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ふかしぎ真霊奇譚  作者: 猫音おる
第四章   ~真夏怪奇編~
19/92

#19 まさにお盆

 生徒会メンバーでもある、鳴神柚羽が退院した。

琉嬉達ふかしぎ部メンバーは、部活動という名目で集まって柚羽の退院を祝いする。

「みなさん、ありがとうございます。わざわざ…」

「本当に良かったです」

 まどかが代表して花束を渡す。

「こんなものしかないけど」

「いえ、ありがたいです」

「この後も大変だけど…ね」

 不安がるような事を言う琉嬉。

「ええ、それは十分理解してます」

 笑顔でこたえる柚羽。

「ほんま、良かったわぁ」

「そうだな」

「そうですね」

 生徒会メンバーは明るい表情だ。

元々の仲間が復帰したとなれば嬉しいものだ。

「あ、それと、柚羽もふかしぎ部員だから」

 それとなく入部届をヒラヒラと手で持って見せる。

「は、はぁ…そうなんですか?」

 柚羽は生徒会メンバーの顔を見る。

龍翔や叉羅沙は困ったような顔をする。

まどかはニコニコしたまま。

寧音は良く分かってないような顔している。

護達も少し苦笑してる。

(な、なんですかこの状況…?)

「まあまあ、琉嬉ちゃんはこういう子だから。素直に従ってた方がいいかもよ」

 変なフォローする。

護なりの発言だ。

「でもあれだね。柚羽ちゃんって…結構小さいんだね~」

 同学年のみゆ。

近くに寄って背丈を比べる。

みゆの目線に柚羽の頭のてっぺん辺りだ。

「本当だね」

 やんややんやと柚羽の元に集まる。

「でもさすがに琉嬉先輩よりは大きいね」

「そ、そうなんですか?」

「うるせー、こっち見るな。ぶっ飛ばすぞ」

「おお、怖い怖い…」



 この日は柚羽を含めて、近くのバイキング形式のレストランで会話を沢山した。

今後の事。

旧校舎の事。

あまり思うように話の発展はなかった。

現状ではどうにも出来ない。

それに柚羽も退院したばっかり。

派手に動き回るのも大変だろう。

という事で、ゆっくりもせず解散となった。




 あれから三日間ほど、彼方双子姉妹が滞在していった。

予定より多く居たそうだ。

双子姉妹が去ってから一週間。

お盆がやってくる。

双子姉妹も悠飛も中学3年生。

一応受験生であるため、宿題などもかねて真面目に勉強など始め、一週間程経つ。

でもその前に大きな行事がまだある。

琉嬉ら家族はお盆に実家の寺「緋黄寺」に一旦帰省する。

寺だけあってお盆シーズンは忙しい。

それの手助け…という話でもないが、手伝えるとこは手伝う事もある。

「さーってぇ。準備万端~」

 何か楽しそうな導。

「あれだね、今度は私たちが行くって事になるとこの前の逆だね」

「んー、そうだな…」

 前回暴れに暴れた双子姉妹(というか紫音メインで)。

どっちにしろ前回と同じメンバーでまたにぎやかになるのであろう。

そして來魅は…というと、結局は一緒に行くことに。

「なんで來魅も一緒に来るの?」

「ん?お前様の住んでた寺ってのが楽しそうだからな」

「…いや、楽しくはないと思うぞ。そもそも僕は一時的だけであって、父さんが住んで育った所だよ」

 今回の転校を兼ねて引っ越しする前に一時的に住んでいた。

悠飛はもっと長く住んでいた。

「で、どれくらいかかるんだ?」

「車だと…込んでなければ一時間はかからないくらいかな?いや、かかるかな…」

「ほぅ~。案外に近そうだな」

「ん~。お盆だしね。込んでそうだけどね」

 道路渋滞。

これはもう仕方ない。

日本の恒例行事みたいなものだ。


「大きい車買っておいてよかったよ」

 ニコニコしながら運転する導。

元々家族が多い所で過ごしてたので大きめの車を買っておいたようだ。

広々として楽そうにする來魅。

早くも眠たそうな琉嬉。

連夜のゲームしてたせいでの寝不足なのだろう。

悠飛はずーっと外の景色を見ている。

案の定、少しの渋滞に巻き込まれていた。

「ちょっと時間かかるかもしれないね」

「…仕方ないよ」

 …これは一時間以上かかるかもしれない。

はしゃぐ來魅以外はそう思っていた。

「しかし、すっかりうちの家族みたいになったね…。來魅」

 ボソッと悠飛に話しかける琉嬉。

「……ちょっと前まで死闘だったのにな」

「うん」

「今思うとあれは來魅にとっては本当に遊びだったんじゃないかって思う」

「本当の遊び?」

「本気で殺す気は元からなかったって事。大体初顔合わせで戦って圧倒的に勝る強さなのに…」

「うん…」

「本気でやるんなら殺すだろ、と。思う」

「…ふむ……」

 こんな彼方姉妹の会話にも目もくれずずっと外の景色を見ている來魅。

來魅自身が語らないので真偽は不明…。


 そうしてるうちにだんだん実家の寺に近づいている。

よく見慣れた風景が目に入ってくる。

そしてしばらくして墓場が見えてくる。

「おお、墓場だ」

「あ、これはうちが管理するお墓だねえ」

「ほぅ~」

 何かと関心する來魅。

まるで子供のようだ。

というか見た目は子供なのだが。

ちょっと進むと大きいお寺が見えてくる。

「さぁ、着いたよ」

 近くの駐車場に止めてバタンバタンと、ドアの音をたてて車から降りる家族。

玄関付近を見るとほうきで掃除する少女が一人。

「おーい、紫音~」

「…あ、琉嬉姉」

「よっ」

 今回掃除していたのは双子姉妹の妹の紫音。

前回行ったときは莉音だった。

こうしてみると見分けがつかないほど、そっくりである。

髪型もほぼ一緒。

背の高さなど体格も一緒。

性格を除きほぼ同じなのだが、琉嬉はなんとなく見分けがついた。

単独だと話してみないと他の人間には分からないらしいが。

「今回は間違えなかったね。琉嬉姉」

「そうそう間違えてたまるかってんだ」

「だよね~」

 そんなわけで、早速來魅含む琉嬉達家族は中に入る。


「お帰り~琉嬉~」

 前回と同様琉嬉と熱い暑い抱擁交わす炎良。

孫を溺愛し過ぎである。

だが、それをあまり嫌がらない琉嬉。

「なんだ、祖父とは嫌がらないんだな。父親とだと嫌がるのに」

「より近い肉親だと恥ずかしいんじゃない?」

 などと勝手に言っている。

「いや、嫌なんだけどね……無理に嫌がると面倒だから…」

「ハッハッハッハ!分かってるじゃないか」

 豪快に笑う炎良。

「お、こっちのおちびちゃんもまた来たか」

「やおー。私も家族みたいなものだと思ってくれていいぞ」

「ハッハッハ。どれどれ」

 琉嬉同様に來魅も抱き上げる。

「おほっ、琉嬉と同じようにされたぞ」

 なぜか嬉しそうだ。

「しかし…妖狐だと聞いていたが…それらしい感じがするのは髪の色くらいだな」

 すっと來魅を降ろす。

扱いが完全に小さい子供だ。

「そうだよね~。來魅ちゃんってイメージするようなそれらしい耳とか尻尾ないよね」

 紫音が來魅の髪をさらさらっとかき上げながら言う。

「うむ。私は天狐の子供だからな」

「……てん…こ……だって?」

 琉嬉達が天狐と聞いた瞬間、止まった。


 天狐とは。

妖怪の中でも妖狐というのは種類が多いらしく、その中でも最高位と言われる。

それが「天狐」である。

本来であれば妖怪のような類ではなく、神と同等のような存在だという。

來魅は天狐の子供と言った。

どういう状況で生まれたのかはわからないが、あのような圧倒的な強さを誇るのも納得がいく。

しかし、その天狐の力をも封じ込める「真霊気」という力もまた、凄まじい。

「まぁ、昔暇で散々遊びまわっててのぅ、いろいろ悪さしてたらついにはお主らの先祖にあたる人物達によって封印されてしまった」

 あっけらかんと言う。

「そ、そうなのか…」

 琉嬉達はかなり驚いている。

「封印されてる間ずーっと反省しとった」

「…まじで?」

「でも、ついつい遊びまわりすぎたな。おかげでこのザマだけどな」

「……当たり前だ」

「今もこのように強い術者がいるもんだな」

 本当に反省しているのか、イマイチ分かりにくく、ひょうひょうとしている。

「まあ、今回ばかりは本当に反省した!先の戦いで死んでいたのは私かもしれんしな」

「……ま、まぁ、そうかもしれないけど」

 とんでもない話にさすがの炎良も驚きを隠せない顔をしている。

話を聞いていた回りの面々も驚いている。

「その話は今は置いといて、今日はゆっくりしていくといい。もちろん來魅もな」

「おー!」

「ちゃっかりしてんな…」


 琉嬉達子供達は空き部屋に集まってまたにぎやかにやっている。

大人達は大人達でいろいろ会話している。

そうしてるうちに仕事終えてきた双子姉妹の父親が帰ってくる。

「ただいま…と」

「ああ、お帰り兄さん」

「お、導達帰ってきたのか」

 服装はお坊さんの格好をしている。

しかし外見は導同様若い青年のような男性…。

現在の緋黄寺の住職を引き継ぐ予定である。

現在は副住職。

彼方天かなた てん)。43歳。

 琉嬉や悠飛にとっては叔父にあたる。

琉嬉達の実力はもちろん高いが天も豊かな才能を引き継いでいる。

その能力は高く、尊敬する弟子も多い。

ちなみに導自身もそれなりに高い霊力は持っているのだが、戦闘などが得意でもなく寺に関わる重大な部分を放棄している。

そのためお寺を出て、独立した形になっているのだ。

「あ、お父さん帰ってきたみたい」

 莉音がいち早く察知する。

「ほぅ。彼方家の実力者か」

 なぜか興味津々の來魅。

それに気づく天。

「お、君がもしかしてかの有名な來魅ちゃん?」

「おう!そう言われてるけどな!今はどこぞの誰かに力を封じられた女だ!ハハハハ!」

「ハハハハ!!」

 一緒になって笑う天。

そしていちいち琉嬉にとってはチクチク痛い事を付け加えて言う來魅。

近くに居る琉嬉の顔は…と、苦笑い。

(來魅め…何回も何回も言いやがって…結構根に持ってるじゃんか)



「ところで、來魅ちゃん、天狐だって本当かい?」

 天がすぐ意気投合したかのように聞く。

「うむ!本当だ!」

「へぇ~。よく琉嬉ちゃん勝ったもんだね」

「おう!琉嬉はとても強いぞ!」

 そう。

來魅はみんなを強いと絶賛はしているが偶然に近いものがある。

そんな相手と戦い、勝ったというのだ。

それだけで十分自慢できるレベルだ。

そして琉嬉がさっきの來魅の発言を思い出す。

「なあ、來魅…天狐の子供って言ったよね?じゃあ、お前の親はどうしたんだ?」

「ん?親か?死んだ!!」

 笑顔で死んだという來魅。

あまりにもあっさりした言い方にまたもや一同止まる。

天狐が死んだと言う。

なぜ、どのように?というか死ぬものなのか?

そんなイメージがわかない面々は驚く。

「なんで、死んだのかな?」

 天が止まった場を動かす。

「ん?普通に寿命かな?病気かもしれん。かなり弱まってたしな。所詮生き物。死には栄えられなかったのかもな」

「ふむ。そういう事か。子供ながらに大変だったんだろうね。來魅ちゃんは」

「まー、外見だけ子供だけどなっ!一応100年間抜きにしても50歳以上ではあるぞ!」

「ほ~そうか~。そしたらおじさんより年上のお姉さんだ!」

「おう!」

 なんだかバカっぽい会話に頭を抱える琉嬉。

天の乗り方も半端ない。

「お前たちの父親は…なんか発言が子供っぽいな…」

「否定出来ないね」

「まーね」

 娘達も納得。

こういう天然っぽいところが紫音や莉音に生まれ継いだのと改めて納得した。



 久しぶりに彼方ファミリーが揃った。

前来た時は天だけ仕事の都合上いなかったのである。

時間もいい具合に日が落ちてきた。

風鈴の音が居心地が良い。

ゆったりした時間が流れている。

ついこの前まで來魅の事を調べて集まったのが今や來魅自身がここにいる。

世の中、どういう方向へ向くか分からない。

奇妙な話である。

「さて、晩御飯まで時間あるし、ちょっとそこらまで散歩でもする?」

 早速何かを発案しはじめる紫音。

どうせ、紫音の言う事は何か裏がある。

「なんだ、突然」

「ちょっと体でも動かさない?」

「暑いのに?」

「家でゲームばっかりじゃ体がなまるよ!」

「…ったく。わかったよ」

 ブツクサ言いながら外へ出て行く。

そして何も言えずついてくる莉音と悠飛。

楽しそうについてくる來魅。

「気を付けてね~」

 出かける者達に優しく声をかける嶺珠。

「んー、大丈夫だよー」

「それもそうねぇ」

「はは、そりゃそうだよ。五大家の血筋の人間に天狐の妖怪だよ?誰が勝てるんだい?」

 導も笑いながら言う。

ある意味最強の娘達だ。




 すぐ近くの河川敷の公園。

去年までなかった新しい住宅が見える。

人口が増えているのか、開拓がかなり進んでいる。

「結構変わってきてるね~」

「でしょー?でもね、あっちは相変わらずいい風景だよ」

 紫音が指差す方向は綺麗な森林。

川を挟んで反対方向には大きく広がる木々。

琉嬉らが住んでる所には程遠いが、手の入っていない森林が広がっている。

「うん、変わらないね」

「でね、最近あの森で変な噂があるの」

「…噂?」

 また余計な事件に首突っ込むつもりなのか?

琉嬉らは薄々そう思っていた。

「その噂とは!その森にはどうやら自殺する人が増えていると!」

「…こんな近場でそんな物騒な事になってるの?」

「なのだよ!」

 琉嬉の目がさらにジト目になる。

「なんか楽しそうだな」

 來魅は目がらんらんと輝いているが。

この季節には珍しい爽やかな風が吹いている。

だが、その風も紫音の話で少し肌寒く感じてしまう。

「さぁ!いざ出陣!!」

「止めても無駄なんだろうな…何もなければいいけど」



 突拍子もなく森の中へと進む彼方姉妹達。

一応林道みたいに整備されている道がある。

きっとちょっとした散歩コースみたいになってるのであろう。

近所ながら通ったことはほとんどない。

ちょっとした新しい発見に彼方姉妹達は楽しんでいた。

さすがに少し日が落ちてきてより鬱蒼としてきた。

「ね、ねえそろそろ帰らない…?」

「何?怖いの?莉音?」

「だって…自殺者が最近増えてるっていうから…」

幽霊など見慣れているはもの、リアル死体なんぞ見たくない。

そういう心境なのだろうか。

「なんていうか…何しにここに来たの?」

 今まで黙ってた悠飛が口を開く。

さすがに意味不明に連れてこられて疑問に思った。

「うーん?特に考えてないよ。肝試し的な?」

「…だろうね」

期待しなくても分かりきったような答えが返ってきた。

「肝試しをやってロクなコトないけどね…」

 この前のクラスメイト達との肝試しを思い出していた。

あの時はこちらには危害を加えて来なかった。

もし危害加えてくるような事になれば、祓ってしまわないとこちらが危ない。

それは面倒だ……などと考える。


 そして、やっぱり――琉嬉だけは何かに気づいた。



 琉嬉はわずかな霊気を感じ取った。

どこか、悲しげにも嬉しげが混ざったような複雑な霊気。

他のみんなはまだ気づいてない。

そのまま奥にどんどん進む。

しかし琉嬉は普段感じることない、異様な霊気が気になってその場を動かない。

「あれ?どうしたの?琉嬉姉」

 琉嬉の異変に気づいたみんな。

「いや…ちょっと気になる……ものが」

「……?何も感じないけど」

 気のせい?いや違う。

琉嬉にははっきりと感じている。

多少の相性があるかもしれない。

しかし琉嬉にははっきりと感じるモノがあるのだ。

弱い風ながらもざわつく草木。

そして琉嬉は道なきところへ進む。

「あ、姉ちゃん!サンダルなのに大丈夫!」

「多分大丈夫」

 ちょっとしたサバイバルになりそうだ。




 またいつもの琉嬉の行動。

それは姉妹である悠飛達が一番よく分かっている。

來魅もまた、黙って琉嬉の後を続く。

そして、目の前に見えてきたのは少し開けた空間だった。

近くに決して綺麗とは言えない池。

いや、池というよりは草など多いから沼と言えるかもしれない。

ともかくゴチャゴチャした場所だ。

あまり見た事ないような草が生えたりしている。

当たり前だがこのような場所には人気がない。

ないのだが、人の気配がする。

「ひゃーあっつい~」

 少し気温が下がったとはいえ、真夏にこのような激しい道を行くと汗をかく。

汗がひっついて、気持ち悪い。

それに少し湿気がある。

ベタついてより気持ち悪さががあがっていく。

小さな羽虫が辺りを飛び回っている。

その理由が目の前にあった。

「あれー…?こんな所に池が」

「なあ、お主らもう気づいてるだろ?」

「ん?」

「そこに人がおるじゃないか」

 一般人には見えないであろう、人。

つまり、霊が居る―。


「あ、あれって…幽霊だよね?」

 莉音が震える。

慣れてるくせに。

「視えるよ。子供かな?」

 その霊は年が10、11歳くらいであろうか。

短パンにTシャツの男の子だ。

今は見かけないような服装。

おそらく20年前くらいの服装だと思われる。

そして、まったく微動だにしないでその場にじっとしている。

「なあ、なんでこんな所に居るんだ?」

 來魅が疑問に思う。

いくら幽霊といえども、なぜこのような場所にいるのか。

「おそらく、いや、きっとここで死んだんだろうね」

 琉嬉がそう断言する。

しかし服装から判断するにも20年近くずっとここに居るのは謎である。

「ねえ、多分あの服装からだと結構昔っぽいよね?」

「うん…」

「普通は何かしら成仏しないの?」

「さあ、どうだか…そればっかりは霊自身が納得しないとね」

 少し近づいて見るとお供えの花束がある。

きちんと慰霊の意味を込めたお供えが。

だが、かなりボロボロだ。

しばらく変えられてないようだ。

「これって…やっぱりここで…」

そこで、琉嬉が霊に近づき子供の霊に問いかける。

「ねえ…なんでここのいるの?親の元には行ったの?」

 そう話しかけると琉嬉はしばし黙り込む。

「……そう」

 そしてうなずいている。

「……なあ、そう簡単に霊に話しかけていいのか?」

 妖怪の來魅でも軽率にも見える行動に疑問。

「琉嬉姉なら大丈夫だよ」

「そうか…」


 そのまま2、3分だろうか。

琉嬉はその場を後にし、戻ってくる。

「おお、どうだった?」

「…あそこからあえて動かないでいるみたい。自縛霊ってわけもなさそうだけど」

「ほう」

 言い聞かされた事を淡々と語る琉嬉。

子供の霊はここの池で落ちて亡くなったらしい。

毎年この時期になるとここに戻ってくると。

「へぇ……お盆だからかな?」

 世間一般的にはこの時期がお盆の期間。

その影響なのかなんなのか、子供の霊が戻ってくるという。

どこから戻ってくるのとかは一切不明。

気がついたらここにいるという。

いつになく不可思議な話だ。

「まさにお盆!」

 來魅が意味もなく力強く言う。

「まさにお盆って……なんだよそれ」

 クスッと笑う琉嬉。

「でもま、いずれお供えに親類が来るだろうから、放って置いていいと思う」

「ふむ……」

「多分今のお盆の期間過ぎればまたここからはいなくなると思うし」

「ほぅ~。そうなのか」

 何の因果なのかは分からない。

なぜ、この時期に霊が戻ってくると言われるのか。

それはあまりよく分かっていない、謎のままである。

「私達も何かした方がいいの…?」

「ん?気持ちだけていいと思うよ。下手に干渉すると面倒な事になりかねない」

 そう言われると面々は軽く手を合わせる。

「さて、行こうか」

「うん…」

「おっけー」

 琉嬉達はその場から離れた。



「しかし上手く干渉避けたね」

 小声で悠飛が琉嬉に耳打ちする。

「深く行くと莉音や來魅が余計な事しそうだからね。叔父さんに言われたんだ。

あの人もああ見えて余計な事しないようにしっかりと見てるし」

「大変だね」

 静かにうなずく琉嬉。

「しっかし…汗でベトベトだよ…」

 ベトつくシャツをピラピラ動かす。

「ブラが見えてるぞ」

 ジト目で紫音の方を見る琉嬉。

自分にはない膨らんだ胸を見て少し嫉妬心混ざった言い方だ。

「あ、琉嬉姉見た?えっちぃなぁ~」

「アホな事言うな紫音。たしかに汗だくだね」

「そうだな!帰ったら風呂だな!」

 來魅が明るく言い出す。

まるで自分の家のように振舞う。

なんとも、大物らしいというかなんというか……。

「お前は…まったく」

「自殺者はいなかったけどちょっとは楽しめたかな」

「…紫音。お前もいい加減にしとけよ」

 まったく気苦労が絶えないのだった。




 家に着いた面々は早速風呂場へ向かった。

「琉嬉は入らないのか?」

「僕は後でいいよ…。ゆっくりおとなしくお風呂入りたいし。

この前みたいなのは勘弁だからね」

「そうか~。残念だな。別に今日じゃなくてもいいしな!」

「ハイハイ…いってらっしゃい」

 元気な來魅に付き合いきれない琉嬉。

今回も多人数で入るのを拒否した。

前回、寧音も巻き込んでのお風呂大暴れ事件。

あの時は滅多に怒らない莉音が怒って場を収めたのだが。

琉嬉が本当に嫌な理由は、自分の成長度の極端に少ない体を見られたくないという、非常に困ったプライドのためだった。

來魅はともかく、年下の妹達にすら及ばないプロポーション。

どこか、後ろめたい気持ちがあるからだ。

女としてのプライドが崩壊しつつある。

可哀想な琉嬉である。

「お?なんだ?琉嬉?みんなとは入らんのか?」

「んあ、じいちゃん」

 現れたのは炎良だった。

「後でお祖父ちゃんと昔みたいに入るか?なんてな。ハッハッハッハ!」

「…んー、いいよ。じいちゃんなら」

 ここにきて衝撃発言。

「いや、冗談だったんだが…」

 逆に戸惑う炎良。

「今もたまに父さんと入るし。」

「な…なんと……」

 何かに打たれた様な感覚に襲われる炎良。

そして…。

「み…導ぃぃぃ~!!」

「……?!?!」

 炎良は導の名を叫んでどこかへと消えていった。


 琉嬉がひょこっと、とある部屋に顔を出す。

気になって炎良を追いかけた。

炎良が導に向かって何か言っている。

その導はなんで怒られてるのか分かってない状況だ。

おそらく説教だと思われる。

先ほどの琉嬉の発言について言及してるようだった。

「ありゃりゃ…一緒に入る事あるって言わなきゃよかったかな…」

 琉嬉は女同士だとどうも気が引けるようだが、親ならば大丈夫らしい。

父親と入る事はなぜか抵抗ない。

子供の頃からずっと父親と入る事が多かったため慣れてしまったためだろうが。

しかし普通ならば小学生にでもなれば一緒に入る事もない。

悠飛や双子もそうだった。

琉嬉の心情の通り、女同士、特に同年代の女子だと気が引ける。

「うーん。そんな大事になるような事なのか…」

 気の毒に感じながら携帯ゲームの続きをやるのだった。



 晩御飯は出前の寿司など豪勢だった。

「なあなあ、ハンバーグはないのか?」

「そう聞いたから作っといたわよ」

 そう言いながら出てきたのは双子姉妹の母親、三月。

おいしそうな手作りのハンバーグだ。

とてもジューシーな香りが漂う。

寿司が霞むほどに。

「おわっ美味そうだね…」

 一同が声をあげる。

「おお~~!これはこれは…とっても美味そうだ!」

 はやくもよだれが止まらない状態になる來魅。

相当ハンバーグがお気に入りになったようである。

「どうしたの?お母さん?こんなに手込んじゃって」

 ゴツン、と三月は無言で紫音の頭をグーで殴る。

「余計な事言わないの」

 どこか、普段の料理度合いが垣間見えたような気がしていた。

「では、久しぶりの家族揃っての食事。かんぱーい!」

「乾杯!」

 いつになくにぎやかである。

來魅もいつのまにかビールを片手にしている。

「お、お前!ビールなんて飲むなよ!」

「何を言うか!私は(合計)150歳以上だ!酒くらい飲んでも大丈夫だ!」

「いや、しかし…」

 制止する暇なく來魅は一気にビールを飲み干してしまった。

みるみるうちに顔色が変わる。

「プハーッ!びーるっていうのも美味いなっ」

「…大丈夫なの?」

 心配そうに見守る悠飛。

他の家族は楽しそうに食事。

「まぁまぁ、そう気にするな。見た目が子供なだけだしな」

 たしかにそうである。

人間ではなく、純粋の妖怪でもあるし。

「琉嬉ちゃーん、食べてる?沢山食べないと大きくならないよ~」

「…余計なお世話だって…。てか、この年でもう大きくならないと思うし…」

 自分自身で諦めモード。

「なーに、まだまだこれから……だよ?」

「…うっせー」

「琉嬉姉今何歳だっけ?」

「17だバカ」

「来年になったら合法ロリだね~?」

「お前なぁ…」

 紫音のこめかみを両手でグリグリする。

「あだだだあ~!!」

 こうしてお盆の宴会は過ぎて行く……。



 夜中――。

ゴソゴソ物音がする。

琉嬉はその音で目を覚ます。

隣で寝てたはずの悠飛がいない。

反対側にはぐっすり寝てる來魅。

かわいい寝顔。

本当に、こうしてみると子供である。

それにしても本当に楽しいのだろう。

油断だらけの寝顔である。

それだけ心を許してるのかもしれない。

琉嬉は悠飛がきっとトイレなのであろうと思いたいした気にしないで部屋の外に出てみた。

縁側の方へ歩いてみる。

やはり、真夏なので夜と言えども暑い。

部屋の外へ出るとエアコンが行き届かない場所なので少し嫌でもある。


 丁度いい、自分もトイレへ行こう。

そう思いトイレの方へ進む。

外の風景は怪しい月明かり。

お盆なだけあってときおり霊的物質が視える。

寺なので当たり前といや当たり前かもしれない。

近くには管理する墓場もあるわけだし。

それは毎年の事なので慣れてはいる。


 部屋に戻ると悠飛はいない。

(あれ?いない…。どこ行ったんだ?)

気になり、また部屋から出て行き、寺内を探し回る。

一旦外に出て、境内をぐるっと見回す。

そうすると屋根に悠飛がいた。

「…あんな所に……」


 悠飛はボーっと夜空を見ていた。

時刻は深夜2時程度。

「悠飛っ」

 突然名前呼ばれビクっとする。

「な、なんだ…姉ちゃんか…驚かさないでよ」

「屋根にいるなんて、こっちが驚くよ」

 琉嬉もいとも簡単に屋根にのぼる。

さすがに、普段から戦い慣れしてるだけあってバランス感覚が抜群である。

「何やってたの?」

「…いや、あれから二年か~…って」

「二年…?ああ、そうか…」

 二年前。

悠飛に二年前何があったのか。

当時悠飛は中学一年生頃になる。

「この力も…手に入れてから二年になるんだな……って」

「……この力って…その、「雪女」の力の事か」

「…そう」

 雪女の力。

そう、悠飛の力は雪女という、あまりにも有名な妖怪の雪女の力なのである。

どうして悠飛が雪女の力を使えるのか。

それはまた別の話。

「そのせいかどうか分かんないけど、暑いのがとても嫌でたまらないよ」

「…その氷あやつる力でずっと冷やしてればいいじゃん」

「そんなことしたら体力と霊気が持たないよ」

「そうか…」

「どうせすぐ溶けちゃうしね」

 なんだか、久々の姉妹だけの会話。

最近は來魅やら何やらで二人だけでいる事が少なかった。

逆に、新鮮だった。

「…夏になると思いだすんだ」

「ふぅん…」

「夏だったし…あの時」

「…………そか」

 あまり深く聞こうとしない琉嬉。

それは姉として、家族としての心遣い。

「あれから行ってないよね?里に」

「……うん」

「…どうする?久々に行ってみる?」

「行ってみたい気もするけど…」

 雪女達が住む集落がある。

「うーん、まー。気が進まないのは分かるけど、ね」

「……………」

 悠飛は黙り込む。

「あまり深く思いつめないようにな。僕は寝るぞー」

「あ、うん。待ってよ~」

 こうして短くともある意味深い会話はすぐ終わった。




 またまた暑い日ざしが入ってくる。

朝なのに猛烈に暑い熱気が入ってくる。

「今日もいい天気~、でも暑い~」

 莉音が庭の掃除をしている。

朝から暑い中がんばっている。

変なリズムに乗って独り言を言いながらお掃除。

「うし、今日も一日遊ぼう~」

「お~う!」

 莉音と來魅は元気だ。

「じゃ、行ってます」

 天は朝からまたお寺さんとしての仕事回りに出かけた。

この時期ならではの忙しさだ。

「いってらっしゃ~い」

 見送る家族や弟子達。

「さて、お寺も忙しいからお前達もおとなしく遊んでおくれ」

 いつになく仕事モードの炎良。

仕事する者。

遊ぶ者。

それぞれ交錯する緋黄寺の人間達。


「はぁー、てれびは学生達の野球か」

「野球なんて良く知ってるね。100年前もあったの?」

「野球は100年前から日本にはあったぞ。野球という名前だったかどうかは定かではないが…。

たしかべーすぼーるとかっていう海外の言葉もあったような気がしたな」

「へぇ…。ザ・歴史だね。……よく考えたら100歳以上生きてる人もいるもんな…」

「人間も100年以上生きるのか」

「言っただろ?日本は平均寿命伸びてるって…」

「ふむ」

 少し納得する。

「でも甲子園夏って感じだよね。うちの学校の野球部は簡単に負けたよ」

 琉嬉と來魅は居間でテレビを見ながら麦茶やお菓子を食べている。

暇な様子だ。

「暇だの」

「いつもの事じゃん」

「…でもこれがなんか楽しいんだなぁ~」

 ぐで~っとした座り方する來魅。

「………ねぇ、來魅」

「なんだ?」

 バリバリクッキーを食べながら相槌を打つ。

「…封印される前一体何をしてたの?」

「封印される前か?」

「そう」

「……それはもう暴れ回った。人間、妖怪関係なく力試ししたものよ」

「…迷惑きわまりないな」

 天井を見上げる來魅。

そのまま話を続ける。

「………親が死んでからの、一人で生きていく訳だが…いろいろ狙われた訳だ」

「…人間に?」

「人間もそうだが、天狐を倒せば強い血肉を手に入れれると勘違いした他の妖怪共もな」

「……一概に人間を嫌ってない訳が解かった気がするよ」

「片っ端からやっつけていった。もちろん、殺すような真似をしとらんがな」

「その強さが仇となって封印されたって訳か」

「そうだな。五大家…か。今はそう言われてるらしいが5人の術者達は強かった」

「ふぅん……」

 いまいちピンと来ない琉嬉。

ご先祖様の話だ。

実際に見てるのでないから、信憑性が薄い。

「特に、琉嬉。お前様に似た雰囲気の女が、真霊気を使う術者でのう」

「…柳樹さん?」

「たしかそう呼ばれとったかな」

「簡単に言うとだ。その真霊気とやらを食らって動けなくなっただけだな。そしてそのまま封印」

「端折りすぎ…」

「殺されなかっただけでも有難いがの」

 琉嬉は今の來魅の態度を見て封じの術を解いてても大丈夫なのではないか?

そんな事をふと思う。

(…でも)

「お前様の考えてる内容などお見通しだぞ?」

「へ?」

 ビクッと思わず驚いてしまう。


「なぁに。気にするな。私を封じてるのは正しいと思うぞ」

「…………嫌じゃないの?」

「正直言うと嫌なのは間違いないんだがの。でもそれだとお前様達に迷惑がかかるかもしれん」

「なんで?」

「…案外物を知らないんだな、お前様は」

「……むぅ。所詮20年も生きてない小童ですよーだ」

「ふふ」

 少し笑みをこぼす。

「私が復活した後…どうしてたか知ってるか?」

「いや、知らない」

 復活と同時に琉嬉と戦う。

軽く琉嬉をあしらった後、どこかへ行ってしまった。

その空白の時間は琉嬉は知らない。

「いろいろ回った。あのデカイ坊主の所とかいろいろな」

「ああ…あの巨大なお坊さんね…」

 阮醐の事だろう。

「復活を知った途端、倒そうとする妖怪達もいたもんだ」

「…本当に?」

「お前様も真霊気を手に入れようと狙ってる者がいる。お前様と私は似た者なんだよ」

「………」

 思い当たる事案がある。

「素のままの私であれば、霊気を辿ってやってくる奴がいるだろう。この封じの術で余計な霊気を発しなくて

バレないで済んでるのだぞ?」

「…なるほど」

「おかげ様でこうやってのんびり出来るものだ」

 さらにだらけた格好して琉嬉の太ももに頭を乗せる。

「ちょ、なにやってんだよ…?」

 完全な膝枕状態。

「んー、琉嬉は細っこいから枕としてはちょっと硬いのう」

「なんだよそれ…」

「嶺珠の方がいい弾力でいいぞ」

「人の母親を…」

「ふふ、琉嬉。お前様と出会えて良かった…」

「…急に何言ってるんだよ…」

「……スー…スー」

「寝たし…」

 唖然とする。

琉嬉の膝枕のまま、來魅は夢の世界へ行ってしまったようだ。

麦茶を一飲みし、琉嬉もなんだか目が霞んできた。

「んー、寝るの遅かったしなぁ…。昼寝もいいかな……」

 つられるように琉嬉も寝てしまった。



「琉嬉姉ー、買い物行こう~!って、あれ?」

 紫音が目にしたのはテレビをつけっ放しで寝てる二人。

「…仲いいねぇ」

「ほんと、妬けるよ」

 一緒にいた悠飛がぼやく。

「でも琉嬉姉と仲良く出来る人がいるなんてね~」

「…結局は同類の人達になるけどね」

「どゆこと?」

「……琉嬉姉と近い力を持ってる術者ばっかりだって事」

「なるほどー。すごい納得する」


 なんだかんだで、お盆の帰省の時間は楽しく過ごした模様。

琉嬉達家族はこの後もお盆が終わる日まで滞在した。




 琉嬉は携帯にきたメールを読む。

みゆからのメールだ。

別荘パーティの旅行の日程情報だ。

「…これって帰ったらすぐじゃんか…」

「何がすぐなの?」

 覗き込んできたのは莉音だった。

「なになに?これ?琉嬉姉これにやっぱり参加するの?」

「まーね…」

「あたしらも参加したい!!いいよね?みゆさんに聞いてよ!」

「…はぁ~。まずいヤツに見つかったな…」

 仕方なく双子も参加したいと言ってると送る。

返事はもちろんOKのサインだ。

このにぎやかさはしばらくついて回りそうだ。


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