#28 鞍光の祀り 前編
十の月と一の日。
ついにその日がやってきた。
曇っていた天気も徐々に日が差してくる。
文化祭二日目。
琉嬉は早速学校へ向かう。
「おう、琉嬉。学校に行くのか。私も行くぞ」
「だぁめ。家族は10時から」
「なんと、そうか。じゃあ悠飛と後で行くぞ。祭りは好きだ」
「はいはい。後でね」
爽やかな登校時間…と、言いたいが、心底不安も混ざってる。
何が起きるか予想もつかない。
というより、何か起きるのを知っていて何が起きるか分からない。
そこが怖い。
具体的な対策は出来たのか?
それとなく対抗策を考えたがうまくいくのかどうか。
朝、教室で顔を見せて、すぐ生徒会室へ向かう事にする。
まずはその流れだ。
意気揚々……とはいかない思いで駅へ向かう。
「おー、琉嬉ちゃーん」
「おう」
偶然、琉嬉は護と駅で会った。
普段あんまり駅では会わない。
使用してる電車の路線が同じなのだが朝は会う事がない。
その理由。
なんせ、護は大抵遅刻ギリギリに来るからだ。
逆に琉嬉は余裕もって来る。
帰りはよく一緒に帰るのだが。
「ついにこの日来たね」
そのまま琉嬉は無言でうなずいた。
あえて、口に出してまで言う事も無い。
お互いそれは分かっている。
「なんというか…もし、琉嬉ちゃんがこの学校に来てなかったら私らでどうにかするって事になってたよね?」
「……そうなるね」
「…名家の人達も居る訳だしなんとかできるかも?」
「……そうとも言い切れないかもね」
「そうか~」
「………ここまで来たんだから「もしも」の事は考えなくていいと思うよ」
余計な事は考えるな。
琉嬉はそう言う。
「はあー。だよねぇ」
「元々頭の回転よくないんだから、余計な事考えなくていいよ。護」
「んな、バカじゃないぞー!あたしはー!」
「ハイハイ」
護のテンションだけが上がりながら、学校へ向かうのだった。
生徒達がせかせか動いてる。
いろいろ忙しいのだろう。
琉嬉達のクラスもせわしい。
劇チームとクレープ屋チームに分かれて準備を進める…。
と、言ってもほとんど準備は出来ている。
いつ開店しても大丈夫だ。
劇じゃない琉嬉は特にやる事もなく、学校中を回っていた。
ようするにサボりなわけだが、他の生徒はあまり琉嬉に物事言えない。
ある種の問題児状態。
生徒会室にも寄った。
あっちはあっちで、何かあってもいいように基本パトロール状態にするという。
寧音を中心に動いている。
とは言っても一部の人間以外はがしゃどくろの事など知らない。
そこをどううまくやり取りするのかが問題になる。
琉嬉自身の霊気感知も今のところ特に大きな反応もない。
緊張が続く…が、さすがに疲れる。
ストレスが溜まる一方だ。
時間はそろそろ10時。
まるで待ってたかのように天候は晴れ渡る。
文化祭が本格的に始まる。
鞍光高校文化祭は基本的な一般公開はしてない。
家族、卒業生など、必要招待券が持ってる人だけが文化祭の参加出来る。
悠飛達もその券をもらい、学校にやってくる。
「結構人来るね~」
学校にやってきたのは悠飛、來魅、莉音紫音の双子姉妹。
そして、導の5人。
「いやー、楽しみだねぇ、みんな」
「おう、楽しみだ!」
悠飛らはともかく、導は何が起こり得るのか知ってるのだろうか?
なんだかんだで、くえない性格の導。
琉嬉らの父親だけあって、霊的な事柄は対処は出来る。
問題はない。
……はず。
「さあさあ、寄っておいで~、おいしい焼きそばだよ~」
メイド姿のみゆが客寄せをしている。
とても可愛らしい姿だ。
なんだかんだでみゆも人気ある生徒。
学校の可愛いランキングの上位に入っているらしい。
たまたま通りかかった琉嬉が足を止める。
「……すげーな。それ、屋敷の制服?」
みゆが琉嬉に気づく。
逆に琉嬉は、みゆが着ているメイド服がみゆの屋敷で使われてるのにも気づく。
正木さんが着ていたのと同じだ。
「おおぅ、琉嬉先輩!どう?似合いますか?うちで使ってるメイド服だよぉ~」
くるりんっと回ってメイド制服姿を見せる。
「…メイド焼きそばやねぇ…」
出店の看板見て少しひく琉嬉。
メイドやきそば屋とデカデカと書いてある。
「メイドが焼きそばってコンセプト……?なんてギャップのある…」
焼きそばの香ばしい匂いがしてくる。
美味しそうではある。
「びっくりするくらい似合うね」
「そうですか~?ありがと~」
そして、なぜか焼きそばを買う琉嬉。
「あ、琉嬉先輩」
メイドに扮した女子生徒が声をかけてくる。
琉嬉はやっぱり自分は知名度高いなぁ、くらいに思っていた。
が、何か違和感に気づく。
よーく顔見ると………御琴だった。
「……もしかして、御琴?」
「あ、う…、そ、そうです…」
笑いがこみ上げてくる。
「プフフ……似合う、似合うよ!御琴!お前、女装似合う!!」
「……自分で否定できません…」
物売り店員は女装メイドの御琴だった。
それにしても似合いすぎている。
元々線の細い感じで美少年。
というか女顔。
「なるほどねぇ……。なあ、みゆ」
「んー?なぁんですか?」
「今度萩厘のヤツにも女装させてみない?」
琉嬉らしかぬ事を言う。
とはいえ、こんなに似合うのなら女の子と勘違いした萩厘にも似合うはず。
萩厘とは、以前プール授業の時に下着泥棒事件を起こした子供の妖怪。
現在は來魅の知り合いの阮醐なる、坊主妖怪に預けられている。
「おおー、萩厘ちゃんに?いいねぇ?やってみたいねぇ~」
女同士の妄想に御琴は少し戦慄した。
「…この二人に目つけられたらお終いだね…。誰だか知らないけど」
「思わず買っちゃった…。仕方ないから食べるか。お昼前なのに…」
しかし、こう見えても食べる量は多い方。
なんなくたいらげる。
「あれー、琉嬉ちゃん」
「ん?」
声をかけてきた男子生徒。
龍翔だった。
「なるほどねぇ」
「今のところ何もない?」
「ないなぁ」
これといった現象はなし。
生徒会の方も特に感知してないようだ。
やっぱり旧校舎…。
そこを重点的に調べ上げる必要があるのかもしれない。
「しっかし……我々だけが変に緊張感持ってるってのも嫌だな」
龍翔がポツリと呟く。
他の大多数の生徒は楽しんでる。
しかし、もしかしたら何か霊的事件が起きるかもしれない。
そんな不安な状況を知ってる龍翔はどうもストレスが溜まって仕方ないらしい。
「龍翔君。そんなに深く悩んでると禿げますよー」
「………ふむ。それもそうだな。俺は俺なりのペースを保つ事にしよう」
なぜか前向きな、しかもよく分からない考えを見出す。
「じゃ、僕はこれで」
龍翔の発言も気にする事なく、その場を素早く去る。
「ううむ…。琉嬉ちゃんは随分落ち着きあるんだな。どんな修羅場くぐってきたのか…」
「そうですか…?私は龍翔様の方が…」
背後霊のように龍翔の肩の上に顔を出す遊希。
「ま、ここが名家と五大家の違いかもしれんな」
遊希の頭をぽんぽんと軽く撫でる様にする。
「何コレー?!心霊写真…?」
どこからか騒がしい声が聞こえてくる。
護が特に目的なく、廊下を歩いていた時だった。
「何か写ってるよ…コレ」
心霊写真という単語につい、つられて騒ぎの方へ向かう。
「なになに?心霊写真?」
ひょこっと首を出す。
「わっ?!芹澤さん…!」
「どもー。携帯の写真?」
「おお、芹澤さんだ…やっぱり美人…」
周りの男子達が心霊写真から護へ興味が移っていた。
「どれどれ、おねいさんに見せなさぁい」
半ば強引に画像を見る。
「これ、今撮ったの?」
「そうなの…これって顔…?」
不安そうになってる女子生徒。
「ふぅむ…これは凄いね…」
(……これはマジ心霊写真じゃん…)
首を左右に振り、辺りを見回す。
たった今撮ったという画像。
(もしかして、近くに居たのかな…)
「どうしたの?芹澤さん?」
「あ、いや…なんでもないよ!でもこれヤバそうだったら消した方がいいかもね」
「…だよねぇ…。怖いよ…」
護はふと、思い出した。
体育祭の時、広報部が心霊写真を撮ってえらい騒いでいたのを。
それと同じ事が起きている。
(……琉嬉ちゃん達が言ってた影響なのかもね…)
「みつけた」
護は近くに漂っていた浮遊霊を発見した。
それも一つ二つじゃない。
10数体。
「……こんなに大量に出てくるなんて。野放しにはできないね」
護の表情が切り替わる。
そして両手に霊気の剣が出来上がる。
「コイツらは危険な「悪霊」だ!」
普通の人間にはとらえる事も出来ない動きで悪霊を切り裂いていく。
「…まったく。困った学校だね。こりゃ」
午前中は何もなかったが、午後になり、霊が大量発生。
このまま各場所で霊現象が起こりうるかもしれない。
最初の接触は護だった。
「護さん!」
「おわおっ?」
護の背後から急にした大声。
「…寧音?どうしたの?」
「いえ、大きな霊気を感じたのでダッシュでやってきたんで…すが…」
ゼェゼェ言っている。
相当走ってきたのだろう。
わざわざ。
「もしかして、護さんが倒したんですか?」
「まぁ、そりゃね…」
「その役目は私なんですよー」
愚痴る。
「…あのさ、寧音一人だけじゃ無理でしょ?」
「それもそうですよね」
(……この子…、頭良さそうに見えてけっこう天然ボケさん…?)
「んー、こんな感じですか?」
琉嬉達のクラスの劇の時間が迫っていた。
凛夢は綺麗なドレス姿。
「おー、綺麗だねー!水無月さん!」
「すごーい!」
遠目から琉嬉が見ている。
(……よくまあ、やる気になったもんだな…)
あの性格から考えられないが、劇のヒロイン役をする事になった。
転校して間もないのに大役に抜擢。
どうもこうも、目立つ存在なのだ。
バタバタした舞台裏の中、琉嬉の目線に気づく。
「なーに?」
「いや、似合ってるなーって」
「…羨ましいとか?」
「別に羨ましくはないけど、そう着飾るとお前って、美人だな」
「んなっ」
思わず赤面する凛夢。
男ならまだしも、同姓から美人と言われるとなぜかむず痒い。
「な、何言ってるんだ!このバカ!」
激しく赤面してる凛夢を見てキョトンとする琉嬉。
何か変な事言ったのか?
自分自身に疑問を持ってしまう。
「…?なんだか分からないけど、頑張ってくださいな」
「そ、そうね……有難く受け取っておくわ」
ギクシャクしだす凛夢。
余計に緊張が高まってしまった。
(まったく…何しに来たんだよ…バカ琉嬉!)
「お昼過ぎちゃいましたかねぇ…」
午後からやってきたのは耿助。
先日、自分の管理する神社での祭りがひと段落して落ち着いていた。
文化祭当日、神社での仕事も一旦お休みして学校にやって来た。
さすがに、イベント真っ最中のため活気が凄い。
「結構家族で来る方多いんですね~」
いつものかわらずニコニコ笑顔。
顧問して学校には入れるので、招待券も貰っている。
ふかしぎ部としては出し物はない。
各々クラスでの出し物に集中している。
「さてさて、琉嬉さん達はいるかな?」
しばらく歩き進んでいると聞き覚えのある声がしてくる。
「おお~い!こうすけぇ~!」
後ろを振り向くと声の主は來魅だった。
それと彼方家の家族。
「これはこれは、みなさん!」
「なんだ、来るんなら待ち合わせでも決めておけばよかったのに」
「ハハ、そうですね。まあ、こちらはこちらで午前中忙しかったので」
キラキラ爽やか笑顔が炸裂する。
(おお、なんという爽やかな笑顔……)
思わずみんなが見とれてしまう。
それほど強力な笑顔だ。
「えーと…そちらの方は…」
「ああ、僕はこの悠飛ちゃんの父親です。つまり琉嬉ちゃんの父親でもあります。娘達がお世話になってます」
「ああ、どうも。こちらこそ」
(……随分若い親なんですね…)
耿助はまさかの出会いに、驚く。
体育館のステージで早速催し物が始まっていた。
他のクラスの出し物や、コピーバンド、などなど。
琉嬉達のクラスの劇がそろそろ始まる時間だ。
「お、次は琉嬉達の出番か」
「でも、姉ちゃん出ないって言ってたよ。出店チームらしいけど」
「その割にはさっき行ったのにいなかったよね?」
まさに、サボリ。
先述も述べたが、琉嬉に口答えするのは凛夢意外琉嬉のクラスにはいない。
琉嬉はまさに自由人状態だった。
担任の桜川先生も注意はするが、あの性格なのでしつこくは言わない。
琉嬉の事を分かっているからだ。
問題事を起こされたら面倒なので。
その辺の頭の悪い不良よりよっぽどタチが悪い。
そういう扱いである。
「おお、始まったぞ!」
「あれって…凛夢さんだ!」
「綺麗…」
会場全体がざわつく。
さすがに凛夢の綺麗さに目を奪われている。
「さすがだねぇ~。琉嬉ちゃんも出てくれれば良かったのに」
残念がる導。
「仕方ないよ。姉ちゃん、こういうの好きじゃなさそうだし。目立つの嫌いっぽいし」
しかし、十分目立つ事をやってきた。
今更感だが。
劇は淡々と続く。
山木やみなっちも出ている。
所詮、素人の劇なので、上手くはないが精一杯の努力が見て分かる。
「しかし、凛夢のヤツ美人だなぁ。てれびとか出れそうだな」
「だね~」
劇は続く。
琉嬉は舞台袖から見ていた。
出店チームのはずなのだが、なぜか劇チームに混ざって。
ブルブルとポケットが震える。
スマホが着信する知らせ。
護からの電話だ。
そういえば、さっきから浮遊霊が姿を現す。
それも上手く人目のつきにくい場所、影で。
あきらかに、さっきより増えてきてる。
だんだん、霊磁場としての力が増えてきている。
異変に気づきながらも電話に出る。
「護?」
『あ、琉嬉ちゃん!さっき悪霊チックなのを倒しまくったんだけど…そろそろじゃない?』
「……だろうね…。警戒強めようか」
琉嬉は連絡用アプリで寧音らに情報を通達する。
返信を待たないで、舞台袖から出て行く。
「あ、琉嬉ちゃん行っちゃうの?」
「ん。ちょっと野暮用」
「やぼ…何?」
ゆうに説明する間もなく姿を消してしまった。
「はやっ…」
柚羽は校門前に居た。
肩には何か棒状な物を入れている袋…。
剣道で使う入れ物のようだ。
左腕はまだ完治はしてないのか、まだ痛々しい包帯が巻かれている。
「…学校全体の霊磁場が…強くなっている…?」
遠目で見て解かる、霊力の強さ。
時刻は午後。
14時を時計の針が指している。
「よし!」
気合を入れて学校の敷地に入って行く。
「凛夢さ~ん」
元気よく手を振ってるのは紫音。
「…あれは、琉嬉の…いとこ?」
「いよぅ」
「妖怪娘まで」
紫音達は凛夢を見つけ合流する。
「いやー綺麗だったよ!凛夢さん!」
「うんうん」
「は、はあ…それはありがと」
劇はなんとか終わり、制服姿に戻り出店など見て回っていたところ紫音達と偶然会う。
「やあ、君が凛夢ちゃんだね」
「は、はい」
見た事ないおじさんが話しかけてくる。
凛夢は少し警戒した。
「ちょっと、この人誰?」
「誰って、あたしらの叔父さん。つまり、琉嬉姉と悠飛のお父さん」
「…え?マジで?若くない?」
ニコニコ笑顔の導。
そして悠飛がこう言う。
「他の40歳よりは若く見えると思うけどね」
(なるほど…。だから琉嬉もあんなに幼く見えるのね…)
なぜか納得する。
「で、なぜここですか」
いつもより険しい笑顔のまどか。
早速生徒会室に集まる。
なぜか部室の方じゃなく。
「まぁまぁ、秘密会議には適した場所じゃおまへん?」
「そうそう!」
「柚羽以外揃った?」
「いやー、揃ってませんよ」
琉嬉が遅れてやってくる。
いよいよ、文化祭も大詰め。
「はぁー。私はそろそろ生徒会長としてのお努めがありますから、叉羅沙さん。後はよろしくお願いしますね」
「おっと。俺も行かにゃ」
龍翔もまどかの後に続く。
「了解~」
生徒会長は忙しい。
そろそろ文化祭の締めが行われる。
とはいえ、夜の7時くらいまでは小規模なイベント物は引き続き行われる予定である。
そういった後始末も仕事の一環だ。
それにまだ後夜祭が残っている。
部屋から出てくるまどかと龍翔と入れ違いに、みゆと御琴が入ってくる。
「あららー?かいちょはお出かけですか?」
「ええ、いろいろと。それはそうと…」
まどかがみゆと御琴の姿を見てにやつく。
「な、なんだお前ら。メイド服のままかよ!」
「えー?いいじゃん~。かわいいでしょ?港咲家のメイド服は~」
「かわいいけど、随分オーソドックスな制服なんだね」
「てか、御琴やっぱり似合うよな~」
「褒めないでください!加賀先輩!」
「あはは、その辺の女子より可愛いかもね~」
護が御琴の頭を撫でる。
にぎやか担当が加わったことでさらにうるさくなる。
「んもー、その話は後にしろー」
強くなってきた学校の敷地の霊地場。
さすがにそれに感づいた凛夢も生徒会室へ合流する。
「しかし、みゆ。お前の姿なんなんだ?」
「えへへー、かわいいでしょー?むぎゅ」
みゆの顔を塞ぐように前へずいっと出てくる琉嬉。
「凛夢。お前も気づいてるだろ?」
「まぁね。本当に厄介なとこよね。ここは」
「みんな分かってるよね?向かうべき場所は」
「旧校舎」
日暮れが早い。
時刻はすでに5時半。
お祭りの終わる夜がやってくる。
後片付けも着々と進んでいる。
今日片付けれない部分は後日もやる所もあるだろう。
大半の生徒は片付けに追われていた。
徐々に生徒など人の数が減っていく。
多分残る生徒は深夜近くまで残る。
泊まり込むのもいると聞く。
それだけ一年で一番大きな行事だ。
「あれ?琉嬉ちゃんは?」
護が琉嬉の姿がないのを気づく。
「今日一日何もしてないのも悪いから後片付けに行くって」
「へぇ~。そういうトコロは気が利くんだね」
琉嬉が聞いたら殴られそうな一言だ。
「そういや、私も何もしてないな…。ちょっと店番したくらいか」
部室に残ってるのは叉羅沙と護と凛夢のみ。
あとは、みんな片付けに出ていた。
「日が暮れたね」
「どうする~?悠飛ー」
なんだか飽きてきた様子の双子。
「んー。どうするったって…來魅はどうしたい?」
「このまま帰るわけにもいかんだろう?。琉嬉が力借りたいって言ってるしなあ」
「だよねぇ…」
「このまま学校に滞在してる訳にも行かないから、近くのお店で夕食でも食べようか」
導が機転を利かして夕食を食べる事になった。
「はんばーぐが食べたいな。導」
「おいしいハンバーグ屋さんでも行こうか」
「太っ腹だねぇ~導叔父さん」
「僕もお供しましょう」
耿助も同行する。
しばし、学校を離れ近くのファミリーレストランへ向かう。
「まあ、こんなところかな」
ゴチャゴチャしてた教室も一通り綺麗になる。
時間は6時半…。
すでに一時間以上片付けていたようだ。
「もうこんな時間か…」
グラウンドではにぎやかになっている。
後夜祭前で盛り上がりが最高潮になってきている。
「琉嬉ちゃんは行かないの?私達は行くけど~?」
ゆうとみなっち、そして眞太朗達が後夜祭に参加しようとしている。
「僕はちょっと用事あるから行けたら行く」
「じゃ、後でね~」
生徒達が教室を出て行く。
教室内が静かになる。
外から聞こえてくるドンドコドンドコという音。
何の音楽かも分からない。
でもそれだけ盛り上がっている。
「霊が活動するには持って来いの時間になった…てヤツか」
教室を出て、旧校舎へと向かう。
途中、凛夢の姿がない事に気づく。
「…そいや、さっきまで居たのに。どこに行ったんだあのバカ死神」
そのバカ死神は、校舎で迷っていた。
(やべ、ここどこだ?一年の校舎…?迷った)
転校してきて、日が浅いせいか迷ったようだ。
「生徒会室と部室ってどこだっけ…誰かに聞くしか……」
ピタっと足を止める。
「……!?」
何かの存在に気づく凛夢。
霊力――。
それを感じる。
「来たか…。やるんならやってやるわよ」
身構える凛夢。
臨戦態勢になる。
ガタッと急にイスを倒して立ち上がる叉羅沙。
「ん?どうしたの?叉羅沙?」
「あれ見てください。旧校舎の方向へ向かう人がいますよ」
「んんー?あれって…鳴神サン?」
そう、柚羽だった。
学校に来ていた柚羽は一応、文化祭を少々楽しんだ後、この機会に旧校舎へ単身向かう事にしていたようだ。
「一人で向かう気やな。追いかけた方がええかもしれへん」
「みたいね…。叉羅沙さん、会長や琉嬉ちゃんに連絡しといて!あたしはあの子を追いかける!」
「あ、ちょ…」
そう言うと護は二階の窓から飛び出し、柚羽の後を追いかける。
方向は旧校舎のある、森の中。
「仕方ない人やなあ…」
叉羅沙は携帯を取り出し連絡を取り合う事にしながら、護を追いかける。
追いかけ追いかけの連鎖。
とはいえ、手負い状態の柚羽をほっとく訳にも行かない。
護の判断は正しいとも言える。
はてさて――…。
「まったく…結局は一人でどうにかする気だったのか…バカ陰陽師」
琉嬉は連絡を受け、旧校舎へ向かう。
元々向かうつもりだったがさらに急ぐ事に。
やはり、文化祭という日。
まとまりがない状態になってしまっている。
「ああー、もう!仕方ねえなあー!」
大声張り上げながらも旧校舎へダッシュで向かう。
そうしてるうちに森の中へ入る。
あきらかに「この前来た時」より、霊力が増している…。
ひしひしと伝わる。
「面倒な上にもっと面倒な事にしやがって…。うがー!」
森の中に現れる霊物質を殴って突き進む。
なんとも豪快だ。
素手でぶん殴るという荒業だが、普通は触る事が出来ない。
しかし、琉嬉は手に霊気を込めてるので素手で殴ってるように見えるだけ。
見えない者にとっては謎のシャドーボクシングにしか見えないだろう。
ドカドカ突き進む。
「なんか…霊気の乱れ感じる」
莉音が感づく。
「だのう…そろそろ頃合か?」
來魅も気づいてたようだ。
「よーし、そろそろ出撃かぁー!」
ノリノリになる紫音。
「行こうよ!みんな!」
「…そうしますか」
有無言わさず走り出す。
「わわ、みんなちょっと待ちなさい…」
走るのがつらい年になってきた導。
置いていかれる一方。
みんな若い(來魅除いて)うえに、鍛えられている。
凄い速さで学校へ向かう。
とてもじゃないが、鍛えてない導は追いつけない。
「……置いていくよ?お父さん」
無情な娘の一言。
なんとも情けない……。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、アハハ、これはすまない…先に言ってて下さい、顧問の先生」
「先生ではありませんが…分かりました。お任せ下さい」
そして耿助も信じられないくらいの勢いで走って行った。
「…若いって羨ましいねぇ」
護は旧校舎前にいた。
朽ち果てた…ように見える建物。
木造の建物。
草木が生い茂った場所ではあるが割りと手入れは行き届いてるように見える。
立ち入り禁止の看板。
が、今はそうも言ってられない。
禍々しい霊力が立ち込める。
正面玄関は硬く板張りで閉ざされている。
「うへ…。これヘタな廃墟より凄いぞ…。どっから入ればいいんだ」
これまで感じた事のない霊圧に圧巻されながらそこら辺りを歩き回る。
少し歩くと小さな扉が見つかる。
「お、開いてる…てか、壊した後あるな」
鍵を壊した跡。
おそらく柚羽が壊したのだろうか。
「壊したっていうより…綺麗に割れてるんだけど…?」
鍵は鋭利な物で斬られたかのような、綺麗に割れていた。
兎も角中へ入る。
中は小奇麗にされている。
物もほとんど残っていない。
近くに新しい校舎があるため、必要な物は移したのだろう。
しかし、かなり埃っぽい。
ところどころ枯れ葉も建物の中に入り込んでいる。
護も何度も廃墟を訪れているが(というか、みゆの付き添いのせいで)。
ここも似たようなニオイを感じる。
「柚羽って子も大胆だな…。一人で攻め入るなんて」
シュパンっと飛んできた霊を簡単に断ち切る。
「早速のおでましかい……。さあ、来なよ!」
再び、両手に霊力剣を携え、戦闘になる―。
「ねえ、なんか寒気しない?」
みなっちが寒いと言う。
元々秋なので夜は寒いものだが、何か、こう違う寒さ。
「そうだね…」
後夜祭も始まり、最高潮だ。
やんややんやのお祭り騒ぎ。
カラオケ大会や、謎の告白タイム。
他にも適当なダンスなど。
やりたい放題。
「な、なんだコレ?!」
「どうした?」
嶋元が撮ったビデオカメラに不可解な映像が映っている。
人の顔のようにも見える光…。
心霊映像のように。
いや、まさに心霊映像だ。
普段とはありえない数に霊が蔓延っている。
何か騒いでるところに龍翔がやってくる。
「なんだ?どうしたんだ?」
「あ、副会長…。いや…変な物が映ってて…」
「どれどれ、おぢさんに見せなさい。……ほうぅ…」
龍翔はしばし、睨むように映像をみつめる。
「ふむ……」
映像を見た後、その辺をキョロキョロ見回す。
「どうかしたんですか?加賀先輩?」
「いんやー、別に」
(…非常にヤバイな。入学して以来じゃねえか…この数。マジで何か起きる前兆てヤツか)
視える者には厄介な数。
まさに「ウザい」状況だ。
ズズズ…と後ろから影のようなのが出てくる。
遊希だ。
「龍翔様…」
「ん?ああ、大丈夫だ」
「はい…」
(いかに、他の生徒や教師に見えないように祓うかだな…。面倒だぜ)
クルッと嶋元達に背を向ける。
「悪りっ、急用思い出したわっ。それ……投稿とかすんなよ?なんてなっ」
龍翔はすかさずまどかの元へ向かう。
「コレは…そろそろヤバイんじゃねえ?」
運営本部に着き次第まどかに相談。
「ですね……早々と後夜祭切り上げますか?」
「そんな事できるのか?されど、生徒会長の力で」
「いやー、無理かもしれませんが?」
笑顔で切り返すまどか。
「しゃあねえ。被害大きくなる前に対処するか」
「あっちは琉嬉さん達におまかせしましょう。ま、私の事は期待しないで下さい」
「待てよ、まどか。無茶すんなよ?俺達は…生徒会と共に、「ふかしぎ部」なんだからな」
「ふふ、ですよね」
そう言い、静かにその場を立ち去るように動く。
「ふー。まどかもまどかだ。何をするのかわからん」
やれやれといった龍翔の表情。
「ほっといたらどれくらい増えるかわからんぜ。コレ…」
人目のつかない場所へ移動し、霊力を高める。
龍翔の戦闘スタイルは基本的には格闘。
うようよ集まってくる霊物質を見つけ次第祓う。
先程の影がまた出てくる。
「私も援護します」
「おう!頼むぜえ!
あえて、寄せ付けるように目立つ霊気を発する。
「オラオラ!かかって来なー!」
「な、これ…尋常じゃないよ?!この数…」
早速学校に戻ってきた紫音達。
学校に敷地どころか、至る場所で霊物質が舞っている。
「これ…は…相当ですね」
住宅街、街中―。
視える人間はパニックになるだろう。
次第に増えていく。
「ハハハ!上等だな!」
來魅がなぜかテンションを上げていく。
「來魅ちゃん、妖気封じられてるのは分かるけど、くれぐれも派手に暴れないでね」
「そんな事分かっとるわ!私はこの街が好きだ!だから守る!」
思いがけない言葉に一同が黙る。
そして次第に笑顔になる。
「フフ、そうですよね。來魅さん、百年以上前からこの街にいますもんね」
それを知ってか知らないでか、來魅は既に行動を開始した。
街中にあふれる霊物質を狩るように倒していく。
「やるねえ、來魅ちゃん。さすが最強レベル妖怪」
紫音も負けじと霊物質を倒していく。
「はぁー。まったく。まいったね」
「そうですね。このままだと広がりまくり、ですね」
「そうさせないように私達が頑張るんですよ!」
「……私達の街…。うん。頑張る」
至る所に現れる霊物質達。
しかし、このままではキリがない。
学校中へ行けるのだろうか?
一方遅れをとった導。
「おわ、街中に霊気の塊が…?」
すかさず携帯取り出し、実家の方へ連絡を取る。
「ハイ。緋黄寺です」
電話を取ったのは三月。
『ああ、三月お義姉さん!お父さんや兄さんいます?』
「ええ、いるけど…どうかしたの?」
『少々やばそうな事がありまして…』
事情を電話越しに伝える。
「なるほどな…。そこまで被害が拡大してるのか。
話には聞いていたが…ここまで来るのも時間の問題か。天。みんなを呼びなさい」
「はいよ、親父」
寺の修行僧など集め、対策する作戦を立てる。
「まだここまで来ないとはいえ、何もしない訳にもいくまい」
炎良はしばらく黙り考え込む。
(…まったく、わが孫ながら大きな事件の中心に関わるもんだ)
ぞろぞろ、と修行僧の若い者や、寺の従業員が集まる。
「集まったか?みんな」
「どうやら集まったみたいだよ」
「フム…。早速だが、今起ころうとしてる事を簡潔に言うぞ」
ゴクリ、と唾を飲み込みながら黙って話を聞く寺の人間達。
「この前の來魅とは違う、大きな出来事が起こりそうなんだ…」
話はある程度進み、準備に取り掛かる。
準備中に天がふと、疑問に思ったことを炎良に尋ねる。
「親父、久々の大きなモノかな?」
「ああ。そうだな。次から次といろんな事が起きる年だな今年は。まったく」
「ふむ…「がしゃどくろ」ねぇ。話は聞いた事あるけど、そこまで強い妖怪なのかね?」
たしかに、伝承によれば身の丈が5mも10m近くとも言われるような大きな妖怪だ。
「強い…弱いの問題じゃないかもしれん」
「どういう事だい?」
「元々は怨念の集まった霊体が妖怪化したものだろう」
「フム」
「だが、実際は、「がしゃどくろ」という妖怪は現代の創作妖怪だと言う」
「…はあ?妖怪って実際にいるだろう?この街にもいるし」
「そこが、伝承の面白い話だ」
「…??」
混乱してくる天。
こういう難しい話は苦手なようだ。
「ホラ、あの赤い髪の女の子が見つけてくれた書物」
「ああ、霊気通さないと見れないヤツね。赤い髪の女の子って、たまにウチに来て特訓してる子かい?」
「そうそう、名前なんだったけな~…緋瑪斗ちゃんと言ったかな?」
緋瑪斗。
たまにお寺に来て何やらやってるらしい。
それはまた別の話。
「あれに記してたったぜ。がしゃどくろなんていう名前の妖怪はいないが…」
「いないが?」
「名前はないが同じような妖怪の事が記されてたってコトだ。
いわゆる、現代の創作妖怪と言われてるが、実際にモデルになった妖怪がいたんだろう。それが鞍光にも存在した」
「……なんだか言ってることが解からんが、がしゃどくろはいたんだよな?」
「がしゃどくろの伝承に似たような話は各地にあってな。その話を合わしたのが「がしゃどくろ」伝説だろう。
それを決定的にしたのが今回の「がしゃどくろ」話。
百年以上前の出来事なんだろ?割と最近の話だろ?百年前なんて」
「まあ、妖怪話なんて百年以上前からあるしな」
――鞍光高校近くの妖怪も「がしゃどくろ」と名前で呼んでた。
しかし、それはいつしかついた名前だった。
それは人間達が広めた、現代創作の妖怪の名前。
それが妖怪達の間にも広まっていたようだ。
「がしゃどくろ」は存在した。
だが、その妖怪は比較的新しい妖怪。
その妖怪本体も「がしゃどくろ」と呼ばれてるのは知らないだろう。
なんせ、様々な霊体が集まった「悪霊」の王だから。
「…うちの娘達は大丈夫かねえ?」
「なぁに。俺の孫だ。問題ないだろう。友達も強い霊力の持ち主だろうしな」
「能天気だな~」
「お前もだろうが」
「ハハ、違いねぇ」
キリっとシリアスな表情に切り替わる炎良。
「だが、油断はできぬだろうな。純粋な妖怪とは違う、人間の怨念の塊が集まってできた妖怪」
「……だな。さてと、出撃しますか」
「…頼んだぞ」
天は若い衆を引き連れて外で出る。
「みゆちゃん…この数あり得ないよ!」
あわてめく御琴。
視えるだけで対処法はまるでない御琴。
役立たずさもいいところだ。
「うーんー。そこらじゅうの霊達がここに引寄せられてるっぽいね」
いまだメイド姿の二人。
しかし、着替える暇なく、霊物質の対処に追われていた。
「危害を与える程でもなさそうだけど…。放って置く程優しくはない私だけどね~」
なぜか笑顔で祓っていく。
「これは鞍光文化祭じゃなくて鞍光オバケ祭りだね!」
「なんだそれ~!」
バカな事を言いながらもみゆは卓越した技術で霊物質を退治していく。
「旧校舎行った方がいいのかな?でも…」
あまりにも数が多い。
時刻は夜7時半を過ぎていた。
日がほとんど暮れている。
真っ暗に近い。
「まったく。これが私らにとっての後夜祭だね~」
「さっきからうまい事を…」
あまりの数に足止め状態になる。
旧校舎―。
琉嬉は旧校舎内へ侵入していた。
現段階で旧校舎内にいるのは琉嬉、護、柚羽の3人だと思われる。
誰か先に入った形跡があるのを確認する。
間違いなく柚羽が侵入したと確信した。
「……どこから湧き出て来るんだか…」
ブツクサ独り言呟きながら建物内を歩く。
「真っ暗じゃん…」
もちろん、今回も準備しておいた懐中電灯で明かりを照らす。
「あまり物が残ってないんだなぁー。はぁー。フムフム」
新しめの足跡に気づく。
「…先に入ったヤツかな…」
恐る恐る…なんて言葉は似合わない琉嬉。
ズカズカと突き進む。
強力な霊気を発している場所へ向かう。
「よくまあ、女一人でこんなトコ行くよな…」
自分も女だって事を忘れてるかのような発言。
(…気配)
背後から何かの気配を感じ思わず手札を投げつける。
「わぷっ!!」
顔面に張り付く札…。
よく見ると叉羅沙だった。
「な、何してんだ……?叉羅沙」
「何してるとかではおまへん!ウチは鳴神はんと護はんを追いかけて来たんどす!」
「あ、そう…ごめん」
またしても身長差30cm以上の凸凹コンビとなる。
何かとこの二人となるケースが多いようだ。
「会長からで伝言やけども、学校中えらい事になっとるみたいやね。
やっぱり中には霊が視える生徒もいてちびっとパニック状態だそうで」
「むぅ……。そっちは会長達にまかせて僕らは根源を絶とうか」
「そうやな」
急がなければいけない。
二人は確信し、奥へ走って向かう。
「なあ、長老。すげぇ…霊気が森まで伝わるんだけど…」
森中の妖怪達。
妖怪達は集落のような場所へ集まっていた。
そのみんなが分かるほど強烈な霊力が森中に伝わっている。
「がしゃどくろが復活するのか…。あの人間の小娘ならなんとかするんじゃないかの」
「だといいけどよ…」
「來魅を倒したんなら大丈夫なんじゃないか?」
「そこを期待したいんだがな………」
長老が黙り込む。
「なんとかしてくれないと、人間達だけじゃなく、俺らまでヤバイよな」
不安がる若い妖怪達。
そう、がしゃどくろは元は人間達の怨念の集合体。
悪霊の究極の姿。
人間だろうが、妖怪だろうが見境ないという。
長老達はその悲惨な状況を知っている。
かつて突然発生したがしゃどくろによって同胞達がやられている。
もちろん、人間も命を落としている。
あの悲劇が起きないように。
だから、今は琉嬉達の頑張りに不覚ながらも期待するしかない。
「儂らではどうする事も出来ん…」
柚羽は旧校舎の奥地――。
開かずの間のようにがんじらめに鎖などで閉じられた部屋の前にいた。
(く……この前より凄まじい霊気。だが、今回は…)
片手に持っている剣…というより、鞘に納まれた刀。
それを抜刀のように構える。
そしてそのまま目を瞑る。
「ッッッ!!」
一閃。
扉を斬った。
というより、封鎖している鎖を断ち切った。
どうやら、結界の一種らしい。
「…今更断ち切ったって意味ないか…いずれ今日中には破られる封印」
そのまま扉を開ける―――。




