#29 鞍光の祀り 中編
扉を開けた瞬間、凄まじいまでの霊気が立ち込める。
「こりゃすごいなぁ~」
間一髪、護が追いついた。
「芹澤さん…!?なぜここに」
「およよ、私が二番乗りか~。しかし無茶するねー。そんな怪我で」
「これは…私達の一族の宿命…です。私の代で仕留めるべきなんです」
「はぁー……まったく」
すかさず、柚羽のほっぺをむにっとつねる。
「いたた!な、何するんですか!」
「まあまあ、出会ったのも何かの縁。ちょっとはあたし達の事信頼してみなよ」
「………」
「ホラホラ、早速来たよ!」
無数の霊。
もはやなんの霊か分からないくらい、異形の形している。
「面倒だね~!」
いつものように二刀流とした霊力剣を使う。
負けじと柚羽も片手で刀を振るう。
「お、鳴神さんも剣士か!気が合うね!」
偶然にも二人は剣という形を媒介した戦闘タイプのようだ。
「さぁさぁ、ボスはどこ!?」
「こっちです…!」
柚羽が示す場所――。
少し奥に部屋がある。
さらに進んでいく。
みゆと御琴はいまだに港咲家のメイド服姿で戦っていた。
「みこっちゃん!旧校舎へ行くよ!」
「ええぇ?!ちょっと待ってよ…。みんなと合流しなくていいの!?」
「他人の事は構ってられないよ~」
「マ、マジっすか~!」
ドタバタしながら旧校舎へ向かう二人。
後夜祭は続けられていた。
が、軽くパニックになっていた。
視える者には見える、幽霊達。
霊感が少しでも高い者や波長が合う者が震えている。
「…こりゃあ教師達も大変だぁ」
龍翔は前髪を手で掻き上げる。
「どうします?」
「んー、なるようになるしかないんじゃねえの?後夜祭は続いてるしなぁ」
チラっとステージの方を見る。
風紀係が慌てめて動いてる。
寧音の姿はない。
「あんにゃろう……他の風紀係を放っておいてまた勝手に一人で動き出しやがったな」
新校舎内も少しパニックになっている。
教師達もあたふたしている。
学校全体に幽霊騒ぎが広まってきている。
文化祭実行委員達や教師達は対処に追われる。
龍翔は校舎内へ入り、校舎内の敵を倒していた。
「面倒なこった…」
龍翔はひたすら出てくる霊物質を撃退している。
スチャッと音がする。
階段から降りてきたのはまどかだった。
まどかは何処から出したか分からないが大きな槍を持っていた。
「さあ、久々に大暴れしますか…」
「まどか会長さんよぉ…程々にしとけよ?」
「大丈夫ですよ」
残った生徒も全校生徒の5割程度残っている。
まだまだ面倒な事になりそうだ。
一方、凛夢は自力で旧校舎へ来ていた。
なんとなく、適当に霊力を感じる方向へ進んできただけ。
基本、方向音痴。
感を頼りに辿り着いてしまった。
(……着いちまった…。ここだよな?どうみても…。中からいろんな霊気感じるし)
一番、面倒事を避けたい性格。
しかし対抗できる力を持っている以上、引き返すわけにも行かない。
元々、家柄はそうしてきた家系だ。
「ったく…。この街この学校、飽きさせてくれないわね…」
再び片手に霊力を込め、何処からか出てくる二つの刃がついた大鎌。
「面倒ね。正面から突破だ」
躊躇せず、板張りされている正面玄関は大鎌でぶった斬る。
なんとも豪快。
無言のまま、また感を頼りに進みだす。
外見から想像できない、荒っぽさと強引さの凛夢だった。
またまた一方、紫音達は、というと。
学校の敷地付近で足止めされているように、無数の霊物質を退治していた。
「これ、しつこいよ…」
「さすがに疲れるね…」
バテはじめる中学生チーム。
「ホラホラ、若いのに情けないぞ」
一番若く見える來魅に言われる。
「くっ…。一番年寄りなのに一番子供姿の來魅ちゃんに言われると…ムカつく」
パンッと両頬を両手で叩いて気合を入れなおす紫音。
「やったろうじゃんかー!」
「おお!やる気出したな。私も負けんぞ!」
「…元気だね…。子供は」
なんとかやっている本当のおじさん・導。
こうした戦いから普段から遠のいてるため、辛そうだ。
(大丈夫ですかね…?琉嬉さん悠飛さんのお父さんは…)
ちょっとだけ、焦る耿助。
「父さん達大丈夫かな…?」
炎良達は街中を移動していた。
猛スピードで鞍光市に到着していた。
中心から南…学校がある松栄山の方。
やはりいつもより霊気が充満しているのが分かる。
「よし、みんな。霊的物質発見次第、退治するんだ。「悪性」をな」
「ハイッ!!」
威勢良く大勢の若い僧達が街中へと消える。
「天。くれぐれも気をつけるんだぞ」
「ヘイヘイ。それは親父もですよ」
「フフッ。相変わらずだな。こういう状況でもその減らず口」
「大丈夫さ。うちの娘達にもちゃんと受け継がれている」
「……受け継がなくて良かったのにな。誰に似たのやら」
「…親父じゃないとは思うけどな…。お袋かな?それともご先祖様かな?」
こういう状況でもまったりした会話をする。
余裕の表れだろうか。
「ま、お互い久々に大仕事だ。頑張ろうぜ!」
彼方家二人の大黒柱が動き出した。
琉嬉と叉羅沙は旧校舎内を走り回っていた。
パキパキッと小さい枝を踏む音を立てながら。
廃墟のせいかやたらと木の枝や木の葉が落ちている。
しかし不思議のゴミや破壊されたような形跡はない。
誰も侵入してないようだ。
「おかしい…。何処なんだ?」
「しかしえらい広いなぁ。古い割にはでっかい…」
その瞬間だった。
ドーンと大きな霊気がどこからか発する。
「感じた…?」
「ハイ」
尋常ではない、大きな霊力。
來魅とはまた違う、禍々しい、そして大きい霊圧。
「……これほどまでとは…」
「よし、場所は分かった!行くよ!叉羅沙!」
「了解~!」
迫り来る霊をものともせず突き進む。
「ここからだ!」
琉嬉と叉羅沙がたどり着いた場所。
何気ない、教室に一つのように見える。
元は理科室だったようだ。
教室内は物は残ってないがその名残は残っている。
実験に必要な台、ガス栓…。
何かがあったのだろうという、棚。
しかし棚はほとんどからっぽだ。
所々割れたガラスの破片のようなものが散らばっている。
窓ガラスは全て板張りされている。
何度か進入した者によって割られたものなのだろうか?
そんな事を考えながら奥へとりあえず進む。
事あろうか、何か音が聞こえてくる。
「あそこからだ」
何かドアに結界のようなものがあったように感じられる。
既に結界は柚羽が断ち切っている。
さらに奥へ進む二人。
「あが!」
「な、なんだよ!どうしたんだよ!」
叉羅沙の急な悲鳴に驚く琉嬉。
「あ、いやぁ、ちょいと頭をぶつけまして…」
「……あ、そう。」
軽くあしらう。
昔の日本の建物は今より低めに作られてる部分があったりする。
188cmの長身の叉羅沙は頭をぶつけたようだ。
琉嬉には縁の遠い話だが。
兎に角、部屋の奥へ進んだ二人。
そこで目にしたのは護と柚羽の姿ともう一つ。
――巨大な頭蓋骨――……。
「な、なんだこの霊気…妖怪とは違う…人間…か?」
あまりにも大きな霊力を感じた來魅。
しかし驚いてる理由は大きい霊力という話ではなかった。
妖怪ではない、人間の霊力。
「何?どゆこと?」
「信じられん……この街にこんな邪悪な、大きな霊力を持つヤツがいたとは…」
「ちょっと…來魅ちゃん。落ち着いて!」
「あ、ああ…」
「來魅?」
少し遠めにいた悠飛。
來魅の動揺しているような姿に驚く。
(あの來魅が驚いてるなんて…。よっぽど強い妖怪なのか?)
心配になった悠飛は來魅の頭に手をポンっと置く
「來魅……」
「……妖怪にも種類がある。それは解かるだろう?」
「え?あ、ああ…」
「元から妖怪だったもの…動物類から妖怪化したもの、無機物が妖怪化したもの…人間から妖怪化したもの」
「決して珍しいものでもないでしょ?人間から妖怪化したやつとかって…」
一息ついて來魅が説明する。
「珍しくない。まあそうだろう。だがな、元々、人間だとしても余程の能力者じゃなければあそこまで強力な妖怪にならん」
「……じゃあ」
「元となった人間はもしや…強力な術者だったかもしれん。お前達のような」
「…だからあんな人間が発する霊気なワケか…」
來魅が言う言葉には説得力があった。
「そうだ。妖気ではない、人間の霊気。それも悪霊のな」
「來魅。急ごう。姉ちゃん達が心配だ」
「おう!」
二人は紫音達を置いて学校敷地内へ向かった。
「なななな、なんじゃーこりゃー!?」
あまりにも大きな頭蓋骨にたまげる護。
部屋一杯になった頭蓋骨。
そしてこちらを見てる。
ようにみえる。
「こ、これは非常に怖い…」
「ですよね…。でもこれが本体完全じゃありません」
「え?え?」
有無言わさず頭蓋骨に攻撃をしかける柚羽。
「てぇい!!」
しかし、斬り付けてキズはつけどもすぐ修復してしまう。
何度も何度も攻撃しても同じ。
「くうっ…生半可な攻撃じゃだめなのね…!」
そもそも、柚羽は完全な状態ではない。
退院してるとはいえ、まともに戦える筈じゃないのだ。
「じゃあ、私の剣ならどう!?」
いつもより霊気を増した霊力剣で斬る。
斬れる事には斬れるが思ったより深く入らない。
それも相手が大きすぎるため大したダメージにならないようだ。
「うへ…これはヤバイね…。いつかもこんな事が…」
ふと脳裏に蘇る過去。
だが、今はそんな事思い出してる場合ではない。
カパっと頭蓋骨が口を開ける。
そして凄まじい霊気が集まる。
「うお、これはヤバイ?」
「うっ!」
その瞬間大きな霊撃が放たれる!
ズドンッ。
大きな音と共に部屋が破損する。
が、間一髪琉嬉の防護壁が間に合った。
「危なかったね」
「る、琉嬉ちゃん!」
「ウチもいますえ」
「にしても…これはデッカイ頭だね」
立ち込める煙の向こうには巨大な頭蓋骨がうっすらと見えてくる。
「がしゃどくろの…頭です」
「ってコトは、体がまだあるんだね」
琉嬉がしゃべった途端、ズドドっと、地響きが起きる。
「みんな!一旦こっから脱出!!」
琉嬉の掛け声にすぐ賛同し、部屋の窓から飛び出す。
その瞬間、先程までいた校舎の一部が崩壊した。
旧校舎の一部が崩れ落ち、ひと段落する。
そしてそのまま大きな悪霊の塊…
ついに、がしゃどくろの全身の姿を現す。
「うわお!なんですか!あのでっかいガイコツは~!」
遠目からでも分かる大きさだ。
「みゆちゃん!あれががしゃどくろってヤツじゃない?」
御琴の言う通り、がしゃどくろの全身だ。
ざっと大きさは5、6m以上はあるだろうか。
いや、立ち上がるともっと大きい。
15m以上ありそうだ…。
「琉嬉ちゃん達だ!」
校舎内から見える琉嬉達。
「あわわ……あれはちょっと…」
立ち尽くす御琴。
そんなに強い霊感の持ち主じゃないとはいえ、がしゃどくろの圧倒的な霊圧に怖気づく。
無理もない。
御琴は霊感が高いだけの、ほとんど素人なんだから。
「みこっちゃん。無理しなくていいよ」
「…みゆちゃんが連れてきたんでしょ…」
相変わらず無茶苦茶なみゆ。
「あはは~。そうだったけー。私はあっちまで行くから~」
そのまま走って向かう。
「く…。僕にもう少し勇気と力さえあれば…」
今の状態では行っても何もできない。
そんな自分が少し腹立たしくもある。
男として、何か情けない気持ちもある。
しかもメイド姿のまま。
本気で修行でもしよう。
どう決心しつつある御琴だった。
「…でも、治癒の術なら…。くっ!」
役には立たない。
解かっているが足はがしゃどくろのいる方向へ動いていた。
凛夢は動きを思わず止めた。
膨大な悪霊気と共に巨大な骸骨が出現したからだ。
今までに見たことないような、強烈な妖怪。
いや、妖怪なのだが、妖怪とはまた違う。
非常に嫌な怨念を感じる。
それが不快の原因でもあった。
「なんなんだ…?あれ…。あれがもしかしてがしゃどくろ?」
あまりにも大きな霊気と体の大きさに驚く。
むしろ驚かない方がおかしい。
「化け物中の化け物ね…」
経験上、あのような巨大な妖怪とはまだ戦ったことはない。
「人形小娘達だけじゃどうにもできないのも分かるな…。來魅とかっていう子供妖怪と同じようだって言ってたし……」
少し琉嬉に同情する凛夢。
「これだけ人数いれば大丈夫だろ」
凛夢もまた、がしゃどくろの方へ向かう。
旧校舎からは少し離れたところに今の学校がある。
それが数少ない救いだ。
見る限り多数の霊物質はがしゃどくろ自身から放たれてるように見える。
復活が近くなった事で数が増えたのだろう。
おそらく普段から視えてるモノは、がしゃどくろ自身から僅かに漏れてのかもしれない。
それと強烈な霊磁場のため、浮遊してるのも寄ってきていたのもある。
旧校舎のある森に続く道は警察が来て封鎖していた。
沢村刑事の仕業だ。
「沢村警部補、このような事して何か意味があるのですか?」
一人の若い警官が尋ねる。
「ん?いや…パニックになった生徒がこっちに逃げ込まないように…ね」
「は、はあ……」
曖昧な答えを返す。
首を傾げながら納得いく様子のない警官。
そのまま持ち場に戻る。
(まったく…。琉嬉ちゃん達も頑張るねぇ…。ま、軍隊でも勝てなさそうな妖怪だっていうしな」
普通の軍隊では勝てない。
たしかにそうかもしれない。
なにせ、通常には見えないからだ。
がしゃどくろもおそらく普通の人間には視えないだろう。
少しでも霊感あれば視えるだろうが…。
「まったく…。何十件も幽霊が出ただのなんだのっていう問い合わせがあるから…。
こういう事件のせいか…」
沢村刑事は一件の流れをなんとなく把握できてきた。
少々パニックになっていた学校も落ち着きを取り戻しつつある。
だが、まだまどか達は戦っている。
「しつこいですね…これ」
「だな」
会長副会長コンビはさすがに疲れが出ていた。
「しかし警察まで来るとは」
「誰かが呼んだのでしょう。この騒ぎだし。生徒か…それとも教師か」
だが、あらかじめ呼んでいたのは琉嬉だった。
「大丈夫なのか?大きな問題にならねえか?」
「……そこは、霊術会の名家としての力を使いましょうか」
ニコッっと微笑むまどか。
「へっ、そういうトコロが相変わらずだぜ」
安心しきった顔をする。
名家としての力を分かっているからこその理解だ。
「なあ、阮醐のおっさん…」
「ああ、分かっている。どこかで強力な妖怪が目を覚ましたようだ」
とある森の中。
來魅の昔からの知り合い、赤坊主阮醐と犬神の妖怪萩厘。
萩厘はこの前まで長かった髪の毛が短くなっている。
とはいえ、ショートカット程度の長さ。
まだまだ女子みたいに可愛らしい。
「ここまで影響力あるとは…。この地域一体での霊感などある者はどこか違和感みたいのを感じてるだろうな」
「なあ、おっさん。よくわかんねーけど、ヤバそうなのか?」
萩厘の質問にも答えず目を瞑り黙り込む。
(まさか……。この地域で來魅以外の強力な妖怪は…がしゃどくろ…か?)
さすがの醍醐もがしゃどくろの存在を知っていたようだ。
(だが、ここまで大きくはなかったハズだ…。あらゆる霊力を吸収でもしたのか?)
「オイ、おっさん!聞いてるのかよ!」
「お、おお…すまん。危険なのは間違いないな」
「おう、そうなのか?」
「ちょいと、特殊なヤツでな…。人間だろうが、妖怪だろうが関係ない、悪霊の主みたいなもんだな」
「ゲゲッ?!マジかよ…」
一応來魅経由で話は伝わっている。
戦うかもしれないと。
來魅の力が完全に戻っていれば、楽なのかもしれない。
阮醐はそう考え一人頷いていた。
「ヘタな攻撃が通じない!大きさ考えれば來魅より性質が悪いぞ!」
迫り来る霊撃を交わしながら策を練る。
「一発ドカンと大技かまさないといけないって事ね」
「そういう事やな」
護と柚羽は即席のコンビネーションながら息の合った攻撃をする。
お互い剣士という戦闘タイプのおかげだろうか。
「…耐えて……我が刀「月天」…」
そのコンビに混ざって戦う叉羅沙。
防戦一方には呈しない。
そこが彼女らの強さ。
「…前衛はまかせて、僕は強力なのを一発」
霊気を集中させ、強力な霊力を高めていく。
「さあ…くらいな…!龍神の怒りを!!」
復活したての來魅に一度決めた大技。
龍のような霊撃ががしゃどくろを包む。
「みなさんよけて!」
叉羅沙の掛け声で一斉にその場から飛ぶように避ける。
ドドンッと大きな音をたてて爆風が巻き起こる。
「!!これは…姉ちゃんの龍神の符?……來魅」
「解かってる。急ぐぞ!」
続々集まってくる面々。
「やった…?」
「いいや、この程度で落ちるモンじゃないだろ」
琉嬉の言うとおり、がしゃどくろはほとんどダメージないようにみえる。
「こりゃ、とんでもない大ボスだね」
「……まいったね。何度もこんな大技連発できないよ」
霊力体力が尽きるのも時間の問題。
「来るよ!」
腕での物理攻撃。
一振りで凄まじい風圧を巻き起こす。
骨だけとはいえ、大きな腕での攻撃。
くらえばひとたまりもない。
「意外に早いぞ!」
「あっ!」
琉嬉がつまずき、転ぶ。
その隙をついて腕が迫り来る。
「くっ!!」
ガキィンッと金属がぶつかるような音がした。
「まったく。ドジなヤツめ。だから子供っぽいんだよ」
「んなっ!?」
大きい腕を軽がると受け止める大きな鎌。
凛夢である。
「ホラ、さっさと動け!」
そう言うと思いっきり切り払う。
この華奢の体に思いもしない力。
凛夢はやはり普通の能力者とは違う、突出したレベルだ。
「凛夢はん~」
「凛夢!」
「凄い…」
「コイツががしゃどくろ?まったくとんでもねー化物ね」
「あ、あれ、凛夢さんいつもの様子と違う…」
柚羽が凛夢の態度に気づく。
そう、今は裏モード。
つまり本性状態。
「鳴神さんだっけ?そんな事はいいから、封印でもなんでも対処法あるんでしょ?」
「あ、ハイ…」
対処法。
あるにはある。
鳴神家に伝わる方法。
それは彼方家や参堂家と同じように、その一族の秘策。
柚羽ももちろん、高い陰陽師の末裔。
何かしらの方法があるから、単身乗り込んだのだろう。
「ホラホラ!そこ!みゆちゃんを忘れて盛り上がるのは無しだぞ~!」
ついでという感じで現れたみゆ。
もちろん場を壊すようなメイド姿で。
「みゆまで…って、まだその格好かよ!」
「着替えてる暇なかったんdねすよ~。ホラホラ、みんな攻撃攻撃~」
途端に仕切りだす。
「言われなくても攻撃するよ!」
なんとなくまとまってきた琉嬉達。
戦いが激しさを増す。
しかし、大きな決定打が決まらない。
がしゃどくろも学習したのかそれぞれの動きを捉えるようになり
中々いい反撃をさせてくれない。
このままでは埒が明かない。
だが、転機が訪れる。
「よし!今だ!!」
みゆの掛け声と共に突然地面が光り輝く。
「な、なんだ?」
「へへーん、この時を待ってたよ」
知らず知らずのうちに陣を作っていたようだ。
この激しい戦いの中で作るという、抜け目ない行動。
「やるな…みゆ」
「ほんっと、意外性ある戦闘センスだね」
光り輝く陣によって、がしゃどくろが動きを止める。
「ホラホラ、今だよ!!」
我に返ったようにそれぞれ行動を移す。
「もう一発行くよ!!」
琉嬉は再び龍神という術を使う。
護も全霊気を開放する。
その瞬間――。
目の色が変わる。
胸元、両腕には紋様が。
「…護!?」
「いいから今は敵に集中!!」
霊気…?
妖気?
よく分からないような力が護に溢れている。
そのまま霊力剣が大きさを増し…一気に斬りつける!
とてつもない大きさだ。
それに負けじと叉羅沙、凛夢も続く。
「うぅおりゃぁー!!」
凛夢もありたっけの力で切り裂く。
「無理難題な話やもんなー、普通!」
ブツブツ言いながら攻撃する叉羅沙。
こちらも今まで見せた事ないような一撃のナイフのような短い剣を突き立てる。
止めと言わんばかりに護の巨大な霊力剣ががしゃどくろの頭を斬りつける!
「どう!?」
「ウガァァァァ」
咆哮しながらもがくように苦しんでる。
ようにみえる。
(……今だ!)
柚羽はその隙をついて持っていた小さな壷のような物を取り出す。
これに封印でもするのだろうか?
「いざ…!!」
だが、その狙いも遅かった。
一瞬に光が放たれる。
「い、った……」
何かが光った瞬間全員吹き飛ばされた。
何が起こったのかすら分からない。
まさにそんな状況だった。
「みんな大丈夫?」
琉嬉は辺りを見回す。
森は激しく変形していた。
少し落ち着いて見回すと近くに護の姿と叉羅沙の姿がある。
「護!叉羅沙!」
「ウチは大丈夫やけど、護はんが…」
「ぐぅ…」
まだ息はある。
しかし大量の出血。
一番がしゃどくろの攻撃範囲にいた。
まともに直撃を受けたのだろう。
「護!護!」
琉嬉が取り乱したように護をゆする。
「おい!護!!!」
「あ、琉嬉ちゃん……私は大丈夫。妖怪化してなかったら死んでたかもね…」
「…そんな事より傷が…待ってろ。治癒術使ってやる!女神符!」
かなり危険な状態。
琉嬉は懸命に治癒術を使用する。
だが、がしゃどくろは尚も攻撃を仕掛けてくる。
「琉嬉ちゃん!あたしの事はいいから!」
「バカなコト言うな!」
大きな腕を振りかぶる。
二人を襲う一撃。
「だぁぁぁりゃああぁぁっ!!」
腕を弾き飛ばす一撃。
突然割って入った誰かの全力の飛び蹴りががしゃどくろの腕を吹っ飛ばした。
てかてかとした風紀係と書いた腕章が目に入る。
現れたのは寧音だった。
「お二人とも!大丈夫でしたか?!」
「寧音!」
「すごぅ…。さすがは夜栄守家」
「早く安全な所へ…!ここは私が…、って腕が戻ってるぅー?!」
吹き飛ばした筈の腕が元に戻っている。
再生能力も高いようだ。
「すまん、寧音…!」
「いえ、大丈夫です。ここはまず私に任せてください」
眼鏡をクイッと中指で直す。
しかし変な汗が沢山出てくる。
寧音には分かっていた。
相手がこれ程にないくらいヤバイ存在だというのを。
「…こんな話聞いてませんよ…当主…!」
「琉嬉ちゃんは護はんの回復で動けず…寧音が一人で戦ってる…他のみんなは…?」
叉羅沙もたったの一撃で体力をごっそり奪われた。
しかしまだあきらめてはいない。
「…困ったもんや…。さて、どないしよ」
凛夢は旧校舎の方へ吹き飛ばされていた。
壁に激突し、一瞬息できなくなったが今は落ち着いた。
とはいえ、かなりの衝撃。
「バカみたいな威力しやがって…。くそ!」
足が思うように動かない。
よく見るとかなり流血している。
「……こんな時に…!!」
がしゃどくろはゆらゆら動き出す。
このままいくいと街中へ行ってしまう。
「待ちやがれ…!!」
たったの一発の攻撃でこのザマだ。
やはり大きさもあるが、並はずれでない妖怪だって事が分かる。
まさに「破壊神」のようだ。
「くっそー!!」
気力を振り絞って立ち上がる。
とんだド根性だ。
しかし、思うように動けない。
何か、こう全身が痺れるような感覚…。
立ち上がったものの、なぜか吐き気もする。
凛夢にとってこんな衝撃は初めてだった。
今までに何度も妖怪や悪霊相手に戦ってきているが、今までは持ち前の霊力と戦いのセンスで打ち勝ってきた。
だが現状はそうでもない。
人生うまくいくもんじゃない…。
そんな言葉が浮かぶくらい絶望に近い気持ちになっていた。
「凛夢さん!落ち着いてください!」
突如凛夢を呼ぶ声が聞こえる。
振り向くと御琴がいた。
柚羽は悔やんでいた。
もう少し早く行動できていれば…と。
今更遅いが、まだ壷がある限り諦めきれない。
また入院するほどの重症を負おうが。
自分の命をかけて封じようが。
「次は…決める!」
「まあまあ、鳴神さん。そう焦ってはいけません」
「……?!?!」
無言のまま驚いて声もでない柚羽。
突然現れたのは耿助。
「脅かしてすみません。でもまだチャンスはありますよ。我々には最終兵器と秘密兵器がありますから」
笑顔で余裕があるかのように話す。
「は、はあー…??」
ワケが分からない様子の柚羽。
無理もない。
突然現れた笑顔の青年にワケの分からない事を言い出してるから。
「同じ陰陽師の末裔同士。ここはまた力を合わせて行きましょう」
「いや、しかしですね…」
「こう見えても参堂家の一族ですから。封印お仕事ならおまかせあれ」
またもや爽やか笑顔で返す耿助。
腹の底では何を考えているやら。
「まったく…耿助さんは…」
悠飛も到着していた。
耿助の言う最終兵器と秘密兵器とは…。
秘密兵器とは來魅の事を示していた。
來魅が到着した時にはすでに全滅に近い状態だった。
「……琉嬉」
「ら、來魅…」
「お前様達は体勢を立て直しておけ。あのデカブツは私がどうにかしてやる」
今まで見た事ないような表情の來魅。
「いや、お前、力を…」
「先ず、私の封じを解け。全力で戦う!」
「……分かった」
琉嬉が何かを念じる様に呟く。
すると來魅の右手首の数珠がパンッと弾け飛ぶ。
「琉嬉。最悪お前様のあの力使え。もったいぶるな」
「…真霊気……か」
そう、琉嬉だけが持つ特殊な力「真霊気」。
それを使えばがしゃどくろといえども倒せるだろう。
そう思っての來魅の発言だ。
「護の回復が済んだら頼んだぞ!」
來魅は有り余る霊気を開放し、がしゃどくろへと向かう。
「………結局この力に頼るしかないって言うの…?」
唇をかみ締めながら自分の持つ力と、及ばない力を恨んだ。
「紫音…大丈夫かな?みんな…?」
「だいじょーぶだって!莉音!琉嬉姉達なら負けないって!」
「だといいけど…」
「親父達もがんばってるみたいだし」
「どういう事?」
双子姉妹の父親、天は街中に広まる霊物質を退治に回ってる。
そういうメールを娘によこしたのだ。
戦いの最中なのに楽天的である。
「お父さん…空気読めてない」
とはいえ、同じように父親の導はかなり心配していた。
娘二人が戦場の中心へ行ったからだ。
「……叔父さん」
「うん。行ってやりたいけど、僕じゃ足手まといになるしね。
こんなんだったら兄さんみたいにきちんと戦えるように修行しとけば良かったかな…」
娘を守りたい。
今更そう思っている。
だが、才能を見出せない自分は早々と身を引いた。
そのツケが回ってきたようで、今、悔やんでいた。
「祈るしかないのか…」
森の向こうには怪しげに光り輝いている。
戦いの光だ。
「……琉嬉ちゃん……やはり、あの力を使うのかい…?」
導は空を見上げ、問いかけるように呟く。
「お主ががしゃどくろとかいう妖怪か…なるほどのぅ。デカイ奴だ。一人民族大移動ってやつか」
來魅はなんだかどこかで聞いたような言葉を述べながらがしゃどくろの動きを引き止める。
「やや?!あなたは琉嬉さんの所の…」
一人戦っていた寧音。
しかしかなりボロボロのようだ。
「夜栄守の人間か。面白い。私を封じた者の子孫と共に戦うとは…」
「なんて心強い。そろそろ殺されるかと思ってましたよ」
「フフッ、大丈夫だ。私が来たからにはのう」
「お願いします!」
気合いを入れなおす寧音。
「さあさあ、琉嬉達を全滅寸前まで追い込めたその実力とやらをみせろ!」
必要以上に煽る。
そもそも、言葉を理解しているのかどうか怪しいが。
「ガァァァッ!」
またも咆哮しながら攻撃をしかけてくる。
新たに現れた來魅を危険と察したようだ。
見かけによらず素早い攻撃だ。
なんなく避けていく來魅。
琉嬉のかけた封じの術を解いてもらい、力は元の万全な状態までになっているようだ。
これなら無制限に全力活動出来る。
「ホラホラ!どうした?!その程度か?」
いとも簡単に避けながら会話をする。
余裕があるのだろうか?
「これでもどうだ?」
挨拶代わりに強烈な霊撃をお見舞いする。
「ガァァッ!」
「おっと!」
來魅の攻撃としても簡単にダメージはないようだ。
しかし、先程のみんなの全力攻撃が効いているのか、修復を繰り返していたがしゃどくろの
体はキズがついている。
やはり、ダメージはあったのだ。
現に頭も護の一撃で斬りつけた跡が残っている。
「ほほう…。なんだかんだで痛みは与えてるじゃないか」
尚も続く攻撃をかわしながら妖力を高めていく。
やはり來魅も最強とも言われた事のなる妖怪。
凄まじい妖気が辺りを包む。
「おお、あのおチビ妖怪…凄い妖気や」
ビリビリ感じる。
対するがしゃどくろも全然減っていない霊気。
その強力な力がぶつかり合う。
「私の仲間を傷つけた罪は重いぞ!」
とんでもない威力の霊撃を放ちまくる。
いつぞやの攻撃と同じように。
反撃をさせないように凄まじい弾幕を放っている。
「近くにいた巻き込まれますえ!少し移動しましょ!」
叉羅沙に護と琉嬉はひょいっと抱えられ移動する。
「おお、おい!」
「あんなんまともに食らったらさすがにひとたまりありまへん!ここは寧音とおチビ妖怪に頼みましょ!」
「傷は治ったけど…体力までは完全に戻らないよ」
「分かってるよ」
傷は完全に塞ぎきった。
妖怪化したおかげなのか、致命傷だったのにも関わらずなんともないように立ち上がる。
「おっと」
琉嬉の言葉のとおり、完全に体力までは復活しない。
足元がフラついている。
見た目は治っていても全てが元通りとはいかないようだ。
「…ありがと、琉嬉ちゃん。しかし琉嬉ちゃん護衛の術とか得意だよね」
「……元々基礎はしっかりやってたし、補助系は得意なんだけどね…」
「うんうん。琉嬉ちゃん大好き!」
突然抱きつく。
「わぷっ、ちょ、何してるんだよ!」
護のデカイ胸が顔を覆う。
「ちょいちょい、護はん。琉嬉はん戦う前に死んでしまうえ」
「わ、ごめん!!」
「……うぐぐぅ。その元気あれば大丈夫だな」
「おうよ!」
「しかし僕には巨乳の難が出てるのか…?」
毎回胸の大きい寧音や護に抱きしめられる。
いつか本当に死ぬのではないかと思ってしまう。
「しかし他のみんなは…」
「さあ。でも大丈夫だと思うて。一癖も二癖もある方達やからなー」
みんなを信じ切ったセリフを言いながら両手に短刀を構える。
「…それもそうだね」
3人はすかさず來魅とがしゃどくろの戦闘場所へ向かう。
「たっはー…こりゃ参ったね」
みゆは単身森の奥地に吹き飛ばされた。
他の仲間とはぐれてしまった。
一番遠くへ吹き飛ばされたようだ。
だが、意外性のある技術屋。
吹き飛ばされてもクッションのように防護壁を張り、衝撃を和らげた。
とんだ反応だ。
ただ、あの光の一撃をまともに食らっている。
メイド服も自分も一気にボロボロ状態だ。
「あたた…。いろんな所痛いや。…左腕が動かない」
力を入れてもまったく動かない。
流血はしている様子はないがどうやら骨折してしまったかもしれない。
青く腫れてきている。
左腕に力を入れようとすると痛みが走る。
それも打撲とはまた違った、ピリッと強烈な痛みが。
「いやいや、参ったね。ほんと。みゆちゃんぴんちってヤツかね~」
次第に元気がなくなっていく。
「これが絶望感ってやつなんだね…」
自身最高の陣をも破る程の霊力。
いつもあっけらかんとしているみゆもさすがに表情を顰める。
「あの時のような気持ちにはならないと思っていたのになぁ…。参ったね。こりゃほんと」
過去の事を思い出す。
「いやいや、みゆ!元気だせ!!」
片手でペチペチと頬を何度か叩く。
そして、ビリリっとヒラヒラしたスカートを破り、動きやすくする。
「さぁて、行きますか。待ってろよ~デカ骸骨~」
気合を入れなおして再び戦場へ戻る。
やはり、みゆは持ち前の明るさでポジティブパワー全開だった。
残りの霊力を振り絞って決着をつけるために。
「凛夢さん…大丈夫ですか?一応応急処置的な治癒術しか使えませんが」
「……大丈夫。ところで、アンタってみゆと同じクラスの…」
「ハイ、神楽御琴と言います」
ジロっと御琴の服装をみる。
みゆと同じくメイド姿のままだ。
「…アンタって…たしか男子じゃなかった?」
「あ、この服は、その…!」
「ぷふっ…、似合ってるじゃん。男だと思われないんじゃない?」
「あ、いや…そんなコトは…」
「ん、まあいいわ。体調は楽になったよ。礼を言うわ。その力でみゆのヤツにもやってあげな。
アイツ、芹澤さんみたいに直撃喰らったから」
そう凛夢が言い、森の中へ指をさす。
ガサガサっと奥からみゆが出てきた。
「おろ?凛夢ちゃんにみこっちゃん」
「みゆちゃん!」
「骨が…ここまで重症だとまだ僕の力では…」
まだ御琴の力では完全に治す事は不可能だと言う。
琉嬉くらいの強力な霊力があれば可能かもしれない。
「なーに、だいじょうーぶだいじょーぶ。他の傷治してくれればおっけ~」
「よかった…」
仲の良さそうな二人をみている凛夢。
(まったく。顔ではそう言ってても本心はそうじゃないだろ。みゆ)
「フフ…このデカ骸骨…。隙がないのう。中々やりおる」
さすがの來魅も疲労していた。
天狐ともあろう、最強妖怪でも攻めきれない。
「本気を出していかんとな…」
ついに來魅が全力を出す。
戦いは最高潮になる。
「柚羽さん…!今は來魅にまかせて体勢立て直してください!」
無理やり向かおうとする柚羽を止める悠飛。
「だめです…!アイツは…アイツは!!私が封じないと…!」
「まあ、落ち着いてください。まずは回復しないと」
一応回復術をかける耿助。
「なぜ、そんなに急ぐんです?何か理由があるのですか?」
「………元々は、私の先祖が、あのような妖怪を作り出したのです」
「……どういう事です?」
「……作り出したというより…そのものかもしれません」
柚羽の先祖が、かつて妖怪を封じようとした。
しかし、その妖怪と相打ちとなり、命を落とした。
だが霊体となってもその場に留まり、あらゆる悪霊などを寄せ付け自然と封じていた。
だが、ある日を境に抑えが効かなくなり、妖怪化してしまった。
長い長い年月をかけ、様々な物を取り込み、あのような姿となった。
鳴神家の汚点…。
そう考えた鳴神家が暴走し始めたがしゃどくろを封印した。
その後も何度か完全に退治しようとしているがいずれも失敗。
中には犠牲者もいる。
そのためより強大な霊力を持つ事になった。
柚羽はどうしても、自分の一族の不始末を決着つけたい。
その想いが強いのだ。
「…なるほど。その気持ちも解かりますが、一人ではとても手に負えないじゃないですか。
次はもしかしたら、命を落とすかもしれないのですよ?」
「………それは覚悟のうちです。でも、それでも他の人には迷惑をかけたくない…。
学校のみんなに迷惑かけたくない…そのため、この日が来る前に決着をつけたかったのですが…」
「だから、逆に返り討ちにあってしまったと…?」
「それは私も悪いのです」
「え?」
「会長…」
まどかが柚羽達の前に現れた。
「どういう事です?」
「私が、柚羽さんを力づくで止めたからです」
「…そうでしたか」
柚羽が死にかけた日。
琉嬉にも話した内容だ。
まどかが柚羽を無理矢理止めた結果、柚羽は封じの術に失敗。
大怪我を負った。
その時耿助も居たのだが、仮の封じをした時にまどかが柚羽を止めに入ってたとは知らなかった。
「しかし……このままでは皆さん死んでしまいます!」
「落ち着いてください。柚羽さん」
手に持ってた大きな槍の柄で、柚羽の頭を叩く。
「?!?!」
それなりの衝撃だったのか、柚羽は言葉も発せず、頭を抱えてる。
「だから…言いましたよね?死ぬ事は許されないと。
それが鳴神家の事情か何か知りませんが、鳴神家はもうあなただけなんですよ?
よく考えてください」
いつもにこにこ笑顔のまどかとは思えない、険しい表情。
「私達生徒会、いや、ふかしぎ部は一人とも欠けたくはありません。
この短い期間ですが、琉嬉さんに会ってその気持ちが強くなりました。
今は……琉嬉さんにかけましょう。
あの方ならきっとどうにかしてくれますから。
いいですね?」
いつものふわふわ言い方ではない。
切羽詰まったような喋り方ではある。
「でも…」
「ま、後で言い訳は聞きますから、まずは回復に専念して、チャンスができたら封じて下さい。僕達も手伝いますから」
「はあ……」
その様子を見ていた悠飛。
(…やれやれ。見た目に反して頑固な人なんだな。しかし耿助さんもまどかさんもいつも笑顔なのにドス黒い部分が…)
いつも爽やかな二人の見てはいけないような部分を感じ取った悠飛だった…。
ぼちぼち、体勢を立て直した琉嬉達がリベンジ果たしにまたがしゃどくろの元へ向かう。
もしかしたら、強さは來魅の時以上かもしれない…。
とてつもない攻撃力。
いろいろ不安がよぎるが、琉嬉自身が何度も使っている、最終兵器とも言える最大にして最後の大技。
琉嬉の「真霊気」。
その力さえぶつければ…。
きっと勝機は見えてくる筈だ―――。




