多くないが、踏切の話が出ている。

やはり事故が多いためか信憑性が薄い話だ。

だが決定的な情報があった。

どれも夜9時から9時半前後に事故が起きている、という話。

そして、その不可解な出来事を体験したという噂話も全て当てはまる。

その中に気になる書き込みがあった。

「……このハンドルネーム…MIKAって…」

 そう、琉嬉にコンタクトを取ってきた少女の名前もミカだった。

偶然同じというのも考えられるが。

書き込みの月日は今から4年ほど前だ。

「………いや…本当に……まさか」

「ん?何か分かったのか?」

「推測の域ってヤツだけどね…」

「ふむ……」

 敢えて深く聞かない。

「なんじゃ?教えてはくれんのか?」

「お主はいいんだ。ほれ、ゲームでもしようぞ」

 無理矢理銀杏を連れていく。

(変に気を遣わせちゃって…來魅のやつ)

 代わるように琉嬉はパソコンに手をつける。




 後日、また沢村刑事に聞きたい事があり、直接会う事になった。

琉嬉には気になる事があったのだ。

「やあ、琉嬉ちゃん」

「ども。沢村刑事、早速だけど…」

「ホイホイ、死亡した人間の名前ね…。まったく。いいのかねコレ…」

 と、言いつつ資料を渡す。

無言で資料を見つめる。

5分くらいだろうか、しばらく集中していたが資料を沢村刑事に渡す。

「把握できた……。何度もありがとうございます。沢村刑事」

「何か掴めたのかい?」

「おかげさまで。さすが警察ですね。ていうか、特係の力…かな?」

「ははは。一応警部補というそこそこの立場だしな。まあ、琉嬉ちゃんだから信頼できるからこそ、さ」

 琉嬉は滅多に見せない笑顔をみせる。


 その後、しばし世間話をしてその場は沢村刑事と別れる。

「ふぅん…。前は中々見せなかった顔みせるようになったなぁ」

 沢村刑事も以前とは違う表情をみせるようになった琉嬉に関心する。

学校を変えてから何か、いい方向に向かってるように見えた。



 三度、踏切へとやってきていた。

今度は護と叉羅沙と寧音の4人。

他の部員は用事などがあるようで来なかった。

というより、あまり大勢で来る程でもないと判断したから、強く声をかけなかった。

本当は信頼ある悠飛や來魅達を連れてきたかったが、悠飛は妖怪相手は強いが、幽霊相手じゃ分が悪い。

逆に來魅達だと派手に暴れてしまうのでナシ。

よって落ち着きのある護と叉羅沙に手を借りる。

寧音はなんか勝手に着いてきた。

「ほんま、気持ち悪い所やなぁ」

「もっと気持ち悪い事になるよ…」

 ゾーっとした顔見せる護。

「本当ですか~…?コワイですね」

 本当に怖がってるのか、少し棒読み気味で喋る寧音。

先日護も悪霊と対峙している。

その気味悪さは知っている。

「さあ、ちょっと待つよ」

 叉羅沙は腕時計の時間を確認する。

夜8時50分を示している。

悪霊は9時以降に現れる。

そのわずかのタイミングに合わせて祓おうというのだ。

琉嬉は携帯で自分のサイトを見ている。

「何見てんの?」

「んー。ちょっとメールを…」

 別段変わった様子もない。

メールも一通も着てない。

あれからミカとの連絡は取れてないのだ。

琉嬉は薄々感づいていた。

だが、今は確証は完全にないので、あえて外に出さずにいた。

「んー、なんでついて来たんやろな…ウチ」

 なぜか悔いている叉羅沙。

叉羅沙もあまり面倒事に関わらないタイプなのだが、琉嬉の頼みはなぜか断れない。

案外お人よしな部分もある。

「そろそろ…来るよ」

 3人は気を引き締める。


 徐々に姿を現す悪霊。

相変わらず不気味な姿している。

いくつもの人間の顔のようなものが折り重なっている。

うごめく何十本もの腕。

「さあ、おいでなすった」

 護は両手から霊力剣を解き放つ。

「これは…気持ち悪いですね。キモさ70レベルですね」

「いい線言ってるね寧音」

 互いにゲームにでも例えてる。

 叉羅沙も短剣を取り出し霊気を込める。

寧音も両手に拳作って構えた。

「突撃よろしく」

「…え?あたしぃ?!」

「前衛タイプよろしゅう~」

「ほら、行きますよ!護さん!」

「う…叉羅沙もフォワードタイプでしょー?!」

「ウチは中距離専門かな」

「なんだよそれ~!」

 納得いかないまま護は悪霊へ突っ込んでいく。


 カンカンと鳴り響く踏切の音。

まるで線路へ飛び込むように勢いよく護は悪霊へ向かっていく。

迫りくる複数の手。

それを見事に超人的な動きで切り裂いてゆく。

だがその数は増えるばかり。

「うっひゃ…キリねぇ~!」

 中々近づけない護。

「しっかりしてください!護さん!それでもふかしぎ部エースですか?!」

「変な肩書で言われても~」

 二人は凄まじい動きで攻撃を全部弾いている。

「…あいつら本当に人間かな?」

「はは、どうやろね」

 その状況で叉羅沙も攻撃を仕掛ける。

「式……雷々!」

 何処からか出したのか、数本の短剣に込めた霊気を投げつける。

電力を帯びてるようにも見える。

ザクザクッと悪霊本体に命中する。

「うあっ!あっぶな…」

 護のギリギリ横をかすめる。

「かんにんどすー」

 悪びれた様子もない笑顔の叉羅沙。

相変わらずだ。

悪霊の動きが鈍くなる。

「でかした叉羅沙!」

 ここぞばかりに琉嬉が仕掛ける。

悪霊は姿を消そうとする。

「逃がさないよ!」

 片手に霊気込めた符札を悪霊本体に力込めて打ち込む。

そのまま動きが止まる。

「それって…ウチにやった技」

「そのとーり!この技は本当に役に立つ!」

 以前叉羅沙と戦った時に見せた技。

遠距離からでは難しいが、直接本体にぶつけてこそ、効果を発揮させる。

そうすると直撃した相手は動きをしばらく止められてしまう。


「みゆ程の強力な陣できないけど…逃げられないように作らないと」

 琉嬉はそうして踏切の辺り一体に陣を作り、悪霊の動きを完全にシャットダウンさせる。

「ねえ、その陣最初から作っとけば良かったんじゃない?」

 疑問そうに問う護。

言われてみればそうかもしれない。

始めから作っとけば動きを簡単に止めれたかもしれない。

「それもそうだね。忘れてたよ」

「なんやそれ…」

「あ、でも今の僕の力じゃ完全には止めれないかも。まあ、それだけコイツの力が強いし」

「え!?そうなんですか?」

「急造の陣だしね。予めて時間かければ封印の術なんて強力に出来るけどさ」

「は、はぁ…」

 納得したようなしないような。

どっちにしろ、琉嬉の陣だけではどうにも出来ないと言うのだ。

みゆの陣はその分大きく作れるし、強力なのだ。

「さて…」

「どうするん?とどめ刺す?」

「その前に………」

「?」


 琉嬉は静かに目を閉じ、悪霊にコンタクトを取る。

二人は何も言わず見守る。

その間ほんの、2、3分程だった。

チリー…ンと琉嬉の髪飾りの鈴の音が鳴る。

何かに反応したように。


「……なるほどね」

「何か分かった事でもあるの?」

「ん。まぁね」

「んで、どうしますぅ?」

「決まってる。コイツ自体はほっとく訳にはいかない。また犠牲者が出さないため」

 3人は少し笑みを作りながらゆっくりと頷いた。

「OKー」

「了解どす!」

 琉嬉達4人は動けずにいる悪霊に向かって一気に渾身の一撃を放つ――。




「まぁー、なんとかなったね」

 埃を取り払う。

「護一人じゃ危なかったけどね」

「う、まぁ。そうかもしれないけど…」

「そのために私がいたんです。エッヘン」

 胸張って威張る寧音。

大きな胸がさらに強調される。

それを横目に琉嬉は軽く寧音にチョップする。

「な、何するんですかー」

「気のせい」


 悪霊は退治された。

倒した瞬間に複数の霊物質がどこかへと飛んでいった。

浄化された魂が元の場所へ帰ったのだろうか?

深いところまでは理解できない。

おそらく、ここで事故死した霊などが帰って行ったのだろう。

そう思いたいふかしぎ部員達だった。


「さて……と。帰ろう。まったく…今回も無償働きになっちゃったな…」

「そりゃ残念」

 無償どころか、むしろ電車賃でマイナスだ。

財布の中を確認する琉嬉。

まだ余裕はある。

「ま、3人ともありがと。今度奢るよ」

「え?マジ?ケチな琉嬉ちゃんが珍しい」

「うるせー。パン1個だけにするぞ」

「それはケチだ」

 そんな二人をニコニコ見ている生徒会チーム。

「ほんま、楽しい人達や」

「うん。そうですね。ふふふ…可愛らしい…」

 眼鏡がキラっと光る。

(こっちはこっちで危ないわ…)




 翌日、琉嬉はミカの住居を調べ、その家まで来ていた。

(ここで…間違いないかな)

 沢村から知り得た情報を頼りに独自に調べ上げた。

見た所普通の一軒家だ。

住宅街の一画にある、至って普通の一軒家。

例の踏切からはさほど遠くない。


 少し躊躇したが、インターホンを押す。

ピンポンと、よくある音がなる。

「こんにちはー…」

「ハイ?」

 ガチャっと、出てきたのは20代前半くらいの女性。

「あら、お嬢さん、どなた?」

「……ミカさんの友人です」

「…え?」



 琉嬉にコンタクト取ってきたミカという人物。

その少女は既にこの世の人間ではなかった。

琉嬉が見た資料の死亡した人物の中に名前に「ミカ」という名があったのだ。

そこにピンときた琉嬉。

どうも、最初で最後になったが会った時に何か、違和感というか、

不思議な感覚があった。

だが、正確には解からなかった。

琉嬉の力としても。

ミカの言葉には何処か一部、嘘くさい部分があったのだ。

そこが少し気にはしていた。


 琉嬉は女性の厚意に従い、家に上がる。

仏壇にやはり、ミカの遺影があった。

「………あ、ミカ…」

「みかのお友達ね…。ありがとうね」

「いえいえ、以前会った事ありまして」

「そう」

 女性はミカの姉だという。

ミカはやはり、以前あの踏切で電車に轢かれ、死んでいる。

事故死した日は今からまだ半年以上前と、ごく最近の話だ。

(……半年前…僕が転校してきた時くらいか…。あの時はゴタゴタし過ぎてて近場の事故とか気にしてなかった…)

 これでなんとなく辻褄が合う。

どういう理由でか分からないが、おそらくミカの霊は成仏せずに、琉嬉に会いに来た。

姉の話によると生前、霊感が高かったようだと言う。

その高い霊感のせいで、運悪くあの踏切に引きずり込まれた…。

琉嬉はそう考える。

「あの…ミカさんの携帯電話…見せてもらっていいですか?」

「…え?ああ、いいですよ。せっかく来て貰ったお友達だし」


 ミカの部屋へ入る。

綺麗にされた部屋。

机の上に生前使用していたと思われるスマートフォンが置いてあった。

それを確認する。

すると………日付は琉嬉が会った時と同じ。

何度も連絡した後がきっかり残っている。

それも、この携帯から連絡した後もちゃんと記録されていた。

「コレって……まさか?」

「多分…ミカさんが僕に連絡してきた時の記録…」

「嘘…?そんな事って?」

「………僕も信じられないけど、あったみたいですね」

「ああ……ミカ…」

 姉は涙をこぼししながら少し安堵した表情を見せる。




「どうも、ありがとうございます。こんな時に」

 深々と礼する琉嬉。

鈴もリンと鳴る。

「いえ、こちらこそ。わざわざ」

「それじゃ…また」

 ミカの住んでいた家を後にし、その場を離れる。

道端に止まっている車へと近づく。

運転席から沢村刑事が顔を覗かせる。

「どうだった?」

「うん。やっぱり連絡した後が…。こんな事ってあるんですね」

「ハハハ、不思議だよな」

「僕もこういう絡みの事、見てきたけどこんなはっきりした出来事は初めてです。

って、結局来るんなら案内してくださいよ」

 愚痴る琉嬉。

「んはは、ごめんよ。俺も中々抜けられなくってね」

「…なんか事件ですか?」

「そうとも言うかな」

「……でも分かったのは…良かったですよ」

「…そうか」


 そう、死んだ筈の人間からのかかってきた、連絡。

あの世からのメッセージ…とでも言うのだろうか。

それは不気味とか怖いとかではなく、少し暖かい感じもする。

おそらく、ミカ自身の無念さと、これ以上犠牲を出したくないという想いが琉嬉に届けたメッセージなのかもしれない。

ミカが持っていた高い霊力の力もあるかもしれない。

だが、それがどうしてこうも、うまい具合にふかしぎ部のサイトへ接続し、届いたのか。

それは誰も分からない。

琉嬉達ですら、予想を遥かに超えた出来事だった。



 琉嬉は部屋中でスマホの画面を眺めていた。

ミカからの連絡はあれ以来一切ない。

いわゆる、死人からのメッセージ。

不思議で仕方なかった。

未だに「ふかしぎ」過ぎて、どこか納得出来ていないのもあった。

「琉嬉ー、勝負するぞー。銀杏のヤツ相手にならん」

「むぐー!何を言うんじゃ!わしはまだまだ…」

 琉嬉はハァーっとため息つきなが銀杏の持っていたコントローラーを取る。

ゲームで対戦してたようだ。

「…來魅なんかに負けるようじゃまだまだ」

「な、何をー!」

「む、來魅なんかだと…。暇人を舐めるなよ!」

 なんだか分からない自慢する來魅。


「のう、琉嬉」

「ん?」

「スッキリしたようにもどこか納得してない顔だの」

「…変に鋭いね…お前さんは」

「こう見えても観察力は高いと自負してるからの」

 コントローラーを置く。

そして琉嬉に顔を近づける。

「お、おい…?」

「まったく。子供のクセにいろいろと背負い過ぎだ」

「子供って…見た目子供のお前に言われたくないやい」

「ふふふ、可愛いやつめ」

「むー…」

 返す言葉も浮かばない。

時々、はるか年上のように話しかけてくる。

実際大分年上なのだが、見た目が自分より年下なのだが。

「なぁーにイチャついとるんじゃ。お主がやらんのならわしが琉嬉と対戦するぞ」

「あ、コラ!」

 また奪い合いする。

「……いい加減怒るよ」

こうしてまたにぎやかな夜が更けていく。


 いつかまたメッセージが来るかもしれない…

そう思い連絡先は消さずに残したままにするのだった。


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