#17 怪奇!プール開き!
7月下旬。夏。
夏といえばプールや海である。
この鞍光市の学校ではプール学習がある。
勿論ない所もあるのだが。
琉嬉達の通う鞍光高校も例外なくプール学習がある。
学校に備え付けてあるプールで授業がある。
そんなプール学習だが、琉嬉は毎年嫌な時期が着たと思うのだ。
「休む訳にもいかないしなぁ~…」
憂鬱そうな琉嬉。
去年依頼使用してない水着を取り出して何やら考えるように見ている。
小学校依頼から使ってる。
使う回数は少ないが、長い間使ってる。
そろそろ代え時…。
途中から今の学校に転入してから使ってない。
というか、鞍光高校も指定の水着なのでこれとは違うため買い替えなきゃいけない。
「苦節…5年。小学校の頃からサイズ変わらない…。自分で笑っちゃうよ。まったく」
それを知ってか知らないでか悠飛が琉嬉の部屋を覗き込む。
「…何やってんだ…?姉ちゃん。水着睨んで…」
「わかってるんだぞ。悠飛」
ビクっとする悠飛。
「な、なんでもないよ…!」
そそくさ逃げる悠飛。
相変わらずするどい察知力の琉嬉。
「…悠飛はいいよな。スタイル良くて」
どうやらスタイルを気にしていたらしい。
妹は背も年頃としては背も平均よりは高く、スラっとしいる。
そして出てるところは出てる。
反面、姉の琉嬉は…残念である。
「……トイレ…」
部屋を出て行く琉嬉。
そして、ちょっとして來魅が部屋に入ってくる。
「ん?いないのか琉嬉…。お、なんだコレは」
入ってすぐ目に入った物。
それは琉嬉の水着。
オーソドックスなスクール水着。
それを目にした來魅は手にとってみる。
「んむむ?これは…すくーる水着ってヤツか?」
なぜか知っている來魅。
100年のブランクを感じさせない知識。
その理由とは、琉嬉の部屋で毎日のように現代社会の情報収集。
そしてネット三昧。
余計な部分まで現代の勉強しているようだ。
「ほほぅ…琉嬉の奴、これを着るのか」
ペロっと舌を出しながら面白い事を思いつく。
「フフフ」
「…ふぅー。う?」
部屋に入ると同時に琉嬉は目が点になった。
「……お前…何やってるんだ…」
「おお、琉嬉!見ろ!私にも大きさがピッタリだ!」
來魅はなんと、琉嬉の水着を着ていた。
本当にピッタリ。
「……他人の水着を着るなよ……」
全然気にしない様子の來魅。
「似合うか?」
「…似合うよ…。アホみたいに…」
呆れて何も言えない琉嬉。
水着を着ている來魅は楽しそうだ。
しかもかなり似合っている始末。
「ははは!これで海とかプールとやらに行くんだろ?」
「…それ、あげるよ」
こうして、琉嬉は自分の水着を買出しに行くことになった。
「え…と、鞍光高校の指定の水着、指定の水着…と…」
とある、街中のお店。
地域の学校の指定の物を売っている。
この地域のお店には詳しくないので、なぜか寧音と護について来てもらった。
「ねえ、姉ちゃんお金あるんだから、他の水着も買ったら?」
悠飛もいろいろある水着を品定めしている。
「そうそう、新しいの買っちゃいなよ!」
「そうそう、私も手伝うから…」
あきらかに寧音の顔は違う意味でも顔だった。
「…うーん……」
少々悩む琉嬉。
「私も欲しい!」
「……ついでとやらか。着る機会あればいいけどね」
だが、お目当ての水着はあっても琉嬉のサイズに合いそうなのがなさそうだった。
「ちょっと店員さんに聞いてみるか」
その横で女の子らしく水着探しをしている悠飛と來魅。
ちょっとして、琉嬉が戻ってくる。
「マジですか…」
がっかりした表情の琉嬉。
「どうしたの?」
「…高校のヤツじゃサイズなさそうだって…。どうするか」
「やっぱり昔から使ってるやつでいいんじゃないのか?」
「いや…それは…」
「じゃ、小学校用の買うしかないね」
渋々小学校用などの水着を選ぶ。
ブブーッと琉嬉のスマホが震える。
メール着信のようだ。
「みゆか…なんでアイツ僕が水着買うって事知ってるんだ?」
他の者の顔を見る。
誰かが教えたに違いない。
そう考える。
「あ、あたしは知らないって!」
「私も違うよ!」
手振り身振りで否定する二人。
「すると…」
「ん?私は知らんぞ?」
「じゃあ誰が…」
「あ、私かも」
「……悠飛かよ…。盲点だった」
あまりみゆと接点がなさそうだが、ちゃっかり連絡のやり取りをしていたようだ。
最近出来たばっかりのおしゃれなお店。
そこにふかしぎ部メンバーと+アルファの面子が集まった。
なぜかみゆと叉羅沙が二人でいた。
「…仲良かったけ?そんなに?」
「まあまあ、そんなに気にせんでええんよ?」
「そうそう」
「…仲良き事はなんたらって言うやない」
まどかとは違う常に笑顔の叉羅沙。
というかキツネ目がそんな風に思えるだけかもしれない。
早速水着コーナーへやってくる。
やって来たのだが…琉嬉は凹む。
「………サイズがない」
みんなは必死に笑いを堪えてる。
「のう、琉嬉。ここのは私に合う水着がないぞ」
「……そうだな」
もう少し粘って見て回る。
だがどれもこれも大人の女性向けだ。
「くそ~…ん?」
琉嬉以外にも女性客が沢山来ていたが、一際目立つ赤い髪の少女の姿が見えた。
その赤い髪の子には非常に見覚えのある顔。
「あれ?緋瑪斗じゃん」
「え?あ……」
偶然にも、その子は狗依緋瑪斗だった。
ラーメン屋の時もそうだったが、偶然にしては凄い。
「あれ?もしかして…彼方、琉嬉さん…?」
「今日はみんなお揃い?」
「え、ええ…琉嬉さんも水着買いに…?」
「そーだね」
あからさまに不機嫌な顔を見せる。
自分に合うサイズがないからだ。
「どうせなら一緒に回りませんか?」
嬉しいお誘い。
だが。
「んー、でも今日はこっちも連れがいるし…こっちはこっちで回るし、そちらはそちらで楽しんでよ」
「そうですかー残念」
「琉嬉ちゃーんこっちにサイズ合いそうなのがあるよ~」
「…護のやつ大きな声で言うなっちゅーの…ごめん、僕行くよ」
「あ、はい…」
軽く手を振りながら琉嬉は緋瑪斗と分かれる。
一瞬の間だったが、あまり話し込む事も出来ず終いだった。
「お前ら~。ここはキッズコーナーじゃねーか!」
「いやいや、だって琉嬉ちゃん…サイズなかったじゃん?」
「そうだよ、姉ちゃん。小さいうえにその細さだから尚更合うのないんじゃないの?」
嫌味そうに言う悠飛。
「ぐっ…くそ…」
妹だけに、余計に悔しい。
仕方なく來魅と一緒に探すのだった。
「なぁなぁ、私のもかわいいの買っていいか?」
「うるさいなぁ…。わかったから。選べ」
「姉ちゃん私のもついでに買っといて」
「…手のかかる妹達だな…」
「いいお姉ちゃんだね、琉嬉先輩。私は兄弟いないから羨ましいなあ~」
みゆは一人っ子らしい。
「そうやな。少し羨ましいわ」
「本当ですね」
「お前らうるさい」
外野の声がいちいち癇に障る。
だが仕方ないものだ。
家族関係が良好な彼方家。
羨ましく見えるのもしょうがないのかもしれない。
そして、当日プール学習の日がやってきた。
「いやいや、暑い日のプールの授業ってのもいいねぇ~」
「ですなぁ~」
楽しそうなクラスメイト。
その反面琉嬉はどよーんとした表情だ。
(…みんなスタイルいいなぁ…)
スタイルの事をまだ気にしてるようだった。
「ホラホラ、行こうよ!琉嬉ちゃん!」
ゆうに手を引っ張られ外に出る。
まぶしい太陽の光。
天候が良く、まさにプール日和。
「ひゃぁー。いいねぇ」
まぶしいのは何も、太陽だけではなかった。
女子の水着姿に見とれる男子達。
中でも一番の注目は護だった。
かなり目立つルックスだ。
スクール水着からでもわかる豊かな胸。
それでいてスラっとした細い腰からの脚線美。
そして日本人離れした綺麗な金髪。
女子ですら憧れの的だ。
体育は二つのクラスが合同で行う。
琉嬉と護はクラスが隣同士なのでよく一緒になる。
「いやはや、カッコ綺麗ですなぁ。芹澤さん」
「いや、ハハハ、こう、注目されるのは恥ずかしいね…」
以前もあったが、護はこうみえても結構照れ屋。
「いいよね。護は。僕なんか…」
「いやいやいや、琉嬉ちゃんも可愛いよ。小さいなりの可愛さがあるんだよ」
「それ褒め言葉か…?」
ムっとする琉嬉。
そんな事おかまいなしの護達。
「よ、よう」
嵯藤達が琉嬉達がいる所にやってくる。
以前の肝試しで少し仲が良くなった模様。
「嵯藤…」
「……よぉ、彼方」
「なになに?あの二人フラグ成立?」
「まさかぁ」
他人から見ればそうとしか思えない雰囲気の二人。
怪しさ爆発だ。
「よーし、集まれー!」
担当の体育教師の掛け声がする。
とりあえず一通り基本的な授業をするようだ。
後はある程度自由時間になる。
その前にやる事をやってからであろう。
「おー、プールか~。楽しそうだなぁ」
「あれは…二年生かな?」
校舎の教室から見てる二人。
みゆと御琴である。
屋内と屋外で分かれている。
今琉嬉達は屋外側にいるので丁度見える位置にいた。
「だね~。琉嬉先輩とか護先輩いるよ~」
「護さん…すっごい目立つね。金髪ってのがすぐわかるよ」
「そういや、なんで護ちゃんって金髪なんだろうね?怒られないのかな?」
「さ、さあ…?地毛だって言ってたよね?」
「まさかぁ…」
そういえば誰も知らない。
護が金髪にしている理由。
そのせいで余計に目立つ。
何かしら理由があるのだろうが……。
その謎はいずれ。
「はぁ~~~~!気持ちいいねぇ~~!」
自由時間。
護は楽しそうに泳いでいる。
琉嬉はあまり乗り気じゃなく、はじっこで座って見ている。
「そんな所で何やってんだ?泳がないのか?」
またまた嵯藤が琉嬉に話しかけてくる。
「…ほっとけよ」
「……ふーむ」
嵯藤の後ろからみなっち達が覗き込む。
「あれ~?もしかして琉嬉ちゃんって…泳げない?」
「……そんな事ないけど…」
「わかった!背がちっちゃいから足届かないとか?」
「…ぶっとばすぞ…嶋元」
物凄い険しい目つきで嶋元を睨む。
その強烈な目線に嶋元は思わず黙り込む。
「…ちょ、ちょっと…そんなに怒らなくても…」
「あーあー、それは禁句だよ」
ゆうが嶋元に釘を刺す。
先日の肝試し依頼、仲が良くなったクラスメイト達。
みんなそれぞれ、プールの時間を楽しんでる。
そんな中、琉嬉は何かを感じ取った。
「………なんだろ」
テクテクその場から離れ、辺りを歩き回る。
「どった~?琉嬉ちゃーん」
琉嬉の行動に気づく護。
こういう時に限ってあまりいい事にならない。
毎度の事である。
「いや…いつもの事だけどさ…」
「うむ。言わなくてもわかっている。琉嬉ちゃん。何か霊的なの感じたんでしょ?」
「…むぅ。その通り」
「やっぱり」
「でも、すぐ消えた」
たしかに霊気を感じ取った。
しかし、今はまったくない。
ただの通り過ぎたモノだといいのだが。
何せこの学校はかなりの霊磁場だ。
今更珍しい事でもないのだが。
「キャアァ!!」
突然女子生徒の悲鳴が聞こえた。
回りがざわつく。
「なんだなんだ?」
「何かあったみたい。行ってみる?琉嬉ちゃん」
「…うん」
「急に、足が引っ張られたように…」
女子生徒曰く、突然足をつかまれて引っ張られたそうだ。
よくある話のひとつである。
海とかでも多い。
泳いでると突然手のようなものにつかまれて、そのまま引きずりこまれたりするという怪事件。
まさに、今その状況だ。
大抵は藻や海草などが絡みついて…と、言った具合なのだが。
プールでなるとそうもいかない。
まさか、誰かのいたずら?
しかしそのようないたずらしてる人間も見当たらないようである。
「なんなんだろ…?」
「さぁ……」
楽しいプールの授業が一気に興ざめである。
「ま、あまり気にしないで…」
そのまま続行。
「…琉嬉ちゃん。やっぱり何かいるのかな…?」
「残念ながら、今は何も感じない。まったくいない」
「そうか……。気になるね」
二人の能力者も何も感じ取れない。
一体なんだったのか――。
こうしてプール授業はひとまず終了となった。
しかし――
事件はまだ終わりではなかった。
「いやぁぁぁ!!なんでーーー!?」
突然響き渡る大声。
悲鳴に近い叫び。
女子更衣室からだ。
「ない!ない!ないーッッッ!!」
護が大慌てロッカーをかき混ぜるように何か探している。
というか、錯乱に近い。
「どうした?護?」
大混乱の護に近づく。
かなり焦っている。何かあったのだろうか?
「ないんだよ!ない!ない!ブラやパンツが…ない!!」
「…へ?」
女子更衣室がザワザワ…と凍りつく。
「どっかに落としたとか、忘れたとか、最初から下着を最初から履いてなかったとか?あの時みたいに」
「そんなわけないでしょーが!てかあの時ははいてたの」
珍しく琉嬉に対して怒りの言葉。
最初に手合わせした時のトラウマが蘇るようだった。
「別のロッカーに入ってるとか…」
「そうだよ。みんなの探してみようよ」
他の女子もとにかく自分のロッカーに向かう。
…数十秒後。
新たに悲鳴が巻き起こる。
「嘘ー!!…マジで…?」
ゆうががっくりと腰を下ろす。
どうやらゆうもやられたようだ。
「ゆうもか…」
そう言いながら琉嬉も自分の使用したロッカーを覗き込む。
「………あー…。やられた………」
「琉嬉ちゃんも?」
「………」
無言のままうつむく琉嬉。
こんな事は初めてで、ショックだった。
しかし、その瞳の奥には燃えるような怒りが灯っていた。
ちなみに盗られたのはショーツ。
琉嬉は普段からスポブラだったためか、下着とは気づかれなかったのか盗られずにそのままであった。
「ねぇ…最近下着ドロが出たって話聞いたことある…?」
「いや……聞かないわ」
少し更衣室内が軽くパニック状態だ。
被害を受けたのは護、ゆう、そして琉嬉の3人。
「ふふーむ。この3人の共通点…」
みなっちが何かに気づいたような事を言い出す。
「何か分かったの?」
「私の仲のいい友達!!」
ゆうがみなっちの発言にガッカリする。
「そして…この学校の人気のある可愛い女子生徒という共通点!!」
「はぁ?!」
3人みんな驚く。
何を言い出すかと言えば、人気ある可愛い女子という話。
「あれ?知らないの?芹澤さんはもちろん、ゆうって結構人気あるんだよ?」
「…そ、そうなの…?」
「あと、琉嬉ちゃんも一部の人には男女問わず人気あるという情報をキャッチしてるのさ!」
「………マジで?」
男女問わず、一部の人間に人気。
なんとなく人気の理由が少し普通とズレているのを察知した琉嬉。
(ここは、喜んでいいのかなんなのか…)
かなり複雑な気持ちでいっぱいの琉嬉であった。
「どうしよう…」
「ノーブラノーパンでいる訳にいかないよね」
「とりあえず先生に連絡しよう」
こうしてあっという間に全校に下着盗難事件が広まった。
昼休み。
生徒会室。
まどかと叉羅沙だけがいる。
「うちら二年生のプールの授業の時に盗難事件あったそうやな」
「みたいですねぇ」
さすがに笑顔ではないまどか。
生徒会メンバーも集まっている。
「聞いて驚くなかれ、どうやら芹澤さんと琉嬉ちゃんと高城さんの下着だって」
「ほぉ~…人気ある女子ばっかりですねぇ」
「…うちらも盗られたりとかせんやろうか?」
「可能性はない訳でもなかったりするかもですよ?」
「そうやろか~?ウチみたいなでかい女の下着なんぞ楽しくなさそうやろ?」
「いや、そんな事私達女子に言われても…」
さすがに叉羅沙の卑屈な発言にひくまどか。
「ところで犯人の目星って、つきました?」
「さーっぱり。って、なんでウチに聞くん?」
「いやははは、何か知ってそうだし」
「……そのセリフそのまま返したるわ」
お互いよくわからない会話だった。
事件後、昼休みの後に急遽全校集会が開かれた。
改めてここ最近、不可解な事件が学校に限らず起きている。
生徒会も動いた結果での全校集会だった。
そして、被害者達はというと…。
結局はみゆの計らいで近くの店で合う下着を買ってきた。
その間護は…というと。
「あははは~!スパッツでもよかったんじゃん?」
「…あんたらねぇ…。ノーパンでスパッツってどんなプレイだ!」
琉嬉と最初に戦った時と同じ格好をさせられそうになった。
下着買ってくる前にスパッツを護に履かそうとしたみゆ。
しかし、みゆの案は却下された。
「いいじゃん~。スパッツキャラなんだから~」
「……ぶん殴るぞ」
みゆと護。
楽しそうなコンビになりつつあった。
「何やってんだか…」
「でもこれって警察沙汰になるのかな?」
「あー、大々的になっちゃってるし、警察来るんじゃない?」
冷静に返す琉嬉。
「…盗難騒ぎで沢村刑事が来る筈ないだろうしな。てか、課が違うか」
主に殺人など凶悪事件関連をやっている若き刑事。
盗難事件には課が違うので出てこないだろうと、そう思っていた。
「彼方琉嬉ちゃ~ん」
どこかしら男の声で琉嬉を呼ぶ声が聞こえてきた。
ふと、声がする方をに目線をやると、背が高くサングラスした大男が手招きをしている。
案の定、沢村刑事がなぜか来てた。
「ちょ!?沢村刑事!!」
軽く教室の外から手招きしている沢村刑事。
それを見た回りのクラスメイト達は驚きを隠せない。
何せ、背が高い、若くてカッコイイ渋い刑事だからだ。
「あの人誰?琉嬉ちゃんの彼氏?かっこい~」
「んなわけあるか!バカ!あの人は単なる知り合いだ!」
ポカっと軽くみなっちの頭にツッコミを入れて沢村刑事のとこに行く琉嬉。
「よう、琉嬉ちゃん」
「な、なんで来てるんすか?!」
「いんや~、盗難事件あるっていうから…琉嬉ちゃんのも盗られたんだろ?」
「う……、なぜそれを…」
「警察の情報量なめるなよ。て、俺自身の力だけどな」
「うへ…。で、どうしたの?」
「いやいや、琉嬉ちゃんの知り合いが被害に遭ったていうから、ちょいと気になってね」
少しの間の出来事をいろいろ話す。
盗難事件については警察に任す事にする。
しかし、それ以前に不可解な事が起きている。
プールで足を引っ張られたという、怪事件。
「まぁ、盗難は生活安全課の仕事になるんだけどさ…」
「?」
「何か怪奇めいたものあるのかなって思ったんだけどね…どうせ暇だし生安の連中に混ざって来たんだけど。
何か目星はついてるのかい?」
「いや、今のところはまったく…」
「……そうか。ま、また何かあったら管轄違っても連絡してくれよ」
「うん。ありがと、沢村刑事」
話は終わったようだ。
なんだかんだで頼りになる。
異端な刑事、沢村。
「さてさて、何か手がかりあるかね」
楽しそうにみゆが言い出す。
放課後、一行が来たのはプール。
この後のプールでの授業があるのかはまだわからない。
もしかしたらなくなるかもしれない。
今のところ不明だが、盗難より足引っ張り事件の方が気になる。
琉嬉が気にかけているのはそこだった。
「下着ドロと関連性あるのかねぇ?」
「さあ…。無いとは思いたいけどね」
琉嬉らが辺りをウロウロ見て回っている。
どうもきな臭い、不可解な事件。
こういう時こそふかしぎ部が動く。
だが、護一人だけまだテンション低い。
「……はぁ~…。ショックだ…。なんで下着なんて盗むんだ…。それ使ってどうするんだ!!…はぁ~…」
「あらら、護ちゃんお疲れモードだねぇ~」
「仕方ない。高かったらしいし。盗まれたやつ。丸ごとだしね」
「ありゃりゃ。それは残念」
自身も盗まれたのにも関わらず、冷静に霊気など特定するために何かを辿っている琉嬉。
微かな霊気などあれば、琉嬉はそれを感じ取れる。
何か手がかりでもあれば…。
そう思いながら水がないプールの底を歩き回る。
端から端まで。
くまなく。
「なんかありました~?」
気の抜けたような声でみゆが琉嬉に問う。
「しっかし、本当に霊的なのいたん?」
プール探索に駆り出された叉羅沙。
半分、生徒会命令もあるらしいが。
「……ふぅむ。何もないか…仕方ない。引き返すか」
時間も時間。
時刻は夕方6時を回っていた。
まだまだ明るいが長居しては面倒である。
この日は帰宅する事にした。
「お帰り~」
「……ただいま」
出迎えたのは父親、導だった。
「元気ないね」
「…まぁ…ね。いろいろあったし」
「下着くらいならいくらでも買ってあげるよ!元気だして!」
「な…なぜそれをッッッ!?」
なぜか知っている下着盗難事件。
「ハッハッハ!話題になっとるぞ!いんたーねっとってやつでな!」
「な…なんだってー」
來魅がいつのまにかブックマークしていた鞍光高校の話題が出ているサイト…。
というより、どうやらどこかの掲示板のスレッドのようだ。
すぐさま、盗難事件の事が出ている。
それをみた來魅が導に教えたのだろう。
「…勘弁して…。いろんな意味で」
「ほーう。お前様の通う学校でそのような事がな」
「てーんで手がかりなし。僕でもお手上げって訳さ」
「なるほどな…」
学校に巣食うようにいる霊体。
何かに呼ばれるように集まっているという。
プールで起きた不可解な出来事も霊によるものなのか。
今は謎だが、そう睨んではいるが。
「まあ、それは良いとして。しっかし面白い町だな。ここは」
「…どういう意味?」
気になる発言。
來魅はそのまま語りだす。
「知らんのか?ここの町…というよりここらの土地は強力な霊磁場だぞ。おそらくなんらかの力で抑えられてるだろうが」
「なんらかの力…?抑えられてる?」
一瞬、旧校舎の話を思い出す。
「私が封印されてる間に術者達が力を強くしたのだろう」
「……ふむ」
「元から術者が集まる土地なのか、それだけは不思議な縁だな」
「多分、だけどな」
「多分…何?」
「勝手な予想だが、何らかの力でこの抑えられている霊磁場の結界が崩れようとしてる、と、思うのだが」
「………!!」
驚愕する琉嬉。
「そんな話聞いた事ない…」
「現に私の封印も解けた事だしな」
「え?あれって百年しか封印できないものじゃ…?」
「厳密に言えば、百年ぴったりという意味じゃないぞ」
「…え?」
理解ができない琉嬉。
「百年も経てば多少なりとも霊力が落ちるもんだ。だが、この剥がれようとしている「力」でさらに脆くなったというか」
「……ようは、最近の出来事と合わせるように霊磁場が弱くなって封印が解けたって事か」
「まぁ半分くらいはお前様のせいだけどな」
そういいながらケラケラ笑う來魅。
「はぁ?なんで…?」
「お前様には特別な力があるだろう?真霊気と言ったかの」
「…うん」
「それが反応でもしたのだろう。だから封印が早く解けたかもしれん」
「……そうなの?だったら余計にあそこに近づくのは危ないのか…」
「余計な事に首を突っ込んではならんぞ」
「お前が言うなよ…」
こちらに引っ越す前もちょくちょく妖怪などの事件は何度か自ら解決しに行っている。
しかし、こっちに来てからもの、明らかに怪事件が増えている。
緋黄寺のある地域でも事件が多くなっているそうだ。
まずは、霊磁場の事を詳しく調べる必要性があるような気がしてきたのだった。
「姉ちゃんどうするの?これから」
「おわ!居たのか、悠飛」
「……居たよ」
悠飛も來魅との会話を聞いていた。
悠飛も彼方家の一員。
決して無関係では終われない。
「なぁ、來魅」
「お?なんだ?」
「どうせ昼間とか暇なんだろ?ネットで詳しい情報あったら僕に連絡して」
「おお、いいぞ!世の中便利になったもんだな~」
「…天下の妖怪がネット生活…」
ボソっと悠飛が皮肉気味にこぼす。
当の本人、來魅はまったく気にしてない様子だが。
だが、忘れていけないのは今回のプールでの事件+下着ドロ事件。
深く関わってるのは下着盗難の事件の方だが……。
とにかく今日に関しては未解決のまま日付が変わっていた。
先日は下着盗難などの事件があったばかり。
何事もないような風景だが琉嬉は昨日の來魅の言葉を気にしていた。
「ふーむ……むむむ」
朝にもかかわらず難しい顔している琉嬉。
「どうした?具合でも悪いのか?」
不思議そうに気にかける嵯藤。
すっかり仲が良くなった二人。
「なんだ。嵯藤か。別になんでもないよ」
「…そうか。困った事あれば、俺に出来る事であ、れ、ば、言ってくれよ」
「……あ、れ、ば、ね」
「………」
元々、クールで口数が少ない二人。
またもや沈黙が訪れる。
「…あ、あとね、僕のことは下の名前で呼べ」
「…はぁ?」
唐突に言い出す琉嬉に対して驚く嵯藤。
得意の下の名前で呼べ発言。
「僕も下の名前で呼んでやるから」
「……な、なんだそりゃ?」
「…知らない仲なんだから、親しき者同士という事で」
「…わ、わかったよ…」
琉嬉曰く、親しくなった仲で下の名前で呼ばないのは、よそよそしいのが嫌でたまらないらしいのだ。
というのも、琉嬉が気を許した人間だけであるが。
「る…琉嬉でいいのか」
「なんだ眞太朗」
「!!」
再び起こる沈黙……。
(こ…こいつは……何を考えているか…わからん…!まさに不思議少女…)
嵯藤改め、眞太朗は不可解な言動の琉嬉に対して驚くばかりであった。
部室。
「おいーっすぅったらっとぉー」
相変わらずヘンテコ挨拶するみゆ。
元気なのはいいが、回りの目を少し気にした方がよさそうでもある。
「なんだ、みゆか」
「昨日の今日なんだけどさ、事件解決できそう?」
「……なーんも、打開策なし。今回は諦めモードかも」
「ありゃ~、残念」
しかし、その中でも違う考えの人間がいた。
そう、下着盗難に遭った護だった。
なぜかいつのまにかいた護。
「いーや、絶対に許さん。下着ドロはとっ捕まえてぶっとばす!」
「…いや、護さん…。下着ドロというより…僕はプールでの心霊現象を…」
「琉嬉ちゃん!君もパンツ盗られたんでしょ!悔しくはないのかい!?」
「あ、いや、大声でそんな事言わなくても…」
昨日とは違う護に押される琉嬉。
「ほぅ~、護先輩、昨日と違う迫力…」
「高かったんだ…あれ…、ぐぬぅ…」
「いくらしたのか知らないけど、まぁ許されない事件だねぇ」
やれやれといった表情のみゆ。
それとは裏腹に護は怒りの表情へと変貌してたのであった。
なんだかんだで事件解決のために動き出す琉嬉達。
解決の手がかりはまるでなしだが…。
そして放課後。
水泳部が部活動を開始する横目に琉嬉達はまたもやプールへと来ていた。
しかし、まったく手がかりがみつからない。
もしかしたらプールでは何も分からないのかもしれない。
そんな雰囲気が漂い始めていた。
水泳部が活動をしている。
邪魔にならない程度で調べても構わないという事だ。
水泳部は着替えなどの荷物はロッカーに入れないでプールの脇に置いている。
「あー、もう。まったく何にも感じないってなんだよ!」
しびれきらす護。
辛抱が無い状態だ。
「何かわかる?」
「………」
みゆが聞いても琉嬉は反応ない。
というよりかなり集中してる様子。
「ふーむ…。マジだね、琉嬉先輩…」
みゆもそう言うと目つきが変わる。
いつになく真剣な顔になる。
しばし時間が流れたのち、変化が生じる。
「あれ?護は?」
気づくといない。どこに行ったのやら。
護は更衣室にいた。
そして何か強張った表情している。
「護…?どうした?何か分かった事ある…?」
「…琉嬉ちゃん。霊視してみて。この辺」
「……?うん」
そこは護が使った更衣室のロッカー。
琉嬉はそっとそのロッカー辺りに手を掲げる。
そして目を静かに瞑り、先ほどと同じように集中する。
「………犬?」
「そう、犬」
どうやら琉嬉達が見たビジョンは犬が見えているようだった。
「ほへぇ。なぜに犬?」
「…犬が持って行ったとでも?」
「さぁ…ね。でもその可能性は高いかも」
こうして護探偵は下着ドロ探しへと行くのだった。
「…勢いよく出てきたのはいいけどさぁ…。犬だけじゃ手がかり足りないよ」
「う…たしかに」
冷静になる護。
犬だけのヒントだけではどうしようもない。
そこらじゅうの犬を確かめるわけにもいかない。
「護探偵はだめだめですね~」
「うぐぐ…」
みゆが嫌味込みで言う。
何も言い返せない護。
「ふぅむ。ここは助っ人呼ぶかぁ」
琉嬉が携帯電話を取り出し誰かに連絡する。
それは良く知る人物だった。
「一体どうしたのさ…姉ちゃん。わざわざ高校まで呼びつけて」
「おう、悠飛。早速だが、…」
呼んだのは悠飛だった。
そう、推理小説など推理物が好きな悠飛を、この事件を解決してもらおうという作戦だ。
以前吸血鬼騒ぎの時もその実力を発揮した。
今回もその能力は出されるのか。
「琉嬉姉~やほ~」
「紫音まで来たのか」
「何ー?駄目なの?」
「いや…別に駄目じゃないけど…」
うるさいのがついでに来てしまったようである。
琉嬉と護は全然解決に進展しない、下着ドロ事件の話した。
「ふーむ…。犬ねぇ…。でも気になるのがあるけど」
「気になること?」
悠飛が気になる事。それは何か。
「まず、共通点は、学校で人気ある女子生徒のが盗まれたという点」
「そうそう、二年生でかわいいと評判のまもちゃんと琉嬉ちゃんとゆうちゃんの」
楽しそうに言うみゆ。
「僕が入ってるのか……」
自分の事をそういう風に見てなかった琉嬉。
少し嬉しいような、嫌なような複雑な思いだった。
「すぐ分かる事だけどさ、あきらかにそういうの知ってる人物だよね?内部犯行か…もしくは外部でもそういうのに詳しい人物…」
「ほほう」
「ただし、外部であれば不審過ぎて無理だと思うし…。内部であれば盗める可能性大分高いだろうしね」
「すご~い、あたし達そんな事微塵にも考えてなかったよね~?」
痛いところをつくみゆ。
ごもっともである。
「そういう人物に絞ってみるとか…外部であれば難しいけど」
「外部であれば、沢村刑事になんとかしてもらおう」
「犬が視えたってのが疑問過ぎるんだけど…犬が狙って盗むような芸当出来るとは思わないし…」
しばらく黙り込む悠飛。
深く考え込んでそして誰かに電話する悠飛。
何か策があるのだろうか。
「ね、ね、悠飛。人間じゃないって事は?」
紫音が悠飛に意見をする。
「うん。その線は私も考えた」
「マジで?そこまで考えてるの…?」
「でも、紫音の言うとおり人間ではない、犬と関係した妖怪などの仕業…てのも考え付くよ」
「なるほどね…」
琉嬉らがうなずく。
「しっかし、人間相手に興奮するスケベな妖怪っているの?」
「いるだろうね…」
…全員黙り込む。
嫌な話である。
卑猥な目的で出てくる幽霊ってのもいるとの話もある。
この手の話はよくあるらしい。
「でも解決の糸口見つけたじゃん!なんとかなりそう!」
「お前は何もしてないのにな」
「う……」
するどいツッコミをする琉嬉。
護はさっきのテンションとは真逆になり、昨日と同じようなテンションに戻る。
そうしてる中、琉嬉の携帯電話が鳴り出す。
みんなが知らないような音楽を鳴らして。
「んー、なんだ?家から…?」
また子煩悩の父親からとか思いながら電話に出る。
「おー!琉嬉かー!私だ!來魅だ!悠飛に言われた通りにやったら面白いの見つけたぞ!」
「…來魅?なんだ一体…」
「今からな、めーるにみつけたネットのあどれすっての送るからな!」
「あ、アドレス?うん、送って」
來魅はすっかりIT的な技術を身につけてしまった。
というのも、琉嬉がある程度教えたからであるが。
メールのやり取りも何かあった時のために來魅に教えといた。
それをすっかり使いこなしてしまっている。
「なになに?何の話?」
興味津々のみんな。
「あ、メール来た…これか?」
來魅が送ったアドレス。
それをクリックし、見てみる。
すると……、鞍光高校の事が書いてある掲示板だった。
「これって…うちの学校のだよね?」
「裏サイトとかってやつ?」
「わかんないけど…そういうのじゃないかな。広報部もうんざりしてるって言ってた気がするな」
どんどん見ていくと先日の事件の事が書いてあった。
「あ、昨日の出てる」
よくよく見ていくと盗まれた生徒の名前が出ている。
内容はやはり可愛いと評判の事が出ていた。
琉嬉の事は…というと、
『確かにちっちゃくて可愛いけど、何考えてるかわからないし気強くて凶暴だぜ。さすが凶暴天使』
『かわいいけどな、小さ過ぎるよな。ロリコンにはたまらないと思うけどな』
などと書かれていた。
「……散々な事書かれてるね…。琉嬉姉…」
「凶暴って…何かやらかしたの?姉ちゃん?」
「あ、いや、ちょっと…春先に…」
どうやら消したい過去は悠飛には言ってなかったらしい。
両親は知ってるようだが。
停学一日だけなので不審にも思われなかったのだろう。
「ちょーっといろいろあったんだよね~?知ってるよあたしー」
「みゆ!言うなよ!!」
琉嬉はおとなしく見えてもすぐ怒る。
それも気がかなり強いのですぐ反発してしまうところがある。
きっとそのせいだろう。
「うちの中学もこういうのあるのかな?」
「あるかもね?」
もう少し深く見ていくと気になる部分があった。
「あ、これは…」
事件に関わってるらしき内容。
もしかしたら盗むような事しそうな生徒の名前…。しかも実名。
つまり、犯人の可能性が高そうな生徒の名前が出ている。
「うは、コレって、ヤバいんじゃない?」
「ヤバいねぇ。でもこれで探せばなんとかなりそうじゃない?」
「でもどうして來魅ちゃんがこんな事…」
すっと手を上げて悠飛が言い出す。
「あ、それ私が頼んだ。ついさっき」
「そこまで…手ぇ込んでるな…」
しかし、それだけじゃ証拠にもならない。
強行手段にでも出ない限り無理な話であるが、そうも行かない世の常。
あくまでも可能性としての考えだと悠飛は言う。
「うーん…ここまで来てもどうしようもないな…」
「沢村刑事に聞いてみよう」
琉嬉はすかさず沢村刑事に連絡を取る。
今日の琉嬉の電話は忙しい。
一行は再びプールの更衣室に戻って来ていた。
護が使ったロッカーあたりをくまなく探す。
「…これって犬の毛だな」
拾い上げたのは白っぽくて硬めの毛。
「本当に犬の毛?誰かの髪の毛とか…?白いから寧音ちゃんのとか?」
疑問をなげかける護。
「バカ言うな。いくら寧音でもここまで白くないぞ」
「もしかしたら違うトコロの毛とか?」
「ひっ!」
その言葉に思わず毛を放す護。
みゆがいらん事言う。
「いいや、僅かな人間とは違う霊気が感じられる。間違いないね」
「琉嬉ちゃんが言うのだからそうなんだろうね…」
「やっぱりね。掃除されてなければ出てくると思ったよ」
悠飛は新たな考えを思い浮かべていた。
犬が何か関係してるのでは、と。
しかしそんなわけないとと誰しもが思う中、紫音の発言で気にかかる事があったからだ。
妖怪かもしれない。
その言葉がさらに悠飛の推理力を伸ばす。
「あのさ、姉ちゃん達、妖怪絡んでたら警察じゃどうもできないよね」
「…うーん、たしかにね」
「だから、こうして私達が動いてるのだ!」
そこで護が活気付く。
「お前なぁ…。まぁいいや。今日はもう遅いから明日、この名前出てる生徒のとこ行って調べようかね」
「あとは頑張ってね」
「おう」
さらなる翌日。
琉嬉達はまず、生徒会室に行き、裏で生徒名簿を見ていた。
「なんでウチまで…」
「ブツブツうるさいなー。これも生徒会の仕事だと思ってさ」
「なんでって、…しゃあないか」
「そうです。学校の風紀の乱れに繋がります。ここはいかにして犯人を…」
寧音はいかんせん、やる気満々だ。
「まあまあ、いいじゃないですか。学校のため、全女子生徒のため…」
「…なんやそれ…」
注意深く見ていく。
名が挙がっていたのは5人程度。
その中に嶋元の名前があった。
「嶋元…てうちのクラスじゃないか。コイツってそういう感じあるのか…。でも嶋元はあり得ないな」
「なぜ?」
「だって同じ授業受けてたもん。盗めるわけないよ」
「あ、そっか~」
各犯人候補のクラスが判明し、それぞれ直接会って見る事にした。
「いいか、みんな。直接お前が犯人か?と聞いちゃだめだぞ?特にみゆ」
「はぁーい。隊長!」
「…絶対に余計な事まで言うなよ」
「ほぃ!」
「とりあえず、犬の霊気を発してるやつがいるはずだ。そいつの霊気を感じ取ればいい」
「ラジャ!」
そして昼休みの終わり頃。
犯人候補は嶋元抜く4人に絞れられた中、それぞれ戻る。
ともかく犯人候補に突撃してきた面々が屋上へ集まる。
「みんな、どうだった?」
「こっちは違うかも~」
「同じく」
「こっちもハズレやなぁ」
「琉嬉ちゃんは?」
何か悟ったような表情をしている。
そして琉嬉は右手を上げVポーズを取る。
どうやら当たりのようである。
「犬の霊気を感じた。間違いない。コイツだ」
どこからか取り出したか、犯人候補の写真。
写っているのはいたって普通の男子生徒。
名前は砂川という、高校二年生。琉嬉達と同学年の生徒だ。
「…ってコトは…コイツが私の下着を…」
いきり立つ護。
「まあ、待て、護。うかつに手を出したら逆に不利になる」
「んむむ、じゃ、じゃあ、どうするの?」
少し間をおいて琉嬉が言い出す。
「学校じゃなく、放課後尾行して突撃する」
「ストーカー作戦か!」
「なんだその人聞きの悪い言い方は……」
護のバカっぽい発言に呆れる琉嬉達だった……。
放課後になり、琉嬉と護、そして少し遅れて動く寧音の先発隊が犯人疑惑のある砂川の跡をつける。
他のメンバー、みゆと無理やり付き合わされた叉羅沙は別行動。
大勢だと不自然になるからという理由でバラバラに行動することにした。
「ねえねえ、琉嬉ちゃん。どこまでいいの?」
「…人気の無い所まで…行けばいいんだけど…」
緊張感が走る。
「いい感じの場所まで行かなかったら?」
「…そこは力ずくで行くしかないね」
(…琉嬉ちゃんだって人の事言えないだろ…。だから凶暴なんて書かれるんだよ)
「ん?何?何か言いたい事ありそうな顔してるよ?」
「あいや~、なんでもありません!」
「こちらみゆ。行き先はどこだい」
「こちら琉嬉。現在バスを降り、東町近くの森辺り」
「了解。後でそちらに向かう」
とまあ、スマホの通話アプリでまるで兵士のようなやり取りが交わされる中、人通りのなさそうな場所までやってきた。
この辺の住まいなのだろうか?
二人はそんな疑問を抱きながら尾行に成功していた。
「……ここら辺に住んでるのかな?」
「さあ?」
バスを降り早速森の中へと消えていく砂川。
「あ、オイオイ…どこ行くんだ?アイツ…」
琉嬉達は黙って着いて行く。
だが、琉嬉は我慢しきれなかったのか飛び出す。
「あ、ちょっと…琉嬉ちゃん!」
「おい!待てよ!砂川!!」
「!!?」
驚く砂川。
すぐさま振り向くと同時に大声を出す。
「な!!なんだ!お前ら!!彼方か!」
「黙りなさい!」
琉嬉の後からさらに素早く出てきたのは寧音だった。
左腕にしている風紀係の腕章を強調するように仁王立ちしている。
「下着ドロはお前なんだろ!?白状しろ!」
寧音が大声で怒鳴り散らす。
その迫力たら琉嬉らも少しびっくりする。
「な、何を根拠に…」
「琉嬉ちゃん!寧音ちゃん!いきなり特攻しないでよ…!」
あまりにも早い行動だったため、護は出遅れた。
「な!芹澤さんまで…」
「もう分かってるんだよ。お前が犯人だって事が。このスケベ野郎が!僕達のパンツ返せ!」
「何を言ってるんだ…。俺がそんな事するわけ無いだろ!大体、証拠がないだろ!」
「証拠ならある…。お前は…」
「…お前は…?」
「犬を使って下着を盗んだ!どうやったのかは知らんが、そこまでは分かってるんだよ!」
「…なんで、犬の事を…」
思わず口を滑らす砂川。
同様したのか、思わぬところでボロが出た。
「ははーん。言ったね?犬の事を、って言ったね?」
「あああー、しまった…」
犯人は砂川。
どうやら、確定のようだ。
しかし犬を使ったという事は一体どういう事なのか?
普通の人間でしかない、砂川がどうしてそのような事が出来たのか。
その答えはすぐに出た。
「仕方ない…俺が手に入れた力で…お前らをおとなしくしてやる!!」
「何だって?!」
砂川からまばゆい光が放たれた。
「あっれ~?琉嬉先輩達から連絡来ないなぁ。どうしたんだろ?」
みゆらは遅れてバスの中だった。
東町の森辺り。
そう遠くは無いが、合流するには時間がかかりそうである。
「なんかあったとか…そないな訳ないか」
ちょっと気にかける二人であった。
「な?なんだと…?なんで受けて止めれる!」
間一髪、琉嬉の防護壁が間に合った。
思いがけない砂川の一撃。
とっさの反応であった。
「危ない危ない…」
「いやー、さすがだね、琉嬉ちゃん。琉嬉ちゃんの守りは完璧!」
「よく言うよ…その防護壁簡単に切り裂いたくせに」
琉嬉が作り出した防護壁。
その力に驚く砂川だが、琉嬉達も驚く。
お互いに驚く始末。
砂川が放った一撃。
どうしてそんな力が使えるのか。
もしかして能力者の一人……とでも言うのだろうか。
「さて、今度はこっちの番だね」
「え?え?」
「やっちまえー!護ー!」
「合点承知ー!」
右手に圧縮された霊力。
そして剣の形を象る。
「ひぃぃ!!」
ドン!と大きな音が響き渡る。
砂川はその場に座り込でしまった。
そして後ろにあった木がきこりもびっくりなほど、ものの見事に切り裂いた。
「ひ、ひぃぃぃ……!」
そして、砂川の背中辺りから何やら霧状に出てくる物質。
いや、物質というより霊的な物だ。
(ヤバイヤバイ、なんでこんな強い人間がいるんだ…逃げなければ)
その霊的物質をいち早く察知した琉嬉。
「何処へ行くんです?」
寧音が先回りしていた。
「なっ!くそ…」
「逃がさないよ!」
手持ちの札を投げ放つ琉嬉。
そして――。
「あっぎゃぁぁぁ!!」
バチバチッ!と音をたてながら霊的物質の姿がはっきりと人型を映し出し、地面に落ちる。
「…なんだ?女の子?」
背格好が琉嬉よりは大きめの、女の子のような姿した妖怪だった。
「ぐ…ぐぐ…、お、俺は…女じゃ…」
そう言いながらバタっと倒れこむ妖怪。
「女じゃ…?どういうこった…」
砂川が言うのは犯人には間違いないと言う。
下着ドロを認めた。
だが、一人ではどうも出来ないところ、この妖怪の力を借りて、犬を操り下着を犬に盗ませたと言う。
にわかに信じがたい事だが、こうして目の前で起きている事件である。
砂川は元々、こういう「変態」的趣向があって、どこで知り合ったが不明だが妖怪と力を合わせ、砂川に取り憑いて行動したらしい。
砂川もそうだが、妖怪もまたスケベな行動に力を貸したのだ。
「…信じられない。まったく。人間と妖怪が手を組んで起こしたって事なの!?」
怒りがおさまらない様子の護だ。
「こんな事ってあるんですね…呆れました」
寧音は眼鏡を吹いている。
「なあ、砂川。お前、学校にいられなくなるぞ。こんな事したら」
「……覚悟は出来ているよ。すまなかった。俺だって男だ。こういうのには興味ある…」
覚悟を決めたような言い方だ。
「生徒会の方から学校側へ報告しなければいけませんね…」
眼鏡をかけ直す。
その顔はかなり険しい。
「…男ってやつは……ったくー!!」
「まあまあ、護…」
「琉嬉ちゃんは怒ってないのー?琉嬉ちゃんも盗まれたじゃん!」
「まあそうだけど……。この妖怪も妖怪だな」
「で、こいつって何の妖怪?」
「…犬神の一種かな?この犬耳と尻尾がそれっぽいし。犬操る事とか出来そうだし」
「なるほどね」
砂川に取り憑いていた妖怪。
そう、犬神の一種の存在らしい。
だが、この妖怪は不思議な事に女の子にしか見えない風貌だ。
非常に可愛らしい顔をしている。
「俺も驚いたよ。この妖怪最初女かと思った。でもこの妖怪男だって言い張るんだよ」
三人は目が点になる。
「……マジ?」
声が揃う。
「うー…うん……。ここは?」
「起きたかい?犬神さん」
「ハッ!?お前らは?」
犬神が目を覚ます。
とんでもないジト目をした琉嬉が犬神を見ている。
それに思わず後ずさりする。
「な、なんだよ!お前ら!オレだってな!男なんだよ!そういうのに興味あったんだよ!!」
二人は目を合わせ笑い出す。
「プフッ、砂川と同じ事言ってる!」
「な、なんだよ!!」
どうやら年頃の犬神のようだ。
そういう部分が気が合い今回の事件を引き起こした。
なんともバカげた話である。
「あの人間が言ってたんだよ。自分に通ってる学校に可愛い子多いからって」
「で、狙ったのはあたし達ってワケ?」
「…そうだよ。」
「…可愛いって認められるのは嬉しい気もするけど…こういう時って複雑だね……」
「とりあえず、砂川さん。警察に連絡します。後はこの話が広がるかどうかは分かりませんが。罪は罪。覚悟してください」
「………ああ」
無慈悲な言い方の寧音。
こういう時は頼もしい風紀係だ。
「あ、後ね、この「力」の事言ったら…命ないと思ってね」
にこやかに言い聞かせる琉嬉。
「ハハ…ハハハ…言えないよ…絶対」
「なーんか納得いかない部分あるけど…私らの下着ってどうしたの?その下着でどうしたのか深く考えたくも無いけど……」
「ああ、それなら犬が気に入ったみたいでどっか持っていかれちまったよ。多分ボロボロになってるんじゃないかな…?」
「な…なんだって…?」
今度は護がその場に座り込む。
「た…高かったのに…」
護はその場に燃え尽きたごとく気を落とした。
あとからやってきたみゆ達。
状況がよく読めないので簡単に説明する。
「ほへ~。じゃあこの子は犯人の共犯者って事か~」
「…うるせー。悪いかよ!」
「悪いに決まってるだろうが!」
琉嬉が得意技のチョップを犬神に食らわす。
「ぐわっ」
犬神がのた打ち回る。
いつものように、強力なツッコミである。
「それにしてもかわいらしい顔した妖怪はんやねぇ」
「本当に男の子なの?気になるな~」
みゆが興味津々に犬神に近づく。
「たしかめてあげようか!」
「な、何を…!!」
「脱がしたる~!」
「やめろ…!そんな事されたら、男としての威厳が…!ひぃ~!」
「やめんか!!」
すかさず琉嬉チョップがみゆに命中する。
「なあ、妖怪、お前の名前は?」
「名を名乗るんなら、先に自分から言うもんだぜ!まあ、いいけど俺の名前は…萩厘」
妖怪は萩厘と名乗った。
見た目は13、4歳くらいだ。
妖怪なので本当の年齢は不詳だが、年頃の年齢であろう。
しかし、どうみても女にしか見えない美しい容姿である。
言動からすると本人はそれを嫌がってるようだが…。
「ちなみに僕は彼方琉嬉。有名らしいけどね。裏の世界では」
「彼方…琉嬉……?聞いた事あるような…」
何やら引っかかる様子。
「そしてこっちの背の高いのは叉羅沙。ハンターサラサって通り名あるらしいよ」
「それはもうやめて…」
「ハンター…サラサって…妖怪の中じゃ有名だ!」
困った顔する叉羅沙。
「有名になるのも考え物やねぇ…」
「二人って妖怪の中でも有名なんだね~」
どっちにしろ、彼女らはこういった世界で生きてきてる。
必然と妖怪の中にも知られていくのだ。
「私は港咲みゆ~。裏家業やってまーす」
「んで、こっちが芹澤護。巨乳」
「…巨乳って言うな」
すっかり元気が無くなった護。
無理も無い。
高かったという下着が紛失となったのだから。
「んで、あのきつい言い方の眼鏡は夜栄守寧音。夜栄守とか港咲とかは名前聞いた事あるんじゃない?」
「…知ってるぜ。五大家だろ…?人間の最高峰の霊術師…」
「理解あるね。ま、これに懲りたらもうやらない事だね」
「……分かったよ」
「今度やったら……どうなるか分かるよね?」
物凄い嫌な笑顔の琉嬉が萩厘を震え上がらせる。
「ひ、ひぃ…分かりました…」
「結局いいところは彼方姉妹が持っていくね~」
「…そう?」
謙遜する琉嬉。
今回の事件の解決は悠飛の推理と琉嬉のするどい霊感力で解決した。
そう言っても過言ではないほど、スムーズに進んだのだった。
沢村刑事に連絡し、後の事は警察任せになった。
砂川の処遇はどこまで罰せられるのかは琉嬉達にはよく分からない。
下着も帰ってこない。
そして、妙な妖怪との遭遇。
小さな事件ではなくなったようだ。
一旦みんなは学校近くの公園に集まっていた。
萩厘も連れて。
砂川は警察へと行ってしまった。
妖怪に関しては警察に引き渡して罰する事はできない。
そこで、琉嬉達が取った行動は……。
「な、なあ…オレをどうするつもりだ?」
「んー?どうもこうも、反省してもらうつもりだけど?」
(な、何を企んでるんだ…)
何されるか分からない、そんな不安がよぎる。
大体、15分くらいしてその場に現れたのは來魅と悠飛だった。
「おー、コイツか?犬神は」
「な、なんだお前?突然現れたガキにコイツ呼ばわりさせる覚えはないぞ!」
「ふむ。生意気なやつだな」
「でしょ?」
妖怪同士、何かさせようというのか?
琉嬉の企みとは一体。
「おい、犬神。私の仲間に迷惑かけた分の反省はしてもらうぞ」
「…へん!お前みたいなガキの女に何が出来るんだよ!」
來魅相手にひけをとらない態度をとる。
そういう強さに自信があるのか、ただの無謀なだけなのか。
「ま、私も復活したばかりで、世間知らずだが、同じ妖怪同士として見過ごすには…いかないんだな。これが」
そう言うと來魅の表情が一変し、強烈な妖気を発する。
「……え?え?な、なんだ?」
「犬神ごときが…生意気な…。僅かな時間だけでもお前くらいなら簡単にひねり潰せるぞ?」
「うっひゃ…來魅ちゃん、怖ッ…」
怯える萩厘。
無理も無い。
妖怪の中でも最強部類とも言われるのだから。
「…私は天下なる妖狐だぞ。犬風情が!頭が高いわ!」
「ヒィィィィ!!!よ、よ、妖狐?!」
「來魅ちゃんって、妖狐だったの…?言われてみればそんな感じもするけど」
あまり事情を知らない他の部員達。
見た目は人間とほとんど変わらない。
萩厘には犬っぽい耳と尻尾がついているが來魅は妖怪といえどもそのような物はない。
「で、來魅。どうする?こいつ?」
「うむ。私の知り合いに預ける」
「知り合い?」
「阮醐っていう坊主崩れの妖怪だ」
後日、來魅達は阮醐と言われる妖怪の元にいた。
すごい山奥。
「そなたが彼方琉嬉と参堂耿助か」
「で、でか…」
來魅の案内で耿助カーで琉嬉と來魅、そして萩厘が阮醐の元へと来ていた。
赤坊主と呼ばれる妖怪。
この妖怪も見た目はそんなに人間と変わらず。
しかし体格は大きい。
背は2m以上はありそうだ。
服装はなんかお寺の坊主みたいな、袈裟を着ている。
小さなお寺みたいな建物。
そこに住んでるようだ。
「いやはや、來魅が負けたという話があったからな。さすが、五大家の子孫だな」
「いやはは、ほとんど役に立ってませんけどね」
「それはそうと、突然どうしたんだ?」
「今日来た理由はな、コイツを預けて反省させて欲しい」
そういって萩厘を差し出す。
「…女子か?」
「ち、ちがーう!!オレは男だ!」
「…??」
琉嬉は事情を阮醐に話す。
事件の事や萩厘の生意気な態度について。
來魅が妖怪の事は妖怪に任せたほうがいいという案で阮醐に任せようという事だ。
阮醐も坊主の端くれ。
こういった事案にはどうにかできるだろうと。
「なるほどな…。この根性を叩き直して欲しいと」
「うむ」
「……勝手に決めるなよな」
「人間に迷惑かけた…というより、下着ドロなんて馬鹿げた事件起こした罰だ。人間も妖怪も関係ない。反省しろ」
琉嬉の冷たい一言。
萩厘は何も言い返せなく黙り込む。
「やれやれ。承知した」
「う…ごめんよ…」
萩厘は突然ポロポロ涙を流しながら泣き出した。
「ん?な、なんで泣いてるんだよ…」
「だって…だって…うう…」
「フム…」
妖怪といえども子供。
耐えかねなくなり泣き出してしまったようだ。
「…しっかし、こうしてみると本当に女みたいだな」
「まぁ少しは男らしくなるんじゃないか?」
「そうですねぇ」
といつつ、みんなは思った。
可愛いなぁ、と。
萩厘は阮醐の元に預けられた。
どれくらいの期間になるのかわからないが、前よりはマシな性格に正されるであろう。
こうして妙な事件の幕は下りた。
「…結局下着は戻って来なかったんだ」
ゆうが残念そうに言う。
「一応、事件は解決したけどね」
彼方姉妹によって犯人は確保、解決。
後々になって分かった事だが、プールでの足の引っ張られた現象は、
萩厘の仕業であったらしい。
琉嬉達の感知力を掻い潜った技術だった。
そう考えると萩厘の能力は凄いのかもしれない。
今後間違った方向へ使わせないためにも阮醐の元でしっかり反省をさせるのであった。
今回の事件で一番残念だったのは護。
被害額は2万円相当だった。
「…あたしの……下着……」
完全にもぬけの殻と成り果てていた。




