#15 体育祭の裏でも怪奇が
『ではみなさん、怪我なく頑張りましょう』
生徒会長まどかの締めの挨拶で開幕する。
体育祭である。
6月30日。
鞍光高校の体育祭。
体力向上、生徒間のコミュニケーション向上を目指す為にもこうした行事物が行われる。
鞍光高校には夏前に体育祭。
そして秋口の9月に球技大会が行われる。
転校は良好。
時折分厚い雲が太陽を隠してひんやりした空気にもなる。
動くには丁度いいくらいだ。
陸上競技をメインに、100m走や400m走、1200mリレーなどある。
各競技には生徒は必ず全員参加しなければならないルール。
他にも幅跳びや棒高跳びなど。
体育祭前には体育の授業で練習をしたりする。
最終的にはクラス対抗綱引きがある。
琉嬉は護と二人でグラウンドの端を歩いていた。
「…琉嬉ちゃんは何に出るの?」
「100m」
「へぇ、個人競技では一番盛り上がるやつじゃない?」
「そうなの?」
「そういう物です」
「わっ」
琉嬉と護の会話の中で突然姿を表す寧音。
生徒会風紀係として忙しく動き回っているハズの寧音が唐突に現れた。
「…またサボり?」
「ち、違います!私はたまたま琉嬉さんと護さんを見つけたから…」
「……話かけたってことは要するにサボりだろ?」
「…そうとも言います」
あっさりと折れた。
隙をみつけては、休憩を入れる。
どうも、隠れてせこい事する性格のようだ。
そこがまた人間らしくていい。
寧音は風紀係として、誘導スタッフを兼ねて行動している。
生徒会は忙しいのだ。
「100mには、まどか会長も出るみたい…ですよ?」
「へぇ」
「持久走が苦手だって言ってたけど…」
寧音が仕事中に本人より聞いた話。
「……瞬間瞬間の動きが得意なのか…。まあ、そんな感じはするよ」
まどかの言動を思い出す。
ほわほわしてて機敏な動きが苦手そうではあるが、長時間動くのも苦手そうな感じもする。
でも琉嬉は戦って分かる動きの良さ。
「なんていうか、あれだよ。会長さんって運動が得意そうじゃないよね」
「それがどっこい、アホみたいに動けるよ…あいつ」
「琉嬉ちゃん知ってるの?」
「…ちょっとね」
つい最近、まともにやり合ったから知っているまどかの本性。
まどかの強さ。
あの肉付きからは予想できない動きであった。
「私は次の仕事があるので。ではまた…」
寂しそうに寧音は琉嬉達から離れていく。
「なーんか、本当に名残惜しそうに行っちゃったね」
「…あれ以来積極的に話しかけてくるようになったなぁ…」
琉嬉もまんざら、嫌ではない。
「よっしゃぁー、がんばれー」
「いけー」
いろいろな応援ボイスが飛び交う。
既にいろんな競技が行われている。
もしかしてそこらの学校よりみんな力入れてるんじゃないか?
そう思うくらい気合が入ってる。
前の学校はここまで盛り上がりはなかったように見えた。
どうやら家族らも見に来るらしく、そのためのスペースもある。
「ヘイヘイヘイいけいけやっほい!」
変な掛け声が聞こえてくる。
(あのよく通る声してて変なコト言ってるのは……みゆの奴だな)
そう。
変な掛け声が一年生の方から聞こえてくる。
みゆの掛け声だ。
「ほらほらそこー!みこっちゃん~がばれー、がばれー、ほれほれ~、いきんしゃいー。
きあいだーきあいだー、ほわああぁぁッ」
(なんちゅー応援の仕方だ…)
人より倍声がデカくって、人より倍通る声質している。
「目立つ上に、あの見た目だもんな…余計目立つじゃんか」
そんなみゆを見なかった事にしてトイレ行くために校舎に入っていく。
(さすがにほとんど人いないな…)
時々、風紀係の生徒がパタパタッと走り抜ける。
委員会とかやった事ない琉嬉は大変そうだな~という印象しかない。
あまり気にもせずトイレへ向かおうとしてた。
「やばいよ…これ…」
「どうしよう…」
二人の女子生徒が何やらコソコソ話している。
(……なんだ?何がやばいんだ?)
少し気になるが、トイレに行きたい。
でも気になる。
世話焼きな性格がここでも災いとなってしまう。
「…あのー」
「ひっ?!」
必要以上に驚く女子生徒二人。
(そこまでビビんなくてもいいんじゃないの…?まったく失礼しちゃうな)
突然話しかけられてここまで驚かれるのもどうかな…と思う琉嬉。
というより学校では有名な凶暴な天使が話しかけてきたのだから、余計にビビったのだろう。
「驚きました…日本人形が話しかけてきたのかと…」
「何気にかなり失礼だね」
頭をさする女子生徒二人。
琉嬉の特技のツッコミンチョップが二人に命中していた。
「すみません…」
「誰が日本人形だバカタレ…。まぁいいや。何がやばいの?」
「え?いや、その……」
「どうする?」
またコソコソ話し始める。
「…?それはデジカメ?」
「あ、はい」
手に持ってたのはデジカメ。
それがやばいというのだが。
「これ…見てもらえば…」
「どれどれ?」
デジカメは撮った画像をその場ですぐ確認出来る。
世の中便利になったものだ。
琉嬉はその画像を見せてもらう。
すると、今行われている体育祭の様子だ。
「ふむー。なるほどー。理由が分かったよ」
「……ほ、本当に?」
「ここの部分だろ?」
琉嬉が小さな指で示した箇所。
どうやら顔らしき物が写りこんでいる。
先程の、冒頭の挨拶の部分だ。
選手宣誓の時。
その後ろにはまどから生徒会がちょこっと写っている。
知ってる顔が写ってるのには少し面白くて笑ってしまう。
「これがやばいの?」
「これだけじゃないんです…」
一人の女子生徒がにデジカメを一旦渡して、他の画像も見せてもらう。
すると、他の画像も同じような顔が写りこんでいた。
「おー、すごいねこれ」
「…こんなの学校新聞やサイトに載せらんないよぉ…」
「…新聞?おたくら、広報部の人?」
「あ、はい。そうです。生徒会報に載せる画像なんだけど…」
広報部。
新聞部から発展した、学校の生徒らによる広報誌を作る部活。
生徒会らとも連携をしているらしい。
現在は学校のサイトらも作成して、更新をしているという。
校内新聞も作成して貼り出してるのも彼女ら広報部。
「たしかに、こんなの使っちゃぁ、面倒な事になるよね…今までこんな事あった?」
「…たまにあったらしいけど…ここまではっきり変なの写ってるのは…」
「なるほど…」
腕を組みしばし考える。
(そういや、さっき霊がちょろちょろ動き回って気もするけど大した害なさそうだし放っておいたんだけど…
ここに影響があるか~……ふむ)
琉嬉の考えがまとまった。
「ね、じゃあこの件ふかしぎ部に預けてみない?」
「…へ?」
「知ってるだろ?ふかしぎ部。怪奇現象を研究する部活」
「ああ、それはもちろん、彼方さん有名ですから…」
「画像なんて加工は出来るじゃん?」
「…でも……そんな技術ないし」
「そっかー、全部加工するのも面倒だよなー」
ほとんどの画像に顔みたいのが写りこんでいる。
全て加工するのも少し面倒な作業だ。
「んー、そこはパソコンに精通してる部活とかに任せるとか…あ!それに詳しそうなヤツなら知ってるよ」
「本当ですか?」
「ま、それは後々頼むとして、この写真撮ったのは誰?」
「…私です」
手を小さく挙げて言う女子生徒。
眼鏡をかけたショートカットのどこでも居そうで大人しそうな真面目系女子。
聞くと一年生だという。
名前は白峰梨華。
まだ入ったばかりだが、写真技術が上手くて任されたらしいのだが…なぜかこんなのばっかりが撮れたという。
(まさか…ね)
ひとつの疑惑が琉嬉の中で生まれた。
「白峰さんや、ひとつ聞いていいかい?」
「はい?」
「前もこんな心霊写真っぽいの撮れた事…ある?」
「…いえ…」
(………ふむ。なるほど)
何かに気付く。
今までに撮れた事はない。
だが、今に限って撮った画像にほとんど写りこんでいる。
琉嬉は確信している。
この画像がいわゆる心霊写真というモノだと。
「あ、その前におトイレ行かせてもらっていい?」
「え?あ、はい…」
行きそびれていたトイレに我慢出来なくなっていた。
「おかえり琉嬉ちゃーん。そろそろ出番だよー?」
「おー」
クラスメイトのゆうが出迎える。
もう走り終えてたようだ。
「さて、頑張りますかね…」
早速出番が来たらしく、グラウンドの方へ向かう。
「お、琉嬉ちゃんだ」
「琉嬉先輩がんばってぇ~」
(…あのデカイ声はみゆだな…まったくうるさい女だねまったく…」
100m走が始まる。
どうやらまどかは別枠のようだ。
後ろの方を見ると琉嬉に気づいて笑顔で手を振っている。
(……気楽そうだね…)
バンッと、スタートの音が鳴る。
琉嬉は取り敢えず、全力は出さないで行こうと思い、軽めに走る。
しかしだ。
あれよあれよと、一着でゴールした。
「あ、あれ?」
それもダントツの。
「琉嬉先輩はえー!」
みゆのでっかい声。
いちいち反応が凄くて耳が痛くなる勢いだ。
『凶暴な天使は高速の天使でもあった~!』
『そうやね~。これはまた、素晴らしい響きで』
「だ、誰だ変な実況してるの!」
ドッと会場が沸く。
(なんだ高速の天使って…意味わからん!)
一気に不機嫌になる。
運営のテントの方を見る。
すると実況していたのはあろう事か、寧音だった。
解説をしてるのは喋り方からして、叉羅沙だろう。
(…何やってんだあの二人…?)
生徒会の方で実況も受け持っているらしい。
放送部と交代でやっている。
たまたま、寧音達が実況を行っていた時に琉嬉が走ったようだ。
「…しかしまた…凄い気合の入りようだな…」
どこも盛り上がる空気。
もちろん、こういうノリに乗れない生徒もいるのも確かである。
「んー、さて…どうしようか…」
連絡を取って広報部の白峰と合流する事にする。
「のうのう、琉嬉のヤツ早かったの!」
「そうだねぇ」
体育祭に見に来ていた來魅と琉嬉の父親の導。
それとたまたま居合わせたふかしぎ部顧問の耿助。
3人は遠目から状況を見守っていた。
「しかし…來魅さん。すっかり人間世界に馴染んでますね」
「おぅ、私は元から人間達と共に暮らしてきたからな。問題ないぞ」
「そうですか…それは素晴らしい」
「妖怪とは思えませんよね…それにしても」
來魅の服装はその辺に居そうな小学生の女の子と変わらない服装をしている。
普通にしていれば、人間の子供にしか思えない。
「なんか…親子みたいですね」
「ははは、そうだろうね。年齢は逆なんだけどね」
笑いながら返す導。
「で、どんな感じだい?」
「…ダメです。どうしても変なの写りこんじゃいます。なので、別の人に変わってもらったんですが…」
「………妙だね」
別の者にやらせたが、白峰程でもないにしろ、やはり写り込む。
「別のカメラは?」
「代わりのカメラはなくって…」
「仕方ないね。携帯とかは?」
「…質が落ちるので、部長があまりオススメしてくれなくって…」
「ありゃ、案外頑固な部長さんなのね」
琉嬉は腕を組み、暫く考える。
「よし、ここはふかしぎ部集合だ」
スマホを取り出し、素早い手つきで連絡していく。
「で、どないしたん?」
「そうそう、緊急連絡って言うから…」
集まったのは暇そうな護を始め、叉羅沙、寧音、御琴の4人だった。
他のみんなは仕事やら出る競技やらで忙しくてこのタイミングでは出れこなかった。
叉羅沙と寧音は丁度交代時間だった。
白峰達は、一旦運営の方へ向かった。
後で合流する。
「さすがにまどかと龍翔は無理か」
「そうやねえ、あの二人が同時にいなくなるんもマズイやろなあ」
「言えてる。さて、諸君に集まってもらったのはこちらです」
キレよくみんなに見えるように出したカメラ。
「これは激しく撮れてますね」
「御琴にしてはハイセンスな言い方だな」
「なんですかハイセンスって…」
「ねえ、これがどうしたの?」
「どうやら、この体育祭を邪魔するイケナイ幽霊さんが居るらしいんだ」
「へぇ…?」
妙な話になってくる。
「広報部が参っている。ロクな写真が撮れないって。だから、その手助けをしてあげようってね」
「…いいの?琉嬉さん…私達の力を無闇に…」
「寧音さん。いいかい?風紀係として、広報部がせっかく頑張ってるのに…ここは風紀係としても力を出すところじゃない?」
「…そうですね!」
簡単に言いくるめられる。
「ケッタイな話やねー。で、どうするの?」
「それはね…」
琉嬉の作戦。
琉嬉自身は白峰と一緒に行動する。
その際、他の4人は近くで行動を共にする。
その時怪しいのが居たら、駆除せよ。
との事である。
単純にして難しい。
「バレないようにやるのも難しいんじゃない?」
「そうですね…」
早速行動に出るふかしぎ部の面々。
「あの…どうするんですか?」
「まぁ気にしないで写真撮っててよ」
結局白峰の手にカメラが戻ってきた。
みんな少し怖がって、手につけようとしない。
「…そのカメラって誰の?」
「……これは、学校の、広報部の備品です」
「いつから使ってる?」
「これは…3年ほど前からです。高級品なので数年間は使えるくらいらしいですけど…」
「ふむ…」
情報を集める。
どうして白峰が取る写真に写り込むのか。
白峰だけじゃなくとも写り込む。
気持ち悪すぎて、どうしようもない。
「もう別のカメラでもいいのにね…あ、そうだ、ためしに携帯で何か撮ってみそ」
「え?あ、はい…」
猫も杓子も。
みんなスマホだ。
白峰は写真アプリで画像を撮る。
すると……特に何も写っていない。
「写りません……」
「もう一度」
「はい」
しつこく何度も撮る。
結果は同じ。
カメラの場合だけ、写り込むようだ。
「広報部のじゃなくて、プロの写真家さんに頼んでもらう…ってのもあれだよな…しゃあない」
「…あの、何か分かるんですか?」
「ふかしぎ部は伊達じゃないのさ。謎がだんだん解かってきたよ」
護らは少し離れた所から琉嬉らの近くに張り込んでいた。
「特に何もいない気がするけどねー」
「まさに不可思議な話やな」
「何かいたら写りこんでもおかしくないのはさすがの私も理解出来るけど…」
キョロキョロ首を動かす護。
別に何もいない。
こういう時に限って普段飛んでる浮遊霊もいない。
「あ、何か撮ろうとしてますよ」
寧音が指を指す。
丁度リレーの競技が行われる。
それを撮ろうという状況のようだ。
「あれ、みゆちゃんじゃね?」
「ほんまやな。リレー出るんやね」
「でも霊的な物は視えませんね」
「んー、今回はハズレ?でも琉嬉さんに限ってそんな事は…」
他のメンバーは特に感じるようなものは見当たらないようだった。
「やっぱりなんか写りこみます……」
何度やっても2回に1回の高確率で顔らしきものや煙みたいなモヤが写る。
(……護達は何も感じてないようだな…)
一応何かあれば、遠くにいる部員達が行動を示す事になっているのだが、動きはない。
どうやら琉嬉の推理はある終着点に辿り着く。
「どうやら、僕の考えはある答えに来たようだね」
「…え?」
「ちぃっと、そのカメラ貸してくれる?」
「あ、はい!」
白峰は琉嬉にカメラを渡す。
両手で抱えて、しばらく微動だにしない。
「んー、そっか。なら仕方ないねー」
「え、と……どうしたんですか?」
一応いつでも使えるように、御札は用意してある。
それを取り出す。
「…御札?」
「そそ。御札。失礼するよ」
カメラに貼り付ける。
一枚だけだが、十分に効果はある。
琉嬉が少し念じると、カメラが勝手にウイィンと音を立てる。
「…え?」
驚く白峰。
「あれ、琉嬉ちゃんがなんかやってるよ?」
「ほんまやね。お祓い…?」
4人も気づいた。
急いでその場に駆けつける。
「祓ってあげるよ。悪いヤツを……」
白峰には視えた。
カメラから湯気なようなモノが出て行ったのを。
琉嬉も湯気みたいな物体が空に飛んで消えていくのを眺める。
カメラはその後、静かになる。
「迂闊だったねー。まさかカメラ内に収まってたとは…」
「…どういう事ですか…?」
「どうもこうも、このカメラ愛されすぎてて、念が入り込んでる。それがどういう訳か、使う人を守るためなのかよくわかんないけど。
カメラに悪い霊を閉じ込めちゃったみたいなんだ…」
「……そうなんですか…?」
にわかに信じられないと言った顔をする。
「それと原因はもうひとつ!」
「え?」
「それはね…白峰サン。お前さんだよ」
ビシッと人差し指を白峰を指して決める。
「私が…原因ですか?」
理由を簡潔に述べる琉嬉。
「それはね、お前さんが広報部の中で一番霊感が高いからだ。だからこのカメラと相性が良かったのか、どんどん霊を封じ込めたんだ。
その影響で心霊写真みたいなのが沢山撮れた」
「……嘘ですよね?」
「いいや、嘘じゃないよ。だってさっきの見てただろ?霊が出て行ったのを」
「……は、はい…」
理由は簡単だった。
それは白峰が、霊感が高いせいだった。
カメラがそれに感応して、霊を写してしまっていた。
それに中に封じ込めた霊が画像に収まってしまうという、不可解な出来事を起こしていた。
「よくあるんだよねー。カメラに写してしまう人…。自分の持ち物であれば尚更。白峰さん。
このカメラに愛着沸いてるよね?」
「…そうですね…。私は将来写真家目指そうかなと思い始めたんですけど…。私もカメラ欲しくなってきたんです。
でも高額じゃないですか?だからお金を貯めて…それまでこのカメラで慣れておこうと思って…」
「なるほど……」
琉嬉はカメラに視線を向ける。
もう3年以上前のモデルだが、まだまだ活躍出来そうな、いいカメラ。
「お前さんは愛されてるな」
ひょいっとカメラを拾い上げて、御札を外す。
「はい、多分大丈夫。ただ、気をつけて欲しいのは、白峰さん。お前さん…霊感が高い。
多分どのカメラでもこの世じゃないモノを写す可能性高いから……なるべくそういうのいないタイミングで撮る事だね」
「は……はぁ…。でも私そんな幽霊とか見た事ありませんよ…?」
「…ふふ、それはね、幽霊とは思えない幽霊も街中に「居る」から、気がついてないだけだよ」
「………えー?!」
怖い事を言う琉嬉。
こうして広報部の心霊写真事件はふかしぎ部の琉嬉によって解決した。
「なーんだ、琉嬉ちゃんだけで解決しちゃったね~?」
「ウチら呼んだ意味あったん?」
「愚痴を言うな。お前らがいたから気づけたようなもんだ」
一応褒めているらしい。
「あの、琉嬉さん…。琉嬉さんでも気づかない霊っているの…?」
「そりゃあね。僕も所詮人間だし。封じの術をかけられていたらなかなか気づかないもんさ」
「封じの術ねぇ…」
顎に手をやり珍しく護が考える仕草を取る。
「何?なんかまだ気になるのあるの?」
「…なんでまたカメラに封じの術がかけられていたの?」
「それはさすがに…あ、もしかして」
護の疑問に対して何かに気づく。
「……もしかして、僕らの前の代の術者がそういう術をかけたのかも」
「なるほど~」
手をぽんっと叩いて納得する。
「それは有り得ますね。私達みたいな霊術師が代々この学校に存在してたらしいですし」
「……それはあれを管理するためにだよね?」
琉嬉が顔を向けた方向。
旧校舎のある場所だ。
今は何も出来ない。
無闇に封印を解いてはならない。
それまでに対処法を考えておくしかないようだ。
「さて…ま、なんとかなったし、あとは最後の仕上げだね」
「仕上げ?」
意味深な事を言いながらも琉嬉はさっさと戻っていく。
「どういう事やろな?」
「さぁ?」
体育祭は佳境に入っていた。
最後のクラス対抗の綱引きだ。
対戦順番などはあらかじめくじ引きで決められる。
鞍光高校の体育祭の最大の見せ場である。
『さぁ、いよいよきましたクラス対抗綱引き合戦!この綱引き合戦の実況は私夜栄守寧音と』
『なんでか解説やらせてもろてます城樹叉羅沙どす。よろしゅう』
『…なんかいつもより京言葉が強い気がしますが…さて、城城さん、ズバリ優勝候補はありますかね?』
『今年は随分と個性的な生徒さんが増えてます。どこが勝ってもおかしくありません。
ただ、あえて言うと……我が生徒会会長の宮森さん率いる2年5組。あ、ウチも同じ2年5組なんやけどな。
それと彗星の如く現れはった、凶暴な天使彼方琉嬉ちゃんがいる2年1組。面白いと思いますなぁ~』
『そうですか~、それは楽しみですね。では一回戦がまもなく始まるようです』
そんな二人のやり取りを聞いてた琉嬉。
「…寧音のやつ…あんなにノリノリで流暢に喋るんだな…驚いた」
「ねえねえ琉嬉ちゃん!私達のクラスが注目されてるらしいよ!」
「頑張ろうね!」
「ああ、そうだね…」
みなっちとゆうもやる気を出している。
桜川先生はぼやーっとしているが顔は笑顔だ。
「…力に関してはそこまで自信ないんだけどなぁ…」
ちらっと、隣のクラスの護の方を見る。
金髪なのですぐどこにいるか分かる。
こちらには気づいてないようだ。
(…妖怪化の力使えば多分護のクラスが強いだろうけど…使うワケないだろうし)
警戒すべきクラスをまとめる。
(みゆのクラスはどうだろうか…)
「いくぞーっ!1、2、3、うおおおおーー」
(なんだあの掛け声…?)
みゆが中心となってまとまっている。
というか取り巻きの男子が多い。
みゆは見た目と陽気で明るい性格が、人気あるようでジワジワと人気が広まりつつあるらしい。
それに家は大金持ちのお嬢様ときたもんだ。
龍翔の方はどうだろうか?
特別そんなに目立つタイプではない…が、一際整った雰囲気があるので何かと少し浮いた感がある。
仮にも生徒副会長。
やはり表立って目立った行動はしてないが、とことん裏方に回って仕切っている様子が見れる。
「ま、どうせやるんなら勝ちたいよね」
琉嬉は背筋を伸ばして少し気合を入れる。
「うがぁぁぁ!負けたーーー!!」
みゆの声が響き渡る。
みゆと御琴のクラスが負けたようだ。
二回戦で敗れ去る。
琉嬉のクラスはなぜか順調に勝ち進む。
(…不思議なもんだねぇ…)
次の対戦相手は、寧音のクラス。
優勝するには大体5回勝たないといけない。
これがなかなかハードである。
一学年12クラスまである。
それをトーナメントとはいえ、一試合ずつやっていくのは時間かかるので、二試合ずつやっていく。
これが生徒会と運営委員会の力なのか、スムーズに進んでいく。
運営のトップたる寧音は実況をしている謎仕様だが。
ラッキー抽選で4クラス分だけ、試合数が少なく二回戦に進める。
ズルい気もするがクラスの数の都合のため、文句もあまり言えない。
「ふふふ、今日ばかりは琉嬉さん。敵同士です」
「最初出会った時は敵だったろうに…」
琉嬉のクラスVS寧音のクラスが始まる。
「言っとくけど、力使っちゃだめだぞー」
「それは分かってます」
「え?ナニナニ?夜栄守さんと仲いいの?琉嬉ちゃん?」
「仲良いっていうか…同じ部活だしね」
「え?そうなんだ~」
寧音はこう見えても結構有名人。
生徒会風紀としても勿論、何かと目立つ言動が元から多いようだ。
それもそのハズ。
地味な眼鏡っ子に見えて、実は巨乳の持ち主で結構明るくて受け答えが楽しい。
そのギャップが人気らしい。
「さぁ来い!琉嬉さん!」
「…僕だけじゃないだろ…相手は…」
いつになく猪突猛進の寧音。
バンッと徒競走と同じスタート音が鳴る。
「せいっ!」
「せーのっ!」
ズンッという強い感覚。
最初のクラスとは違う感触。
一回戦は余裕だったが、次は違う。
さすがは寧音のクラス…というところか。
「ふっ…やるね……だがこちらは…」
琉嬉がクラスのクラス委員の女子に目で合図を送った。
「琉嬉さん。分かりました」
クラス委員の女子の眼鏡が光る。
「せーのっ!」
一斉に掛け声を上げる。
するとどうだ。
一気に盛り返す。
「なっ?!」
寧音は驚く。
掛け声だけでなぜもこんなに力が出るのか?
「せーのっ!!」
どんどん差が開いてくる。
「くっ……!」
バンッ!と勝負がついた事を知らせる音が鳴る。
一目瞭然。
琉嬉のクラスが勝った。
「…さすがですね…琉嬉さん」
「なぁに。チームワークがいいんでね」
「ふふ、琉嬉さんのリーダーシップがいいんですね」
二人共握手をかわそうとする。
が、次の瞬間目を疑うような光景になった。
「このまま優勝してください!私は実況頑張るから!」
「おおぅい!」
寧音は全校生徒が注目してる中で琉嬉を抱きしめだした。
「琉嬉ちゃんと寧音ちゃんってああいう関係なの?」
「違う!あいつが変なだけだ!」
顔真っ赤にして否定する。
「しかし琉嬉ちゃんのクラス凄いね~、見た感じ力ありそうな人いないのに」
「それは…コツがあるんだよ」
「へぇ…」
護のと毎度の如く仲良く会話している二人。
護のクラスは早くも負けて暇なようだ。
「…あの力使えば一人でも勝てる気がするんだけどね~…」
あの力。
護は半妖なので、妖怪としての力を使えば普段の何倍もの力を引き出せる。
「さすがにそれでも一人は無理じゃない?妖怪護+クラスの10人くらいなら…でも力を使うのは禁止です」
「だよねー?あははー」
(…コイツ使おうと本気で少し考えてたんじゃないか?)
護はこうは言ってるが言葉には少し本気度があった。
『さて、私のクラスは負けてしまいましたので、実況に戻らせていただきます。夜栄守寧音です』
『お帰りなさい夜栄守はん。予想通り、優勝候補は間違いなかったやろ?』
『そうですね~』
「…あいつはあいつで風紀係としての自覚あるんだろうか…?」
時折サボってる姿を見かける。
先程もそうだった。
おそらく、だが、多分3割くらい本気で風紀係はやってないのだろう。
しかしやる分には全力で挑む。
極端な性格のようだ。
「いや~、負けた負けた…さすがだな、まどかと叉羅沙のクラスは…」
「…あ、まどかと叉羅沙って同じクラスだったけ…?」
龍翔のクラスも負けて、戻ってきた。
「おう、琉嬉ちゃんに護ちゃん。あのクラスは手強いぞ~?」
「だって、琉嬉ちゃん」
「……ん、断然やる気が出てきたね…本当の決着つけてやりたいよ」
「あ、でもさ、龍翔君。あの使役妖怪をこっそり出せば良かったんじゃない?」
琉嬉が遊希の存在をほのめかす言い方。
「お、それはいい考えだな!来年やってみるか」
「琉嬉ちゃん、さっきそういう能力の力使うの禁止って言ってたじゃん…」
そして試合が進んでいき、準決勝戦が始まる。
ここでなんの因縁か、琉嬉のクラスとまどか叉羅沙チームのクラスが早くも激突する。
『おーっと!ここで先程城樹さんが言っていた、優勝候補チーム同士の対決ですね!』
『解説の城樹さんは試合のため、ここからは城樹さんが負けない限り陸上部部長の堀田が解説します』
「…陸上部?堀田?誰だ…?」
琉嬉は少なくとも知らない。
どういう選考で選ばれてるのか不明である。
「さぁて…琉嬉さん。お互いに頑張りましょう」
笑顔の裏が怖い。
本性を知っているのは恐らく、琉嬉と生徒会の極一部だろう。
「…ここはなんか負けたくないなぁ」
琉嬉も心してかかる。
「…あっちで一番大きいのは…叉羅沙か」
ざっと見る限り、相手のクラスで一番背の高いのは叉羅沙のようだ。
他にもちらほら大きいのがいる。
綱引きは体が大きい者がいればそれだけ重さがあるので有利だ。
対する琉嬉達は技術でカバーしてきた。
それもなぜこうして勝ち進んできたのかというと、担任の桜川先生がコツを仕入れてきたからだ。
とはいえ一発勝負物。
それが琉嬉らが中心となってしっかり仕切っているからだ。
『注目の一戦。事実上の決勝戦と言っても過言ではないこの勝負。始まります!』
『そうですね』
『ズバリ!どちらが勝つでしょうか?』
『そうですね~』
「さっきから解説は「そうですね」しか言ってないじゃん…」
護と龍翔は暇そうに試合を眺めてる。
「はっはっは。そうだな。俺が代わりに解説やればよかったか?」
龍翔が豪快に笑い飛ばす。
「いや、龍翔君は…気の利いた事喋れるの?」
「うん、無理だな」
はっきりと答える。
その姿に護は引きつった顔していた。
『スタート!!』
一斉に始まりの合図が鳴る。
「さぁ、来い!」
「負けませんよ!」
始まった瞬間、一気に綱の動きが止まる。
互角の勝負のようだ。
長丁場となりそうな雰囲気を出す。
『おーっと!こちらはまだ勝負がついてません!』
もうひとつの試合の方は雌雄が決したのに、琉嬉クラスとまどか叉羅沙クラスは勝負がつかない。
いい勝負だ。
「おー、がんばーれぇー」
みゆの大声が聞こえる。
(どこにいても聞こえてくる…声を使った職業にでもなった方がいいんじゃないのか…?)
などと考えてるうちに少し押され始める。
「ヤバイ…!ここは作戦プラン2を発動!」
「せーのっ!!」
「…何かやるみたいですね」
まどかがいち早く反応した。
「叉羅沙さん」
「わかーっとるわ~」
どっしり構えたポーズから大きく息を吸い込んで、一気に引っ張り上げる。
ズズッとさらに引き上げていく。
だが、途中で動かなくなる。
「む?」
琉嬉クラスはみんな空を見ながら引っ張ていた。
コツのひとつなんだろうか。
急に相手チームが重くなった感覚になり、まどか叉羅沙クラスは徐々に引っ張られていく。
「おお、凄いです!このままでは…」
「ぬおお、負けるかーい!」
「おおお…」
叉羅沙のあまり見せる事のない雄叫びにまどかもびっくりする。
「こちらもまだ、終わりませんよ!」
「こっちもだ!行くぞみんな!!せーの!!」
「せーのっ!!!」
バンッ。
勝負を決した合図の音が鳴った。
勝ったのは………
『2年1組でーす!!』
寧音の実況が響いた。
勝ったのは琉嬉クラスだった。
「負けました…。これで二度目ですね。流石です。でも次はこういきませんよ?」
「おう。受けて立つよ」
お互いに握手をする。
そのまどかの握力が半端なく締め付けていた。
(コ、コイツ……笑顔で…)
しかし、琉嬉のクラスの2年5組は決勝戦で敗退した。
その理由は…というと。
「体力を使い果たした」
クラスみんながグデグデになっていた。
「無念……」
元より、体力がある者が少ないのもあり、普段出さないパワーを出した反動もあった。
琉嬉は体力面は問題ない…が、一人だけの力ではどうにもならない。
「悔しいなぁ…でも準優勝までいけたし。来年も勝てたらいいな」
ちょっとだけ、満足していた。
「いやいや、凄かったですね!」
広報部の白峰が興奮気味に話しかけてくる。
体育祭も終わりを告げ、各自は後片付けに追われていた。
広報部も早速サイトや広報誌をまとめる作業に入る。
琉嬉は広報部に顔を出していた。
その理由は…と。
「んー、なんで私がこんなコトやらんといけんのだ?」
來魅の姿があった。
「お前こういうパソコンの作業得意だろ?」
「むむぅ…。それはそうだが…画像加工をやらせるなどと、人使い荒いのう」
「僕も手伝ってやってるんだ。たまには働け」
「それを言われると…むむぅ」
「この子は誰なんですか?」
単純な質問。
突然現れた小学生くらいの女の子。
「いーのいーの、気にしないで。僕の親戚の子で今ウチで預かってるだけだから(という設定にしといてね)」
目で合図を送る。
來魅も渋々把握したようで作業に取り掛かっている。
そしてもう何人か作業に加わっているのがいる。
御琴とみゆと寧音だった。
特に寧音は趣味柄、イラストも描くのが得意らしく、こういった画像加工もお手の物だった。
ただ、生徒会の仕事の一環としてまどからに承諾を得ていた。
「まったく…なんで私が…琉嬉さんの言う事であればいいんだけど…」
ブツブツ言いながらも手伝っていてくれている。
たしかに、このままの画像であれば生徒会的にも面倒だろう、という話でまとめた。
ちなみに護は部室で一人待機にされた。
それもパソコンなど、こういう作業が不慣れなせいだからだ。
「こんな感じでどうでしょうかね?」
「おー、みこっちゃんー、凄いですねー」
「そっちはラブラブでいいね」
嫉妬でもしてるかのように呟く琉嬉。
「いやいや、そんなんじゃないですよ!琉嬉先輩!」
大慌てで否定するみゆ。
「あら、珍しいね。みゆがそんに顔赤くして否定するなんて」
「みこっちゃんに迷惑かかりますから…」
不気味なくらいしおらしい。
「みゆちゃん、僕の事は気にしなくていいから…ね?」
「う、うーん…そだね…ごめん」
(……まったく…)
「すみません…こんな作業まで手伝ってもらって…」
「なぁに、ふかしぎ部は鞍光の不可思議な事件を解決するための部活だから、ね。
何か困った事あったら言ってね。
報酬は別途で請求するかもしれないけど」
「ほ、報酬ですか…」
「はは、冗談だよ。ただ、僕の力の事は内緒にしといてね?」
口元でシーッの形をして念を押す。
「は、はい…」
「ただ、白峰さん。お前さんは霊感が高い。
このカメラじゃなくっても、波長が合うと心霊写真みたいなのが撮れる可能性がある。
気になるなら、僕の父さんのお寺の「緋黄寺」にでも連絡してみてね」
「はぁ……そうですか…」
「弟子は受け付けてるらしいから」
「弟子……ですか…なんか凄い話ですね」
「はは、まぁね」
この彼方琉嬉という人物。
おそらく自分にはとても想像つかない世界にいるんだなと、感じた。
「終わった~!」
「時間は…7時半か…どうしようか?」
「さーて、戻ろうか。護を待たせてるんだった。ゲーム渡してあるし大丈夫だろ?」
「適当過ぎる…」
御琴が不安になる。
ゾロゾロと、部室の方へ戻る面々。
「おーい、まもるー」
軽快な足取りで勢いよくドアを開ける。
すると、綺麗な金髪の頭だけしか見えない。
「護…?」
机に金髪頭が乗っかっている変な状況。
近づいて見てみると、ゲームが起動したまま寝ていた。
「……寝てるよ…」
「あはは、本当だ~。護先輩、朝ですよ~」
ほっぺをぷにぷに指でつつきながら起こす。
どさくさに紛れて後ろに回って胸もつつきだす。
「おおぅ、凄い反動!凄い胸です!」
「アホな事するなみゆ!ほれ、起きろ護」
みゆには強い一撃の手刀を食らわして、護には軽い手刀を頭にぶつける。
「はえ?朝?」
「夜だけどな」
ゲーム機を回収して、帰る支度をする。
護は涎を垂らしている。
そんな情けない姿もこの整った容姿だとまた可愛らしく思える。
「ふぇっ?!もしかしてあたし寝てたん?」
「寝てました。がっつり。待たしちゃった?」
「あ、おおぅ…途中から記憶ないのでなんとも…」
「相変わらず護はアホっぽくて面白いな」
「あ、あほっぽいってなんだー」
ガタッと立ち上がり、琉嬉に抱きつく。
行動の意味が解からない。
その場にいた全員が思った。
「お疲れ様です。皆さん」
まどから生徒会メンバーが部室に入ってくる。
彼女らも部員なので何の問題はない。
「おー、まどかー、よっしゃ、行こうか」
「へ?どこに行くの?」
護だけ状況が掴めていない。
「ほら、お金足りない分はうちのスポンサーが出してくれるから、あとで返しといてね」
「ほえ?」
「行きましょ!護先輩!」
「あ、ちょっと…」
みゆが護の背中を押して部室から出て行く。
そして他の部員達もついていく。
「おーし、鍵するからーみんな出てけー」
琉嬉が追い出すように言う。
「やれやれ…楽しそうで何よりだ。うちの女子達は」
「あはは、そうですね」
男子二人。
御琴と龍翔。
あとは女子だらけ。
「ホラ、あんたらも出て行く!」
小さいなりながらも自分より数段大きい男子二人を強い力で押す。
「へいへい、遊希はどうする?」
「命令であれば私だけでも帰りますが…」
「いいよ、遊希も一緒に行こう」
琉嬉が提案する。
「しかし…」
「保護者的な意味で、ってコトにしてさ」
「はは、それはどうかと思うけどな」
「……龍翔様にお任せします…」
そう言うと遊希はまた姿を消す。
まるで龍翔の影に入り込むようにスルッと姿を消した。
いや、実際に影に入り込んでるのかもしれない。
「そういやあの妖怪幼女さんはいいのかい?」
來魅の事だ。
妖怪だって事は生徒会のメンバーは全員知っている。
「あ、あいつはあいつで変に気を利かせて先に帰っちゃったよ」
「ほーう、本当に気を利かせたんだね」
「作業手伝ってくれたお礼にって言ったのにさ。別に一緒に来たっていいのに」
「いいんじゃないのか?幼く見えても考えは大人なんだろうし」
「そっか~?家ではそんな素振りほとんどないけどね…」
少し寂しそうにする。
「よしゃー、ぱーっと食べよう!」
「みゆが大食いだから食べ放題の焼肉屋だからな」
「おういえーい」
テンションMAXのみゆ。
体育祭打ち上げという事で、ふかしぎ部達は焼肉屋へ向かったのだった。
琉嬉は店内でスマホの画像を覗き込んでいた。
「んー、何見てんの?」
「見せてください」
隣の護と寧音が気になって一緒になって覗き込む。
「お前らなぁ…人の携帯覗くって…いいけど、ホラ」
琉嬉が見せたのは、広報部の白峰から貰った体育祭の様子の画像。
徒競走や綱引きなどの画像だ。
加工前の画像をくれたらしい。
至る所に怪しい霊が写っている。
しかし気にする事もない、ただ写りこんでいるだけのモノ。
「あー、体育祭の画像だー。これまどかちゃん写ってる」
「私も写ってますね。あ、琉嬉さんも」
「みんな写ってるよ。だから返せ」
ひょいっと取り返す。
「これどーすんの?」
ジジジッと焼肉を裏返しながら質問する。
しっかり焼いてるようだ。
「んー、思い出の一つとして残しておくの」
普段見せない笑顔を見せながら可愛らしく言う。
護と寧音は、ああ、琉嬉はやっぱり女の子なんだなと改めて思った。




